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カーボンバジェットとは?1.5℃目標・排出ギャップと日本企業の取り組みを解説

2015年12月のパリ協定で掲げられた「1.5℃目標」。それ以降、世界各国は地球温暖化を1.5℃に抑える目標に向かい取り組んでいます。

世界の大企業を主体とする「RE100」や、日本の中小企業や自治体を主体とする「再エネ100宣言 RE Action」など、世界的な取り組みが行われています。

また、近年「カーボンバジェット」と呼ばれるCO2排出量の上限も示されており、猶予も長くはありません。

本記事では、カーボンバジェットや、環境に猶予がないことを示す「決定的な10年」、一つの大きな問題点である排出ギャップについて解説します。

また、企業の取り組み事例や、個人で取り組めることも紹介します。

カーボンバジェットとは

カーボンバジェットとは、過去のCO2排出量を把握し、未来の気温上昇の限度を設定することで、これからのCO2排出量を定められるといった考え方です。

つまり、「あとどれくらい二酸化炭素を排出して良いか?」という上限を示す言葉で、直訳すると「炭素予算」となります。

2010年、メキシコのカンクンで開催されたCOP16では、産業革命以後の気温上昇を2℃までに抑えるという「2℃目標」を掲げました。

しかし、その後の2015年パリ協定では更なる目標として1.5℃までに抑える「1.5℃目標」を掲げています。

1.5℃目標を達成するには、2030年までにCO2排出量を2010年比で45%削減し、2050年までにCO2排出量をゼロに抑える必要があるとされています。

“決定的な10年”

「決定的な10年」とは2015年パリ協定で定められた1.5℃目標を達成するために、2020年から10年間の重要性を示した言葉です。

「決定的な10年」は、2021年11月にスコットランド・グラスコーにて開催されたCOP26で提唱されました。

「1.5℃目標」を達成するため、2030年までにCO2排出量を45%削減しようという国際的な取り組みが行われており、別名「勝負の10年」とも呼ばれています。

カーボンニュートラル

CO2排出量の上限が決まっている中、2020年10月、菅総理大臣は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す宣言をしました。

「実質ゼロ」というのは、温室効果ガスの「排出量」から森林などによる「吸収量」を引いて、その合計をゼロにするというものです。

カーボンニュートラルを達成するためには、日本のCO2排出量の約4割を占める化石燃料による発電からの脱却が大きなカギです。

カーボンニュートラルに取り組むメリットは、温暖化が抑制できる、資源を後世に残せる、植林を増やすことで長期に渡って環境に貢献できるというものがあります。

また、企業がカーボンニュートラルに取り組むことで、企業の信頼性やイメージの向上、ESG投資の対象になるなどのメリットもあります。

(参考サイト:「カーボンニュートラル」ってなんだろう?|for キッズ|知る・楽しむ|関西電力

カーボンバジェットと排出ギャップ|あとどれくらいCO2を排出できる?

2050年までにCO2排出量・実質ゼロを掲げた気候変動枠組条約の加盟国ですが、では私たちはあとどれほどのCO2排出量を許されているのでしょうか?

産業革命以前からの世界の気温上昇を2℃で食い止めるには、840ギガトンの温室効果ガス排出量が上限とされています。

2015年のパリ協定以降に作成された1.5℃特別報告書によると、地球の気温上昇を66%の確率で1.5℃以内に抑えるためには570ギガトンとされています。

現在、世界では1年間で約40ギガトンを排出しているため、2030年にはバジェット(予算)を使い切ってしまう計算です。

排出ギャップとは?

1.5℃目標を達成する上でネックとなっているのが「排出ギャップ」です。

排出ギャップとは、地球温暖化を抑制するために必要なCO2削減量と、世界各国が掲げる削減目標を全て達成した場合のCO2削減量にギャップがある現象を指します。

つまり、理想と現実のギャップのようなもので、世界各国が目標を達成したとしても、地球温暖化を抑制するまでには至らないという意味で使われるものです。

UNEPが2022年に公表した排出ギャップ報告書では、現行政策のままで進んだ場合の2030年に推計される排出ギャップは17〜25ギガトンとされています。

この排出ギャップを埋めていくのも世界的な課題といえます。

参考:カーボン・バジェットとは? | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
参考:No.290 カーボンバジェットと2030年までに急ぐべきこと – 京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座
参考:EGR_2022_ES_jp_FINAL.pdf

