太陽光パネルの廃棄・撤去にかかる費用は?積立義務化に関しても解説
- 公開日:2025.10.30
- 更新日:2025.10.30
太陽光発電設備は処分するとき、どれくらいの廃棄費用・撤去費用が発生するのかや、費用の相場について紹介します。太陽光発電投資の検討をしている方必見です。
太陽光パネルには環境にとって有害な物質が含まれているため、撤去や廃棄処分は法令で決められた手順で行う必要があります。
2022年7月にFIT制度が改正され、出力10kW以上の産業用太陽光発電設備に、廃棄費用の積立が義務化されました。積立はFIT開始から10年間で、毎月の売電収入から天引きされます。
住宅用太陽光発電設備の場合は費用積立の義務はありませんが、撤去時に備え自分で廃棄費用を用意しておく必要があります。
目次
太陽光発電設備の廃棄費用積立制度がスタート
国はFIT認定を受けた太陽光発電設備の廃棄費用積立を2022年7月より開始しています。
もともと、太陽光発電設備の廃棄処理は太陽光発電事業者が責任を持って行うと法律で定められています。FIT価格は廃棄費用も含んで、事業者が再生可能エネルギー事業で採算がとれるよう価格が決定されているのです。
そのため、事業者は売電収入の中から廃棄費用を積み立てておく必要があります。
しかし、2019年の調査では、廃棄費用の積み立てを行っている事業者は16%だけと非常に少ない状態でした。この現状を踏まえ、廃棄費用の積立制度がスタートしました。
参考:資源エネルギー庁 太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について
10kW以上の産業用太陽光発電は廃棄費用積立が義務化
廃棄費用積立制度では、国が「破棄等費用積立ガイドライン」を作成し、10kW以上の産業用太陽光設備の廃棄費用の積立が義務化されています。廃棄費用の積立金額は、FIT制度の売電収入から源泉徴収的に差し引かれます。
積立を開始する期間はFITの売電期間が終わる10年前で、終了時期はFIT売電が終了する日です。積立金額は毎月の売電収入から天引きされます。
廃棄費用の積立方法は、買取価格から積立費用を事前に差し引かれる「外部積立」が原則です。電力広域的運営推進機関が廃棄費用の積立金を管理しています。
廃棄費用の積立金の額はFIT認定された年度や設備の容量によって決まります。詳細は以下の通りです。
例えば、2020年にFIT認定された100kWの設備の場合、売電価格から廃棄費用の積立額0.66円/kWが差し引かれることになります。差し引かれた廃棄費用は外部機関に積み立てられ、廃棄費用が必要な時に払い戻しを受けられます。廃棄費用の払い戻しを受けられる条件は以下の通りです。
- ①FIT期間中に発電事業を終了
- ②FIT期間中に発電事業を縮小
- ③FIT期間終了後に発電事業を終了
- ④FIT期間終了後に発電事業を縮小
- ⑤FIT期間終了後に一部の太陽光パネルを交換
- ⑥FIT期間終了後に全てに太陽光パネルを交換
上記の条件を満たしていれば、FIT期間中でも廃棄費用の払い戻しを受けることができます。
高圧発電所は内部積立の選択も可能
50kW以上の高圧発電所は、条件を満たせば事業者自身で廃棄費用の積立を行う「内部積立」を選べます。廃棄費用の内部積立を選べる条件は以下の通りです。
- 認定における事業計画の事業者が電気事業法錠の発電事業者に該当する
- 外部積立の水準以上の廃棄費用の積立が予定されており、それを公表する
- 定期報告(年1回)で外部積立の水準額以上の廃棄費用が積み立てられており、それを公表する
- 金融機関または会計士などにより廃棄費用の確保が定期的に確認されている
もし条件をクリアできなかった場合は、廃棄費用は外部積立へ移行されます。
家庭用太陽光発電は廃棄費用積立制度の対象外
家庭用太陽光発電は、廃棄費用積立制度の対象ではありません。家庭用太陽光発電を廃棄する際には産業廃棄物となり、廃棄業者に引き取ってもらう必要があります。
住宅のリフォームをする場合やパネルが故障した場合、地震や台風などの被害を受けた場合に処分するケースがあります。リフォームのケースでは解体業者や撤去業者に、設置したパネルが破損や故障したケースではメーカーや販売店に処分・修理を依頼しましょう。
太陽光設備の廃棄・撤去に必要な費用

