20年後太陽光投資の出口戦略はどうなる?FIT終了後の投資プランはあるのか
- 公開日:2025.02.07
- 更新日:2025.02.10

太陽光発電投資は、太陽光発電は国が定めた固定価格買取制度(FIT制度)のもと運用できるため、比較的安定した投資方法です。
二酸化炭素の排出量が削減でき、カーボンニュートラル達成に貢献できるということもあり、普及が進んでいます。
しかし、産業用太陽光発電の固定価格買取期間(FIT期間)は20年間ですので、その期間を終えた後まで考慮して投資計画を建てる必要があります。
この記事では、太陽光発電投資の出口戦略の具体的な対策について、投資プランをご提案していきます。
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目次
太陽光発電はFIT制度が終了した20年後どうなる?
国が定めた固定価格買取制度(FIT制度)が終了した20年後は、太陽光発電はどうなるのか、気になる方も多いのではないでしょうか?
下記の画像は、固定価格買取制度(FIT制度)の仕組みを表したものです。
出典:資源エネルギー庁
10kWより容量が多い産業用の太陽光発電システムの場合は、固定価格買取制度(FIT)の適用期間が20年と定められています。
FItが終了した20年後、買取期間が終了した後は電力会社に売電する義務がなくなります。しかし、所有者は設備が発電可能な場合は、引き続き電力を売りたいと考えている場合が多いです。
FIT制度が終了した後でも契約が自動で継続される場合は、新しい単価で買取が続きます。
自動契約を行わない場合は、発電者は新たに売電契約を締結できるのが特徴です。新しく契約する場合は、買取価格は以前の契約よりも低くなってしまう可能性が高いです。
太陽光パネルの寿命は30年以上
太陽光パネルの寿命は、20〜30年と言われています。劣化によって徐々に発電量が落ちてくるのが特徴です。ですが、太陽光パネルのメンテナンスが良ければ、30年以上であっても発電は可能。
また、FIT期間中は地域の大手電力会社(東京電力など)に買取義務がありますが、FIT終了後は買取義務がなくなります。
太陽光パネルに寿命がきてしまうと、故障による発電停止や発電効率低下による売電収入や自家消費量の減少といった事象につながります。
太陽光の売電価格が一桁代に下がる
太陽光発電は、FIT期間終了により値段が下がる傾向にあります。
以下の表は、住宅用太陽光発電が固定価格買取制度終了後に、引き続き大手電力会社に売電する場合の売電価格です。(2024年7月現在)
電力会社 | 卒FIT後売電価格(税込) |
北海道電力 | 8円/kWh |
東北電力 | 9円/kWh |
東京電力 | 8.5円/kWh |
中部電力 | 7円/kWh |
北陸電力 | 8円/kWh |
関西電力 | 8円/kWh |
中国電力 | 7.15円/kWh |
四国電力 | 7円/kWh |
九州電力 | 7円/kWh |
沖縄電力 | 7.7円/kWh |
太陽光発電の推進は国策として推し進められているので、電力会社への売電という制度はなくならない可能性が非常に高いです。
2024年の住宅用太陽光発電のFIT価格が16円であることを考えると、かなり価格が下がっていると言えます。
産業用太陽光発電の場合でも、この7円という価格が売電の底値となることが予想されます。
7円という売電価格で利益が出るかどうかという問題ですが、現在すでに太陽光発電を始めている方は20年後の固定価格買取制度(FIT)が終了した時点で減価償却も終わっているため、利益が全く出ないという状況にはならないと考えられます。
太陽光発電の需要は高まる予想
太陽光発電の需要は今後、高まると予想されます。理由としては、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて国が促進しているからです。
環境省は、2050年カーボンニュートラルや2030年度の温室効果ガス削減目標の実現、そして地域脱炭素を通じた地方創生の実現に向けて、地域資源である再エネの最大限の導入拡大が重要であると考えています。
具体的な取り組みとしては、下記のようなことが挙げられます。
- 公共施設での太陽光発電導入
- 地域共生型再エネの導入
- 民間企業による自家消費型太陽光の導入
- 風力発電促進のための環境アセスの最適化など
- 太陽光パネル等の廃棄・リサイクルなど
参考:環境省
太陽光発電を設置してから20年後の対策
太陽光発電を設置してから20年後に考えられる手段を3つ紹介します。
①大手電力会社と引き続き契約し売電を続ける
太陽光発電を設置してから20年後に考えられる手段として、これまでと同じように電力会社と引き続き契約し、売電する方法が挙げられます。
固定買取期間が10年間の住宅用太陽光発電設備の中には、2021年時点でFIT制度終了となった設備もあります。
このような設備に関しては、電力会社は引き続き電力売電契約を結べるよう、プランを作成したり、提供したりしています。20年以降も継続した売電契約したいと考えている場合は、定期的に電力会社の対応方針を調べておく必要があります。