世界と日本のカーボンバジェットの現状

カーボンバジェットはどのくらい残っているのでしょうか?世界と日本の現状について解説します。

世界の現状と対策

2020年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、地球の気温上昇を1.5℃以内にとどめるためには、残りのカーボンバジェットを約500ギガトンと計算していました。

しかし、「Global Carbon Budget 2023」(世界のCO2収支2023年版)によると、温暖化が1.5℃を超えるまでに残されたCO2排出量(カーボンバジェット)は、あと約2750億トンと推定しています。

2023年に世界の温室効果ガス排出量は368億トンに達し、2022年から1.1%上昇、過去最高を記録すると予想されています。

欧州の排出量は7%減、アメリカでは3%減となっていますが、インドや中国を含むその他の国々では排出量が増加しているのが現状です。

今後は、2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、COP(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)などで強制力のある削減目標を設定・達成していく必要があります。

2030年の中間目標を達成するためには、再生可能エネルギー・エネルギー効率化・電化(電気自動車含む)といった対策が重視されています。

また、先進国から途上国に対して、化石燃料からの脱却・森林保護・二酸化炭素回収技術などでの支援が不可欠です。

参考:世界のCO2収支 GCBIPCC 第6次評価報告書 統合報告書

日本の現状と対策

人口割で考えると、日本は世界の1.5%となるので、2020年時点での残余カーボンバジェットは約7.5ギガトンでした。

しかし、2021年度には約1.1ギガトンをすでに排出しています。年々排出量は減少していっているとは言え、このままの排出量では、カーボンニュートラル実現を目指す2050年までに、カーボンバジェットを大幅に超過してしまう可能性があります。

これを防ぐためには、2030年の中間目標達成に向け、急速にCO2の削減を進める対策が必要です。具体的には、太陽光・風力などの再生可能エネルギーの促進、都市システムの電化、エネルギー効率化、森林および農作物・草地の管理改善、フードロスの削減などが挙げられます。

また、2030年以降のカーボンニュートラル実現を見据え、水素エネルギーや二酸化炭素除去・回収・再利用といった技術の開発・実用化も、政府が主導するロードマップに沿って進めていく必要があります。

参考:環境省・国立環境研究所「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要
一般社団法人JA共済総合研究所 温暖化の現状と緩和策の課題
経済産業省 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

CO2削減のために企業ができること

カーボンバジェットの超過を防ぐには、大企業はもちろんのこと、中小企業もCO2削減への取り組みが不可欠です。具体的にできる対策を紹介します。

自社のCO2排出量を把握

まずは、どのくらいエネルギーを消費し、CO2を排出しているのか知る必要があります。省エネ法や温対法の対象となっている企業では、すでに報告を行っているため把握済みでしょう。

CO2排出量は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によって定められた式で求められます。

CO2換算排出量=活動量×排出係数×地球温暖化係数(GWP)

活動量とは、電気の使用量や貨物の輸送量、廃棄物の処理量といった企業活動を表す数値です。

排出係数とは、企業活動ごとにどのくらいのCO2を排出しているかを表す数値です。環境省の「算定方法・排出係数一覧」からチェックできます。

省エネルギー対策

節電するだけでは排出量削減に限りがあり、従業員に不便な思いをさせてしまう可能性もあります。

省エネルギー機器の導入は、初期コストこそかかりますが、その後効率的にCO2を削減可能です。

例えば、蛍光灯から高効率LEDへの転換、ポンプやファンにインバータを導入、統括的にエネルギー管理を行うエネルギーマネジメントシステムの導入などが挙げられます。

再生可能エネルギーを導入

近年、自社工場や社屋の屋根に太陽光発電パネルを設置し、自家消費型太陽光発電システムを導入する企業が増えています。太陽光由来の電力の使用でCO2排出量を大幅に削減できるだけでなく、電力会社からの電力購入量を減らしてコスト削減も可能です。

ただし、高額な初期費用がかかるため、すぐには導入が難しいという場合もあるでしょう。そのような時には、電力会社の契約プランを再生可能エネルギー由来の電気が使えるプランに変更するのが手軽でおすすめです。

カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、削減努力をしても排出されてしまったCO2を、J-クレジットや非化石証書といった環境価値を購入して、埋め合わせることです。

ここでいう環境価値とは、他の企業や自治体が、省エネしたり、再生可能エネルギー由来の電気を発電したりして削減したCO2を、クレジットや証書にして取引できるようにしたものを指します。

カーボンオフセットを行うことは、CO2削減事業の促進にも繋がります。

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環境価値の調達でカーボンオフセットするなら、調達代行サービスOFFSEL(オフセル)がおすすめです!

