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脱炭素に重要なCCSとは?CCUSとの違いや環境への影響をわかりやすく解説

地球温暖化の原因とされる温室効果ガスは、世界的な課題となっています。

2020年、菅総理は「温室効果ガス・実質ゼロ」を目標とするカーボンニュートラルの達成を掲げました。

「CCS」とは「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、発電所や工場から排出されたCO2を地中深くに貯留・圧入する技術のこと。カーボンニュートラル達成に向けて不可欠です。

日本でのCCS実証実験についても解説していきます。

CCS(二酸化炭素回収・貯留)とは

「CCS」とは「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語に訳すると「二酸化炭素・貯留」という意味になります。

CCSは、発電所や工場から排出されたCO2を地中深くに貯留・圧入する技術のことです。

石炭や石油を燃料に使う火力発電所では、大量にCO2が排出されています。2020年度の国内の部門別CO2排出量(電気・熱配分前)は、「エネルギー転換部門」が40.4%で最多です。(出典:環境省 2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要)

また、同年の国内発電量の内訳は火力発電が全体の82.6%を占めており、火力発電に依存していることがわかります。

つまり、火力発電所のようなCO2排出量の多いところから削減していくことが有効な対策といえるでしょう。

このような課題に取り組むためには、CCSのような新技術が必要になります。CCSは、発電所や工場から排出されるCO2を集め、地中に貯留する技術です。

しかし、「地中に押し込めて、地上に漏れることはないのか?」という疑問を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

CO2を地上へ漏らさないためには「地層」が大切な要素になります。具体的には、CO2を貯留する隙間のある地層と、そのCO2を地上に漏らさないフタとなる地層が必要です。

CCSの技術と地層の選定や管理によって、貯留したCO2を1000年に渡り閉じ込めることが可能と言われているのが、このCCSです。

CCUSとの違い

CO2の扱い CCS CCUS
分離・回収
貯留
有効利用 ×

「CCUS」は「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、貯留したCO2を有効利用することが目的です。

CCUSの技術を用いたCO2の活用法に、CO2を燃料やプラスチックに作りかえたり、CO2をそのまま使ったりする方法があります。

CO2をそのまま利用する方法では、CO2を油田に注入して石油を増産する「EOR(石油増進回収)」があり、実用化もされています。

「CCS」はCO2を地下に貯留するための技術を指し、その貯留したCO2を有効利用するための技術が「CCUS」という訳です。

国際エネルギー機関によると、CCUSは2070年までの累計CO2削減量の15%を占める計算です。

また日本では、2020年12月に発表されたグリーン成長戦略にて、電子部門で排出しているCO2の30〜40%削減をCCUS(CCS含む)で達成するとしています。

今後、重要な役目を担う技術として期待が高まっています。

なぜCCS・CCUSが注目を集めているのか

国際的な気候変動への取り組みは、1994年3月に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が発行され、温室効果ガスの濃度の安定化を目的としたことから始まっています。

1997年12月には京都議定書が採択(発効は2005年2月)され、温室効果ガス排出量の削減義務が課されました。

京都議定書の欠点は、CO2の削減義務が先進国のみに限定されていたこと、アメリカが脱退して、急激に経済成長を遂げた中国やインドに削減義務がなかったことです。

そのため、それらの大国や発展途上国にもCO2排出量について何らかの対策を設けるべきではないかという声が高まっていきました。

その教訓を活かしたのが2016年に発効された「パリ協定」です。

また、国内では2020年に菅総理が「温室効果ガスゼロ宣言」を表明し、話題になりました。

【2016年】脱炭素社会に向けパリ協定が発行

パリ協定は、2015年に開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択された温室効果ガス削減に向けての国際的な取り組みです。