メリット
- 新たなプランを電力会社が用意していることがある
- 電力会社の対応方針の理解が深まる
FIT制度終了になった場合、電力会社は新たなプランを用意している場合が多いです。また、太陽光発電設置から20年以降も売電を継続したいと考えている場合は、定期的に電力会社の対応方針について情報を収集しておくことが重要です。
デメリット
- 市場価格に連動し売電価格は下がる傾向がある
- 売電金額とメンテナンス費用、その他の経費とのバランスを慎重に検討する必要がある
20年以降も売電を継続したいと考えている場合は、市場価格に連動し売電価格は下がる傾向を認識をしておく必要があります。また、売電金額とメンテナンス費用、その他の経費とのバランスを慎重に検討することも忘れないようにしてください。
②新電力と契約しなおし売電を続ける
新電力と呼ばれる電力自由化にともない新規参入した電力会社に大手電力会社から変更して売電するといった方法もあります。買取期間の終わった住宅用太陽光発電の電力を買い取っている新電力もあるため、新たなプランが作成されている場合も多いです。
新電力の各サービスを調べながら、今後の行方を見守ることが大切です。
メリット
- 自分にあった電力会社を自由に選べる
- 電力会社のなかには10円以上や、条件によっては20円以上で買い取ってくれるところもある
デメリット
- 蓄電池を設置する場合、維持費がかかる
- 最適な条件を選ばないと損をする場合もある
③自家消費型へ切り替える
これまで行っていた売電をやめ、自家消費型へ切り替えるといった方法もあります。
自家消費型太陽光発電は、逆潮流という売電の回路を遮断して発電した電気を全て自家消費していく設備を行うことを指します。自家消費型太陽光発電のメリットは下記の通りです。
- 発電した電気をすべて自社の設備に常時補給できる
- 基本料金の抑制やBCP対策につながる
BCP対策とは、有事の際に事業活動の速やかな回復や継続を行うための対策のことです。
メリット
- 夜間も太陽光の電気を使用することができる
- 電気代の大幅な削減が可能
太陽光に蓄電池を併設できれば、夜間も太陽光の電気を使用することができます。また、太陽光を工場や倉庫、店舗などで自家消費できる場合は、電気代の大幅な削減が可能です。
デメリット
- 売電価格は市場価格と連動するため、価格は下がる
- 買電価格は物価高騰のため、価格が高くなる
買取期間が終了すると、売電価格は市場価格と連動するので、価格は下がる傾向にあります。また買取価格は物価高騰のため、価格が高くなる傾向があります。
④太陽光発電整備を撤去する
固定価格買取制度(FIT)適用期間が終了した時点で、太陽光発電システムの設備を撤去し、土地を更地にして売ったり貸したりすることで利益を出すことができます。
撤去するためには太陽光パネルの破棄費用がかかり、その費用は太陽光パネル1枚当たり1,000円程度となります。さらに撤去に必要な工事費は10kWで50万円程度、20kWで100万円程度となっています。
これだけの費用をかけて更地にするのですが、太陽光発電システムを設置する土地の多くは都心部を避けた比較的土地の価格が安い場所であるため、太陽光発電設備を撤去して土地を売ったり貸したりするのは難しい可能性が高くなります。
メリット
- 撤去後は維持費の負担がかからない
- 太陽光発電をやめた後の土地や売却したり貸し出したりできる
デメリット
- 太陽光パネルを処分する場合は15〜20万円ほどかかる
- 処分費以外にも人件費や工事費がかかる
⑤土地を借りている場合は返却・相談
太陽光発電の土地を借りている場合は、原則として契約期間終了後もしくは太陽光発電をやめた後に返却する必要があります。
太陽光発電をやめる場合は、まず地主と太陽光発電投資をやめる理由を伝えて、具体的な運用終了時期と終了後の土地に関する取り扱いなどを確認する必要があります。
メリット
- 設備の処分や土地の管理に関わる必要がなくなる
- 無料で相談が可能
デメリット
- 手元になにも残らない
- 太陽光発電設備の撤去手続きを進める必要がある(撤去費用は負担)
⑥太陽光発電設備を土地ごと売却する
太陽光発電設備の寿命は、大体30年程度と言われています。
そのため、固定価格買取制度(FIT)の適用が終了した後でも、十分に稼働し発電することが可能な状態。しかし太陽光パネルの発電効率は年々劣化していくため、太陽光発電システムの売却によって得ることができるキャピタルゲインは設備費用の20%弱になると考えておく必要があります。
それ以外にも年々拡大傾向にある太陽光パネルのリサイクル市場で、太陽光パネルを売却するという方法もあります。
メリット
- 設備と土地の売却が一回で済む
- 設備維持やその他のコスト負担を0にできる
デメリット
- 売却が完了するまでに時間がかかる
- 停止条件付売買が設定される場合もある
太陽光発電を20年後撤去するのにかかる費用
撤去にかかる費用 | 金額 |
パネルの撤去費 | 10万円前後 |
運搬費 | 3万円前後 |
処分費 | 3万円前後 |
