太陽光発電でよくあるトラブルとは?対処法や事前の予防方法を解説
- 公開日:2025.04.14
- 更新日:2025.06.13

太陽光発電を設置・運用することで生じるトラブルには、設備の問題だけではなく近隣の住民に被害を加えてしまうケースもあります。
しかし、設置前の対策や正しい工事・メンテナンスによってトラブル発生のリスクを最小限に抑えることができるのです。
この記事では、実際に起きたトラブル事例や、トラブルを避けるポイントを解説していきます。
◎太陽光発電に関するよくあるトラブル
- 太陽光発電所の排水計画の甘さが招いた土地トラブル
- 太陽光発電所の小さすぎた調整池が招いた雨水処理トラブル
- 斜面の保護対策の甘さが招いた崩落危機のトラブル
目次
太陽光発電のトラブルを種別で紹介
太陽光発電を設置したことによって起こりうるトラブルがありますが、事前に知っておけば対策がとれるケースがほとんどです。
次章では設備トラブル・近隣住民との間に生じる可能性があるトラブルを紹介します。
太陽光発電設備のトラブル
太陽光発電設備のトラブルは以下の通りです。
事例①太陽光発電設備の故障・破損
太陽光発電設備は屋外に設置されているので、台風や大雨、強風のなどの被害を受けやすいです。
しかし、太陽光パネルは風速60メートルの強風にも耐えることができ、さらには1メートルの高さから227グラムの硬球を落下させても壊れないように設計することがJIS(日本産業企画)によって定められています。
そのため、台風や落下物による衝撃でダメージを受けないようにはなっていますが、何かしらの原因で破損してしまう可能性はゼロではありません。
また、太陽光発電を設置している土地の地盤の水はけなどの整備をきちんと行っていないことによって、架台が傾いてしまったり、設備が水没してしまうこともありますよ。
事例②草や木に関するトラブル
草や木が太陽光パネルに影を落とすと、その部分だけ発電できなくなります。それが一瞬であれば問題ありませんが、その状態が続いてしまうと、発熱してパネルが保障してしまう「ホットスポット現象」の原因となってしまいます。
そうすると、発電量が低下してしまうだけでなく、修理費を負担しなければならず、損害を被ってしまいます。
またパワコンのファンの隙間から草が侵入することで、内部でショートし火事になってしまう可能性も考えられます。
事例③排水計画のトラブル
排水計画は太陽光発電所設計時の重要なポイントのひとつ。
土地の雨水処理が完璧な土地は問題ありませんが、地盤が弱い土地や大掛かりな開発をした土地は要注意です。
下の画像のように想定外の場所に雨水が流れることにより、もともとはなかった水路が新たにできて、地盤が削られてしまうケースがあります。
このようになってしまう原因は、事前の設計に問題があることが多いです。
しかし、全てが事前の計画通りに行くのはかなり難しく、購入前にここまでの判断を下すのは不可能だと言えます。
とはいえ、地盤が削られてしまうと架台が傾いたり、太陽光発電設備自体が水没してしまったりとかなり大きな被害になりかねません。
この問題を解決するためには、雨水の流れをコントロールする必要があるので、上の画像のように地盤の改良とU字溝を設置し、雨水の流れをコントロールできるように排水しやすい状況を整えました。
その結果、雨水の通り道が定まり、土砂の流出や土地の不安定さを払拭できたケースです。
事例④設置場所の地盤のトラブル
最近は、山林を切り開いて太陽光発電所を開発している地域も多くなってきています。
そこで懸念されるのが、法面(人工的な斜面)の保護対策の甘さによる斜面の崩落です。
斜面に敷かれた芝がうまく根付かずに崩れ落ちそうになったり、このように完全に土地が空洞化してしまうと、土砂崩れの原因や設備の倒壊の原因となってしまいます。
このようなケースでは、まず土壌の改良が必要です。
土を盛り直して、その上から植生シートを使用し、土地を抑えるように覆います。
植生シートは、雨が降ると自動的に土にタネが撒かれて2~3ヵ月で根を張るので、先ほどの画像のように空洞化したり、斜面が崩落してしまうリスクが少なくなります。
近隣住宅に対するトラブル
太陽光発電設備の設置場所により、近隣住宅との間にトラブルが発生するケースもあります。主な事例を見ていきましょう。
事例①反射による光被害
