太陽光パネルの寿命は実際何年?耐用年数やパネルの種類ごとの経年劣化率について解説!
太陽光パネルの法定耐用年数は17年ですが、これは減価償却できる期間を表すものです。太陽光パネルの寿命は20~30年と言われており、実際にこの期間を超えて発電を続けているパネルも存在しています。
できるだけ長い間、できるだけ多くの発電量を見込むためには、太陽光パネルの種類別の経年劣化率を知った上で太陽光パネルを選択するのがおすすめです。
この記事では、太陽光パネルの寿命だけではなく、長く大切に使うためのメンテナンスや発電しなくなったときの廃棄方法・費用まで解説しています。
太陽光パネル(ソーラーパネル)の寿命は20年以上!
まずは太陽光パネルの法定耐用年数、機体寿命、実際の寿命について解説していきます。
太陽光パネルの法定耐用年数は17年
太陽光パネル(ソーラーパネル)の法定耐用年数は、17年と定められています。
ここでいう太陽光パネルの法定耐用年数とは、太陽光パネルを会社設備として考えた時に、17年で減価償却するように計算することを意味します。
この17年という年数は、太陽光パネルの本来の寿命ではなく、金属でできた電気設備であるという点から算出しているので、実際のパネルの寿命とは関係ありません。
そのため、いざ太陽光発電を稼働させてみると17年以上発電を続けることがほとんどです。
太陽光パネルの期待寿命は20~30年
太陽光パネルの平均的な寿命のことを、期待寿命と言い、法定耐用年数とは違い、実際に期待できる寿命のことを指します。
太陽光パネルの期待持明は20年〜30年と、法定耐用年数よりもかなり長くなっています。
一般的な家電などは可動している期間が長いので法定耐用年数とあまり差が出ませんが、太陽光パネルの場合は可動する部分が少ないため、期待寿命のほうが長くなっているのです。
太陽光パネルの実際の寿命はどのくらい?
法定耐用年数は17年と定められていますが、期待寿命と同じく、実際は20〜30年ほど使えるというパターンが多いです。
一般的な太陽光パネルの寿命は、各パネルメーカーが提示している期待寿命を基準にしています。
パネルメーカーの算出しているデータを見てみると、太陽光パネルの期待寿命は25〜30年です。
しかし、あくまで20〜30年というのは期待寿命であり、現在稼働している太陽光発電所の中には30年以上発電している発電所も報告されています。
例えば、京セラの太陽光パネルを設置している千葉の佐倉ソーラーセンターは36年間、シャープのパネルを使っている奈良の壷阪寺にある太陽光発電は37年間発電を続けているという実績があります。
太陽光パネルの種類によって経年劣化と寿命に差が出る
経年劣化とは、年月とともにその物自体の価値が減少していくことをいいます。
太陽光パネルが経年劣化する原因には、パネルの破損・故障はもちろん、パネルの汚染などが上げられます。
これらの原因の一部はメンテナンスによって防ぐことができますが、パネル自体の経年劣化は予防できず、寿命が近づくということになります。
パネルの種類ごとの経年劣化率は以下の通りです。
(パネルの種類) | 5年間 | 10年間 | 15年間 | 20年間 |
単結晶シリコン | 3.2〜3.9% | 6.4〜7.8% | 9.6〜11.7% | 11.8〜15.6% |
多結晶シリコン | 2.3〜2.8% | 4.6〜5.6% | 6.9〜8.4% | 9.2〜11.2% |
アモルファスシリコン | 5.7% | 11.4% | 17.1% | 22.8% |
ヘテロ接合型 | 2.0% | 4.0% | 6.0% | 8.0% |
CIS・CIGS | 1.5% | 2.8〜3.0% | 4.2〜4.5% | 5.6〜6.0% |
太陽光発電を長期間に渡って運用するのであれば、あらかじめ経年劣化しづらく、寿命が長いと予想される頑丈なパネルを選んでおいたほうが良いでしょう。
①多結晶シリコン