京都議定書では日欧を中心として先進国が対象となっていましたが、パリ協定では先進国・発展途上国にかかわらず全ての締約国が対象となりました。

パリ協定の最大目標は、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃に抑える」というものです。

パリ協定の目標を達成するには、環境技術への投資と導入が不可欠となり、そこで注目されたのが「CCS」や「CCUS」でした。

【2020年】首相による日本の温室効果ガスゼロ宣言

2020年10月、菅総理は所信表明演説にて2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを発表しました。

カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と、森林などによるCO2吸収量を合わせて実質ゼロにするものです。

現在、日本だけではなく世界各国がこのような大きな難題に向けて取り組んでいますが、業界によっては二酸化炭素の排出量を削減しきれないことが問題になっています。

そんな中、カーボンニュートラルの切り札として期待されているのがこの「CCS」と「CCUS」というわけです。

CCSが環境に与える影響・メリット

ここでは、CCSが環境に与えるメリットを3つ紹介します。

  • 大気中に放出するCO2を大幅に削減できる
  • 大気中のCO2を回収できるため温室効果の緩和が見込まれる
  • 再生可能エネルギーの普及に繋がる

大気中に放出するCO2を大幅に削減できる

CCSはCO2を大幅に削減できる技術として期待されています。

CCSは、発電所や工場から排出されるCO2を回収して地中に貯留できるため、大気中への放出を防ぐことが可能です。

環境省によると、出力80万kWの火力発電所にCCS技術を導入すると、年間340万トンのCO2が大気に放出されるのを防ぐことができます

また、CCSは火力発電、製鉄工場、セメント生産、ゴミ焼却など多くの分野に導入可能であり、CO2削減に大きく貢献できるとされています。

大気中のCO2を回収できるため温室効果の緩和が見込まれる

また、大気中のCO2を回収する技術「DAC」の開発も進んでいます。

DACは「Direct Air Capture」の略で、日本語に訳すると「直接空気回収技術」です。

CCSは高濃度のCO2を回収しますが、DACは空気中の低濃度のCO2を分離・回収します。

また回収されたCO2は、DACもカーボンリサイクルの関連技術として、回収したCO2を化学品や燃料、鉱物などに活用します。

DACは、2050年までに大気へのCO2排出量をマイナスにする「ネガティブミッション」の実現にも期待されているのです。

しかしDACにはコスト削減や、生産性、技術面での課題があります。

DACの技術には水素を必要としますが、水素の価格が高いためコスト削減が必要とされているのです。

2030年のパイロット試験、2050年の社会実装と実用化に向けた取組みと、世界各国による技術開発が進んでいます。

再生可能エネルギーの普及に繋がる

またCCUSは、再生可能エネルギーの普及に繋がるメリットがあります。

太陽光発電風力発電は、気候などにより発電が不安定な傾向にあるため、余剰の電力を燃料に変えて貯蔵できる仕組みが検討されています。

変換する燃料の候補に水素エネルギーがありますが、水素は貯蔵のためのインフラ整備が不十分なため、現状では難しいところです。

そこでCCUSで回収したCO2をメタンに変換して貯蔵するという方法が浮かび上がります。

メタンなら既存のインフラで利用可能なため、実現させやすいためです。

メタンを製造することで、余剰電力を貯蔵して利用できるため、再生可能エネルギーの普及に繋がるというわけです。

CCSの注意点・デメリット

ここでは、CCSの注意点とデメリットを2つ解説します。

運用コストが高額

CCSの課題として運用コストが高額なことが挙げられます。

CCSのコストには以下のものがあります。

  • CO2を分離・回収する設備と運転のコスト
  • 回収したCO2を輸送するコスト
  • 貯留したCO2を調査するコスト

現在、CO2を1トン回収すると約4,000円がかかり、高コストといえます。

これを2030年には1,000円から2,000円台にするというコスト削減目標に向けて技術開発が行われています。

日本では法整備が進んでいない

また、日本ではCCSの普及に向けての法整備が必要です。

資源エネルギー庁が設置した「CCS長期ロードマップ検討会」では、2050年時点で1.2〜2.4億トンのCO2貯留を目指し、2030年以降のCCS事業の展開を目標にしています。

