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原子力発電の仕組み・燃料は?メリット・デメリットや日本での稼働状況を解説

原子力発電は、日本の電力発電を支える重要な発電方法です。

多くのメリットが存在する中、まだまだ問題点が多いのも事実です。

原子力発電を理解する上で、メリットやデメリットを知るのはもちろん、実際の稼働状況についても理解しておくことが大切になります。

原子力発電とは

原子力発電の仕組みと、火力発電との違いについて解説します。

原子力発電の仕組み

原子力発電の仕組みについて、以下3点から解説します。

  • 燃料は「ウラン」
  • 日本で使われている原子炉は「軽水炉」
  • 原子力発電所の運転年限は「原則40年」

燃料は「ウラン」

出典:日本原燃

ウランは、石油・天然ガスに見られるような中東などの特定地域への偏りがなく、世界の各地に分布しています。

日本では、長期に渡ってウランを安定して確保できるように、供給国の多様化を図ることだけでなく、それぞれの供給国と長期の契約を結んでいます。

また、ウランはエネルギーの密度が高く、同量の電気を生むために必要な燃料が、石炭や石油、天然ガスなどと比較し非常に少ない量で済みます

そのため、輸送や貯蔵が便利なのも特徴です。

2022年3月末の日本では、国家備蓄と民間備蓄などにより236日分の石油の備蓄があります。

また、天然ガスは備蓄の保持が難しいため、供給が止まらないようにする注意が必要です。これに対して、原子力発電所では、ウラン燃料を一旦原子炉の中に入れると、1年間以上は燃料を取り出さずに発電できるため、その期間は燃料を備蓄している状態と同じような効果があります。

このように原子力発電は、燃料の投入量に対してエネルギー出力が非常に大きく、数年に渡り国内で保有している燃料だけで電力生産の維持が可能です。

日本で使われている原子炉は「軽水炉」

核分裂で生じた熱によって水から蒸気を発生させ、その力でタービンを回して発電する一般的な仕組みの原子炉を軽水炉といいます。
軽水炉は普通の水が減速材と冷却材に使われているのが特徴で、燃料は濃縮ウランを使っています。

軽水炉は世界の原子力発電の主流であり、現在、日本で稼働している商業用の原子力発電所は、全て軽水炉で蒸気を発生させる仕組みの違いにより、沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)の2種類に分けられています。

原子力発電所の運転年限は「原則40年」

これまでは、原子力発電所の運転期間を定める法律は存在していませんでした。

しかし、福島第一原子力発電所の事故が起きて以降、法律が改正され、原子力発電所の運転可能期間が運転を開始してから40年と定められ、その満了で認可を受けた場合は、1回に限り最大で20年延長できる仕組みとなりました。

この延長運転を「運転期間延長認可制度」と呼びます。

運転期間を延長するためには、新規制基準に適合するのに必要な許認可だけでなく、特別点検の実施や、それらの結果などを含めた高経年化技術評価などにより長期間の運転に問題がないことを確認し、国から認可される必要があります。

火力発電と原子力発電の違い

火力発電の仕組みは、ボイラーの中で石炭、石油、天然ガスといった化石燃料を燃焼させて、発生した熱エネルギーを使って蒸気を生み、その力でタービン発電機を回して発電します。

一方の原子力発電では、原子炉の中でウランなどを核分裂反応させ、そこから発生した熱エネルギーを使って蒸気を生み発電する仕組みです。

原子力発電は厳密に言うと再生可能エネルギーではない

原子力発電は発電時に二酸化炭素を排出せず、燃料の再利用が可能ですが、再生可能エネルギーには分類されていません。

その理由の1つとして、廃棄物の処分地が決まっていないことや、災害時の放射性物質漏洩といった、安全性の問題があります。

EU諸国などでは、脱炭素社会の実現に向けて、原子力をクリーンエネルギーとみなして活用する動きがでてきています。安全な運用を最優先とすると同時に、今後の潮流を見極める必要があるでしょう。