太陽光パネルの廃棄・撤去にかかる費用について解説します。
| 設備 | 撤去費用 | |
| 住宅用 (10kW未満) |
10~15万円/件 | |
| 産業用 (10kW以上) |
コンクリート基礎 | 1.37万円/kW |
| スクリュー基礎 | 1.06万円/kW | |
| 基礎を撤去しない | 0.59万円/kW | |
参考:資源エネルギー庁
太陽光パネル1枚あたりの撤去費用
太陽光パネルを撤去する場合、屋根や架台から解体する費用、産業廃棄物処理業者までの運搬費用、最終的な処分費用がかかります。1枚当たりの費用は以下の通りです。
- 解体費用:約1万円~2万円/枚
- 運搬費用:約500円~1,000円/枚
- 処分費用:約2,000円~5,000円/枚
産業用・投資用太陽光発電の廃棄費用
産業用の撤去費用は、1.06~1.37万円/kWです。例えば50kwの場合は、資材の撤去だけで78万円ほどの廃棄費用がかかる計算になります。
ただし、土地を更地にする場合には、コンクリート基礎やスクリュー基礎などの場合はこうした基礎を撤去するのにもお金がかかるため、1kWあたり2万円を超える場合も珍しくありません。
家庭用太陽光発電の廃棄費用
家庭用で1kWの場合2万円程度の費用がかかります。5kW程度の住宅用であれば、撤去費用は10万円から15万円程度が相場です。
住宅用太陽光発電の場合、屋根の架台の撤去費用や、足場費用がかかるため、産業用太陽光に比べ1kWあたりの費用は割高になっています。
太陽光パネルは産業廃棄物に分類される

太陽光パネルは有害物質を含んでいるため、産業廃棄物に分類されます。そのため、一般のゴミとして処理できません。
太陽光パネルは廃棄(埋立処分)以外にも、リサイクルや売却によって処理する方法があります。
太陽光パネルの架台のレールやスチールガラスなどは資源としてリサイクル可能です。その他の資源は、廃棄物として埋立処理されます。
また、太陽光パネルを売却してリユースすることも可能です。太陽光パネルの新品や中古、だけでなくケーブルやパワーコンディショナーなどの部品を買い取ってくれる業者もあります。
太陽光発電パネルの廃棄・撤去は必ず業者に依頼

太陽光パネルの処分は、廃棄物処理法における産業廃棄物処理に則り、産業廃棄物収集運搬業者や産業廃棄物処分業者に依頼しなければなりません。理由は以下の通りです。
- 屋根上のパネル撤去作業は高所作業となり危険
- 故障したパネルは感電の恐れがある
- 有害物質が流出する可能性がある
- リサイクルを推進する必要がある
太陽光パネルの撤去作業には危険が伴います。特に、住宅用太陽光発電設備の場合屋根上に設置されていることが多く、高所作業になります。パネルが故障していた場合、感電の恐れもありさらに危険です。
また、太陽光パネルには有害物質が含まれるものもあるため、適切に処理をしなければ環境汚染の原因となってしまいます。
専門業者であれば適切な処理ができ、パネルの再利用や材料のリサイクルを行い、環境負荷を抑えることができます。
業者を選定する場合には、環境省や地方自治体が認定されている業者を選ぶようにしてください。複数の業者に見積もりを依頼し、費用やリサイクルの割合を比較して選ぶことも重要です。
最後には、処分証明書やリサイクル証明書を発行してもらうことを忘れないようにしましょう。
卒FITを迎える太陽光発電所増加における2つの廃棄問題
FIT期間が終わった産業用太陽光発電が2032年以降にでてきます。
そうすると太陽光発電をそのまま運用するのではなく、設備の廃棄を検討する人も出てくると予想できますが、それと同時に問題になりそうなのが太陽光発電所の不法投棄や太陽光パネルのリサイクル問題です。
ここでは考えられる卒FIT後の太陽光発電の廃棄問題について取り上げます。
①放置・不法投棄
太陽光発電購入時に廃棄費用を含めたシミュレーションを実施しておらず、廃棄費用がどのくらいかかるかを知らない所有者もいるようです。
運用期間中に廃棄費用を積み立てしていないと、太陽光発電所を撤去することが決まってから費用を準備しなければならなくなります。
そうなってしまうと、廃棄費用が準備できず発電所を放置したり、正しい方法で破棄できず不法投棄されてしまうかもしれません。
前述しましたが、廃棄コストはFIT価格の中に含まれているものです。