多結晶シリコンは、パネルの中でも比較的低コストで導入しやすいというメリットがあります。
多結晶シリコンの経年劣化率は5年で2.3~2.8%で、劣化による発電量は97.7〜97.2%に低下します。寿命は比較的長いと言えるでしょう。
②単結晶シリコン
単結晶シリコンは、他の太陽光パネルの種類に比べ発電効率が良いですが、多結晶シリコンよりもコストがかかる上に、劣化率は5年で3.2~3.9%、発電効率は5年で96.8〜96.1%に低下します。
多結晶シリコンと比較すると劣化速度が早いです。
③アモルファス
アモルファスは、経年劣化率が5年で5.7%となっており、他のパネルの種類と比べると寿命が長いというわけではありません。さらに、結晶のような規則性を持たない分、他のパネルと比べると発電効率が劣ります。
ただし、アモルフォスは低コストで製造することができるので、初期費用を抑えて、短期間で利益を出したい方にはおすすめです。
④ヘテロ接合
パナソニックの太陽光パネルHITの材料となっているヘテロ接合のパネルの劣化率は5年で2%です。
しかもヘテロ接合のパネルの発電効率は、単結晶シリコンよりも優れているので、まさに低劣化高発電効率の寿命が長いソーラーパネルだと言うことができます。
ただ、コストが高いため初期費用を抑えて導入したい方にはおすすめできません。
コストを抑えたい方はアモルフォスか多結晶シリコンのパネルがいいでしょう。
初期費用が高くても、発電効率を上げて発電量を確保したいという方にとっては、ヘテロ結合のパネルを導入するとかなりメリットを感じることができるはずです。
⑤CIS
CISは、パネルメーカーのソーラーフロンティアが発売している次世代パネルで、徐々に人気を集めています。
CISパネルは、はじめの1〜2年間は太陽光を浴びることで出力係数が上がることから、この期間は他の太陽光パネルと比較すると発電効率がかなり良いという特徴があります。
CISの劣化率は5年で1.5%であり、5年間の劣化率だけでみると、他のパネルに比べて一番劣化しづらいパネルであるということがわかります。
太陽光パネルが年々劣化するのは主に配線
太陽光パネルの劣化で最もよくあるのは、配線の劣化です。
太陽光パネルは、太陽電池であるセルをいくつも配線で繋いで、1つのパネル(モジュール)となっています。また、発電した電気を送るための配線も繋がっています。
太陽光パネルはずっと屋外に設置されているため、これらの内部配線が腐食してしまうことがあります。特に、湿度が高い場所や、海岸近くでは、配線の腐食が進みやすいです。
太陽光設備に経年劣化が生じるデメリット
太陽光発電設備に経年劣化が起こると、以下のようなデメリットが発生します。
発電効率が落ちる
太陽光発電は、トラブルなく稼働していたとしても、年間で0.5~1%程度の発電効率が低下すると言われています。
原因は、パネル表面のガラスの細かい傷や汚れ、太陽電池のダメージ、内部ケーブルの腐食など、さまざまです。
そのため、徐々にではありますが発電量が低下し、売電収入も下がってしまうでしょう。
メンテナンス費用が増加する
新設したばかりのの太陽光発電設備では、定期点検を行っても、初期不良がなければ特に修理は不要でしょう。
しかし、経年劣化が進んだ太陽光発電設備では、点検で不良が見つかるようになります。
不備があった箇所を放置すると、発電量の減少や故障・事故の原因となるため、点検とともにメンテナンスが必要です。追加の点検をしたり、部品を交換したりすれば、費用もかさんでしまいます。
安全性が低下する
ケーブルやその接続部分が劣化すると、ショートを起こす原因となります。最悪の場合発火する可能性もあります。
また、架台やパネル取付金具の劣化で、耐久性が低下し、パネルが地震で落下したり、強風で飛散したりする原因となります。
これらは、発電がストップするだけでなく、周囲の住民にも被害を及ぼしてしまい、大変危険です。定期点検で劣化箇所をメンテナンスし、防ぐようにしてください。
太陽光パネルの寿命を伸ばすポイント