CCSの事業化に向けては法整備が必須であり、「CCS事業法(仮称)」の検討が行われてきました。

まず、CCS事業に対する法律の適用が明確でなく、事業者が守るべきルールや責任が不明確であったため、地域住民への説明が不十分でした。

そのため、CCS事業に沿った新しい法律「CCS事業法(仮称)」が強く求められています。

日本でのCCS実証実験

1996年にノルウェーで大規模なCCSプロジェクトが始まり、世界各国で様々な実証が行われました。

日本でも2012年から苫小牧で国内初の大規模な実証試験事業が始まりました。

事業目的は、製油所の排出ガスを地中に貯留する技術の実証と、CO2の動きを予測するシュミュレーション技術やモニタリング技術などの実証です。

2016年4月から年間10万トン・累計30万トンのCO2を地中に圧入することを目標に掲げ、2019年11月には累計圧入量30万トンを達成しました。

今後の苫小牧での取組みは、圧入したCO2の移動や広がりを引き続きモニタリングすることや、苫小牧のCCS実証の拠点化推進を予定しています。

またパリ協定に基づいて、これまでに蓄えた貯留技術の海外展開も視野に入れているとのことです。

CCSに関するよくある質問

CCS・CCUSについて、気になる点についてまとめました。

CCSは何のために必要?

地球温暖化抑制のために必要です。CO2は地球温暖化の一因と考えられており、排出量の削減が進められています。

CCSを活用し、火力発電所や工場から排出されるCO2を適切に除去できれば、これまでやむなく排出されていたCO2を大幅に削減できます。

CCSとCCUの違いは?

CCSがCO2の回収・貯留を指します。CCUは、除去したCO2を有効活用する取り組みです。

CCUの技術が実用化されれば、CO2の循環利用が可能になります。邪魔者扱いされていたCO2を、資源として使うことができるようになれば、カーボンニュートラルの実現もより一層近づくでしょう。

CO2を地下に埋める方法とは?

日本の苫小牧で行われている実証実験では、海底地下1,000mより深い砂岩層や火山岩層にCO2を圧入しています。

2019年に30万トンの圧入を達成し、現在はモニタリングのみ実施。地中や海中にCO2が漏れ出すなどの問題は起きていないということです。

アメリカでは、油田にCO2を圧入することで、原油の生産量を増加すると同時にCO2を地下に閉じ込めるという方法も使われてます。

CCSでCO2はどのような状態になる?

CCSでは、CO2に高い温度・圧力をかけて、超臨界という液体と期待の両方の性質を持つ状態にします。

超臨界になると、気体から体積が約250分の1と小さくなり、効率よく貯留することができます。

CCSの実用化はいつ?

日本政府は、CCSの2030年の実用化を目指しています。

2050年のカーボンニュートラル達成のためには、CCS実用化が不可欠です。2030年の事業開始を見越して、CO2を貯留する区域の指定や、CCS事業者の許可などの法整備が進められています。

参考:経済産業省 CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ

 

まとめ

CCSは発電所や工場などから排出されたCO2を地中に貯留させる技術で、大気中に放出するCO2を大幅に削減できます。

CCSは、2050年の「温室効果ガス・実質ゼロ」を目標とするカーボンニュートラルの達成に向けて、欠かせない技術です。

CCUSは、CCSで地中に貯留したCO2を有効活用するための技術で、CCSと共に今後大きな役目を担うことが予想されています。

CCSやCCUSは脱炭素社会に向けて重要な技術です。

2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、CO2削減に取り組んでいきましょう。

 

参考:

環境省|2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要
資源エネルギー庁|結果概要 【2020年年度分】
資源エネルギー庁|Q.地中に埋めたCO2は、地上に漏れてこないのでしょうか?
資源エネルギー庁|CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)
環境省|CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み
経済産業省

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