2022年7月より、10kW以上の産業用太陽光発電所では、撤去費用積立が義務化されています。FIT価格の3~4%が廃棄費用の積立分として源泉徴収的に引かれ、廃棄する場合には引き出すことができます。
発電所の撤去費用の中央値は、コンクリート基礎の場合で1.37万円/kW、スクリュー基礎の場合1.06万円/kWとなっています。基礎を撤去せずにぺネルと架台だけを廃棄する場合には、0.59万円/kWです。
つまり、コンクリート基礎の50kW太陽光発電設備の場合、予想される撤去費用は68.5万円程度です。
太陽光発電のFIT制度はFIP制度に移行していく
太陽光発電のFIT制度はFIP制度に移行していくと予想されます。ここからは、FIP制度について・今後Non FIT案件が増えていく見通しについて詳しく解説していきましょう。
FIP制度とは
引用元:経済産業省
FIP制度とは、「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略称です。再エネの導入が進む欧州などでは、すでに取り入れられている制度のことでもあります。
FIP制度では、FIT制度のように固定価格で買い取るのではなく、再エネ発電事業者が卸市場などで売電した際、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促進していくのが特徴です。
今後Non FIT案件が増えていく見通し
今後は、Non FIT案件、つまり、FIT制度に登録しない太陽光発電設備が増えていくと考えられます。発電コストが安くなることと、脱炭素化社会の実現にRE100基準の電気がこれまで以上に求められることがその理由です。
再生可能エネルギー由来の電気は発電コストが高いため、それを補うためにFIT制度があります。
しかし、技術革新による発電効率の向上や、設備が増えることによる初期費用の低下によって、発電コストが下がってきています。
資源エネルギー庁の試算によると、2020年の事業用太陽光発電の発電コストは12.9円/kWhであるのに対し、2030年には8.2~11.8円/kWhまで安くなるとみられています。(参考:資源エネルギー庁 電気をつくるには、どんなコストがかかる?)
2020年のLNG火力発電の発電コストが10.7円/kWhですから、同等レベルです。
発電コストが下がることで、FIT制度を利用しなくても再生可能エネルギーの発電所で採算が取れるようになると考えられます。
また、FIT認定されている発電所の電気は、100%再生可能エネルギーとしては認められません。FIT認定発電所の電気が持つ環境価値は、再エネ賦課金を支払っている人に帰属するとみなされるからです。
FIT認定をされていないNon FIT発電所で発電された電気は、その環境価値が発電所に付与されるため、100%再生可能エネルギー由来と認められます。
Non FIT発電所を所有したり、Non FIT発電所由来の電気を購入することで、国際的イニシアチブ「RE100(Renewable Energy 100%)」基準を満たすことができ、日本の脱炭素社会の実現に貢献することができます。
太陽光発電投資を20年以内で運用するメリット
ここからは、太陽光発電投資を20年以内で運用するメリットを紹介します。気をつける点として、投資開始前や投資中から考えておく必要があります。
FIT期間中は設備を売却しやすい
20年以内で運用するメリットとして、FIT期間中は設備を売却しやすいといったことが挙げられます。また、太陽光発電設備や土地を売却しやすいのが特徴です。
太陽光発電に関することで何か問題が起こったり、国のエネルギー基本計画が変更したりすると、関係する法改正は定期的に行われています。
実際にあったこととして、太陽光パネルの廃棄問題が起こった時も、法改正が行われリサイクルすべき物になっています。FIT期間が終わるかなり早い段階で方式を決めておけば、設備を売却しやすいです。
老朽化に伴うメンテナンス費用の増加を避けられる
20年以内で運用するメリットとして、老朽化に伴ってメンテナンス費用の増加を避けられるといったことも挙げられます。太陽光発電はメンテナンスを怠ると故障しやすくなるため、信頼できる業者にメンテナンスを依頼することが大切です。
具体的には、架台・配線・パワーコンディショナーなどの周辺機器や、本体の太陽光パネルなど、定期的に交換や修理を行う必要があります。
売電収入があまりよくなかったり、事業を継続するのが難しい場合は、早めに売却できるようメンテナンスの運用方式も決めておくようにしてください。
撤去費用積立を避けられる
20年以内に運用するメリットとして、撤去費用積立を避けられるといったことも挙げられます。
通常のFIT契約の場合、買取期間終了前の10年間で積立てとなります。積立単価は、買取単価の算定において想定されている廃棄等費用(買取単価によって異なる)です。
また、費用積立を避けられるのは、積立期間が「調達期間/交付期間の終了前10年間」であるためです。稼働後10年以内に売却すれば積立を避けられます。
参考:関西電力公式
FIT期間終了後、太陽光発電の土地と設備はどうなる?