太陽光パネルの寿命を延ばし、できるだけ長く使うためにはメンテナンスが欠かせません。
先ほど説明したように、パネルの種類ごとに劣化率は異なりますが、パネル汚染や草木による影による故障といったパネルの経年劣化の原因となるような外的要因はメンテナンスで防ぐことができます。
定期的にメンテナンスをする
最も重要なのは、適切なメンテナンスを行い、故障の原因を取り除くことです。
定期点検
定期点検を行うことで、故障の影響が小さいうちに対処できます。
10kW未満の住宅用太陽光発電設備の場合は4年に1度、10kW以上50kW以上の産業用太陽光発電設備の場合は年に1度の定期点検が推奨されています。
また、50kW以上の高圧・特別高圧の太陽光発電設備は、年に3回程度の点検が必要です。
ちなみに、太陽光発電の定期点検はFIT法や電気事業法により義務化されています。定期点検を行わなかった場合、FIT認定が取り消される可能性もあるので注意してください。
草刈り・パネル清掃
定期点検以外にも、発電効率を低下させないように年に数回の草刈りとパネル清掃をするようにしましょう。
草刈りの目安は、草高30cm程度です。年に2回行う場合は、2月から梅雨の間に1回と、夏場に1回行うと良いでしょう。
パネル清掃は、設置場所にもよりますが、年に1~2回行う必要があります。
遠隔監視
太陽光発電が自宅から離れた場所にある方はこまめにメンテナンスに行くのは難しいですよね。
太陽光発電設備の不具合や発電効率の低下は毎日モニターをチェックすることで早期発見することができます。
メンテナンス業者に代行を依頼できる
メンテナンスを施工業者に全て依頼できる場合もあります。
本業が忙しい方や、遠隔地に太陽光発電設備を持っている方は、手間を省くことができておすすめです。
しかし、施工業者によってはパネルの取り扱い、基盤や架台の設置技術があまり優れていない業者もあります。
特に、訪問販売や電話営業の場合はこういったケースが多いです。
太陽光発電の設置を決めたら、まずは施工業者選びをしっかりと行うようにしてください。
「面倒だから」という理由で業者選びに手を抜いてしまうと、後から痛い目にあってしまう可能性も十分に考えられます。
太陽光発電の見積もりサイトを利用したり、仲介業者に相談することをおすすめします。
アフターフォローも含めて業者を選ぶ
太陽光発電設備を設置する際に、アフターフォローもできる業者を選んでおくのがおすすめです。
設置業者は、設備の設置状況や配線を理解しており、もしメーカー保証で対応できる故障があった場合にもスムーズに手続きできます。
業者によってアフターフォローの内容は異なります。太陽光発電の設置を検討する際には、工事料金だけでなく設置後の対応も比較するようにしてください。
太陽光パネルの寿命がきたらどうすればいい?廃棄には費用がかかる
太陽光パネルの寿命は、冒頭で説明した通り20〜30年です。
30年以上発電を続けている太陽光パネルもありますが、だんだんと発電しなくなるものも当然あります。
発電しなくなった太陽光パネルは産業廃棄物として処分が必要となります。
産業用太陽光発電の場合、パネルや設備の処分費用は1kWあたり約2万円程度です。
この費用がもったいないからといって、自分で処分しようと考える人もいますが、パネルの中には有害物質を発生する種類もあるので、素人判断で処分するのはとても危険です。
費用はかかりますが、専門の業者に依頼して処分するようにしてください。
資源エネルギー庁では、これまで努力義務であった廃棄にかかる費用の積立を2018年から義務化しています(10kW以上の太陽光発電が対象)。
義務化に伴い、定期報告で積立の報告をしなければならないので、太陽光発電の所有者は計画的に費用を積立するようにしましょう。
太陽光発電の寿命・耐用年数に関するよくある質問
太陽光発電システムの寿命・耐用年数について、疑問に思う方が多い点についてまとめました。
太陽光発電の寿命まで実際に使用している例はある?