太陽光発電所の所有者としての管理責任を果たすため、忘れずに積み立てし、事前に準備しておきましょう。
②有害物質が流出する可能性がある
破損した太陽光パネルから雨などで鉛などの有害物質が流出するなどの危険があります。
通常の使用では安全で、問題はありません。しかし、大きく破損したパネルを埋め立てて放置するなどの不適切な処理では、雨水などにより流出するという可能性があります。
太陽光パネルの種類や製造年度によっては、日本四大公害病のひとつである「イタイイタイ病」を引き起こしたカドミウムが含まれているものもあります。
※日本製のパネルにはカドミウムは含まれていません
太陽光パネルを廃棄する前に考えるべきこと
太陽光パネルを破棄する前に考えておいたほうがいいことを3つ紹介します。
太陽光パネルなど資材を売却できるか検討する
太陽光発電システムを撤去する前に、パネルや架台などの資材を買取業者へ売却できる可能性を確認しましょう。
近年は、リユース・リサイクルの需要が高まっており、状態が良いパネルであれば再利用や部品取り目的で買い取ってもらえるケースがあります。
撤去・廃棄を依頼すると処分費や運搬費がかかりますが、買取を活用すればそれらのコストを抑えられることもあります。
また、売却前には安全な取り外しや動作確認が重要です。定期的なメンテナンスを行っていれば、パネルや架台の状態が良く、査定価格が高くなる可能性もあります。
費用面・環境面の両方から、撤去前に一度買取業者への相談を検討しましょう。
自家消費型太陽光発電に切り替える
FIT制度(固定価格買取制度)の満了後は、売電による収益を得にくくなるため、産業用では自家消費型への切り替えが有効です。
自家消費型は原則として発電所と電力を使う場所が同一敷地内や至近にあることが前提で、離れた拠点で使う場合は自己託送などのスキームが必要になり、系統使用料や手続きが増える点に留意しましょう。
自家消費型とは、発電した電力を自社の工場や店舗、オフィスなどで直接使用する仕組みのことです。電力会社からの購入電力量を削減でき、電気料金や燃料費の高騰リスクを抑えられます。
また、発電した電気を事業活動に使うことで、再エネ利用によるCO₂削減にもつながり、環境への配慮を示す取り組みとして企業価値向上にも寄与します。
近年、太陽光発電を蓄電池とセットで使用する方法もトレンドになっています。10kW以上の家庭用蓄電池を導入すると、電気自動車の充電が自宅でできたり、非常用電源として夜でも電気を使用できるといったメリットがあります。
万が一停電になったときでも、大容量の蓄電池を保有していれば、普段通りに近い生活ができるでしょう。大家族であれば、大容量の家庭用蓄電池を導入すると非常時でも安心です。
中古太陽光発電設備として売却する
太陽光パネルを廃棄するのではなく、中古太陽光発電所として買取業者や仲介業者に売却する方法もあります。
中古太陽光発電所は、発電実績や物件の所在地によって価格が決まります。
近年では稼働済み太陽光発電の需要が高まっており、比較的早期に買い手がつきやすいです。なお、設備投資がかかる点には注意しましょう。
詳しくは以下の記事で紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:太陽光発電で自家消費するには?売電からの切り替え方法やメリット・デメリットを解説
売電を継続する
FIT(固定価格買取制度)満了後でも、設備を残して大手電力会社や新電力へ余剰電力を売り続けられる可能性があります。
多くの事業者が卒FIT向けの買取メニューを用意しており、受給契約の切り替えだけで運用を継続できるケースが一般的です。
ただし、買取単価はFIT期間中より下がる傾向にあり、市場価格に連動するプランや、契約期間・解約手数料などの条件が異なります。
自家消費の割合や設備のメンテナンス状況も踏まえ、複数社の条件を比較して最適な売電先を選びましょう。撤去費用をかけずに一定の収益を確保できる点も検討価値があります。
関連記事:太陽光発電投資20年後の出口戦略はどうする?10年後、FIT終了後の対策も解説
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太陽光パネルの廃棄に関するFAQ
太陽光発電設備の廃棄について考えるとき、気になる点についてまとめました。
太陽光パネルの廃棄はどうすればいい?