OFFSELでは、J-クレジット・非化石証書・I-REC・J-VER・TIGR・グリーン電力証書の調達を全ておまかせできる代行サービスを行っています。

非化石証書は1kWh~、J-クレジットは1 t-CO2~と小さな単位から購入が可能で、単価設定も安いため、できるだけ費用を抑えてカーボンオフセットに取り組みたい企業に向いています。

また、「希望クレジット検索」で、調達先を選ぶことができるのも嬉しいポイント。発電方法・発電地・プロジェクト内容などを比較して調達先を選べます。

「地域に貢献したい」「風力発電の普及を応援したい」といったように、より企業の目的にあったカーボンオフセットを行うことができるでしょう。

手数料・相談料は無料ですので、まずは連絡してみてくださいね!

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CO2を削減するために企業の取り組み事例と個人ができること

CO2削減への取り組みは、企業や個人への責任も問われます。

2014年に始まった「RE100」は、世界各国の大企業を中心に100%再生可能エネルギーを掲げる国際的な取り組みです。

また、2019年に設立された「再エネ100宣言 RE Action」は、日本の中小企業や自治体、各機関が対象となり100%再生可能エネルギーを目指す枠組みです。

企業はこういった枠組みの中で、地球環境に貢献しようとしている一方、私たち個人でも環境に貢献できることは沢山あります。

ここでは企業の取り組み事例と、個人が取り組める具体例を紹介します。

企業ができる取り組み事例

企業は個人よりもCO2排出量が多く、CO2削減が強く望まれます。

企業はESG投資資金を得てCO2削減に取り組めることがメリットです。

ここでは国内外の企業の取り組み事例を紹介します。

ダノン

ダノンは「エビアン」や「ヨーグルト」で有名なフランスのグローバル企業です。

ダノンは、エビアンの生産工場をカーボンニュートラル化するために新工場を作りました。

また、約3億円を投資してペットボトルに再生素材を使い、工場敷地内に鉄道の駅を設け、エコに貢献しています。

また、運営は100%再生可能エネルギーでまかなっており、廃棄物ゼロも実現しています。

他の取り組みは以下の通りです。

  • 環境再生型農業の拡大
  • 生物多様性を保全する
  • 生態系の管理・回復・保護の強化

ヤマトホールディンクス

国内物流最大手のヤマトホールディングスは、2030年までに温室効果ガス排出量を48%削減、2050年までに温室効果ガス実質ゼロを目指しています。

具体的には、以下の取り組みを実施しています。

  • 低炭素車両を積極的に導入
  • ハイブリッド車、電気自動車、電動アシスト自転車の活用
  • 工場や事業所にLED導入
  • 再生可能エネルギーの活用
  • 輸送効率化による燃料使用の低減
  • 冷却用ドライアイスの削減

イオン

イオンは、2025年までにイオンモール全店舗の電力を100%再生可能エネルギーに転換することを目標にしています。

店舗に限らず、商品や物流という事業の過程においてもCO2削減に努めています。

他の取り組みは以下の通りです。

  • 家庭の余剰電力の買い取り
  • 脱炭素型ライフスタイルへの転換サポート
  • 地域に緑を増やす活動
  • 買い物袋持参活動
  • 持続可能性の高い商品の展開