実際に30年を超えて稼働している太陽光発電設備を紹介します。
佐倉ソーラーエネルギーセンター(1984年~)
京セラが1984年に設立した太陽光発電設備で、多結晶シリコン太陽電池モジュールを使用しています。36年が経過した2021年時点でも、出力低下率は17.2%となっており、現在も稼働中です。
参考:京セラ
奈良県壷阪寺(1983年~)
1983年に照明用の電源として、シャープの太陽光モジュールを設置。2011年に性能評価試験を実施したところ、モジュールに劣化はほとんど見られませんでした。30年以上経過した2018年にも、安定して稼働しています。
参考:シャープ
太陽光発電は何年で元が取れる?
元が取れる年数は、設備費用・発電量・売電量・自家消費量などでシミュレーションできます。
太陽光発電設備の初期費用は、固定価格での売電が保証されるFIT期間中に元が取れるのが理想です。つまり、10kW以下の住宅用太陽光発電では10年間、10kW超の産業用太陽光発電では20年間となります。
近年、FIT価格は下がってきていますが、設備費用は下がり、電気代は上がっています。また、自家消費型太陽光発電システムの導入には、国や地方自治体から補助金が得られる場合もあります。
太陽光発電システムの導入の際には複数社にシミュレーションを依頼して、比較するようにしてください。
太陽光パネルは10年で劣化する?
太陽光発電の発電量は、毎年0.25~0.5%程度劣化すると言われています。つまり、10年では2.5~5%程度発電量が減るのが一般的です。
もしそれ以上の急な発電量低下が見られたら、故障が原因と考えられるので、早めのメンテナンスをおすすめします。
メーカーの出力保証の値を下回っていれば、保証サービスを使うこともできるでしょう。
太陽光発電の寿命がきたらどうなる?
太陽光パネルが寿命と言われる時期になっても、急に発電できなくなるわけではありません。徐々に発電量が落ちていきます。
しかし、太陽光パネルの内部配線の劣化や、パワーコンディショナーの寿命など、故障が起きてしまうと、発電が止まったり、大幅に落ちたりしてしまいます。
また、太陽光パネルの汚れやひび割れが原因でホットスポットが発生した場合、パネルが発熱し、火災を引き起こす恐れもあります。
定期的なメンテナンスを行い、劣化による発電量低下や事故を防ぎましょう。
大量の太陽光パネルが寿命を迎える2040年頃の再エネ廃棄物問題とは?
2012年にFIT制度(固定価格買取制度)が導入され、急速に数を増やした太陽光発電設備。2040年ごろには多くの太陽光発電事業が終了し、太陽光パネルなどの廃棄物が大量に発生すると予想されています。
太陽光パネルの中には有害物質が含まれているものもあるため、適切に処理をしなければなりません。また、パネルのリユース・リサイクルも促進する必要があります。
国では、廃棄費用の積み立ての義務化や、リサイクル制度の検討を進めるなど、大量廃棄に向けて準備を進めています。
まとめ:太陽光パネルの寿命は耐用年数より長い!
太陽光パネルの法定耐用年数が17年ということから、17年しか太陽光パネルは使えないと勘違いされていることが多いですが、こまめにメンテナンスをしながら運用することで法定耐用年数どころか期待寿命を上回る年数で発電を続けることができます。
太陽光発電設備を設置する際は、ニーズに合わせた太陽光パネル選びが必要です。
長期に渡って運用を考えているのであれば、寿命の長いCISパネルか多結晶パネルがおすすめです!
中古で太陽光発電の購入を検討している方も売電価格や利回りだけではなく、パネルの種類やメーカーにも着目するようにしてみてくださいね。
(参考:2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁)
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