太陽光パネルは、産業廃棄物として処分します。リサイクルや産業廃棄物処分の専門業者に連絡をしてください。業者によって処分費用が異なる場合があるため、数社に見積もりを取ると相場が分かり安心です。
また、太陽光パネルがまだ新しい場合には、買取業者に買取を依頼することもできます。こちらも複数業者に見積もりを依頼することで、より高値で売却できるでしょう。
太陽光パネルの廃棄の現状は?
環境省の取ったアンケートによると、2021年度の使用済み太陽光パネルの排出量は2,257トンでした。
そのうち8.4%の190トンはリユースされ、68.3%の2,067トンはリサイクル、23.3%の526トンは焼却処理されています。最終的に処分されたのは277トンで、回収量の3.0%となっています。
参考:環境省 再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について
太陽光パネルの廃棄量は将来どうなる?
太陽光パネルの廃棄量は増加すると見られています。
環境省によると、FIT認定設備が固定買取期間を終了していくため、2030年代後半以降、年間50~80万トンの使用済み太陽光パネルが排出されると想定されています。
2035~37年には太陽光パネルの排出量がピークを迎え、年間約17~29万tが排出される見込みです。
参考∶環境省 再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について
太陽光パネルの寿命がきたらどうなる?廃棄しなければならない?
太陽光パネルの寿命が過ぎても、廃棄しなければならないわけではありません。
太陽光パネルの法定耐用年数は17年ですが、寿命は20~30年と言われています。
寿命と言われる年数が経ってもすぐに発電できなくなるわけではなく、徐々に発電量が落ちていきます。
つまり、新設時よりは発電量は減りますが、売電を続けることができるでしょう。
ただし、パネル表面が汚れ、パネル内部の配線やパワコンの劣化も進むため、適切なメンテナンスや機器交換が必要です。
太陽光パネルを廃棄すると環境が汚染される?
太陽光パネルには鉛やカドミウムなどの有毒物質が含まれる場合があります。
産業廃棄物として業者によって正しく処分されたり、リサイクルされたりした場合、環境を汚染することはありません。
しかし、破損した太陽光パネルが長期間不法投棄された場合、有毒物質が流れだして土壌や水が汚染される可能性はあります。
環境に優しい太陽光発電が、最終的に環境破壊の原因となってしまうと本末転倒です。発電事業者は、責任をもって太陽光パネルを廃棄するようにしてください。
まとめ
産業用太陽光発電の撤去費用について解説してきました。
撤去にはまとまったお金がかかるのでしっかりと積み立てて、出口戦略まで考えて投資をすると良いでしょう。
投資では利益を出しているのに撤去費用で貧乏になってしまったら元も子もありません。
会社で言えば黒字倒産のような事態に陥ってしまう可能性もあるので、準備を欠かさずにしておくようにしましょう。
この記事を書いた人
ikebukuro