参考:イオン 脱炭素ビジョン | イオンのサステナビリティ | イオン株式会社

個人・私たちができる取り組み具体例

家庭でのCO2排出の主な要因は「家電」と「照明」で、各家庭の多くをこの2つで使っています。

CO2削減は個人の節約効果もあるため、環境への貢献と並行して取り組んでいきましょう。

冷房は28℃、暖房は20℃に温度設定にする

冷暖房の温度設定を2度変えるだけで、1日に90グラムのCO2削減に繋がります。

夏場は直射日光をカーテンやすだれでカットしたり、冬は日光を取り入れたりする工夫も室温調整に有効です。

また、エアコンと並行して扇風機やサーキュレーターを使用すると室内の空気の循環が良くなり、省エネになります。

冷蔵庫の設定温度を適切にする

冷蔵庫は一年を通して使うことが多いため、工夫次第ではかなりの省エネに繋がります。

まず、設定温度を「強」から「中」に変えましょう。

また、食材を詰め込みすぎると冷気が循環しなくなるため、温度が下がりにくくなります。

冷蔵庫の不要な扉の開閉も庫内の温度が上がってしまうので控えましょう。

長年使っている冷蔵庫は省エネ性能の低いものが多いため、最新の冷蔵庫への買い換えを検討するのも環境への配慮です。

家電製品の待機電力の削減

家電製品は、使っていなくてもコンセントに接続しているだけで電力を消費します。

そのため、長い間使わない場合はコンセントからプラグを抜いておくと節電できます。

節電タップにはスイッチが付いており、それを切り替えることで電源を入れたり切ったりできるのでおすすめです。

照明をLEDや蛍光灯に変更する

白熱電球や蛍光灯は、省エネ効果に優れたLEDに変えましょう。

また、使っていない照明はこまめに消すなどして節電するのも有効です。

車の運転を控えて電車や自転車を利用する

通勤や買い物の際に自動車での移動を控え、電車や自転車を利用するのも効果的です。

電車やバスなどの公共交通機関は、一度に大人数を乗せられるため、自動車よりも一人当たりのCO2排出量が少なくなります。

駐車する際は短時間でもアイドリングストップをするのも良いでしょう。

都会であれば自転車で移動するという選択肢も考えられます。

エコバッグを持ち歩き、レジ袋の利用を減らす

全国でレジ袋が有料化されたのは、2020年7月からです。

レジ袋はプラスチックでできているため、燃やして処分する際にCO2を排出します。

エコバッグを作る際にもCO2は発生していますので、一つのエコバッグを長く使うなどして環境に貢献しましょう。

カーボンバジェットに関するよくある質問

カーボンバジェットについて気になる点をまとめました。

カーボンバジェットの排出量数値を試算したIPCCとは?

IPCCとは「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」の略称であり、人の活動が原因の気候変動やその緩和対策を、科学的・技術的・社会経済的な見地から評価を行っている組織です。1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって設立されました。

世界的な論文や観測データをもとに、各国政府の推薦で選ばれた専門家・科学者たちが評価をまとめているため、その報告書は国際的に強い影響力を持っています。

カーボンバジェットの1.5℃目標を達成できないとどのような悪影響がある?

カーボンバジェットが設定されたのは、地球温暖化を防ぐためです。CO2は温室効果ガスであり、その排出量と世界平均気温が比例して上がっていることから、地球温暖化の原因の1つであると考えられています。

IPCCの「1.5℃特別報告書」では、気温上昇が1.5℃のときと2℃のときでは、以下のような違いが起こると推測されています。

  • 記録的な熱波が起こる確率が8.6倍から13.9倍に上昇する
  • サンゴ礁が失われる割合が50%から99%以上に上がる
  • 2100年までに世界平均海面が10cm上昇する
  • 夏に北極海の海氷が消失する可能性が10倍高まる
  • 水ストレスを感じる人の割合が50%増える

温暖化による海面上昇や異常気象の影響で、人間だけでなく地球上全ての生態系に悪影響が増えると言えるでしょう。

カーボンバジェットとよく似た「カーボンニュートラル」とは?

「カーボンニュートラル」とは、二酸化炭素の排出量を実質的に0にすることです。二酸化炭素の排出量をゼロにするのではなく、排出された二酸化炭素を吸収したり除去したりすることによって、プラマイゼロにします。

カーボンニュートラルを目指すことで、カーボンバジェットの上限に達するのを防ぐことに繋がるでしょう。

日本では、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。

まとめ

カーボンバジェットは、今後のCO2排出量の上限を決めるものです。

2015年時点でのカーボンバジェットは570ギガトンでした。

この数字は、現行のままだと2030年には上限に達してしまうため、2020年代は「決定的な10年」と呼ばれています。

また、排出ギャップを埋めていくのも大きな課題の1つです。

企業や個人も各々が努力し、CO2削減に向けて進んでいきましょう。

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