太陽の光がパネルに反射し、その光が住宅の中に入ることで眩しさや暑さといった不快感を与えてしまうというトラブルもあります。
反射光は設計の際に計算することができるので、近くに住宅がある土地に太陽光発電を設置する場合はきちんと計算して、近所の人たちには事前に説明するようにしましょう。
事例②飛来物が人や物に当たって怪我や破損させてしまう
台風や強風などで太陽光パネルやその他の設備が破損し、その破損した部品などが風に舞って人や家にぶつかって怪我をさせてしまったり、家が壊れてしまうと治療費や修理費を支払わなければならなくなります。
発電量が想定より少ないトラブル
設置前のシミュレーションよりも、発電量が少なかったというケースも見られます。
年間発電量のシミュレーションは、全国の平均日射量と太陽光パネルの容量で計算できます。経年劣化で発電量が少しずつ下がることは普通です。しかし、設置直後に発電量が少ない場合、以下のような問題が考えられます。
事例①設置前のシミュレーションが正確でなかったトラブル
設置業者に見積もりを依頼する際に年間発電量をシミュレーションしますが、条件を正しく設定せずに計算してしまうと、現実とは異なる結果がでます。いくつかの業者に見積もりを依頼し、比較することで避けられるでしょう。
年間発電量に影響する設置条件は以下の通りです。
- 太陽光パネルを設置する方角
- 太陽光パネルを設置する傾斜の角度
- 太陽光パネルの汚れ・破損
- 日射を遮断する影などの有無
太陽光パネルは設置する方角も発電量を大きく左右するので、必ず条件に加えましょう。ベストは真南です。
設置する傾斜の角度は地域・方角の組み合わせによって発電量が変わるので、これも条件です。最適な角度は20°から30°です。
汚れや破損があるかどうかの確認も必須です。
日射を遮る影などがあると発電量が低下するため、影の有無も条件に付加しましょう。
事例②配線や接続など施工不良のトラブル
配線や接続を誤ってしまうと、太陽光パネルとパワコンの性能が発揮できず、発電量は下がります。
専門業者に太陽光パネルとパワコンの点検を依頼し、再工事が必要な場合には再工事を、交換が必要な場合には交換する必要があります。費用がかかっても、放置して発電量が減る方がリスクが大きいからです。
事例③シミュレーション後に周辺環境が変化するトラブル
近くにビルなどの建物が建つなどして環境が変化した場合、パネルに当たる光が減ってしまい、シミュレーション時よりも発電量は落ちます。
近隣の状態をチェックし、近隣に建物が建つ可能性がある場合には、別の土地を検討することをおすすめします。
悪徳業者に捕まったトラブル
残念ながら、太陽光発電の詐欺を行う業者は存在しています。
悪徳業者の代表的な特徴と発生しやすいトラブルを見ていきましょう。
事例①悪質な施工業者を避ける
悪徳業者に捕まらないためには、以下の点を注意してください。
- 複数の業者に見積もりを依頼し比較する
- リスクについても説明する業者を選ぶ
- 施工実績が豊富な業者を選ぶ
上記以外に気をつける点は以下の通りです。
事例②相場より高い値段で契約させられるトラブル
悪徳業者は、「今だけの割引」「モニター料金でお得」などと言いながら、実際よりも高い料金を請求してきます。他の業者と比較されないよう、即日契約を迫られることが多いです。
しかし、契約書を交わした後でも、申込書面や契約書面を受け取ってから8日以内ならクーリングオフができるので、早めに悪徳業者かどうかを確認し、クーリングオフを行いましょう。
事例③虚偽の説明で騙されるトラブル
発電量のシミュレーションを水増しして計算し、実際に期待されるよりも多くのメリットがあるように見せかけ、騙す場合もあります。
また、実際にはない補助金をあるように話して安心感を与えるというケースもあるのでご注意ください。
事例③施工技術不足によるトラブル
正しい工事を行わずに、雨漏りを起こしたり、太陽光発電システムの性能を発揮できなかったりするケースもあります。
正規の施工業者を雇わないで安い業者で工事をさせると発生しやすいトラブルなので、業者と契約する際には施工業者も悪徳業者ではないかどうかの確認が重要です。
さらに詳しく知りたい方は、こちらの関連記事も読んでみてくださいね。
関連記事:太陽光発電の詐欺に騙されるな!悪質な業者が行う営業の特徴や見分ける方法を解説