原子力発電は発電コストが低く環境にも優しい!メリットを解説

原子力発電のメリットは、以下4つです。

メリット①資源が安定して輸入できる

前述しましたが、原子力発電はウランを燃料に発電しています。

ウラン鉱山から採掘したウラン鉱石が、様々な過程でウラン燃料になります。

ウラン鉱石は、オーストラリアやカナダなど世界の各地で比較的政情が安定している国に点在する資源のため、確保しやすい資源です。

また、使用後の燃料を処理すれば再利用できます。

日本はエネルギー資源が乏しい国ですが、ウランを再利用する場合、準国産の燃料として活用できます

メリット②発電にかかるコストが低い

原子力や火力(石油・石炭・天然ガス)、水力の各電源において、運転する期間などの条件を合わせて発電にかかるコストを試算した際、原子力発電は他の電源と比較してコストが低いです。

また、コストに占める燃料費の割合も火力発電と比較して小さいため、燃料費が変わった場合でもコストに与える影響が小さく安定しています。

国の試算による発電のコストは、太陽光発電が1kWhで約30円、石油を使用した火力発電が約30円以上と高めです。

天然ガスを使用した火力発電は13.7円程度であり、石炭を使用した火力発電は12.3円程度と言われています。

原子力の発電にかかるコストは、10.1円程度と、火力など他の発電方法と比べても変わりない水準です。

また、原子力発電は化石燃料と比較して、発電コストを占めている燃料費の割合が小さいので、燃料の価格変動による影響を受けにくいのが特徴です。

メリット③少ない燃料で大きな発電量を得られる

原子力発電は少量の燃料で大きな発電量を得られる発電方法です。

100万kw発電したい場合は濃縮ウランが21トン、天然ガスであれば95万トン、石油は155万トン、石炭は235万トン必要になります。

つまり、濃縮ウランは他の燃料に比べ非常に少ない量で済み、保管場所なども狭くて済むため効率的です。

メリット④再生可能エネルギーと同じくCO₂を排出しない

原子力発電は、再生可能エネルギーと同様に発電の際に二酸化炭素などの温室効果ガスが排出されません

発電所の建設や運用により生じる排出量を比べても、排出される量は19g-co2/kWhと、LNG火力発電の474g-co2/kWhや風力発電(陸上)の26g-co2/kWhと比べて少ない排出量です。

日本を始め、世界の複数の国で原子力発電が、温室効果ガスを削減するための対策として注目されています。

日本で原子力発電の依存度が高い関西電力は、CO2の排出係数値が0.318kg-CO2/kWhと、原発を再稼働できていない東京電力エナジーパートナーの0.441または中部電力ミライズ0.424と比べて、CO2の排出量が少なく抑えられています。

原子力は本当に安全?問題点とデメリットは?

原子力発電の問題点やデメリットは、以下2つです。

問題・デメリット①最終処分地が決まっていない

原子力発電の厄介な問題点は、発電後に残った放射性廃棄物の取り扱いです。

使用した燃料は、再び利用できるウランやプルトニウムを取り出すことにより、95%は燃料として再利用可能ですが、残った5%は廃液になります。

この廃液をガラス原料と溶かし、ステンレス製の容器に移して冷やし固めたものが「高レベル放射性廃棄物」です。

この廃棄物を厚さが20cmある金属の容器(オーバーパック)に入れて保管します。 

50年経過したタイミングで、オーバーパック表面で2.7mSv/h、1m離れた場所で0.37mSv/h、という放射線の量を発します。

胸部X線検診での一回に被曝する量は0.06mSvのため、これほど外側を覆った状態で50年経過しても、1m先の位置で、10分間胸部X線レベルの被爆をするということです。