土地付きの分譲太陽光発電にはメリットが多いため人気が高いです。
しかし、20年が経過し固定価格買取制度(FIT)が適用されなくなった場合には、太陽光発電システムや太陽光発電システムを設置していた土地は、どうなるのでしょうか。
土地と設備の所有者が誰であるかということに分けて、土地と設備のその後の利用方法などについて解説していきます。
土地・発電設備ともに業者所有である場合
土地と発電設備の双方が太陽光発電業者の物である場合、どちらも太陽光発電業者の所有物となります。
投資を行った方は、20年間の売電の権利のみを購入したと考えると分かりやすいです。
土地と発電設備が発電業者のものである場合、固定価格買取制度(FIT)が終了した後には設備や土地をどうするかといったことについて一切考える必要がないというメリットがあります。
考えられるデメリットとしては、制度が変わり太陽光発電システムの設置から20年経過した後も買取価格が変わらず、期間が延長された場合に20年目以降の収益は全て太陽光発電業者のものになってしまうということです。
土地は自己所有、発電設備は業者所有の場合
土地は自己所有で発電設備は太陽光発電業者の場合には、土地を太陽光発電業者に貸す際の契約により、20年が経過した後の太陽光発電設備の取り扱いが異なってきます。
更地にして返還してもらうこともあれば、契約を延長して太陽光発電投資を続けることもあるでしょう。
しかし、太陽光発電業者が倒産などの理由でなくなっていた場合には、発電設備を自分で撤去しなければならないなどのトラブルが発生するため、この方法はあまりお勧めできません。
土地は業者所有、発電設備は自己所有の場合
土地は太陽光発電業者の所有で、発電設備は自己所有の場合にも、前述したように業者の倒産などによりトラブルが起こる可能性が非常に高くなります。
太陽光発電システムの設置から20年が経過した後も、十分な収益が見込めるのに適正な価格で土地を売ってもらうことができない可能性や、太陽光発電システムの撤去を求められるケースも考えられます。
こうなると、せっかくの利益が目減りしてしまいます。
土地・設備ともに自己所有の場合
土地と設備の双方がともに自己所有である場合、20太陽光発電システムの設置から20年経過した後も所有権は変わることなく、土地や太陽光発電設備を使用することができます。
メンテナンスの必要性や今後かかるランニングコストを綿密に計算しておく必要はありますが、太陽光発電システムの設置から21年以上経過した場合にも売電ができるのであれば、収益を上げることができます。
売電ができない場合でも、さまざまな方法で土地や太陽光発電設備を活用することが可能です。また、土地と太陽光発電システムの双方を売却してしまうという手段を取ることもできます。
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まとめ
ここまで、太陽光発電の20年問題ともいえる固定価格買取制度(FIT)という電力の買取制度と、この固定価格買取制度(FIT)が将来どうなるのかという予測、20年後に土地と太陽光発電システムをどうするかといった出口戦略について解説してきました。
太陽光発電投資を行う際には、20年後を見据えた戦略を立てて投資を始める必要があることがお分かりいただけたと思います。
その戦略を建てる際に重要になるのが、固定価格買取制度(FIT)。
この制度の内容をしっかりと把握し、また20年経過以降に太陽光発電システムと土地をどうするかということを考えておくことが、太陽光発電投資を成功させるカギとなります。
この記事を書いた人
ikebukuro