太陽光発電設備のトラブルを避けるための3つのポイント
太陽光発電を設置したことによるトラブルは事前の対策と備えによってリスクを最小限に抑えることができます。
ここではトラブルを避けるための下記ポイントを解説していきます。
- ①悪質な施工業者を避ける
- ②メーカー保証と保険の補償範囲の違いを知っておく
- ③定期的にメンテナンス・定期点検をする
①悪質な施工業者を避ける
太陽光発電の施工業者の中には、施工に手を抜いたり、そもそも実績が少なくトラブルが発生したときに対応してくれなかったりするケースもあります。
そのため、太陽光発電の設置・建設は、実績のある施工会社に依頼するようにしましょう。
また、施工会社を選ぶときは複数の業者に見積もりを出してもらい、施工内容や料金に不明確なものがないかを確認してください。
このように比較することで悪質な業者を見破ることができますよ。
詳しくは、下記の記事を参考にしてみてください!
関連記事:太陽光発電の詐欺に騙されるな!悪質業者が行う営業の特徴や見分ける方法を解説
②メーカー保証と保険の補償範囲の違いを知っておく
メーカー保証の対応は、パネル自体のトラブルで破損・故障してしまった場合のみです。
パネルメーカーが修理や交換をしてくれるので、修理費や交換費用を自己負担しなくてもかまいません。
しかし、メーカー保証を受けるためには、メーカーの施工IDを持っている施工業者によって、メーカーが提示している設置方法に従ってパネルを設置する必要があります。
見積もりの際には、施工業者がIDを持っているかを忘れずに確認してください。
また、メーカー保証では、保証対象外となるケースも把握しておきましょう。
台風や地震などによる故障については、基本的にメーカー保証では対応してもらえません。この場合、火災保険や動産総合保険という任意の保険に加入しておけば、補償を受けることができます。
万が一、保険に加入していなければ全額自己負担となり、多額の損失となってしまうので注意してください。
③定期的にメンテナンス・定期点検をする
4年に1度の定期点検が推奨されていますが、定期点検以外にもこまめに太陽光発電のメンテナンスやチェックをすることでトラブルを早期発見することができます。
点検を業者に依頼することはもちろんですが、毎日発電量をモニタリングするだけでも異常に気づけます。
トラブルが起きないように日頃から気をかけるようにしましょう。
また、草や木、パネルの汚染などは、近隣トラブルの原因となるだけではなく、太陽光パネルに影を落としてしまうので、故障や発電量が低下する原因となります。清掃や草刈りを定期的に行うようにしましょう。
草刈りの目安は30cmです。
関連記事:太陽光発電のメンテナンスに必要な維持費用はどのくらい?
太陽光発電で万が一トラブルが起きたときの対処法
対策を取っていてもトラブルが起きてしまうことはあります。トラブルの対処法について解説します。
太陽光発電設備が破損した場合
パネルが割れたり飛んだりしている場合は、ガラスや電線が危険なため、離れて現場を確認してください。
自然災害や経年劣化などで太陽光発電設備が故障してしまった場合は、設置を依頼した工事店に連絡しましょう。メーカー保証を使用できるかどうかを、現地で確認してくれます。
もしメーカー保証が使えなかったとしても、設備について把握してくれている工事店に修理を依頼するのがスムーズです。
また、自然災害による被害であった場合、火災保険で費用がカバーできる場合もありますので、保険会社に連絡してみましょう。火災保険は太陽光パネルを設置した際に、見直しておくのがベストです。
第三者に被害が出た場合
太陽光パネルが飛んでしまって隣人宅に被害が出るなど、第三者に損害を与えてしまった場合は、「賠償責任保険」が適用されます。まずは保険会社に連絡してみましょう。
2020年4月より、10kW 以上の太陽光発電設備では、「災害等による発電事業途中での修繕や撤去及び処分に備え、火災保険や地震保険等に加入する」ことが努力義務となっています。
産業用太陽光発電設備では、地域への被害が発生してしまう可能性もあるため、賠償責任保険へ加入するようにしてください。
太陽光発電のトラブルに関するよくある質問
太陽光発電設備のトラブルについて、気になる点についてまとめました。
太陽光発電のトラブル件数は?