そのため、これを放射線量が小さくなるまで、さらに長期間安定した場所で保管し続けることになります。

その最終処分の方法は、地下処分の方向でさまざまな国で進められ、現在日本でも法律を制定し、これを推奨していますが、現在も最終処分場を選定している段階です。

このように、高いレベルの放射性廃棄物が、人の一生よりも長い期間に渡り保管する必要があり、その処分場の選定もなかなか定まらないことが原子力発電のデメリットです。

問題・デメリット②事故発生時の被害が大きい

原子力発電は、放射線事故の危険性が常に存在し、万が一の場合のリスクが大きいのもデメリットです。

ウランが核分裂を起こすと、放射性の核分裂生成物が発生します。

原子力発電所で事故が発生した場合、放射性セシウムや放射性ヨウ素などの放射性物質が外部に漏れてしまい、人体や環境に大きな影響を与える可能性が高いです。

人体が直接放射線を浴びてしまうことを「外部被ばく」と呼びます。

放射線はDNAや細胞を損傷してしまうため、人によっては白血球が減ったり、がんになったりするリスクが増加してしまいます。

飲料水や土壌が汚染されてしまえば、飲食物を通じて「内部被ばく」をする人が増加するでしょう。

福島第一原発事故から分かる様に、放射線に汚染された地域を除染する作業は容易ではありません。

日本にある原子力発電所の稼働状況

日本にある原子力発電所の稼働状況は、以下表の通りです。

発電所 運転状況
北海道電力株式会社
泊発電所
1号機:停止中(定期検査中)
2号機:停止中(定期検査中)
3号機:停止中(定期検査中)
東北電力株式会社
東通原子力発電所
1号機:停止中(定期検査中)
東北電力株式会社
女川原子力発電所
1号機:廃止措置中
2号機:停止中(定期検査中)
3号機:停止中(定期検査中)
東京電力ホールディングス株式会社
柏崎刈羽原子力発電所
1号機:停止中(定期検査中)
2号機:停止中(定期検査中)
3号機:停止中(定期検査中)
4号機:停止中(定期検査中)
5号機:停止中(定期検査中)
6号機:停止中(定期検査中)
7号機:停止中(定期検査中)
東京電力ホールディングス株式会社
福島第一原子力発電所
1号機:廃止
2号機:廃止
3号機:廃止
4号機:廃止
5号機:廃止
6号機:廃止
東京電力ホールディングス株式会社
福島第二原子力発電所
1号機:廃止措置中
2号機:廃止措置中
3号機:廃止措置中
4号機:廃止措置中
日本原子力発電株式会社
東海第二発電所
停止中(定期検査中)
日本原子力発電株式会社
東海発電所
廃止措置中
中部電力株式会社
浜岡原子力発電所
1号機:廃止措置中
2号機:廃止措置中
3号機:停止中(定期検査中)
4号機:停止中(定期検査中)
5号機:停止中(定期検査中)
北陸電力株式会社
志賀原子力発電所
1号機:停止中(定期検査中)
2号機:停止中(定期検査中)
日本原子力発電株式会社
敦賀発電所
1号機:廃止措置中
2号機:停止中(定期検査中)
日本原子力研究開発機構
高速増殖原型炉もんじゅ
廃止措置中
日本原子力研究開発機構
新型転換炉原型炉ふげん
廃止措置中
関西電力株式会社
美浜発電所
1号機:廃止措置中
2号機:廃止措置中
3号機:運転中
関西電力株式会社
大飯発電所
1号機:廃止措置中
2号機:廃止措置中
3号機:運転中
4号機:運転中
関西電力株式会社
高浜発電所
1号機:運転中
2号機:停止中(定期検査中)
3号機:運転中
4号機:運転中
中国電力株式会社
島根原子力発電所
1号機:廃止措置中
2号機:停止中(定期検査中)
四国電力株式会社
伊方発電所
1号機:廃止措置中
2号機:廃止措置中
3号機:運転中
九州電力株式会社
玄海原子力発電所
1号機:廃止措置中
2号機:廃止措置中
3号機:運転中
4号機:運転中
九州電力株式会社
川内原子力発電所
1号機:運転中
2号機:運転中