製品評価技術基盤機構(NITE)が公表したデータによると、2022年度の太陽電池発電所の事故被害件数は453件でした。
事故発生電気工作物は、逆変換装置(インバータ)が9割を占め、続いてモジュール・架台が多くなっています。
故障箇所の交換のみで、事故原因は特定されないことが多いため、原因不明の事故が6割以上です。
特定された原因では「設備不備-製作不完全」が62件、「自然災害」が61件となっています。自然災害の内訳では「雷」が22件、「氷雪」が20件と多くなっています。
出典:電気保安の現状について(令和4年度電気保安統計の概要)令和6年3月 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)
太陽光発電が壊れる原因は?
太陽光発電設備が壊れる原因には、以下のようなものがあります。
- 自然災害
- 飛来物
- 汚れや影によるホットスポット
- 侵入者による盗難・いたずら
- 雑草・木
- 害獣・害虫
自然災害では、大雨で地盤が崩れてパネルや架台が破損したり、落雷でパワコンが故障したりなどの被害が起こりえます。
パネルの一部分が影になって起こるホットスポットは、発電量の減少だけでなく火災の原因となることもあるため注意が必要です。
その他、山の中に設置された太陽光発電設備の場合、害獣や害虫の営巣による被害も考えられるでしょう。
太陽光発電のトラブル時にやってはいけないことは?
太陽光発電設備に災害などのトラブルが起こった時、不用意に近づいて触ることは絶対にしないようにしてください。
太陽光パネルは破損していても、太陽光があれば300V以上の電気を発電しているため、感電する恐れがあります。立入できないように、ロープを張るなどの注意喚起が必要です。
やむを得ず近づかなければならない場合は、絶縁手袋などを使用してください。また、パネルが水没していたり足元に水たまりがある場合には、ゴム長靴を履いてください。
太陽光パネルが故障したら放置してもいい?
太陽光パネルの故障を発見したら、できるだけ早く修理やメンテナンスをしないと、さらに被害が大きくなる可能性があります。
パネルの一部分にひびが入った程度なら、そのままにしていてもいいと感じるかもしれませんが、間違いです。ホットスポットが発生する原因となり、最悪の場合火災を引き起こす可能性もあります。
もし重大な事故に繋がらなかったとしても、故障した分発電量が低下し、売電収入が減ってしまいますので、早めに対応してください。
太陽光発電パネルが破損すると有害物質が漏れる?
太陽光パネルには、鉛・セレン・カドミウムといった有害物質が使用されているものもあります。
パネルが割れたらすぐに漏れ出して危険なほど大量に含まれているわけではありませんが、破損したパネルが長期間野ざらしになってしまえば、土壌汚染の可能性も出てきます。
環境を守るためにも、破損の放置はやめてください。
まとめ
太陽光発電に関するトラブルのほとんどは、しっかりとした施工・メンテナンスにより防ぐことができます。
土地の整備をする場合は追加で費用がかかることもあり、初期費用を抑えて太陽光発電を設置したいという考えから、コストを削るために必要な工事をしないという選択をしてしまった、しようとしているという方もいるかもしれません。
しかし、太陽光発電の運用期間は20年間以上なので、長い期間耐えられる設備が必要になるのです。
「売電収入によって利益を得よう!」と太陽光発電を導入するのであれば、必要な工事やメンテナンスにはお金を出し惜しまないことが重要です。
最近では、このような欠点やトラブルがあった場合、FIT(固定価格買取)の売電権利自体が剥奪されてしまうかもしれないという話も出ているようなので、十分に注意しましょう。
この記事を書いた人
ikebukuro