参考:原子力発電所の現在の運転状況|原子力規制委員会

このように、日本国内には多くの原子力発電設備が存在しますが、福島第一原発事故などの影響もあり、停止中や廃止措置中の発電所も多く存在します。

2011年3月に起きた東京電力の福島第一原発事故の後から、国内の原子力発電は一時的に全て運転を停止しています。

しかし、事故後にできた原子力規制委員会による新しい規制基準ができ、九州電力川内の原子力発電1号機が新基準に従い2015年8月に再稼働しました。

その一方で、事故後の福島第一原発では、全部で6基の原発の廃炉が決まり、ロードマップに従い進められています。

日本政府の原子力発電に対する方針

政府は2022年12月にGX(グリーントランスフォーメーション)における基本方針をまとめました。

東日本大震災が発生して以来、原発の新たな増設や建て替えを想定しないようにしていた政策を転換し、原子力発電に関して、将来に渡り持続的に活用することを明記しました。

今後10年で官民で150兆円を超える金額を投じ、再生可能エネルギーの拡大、および企業の脱炭素化を進める方針です。

電力供給が不足してしまう不安の解消のため、原子力発電を再び稼働させる動きを加速させていくことも言及していますが、実際は課題も多く存在するため、実行力が問われています。

原子力発電に関するよくある質問

原子力発電について気になる点をまとめました。

現在原子力発電が日本のエネルギーに占める割合は?

環境エネルギー政策研究所によると、2022年に原子力発電が日本の電源構成に占める割合は4.8%です。太陽光や水力といった再生可能エネルギーの割合の方が大きくなっています。

出典:特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所 2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)

原子力発電が日本のエネルギーに占める割合の推移は?

これまでの推移は以下の表のようになっています。

出典:電気事業連合会 原子力発電の現状 発電設備と発電電力量

2011年の東日本大震災以前までは、ベースロード電源として日本全体の3割程度の発電量を担っていました。しかし、福島での原子力発電所事故をきっかけに、一時は全ての原子力発電所が稼働停止しました。

現在では少しずつ発電量が増えていますが、まだ以前の状態には戻っていません。

原子力発電が世界のエネルギーに占める割合は?

世界の主要な国のエネルギー発電比率は以下のグラフの通りです。

どの国も日本より高い割合を占めていることがわかります。

唯一、イタリアのみ原子力発電の発電量が0%となっています。しかし、原子力発電を行っているフランスやスイスなどから電力を輸入しており、実質的には原子力由来の電力を使用していると言えます。

原子力発電所の安全対策は?

原子力発電のネックとなっているのが、その安全性です。福島第一原子力発電所での事故を受け、安全規制が大幅に見直されています。

出典:電気事業連合会 新規制基準の基本的な考え方

新しい規制基準では、設計基準を強化するのに加え、自然災害やテロ(シビアアクシデント)などへの対策を取るよう法律で定められています。

原子力発電はカーボンニュートラル達成に役立つ?

原子力発電は発電時に二酸化炭素を排出しないため、カーボンニュートラルの実現に貢献します。

日本・アメリカ・EUなどでは、地球温暖化を抑制するために。2050年カーボンニュートラルの達成を目指しています。カーボンニュートラルとは、排出する二酸化炭素を吸収したり再利用したりすることで、実質的な二酸化炭素排出量をプラマイ0にすることです。

国際エネルギー機関(IEA)のシナリオでは、原子力が占める割合も、再生可能エネルギーと同様に増えると予測されています。

実際に、アメリカ・イギリス・フランス・中国・韓国・インド・ロシアといった国々が原子力発電所の新設や運転期間延長を計画しています。

参考:日本原子力文化財団 日本のエネルギー事情と原子力政策

まとめ

原子力発電の仕組みは、ウランなどを核分裂反応させ、発生した熱エネルギーを使い蒸気を生み発電する仕組みです。

原子力発電には、少ない燃料で大きな発電量を得られたり、再生可能エネルギーと同じくCO₂を排出しなかったりといったメリットがあります。

しかし、その一方で最終処分地が決まっていなかったり、事故発生時のリスクが大きかったりといったデメリットも存在します。

原発事故の影響もあり、日本の原子力発電所は、まだまだ再稼働に至っていない発電所も多いです。

今後の方針も含め、原発の稼働状況を理解しておきましょう。

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