太陽光発電を無料設置できる屋根貸しとは?仕組みとメリット・デメリットについて解説

  • 太陽光発電投資
  • 公開日:2024.11.11
  • 更新日:2024.11.11
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個人や企業で太陽光発電を導入する場合、太陽光発電システムを自分で購入する方法がありますが、多額の初期コストが掛かってしまう点がネックです。

「屋根貸し」や「PPAモデル」を活用することで、自宅・自社の屋根に太陽光発電を無料設置でき、太陽光発電由来の電気を使うことができます。

この記事では、太陽光発電の屋根貸しの仕組みについて・PPAモデルがなぜ無料で太陽光パネルを設置できるのかや、メリット・デメリットについて解説していきます。

太陽光発電の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

太陽光発電が無料で設置できる”屋根貸し”の仕組み

PPAモデル

出典:ハチドリソーラー

屋根貸しとは、工場や住宅などの屋根を貸して、太陽光発電事業者が太陽光パネルを設置することをいいます。屋根を貸す方は太陽光発電の事業者から賃料を得られるようになっているのが特徴です。

一方で太陽光発電の事業者は、屋根に取り付けた太陽光発電設備から発電した電力を、電力会社へ売電することで収益にしているのが特徴。

その収益を、屋根を貸す建物の所有者に充てています。要するに建物所有者にとっては、土地のように屋根を貸して収入を得るビジネスモデルなのです。

太陽光発電の屋根貸しを導入するメリット

PPAモデル メリット

太陽光発電に屋根を貸すメリットについて見てみましょう。

①初期コストがかからない

何といっても、初期コストが掛からない点がもっとも大きなメリットです。家庭の屋根上に太陽光パネルを設置する場合、数百~数千万円単位のお金が必要。

自己資金で賄うには多額のお金なので、ローンを組んで購入するケースが一般的です。売電収入はあるものの、ローンの返済で収益が圧迫されることになります。

一方で、設置費0円の太陽光発電設備を利用した場合、言葉のとおり機器代金と工事費用が無料です。多額の初期コストを支払わずに、太陽光発電を設置することが可能なのです。

②メンテナンス費用が掛からない

設置費用だけでなく、メンテナンス費用も支払う必要がありません。なぜなら、太陽光発電の事業者が維持費用を支払ってくれるからです。

太陽光発電を運用するには、定期的な機器のチェックや、故障した部品があれば交換が必要です。自分が太陽光発電を所有している場合はメンテナンス費用も支払う必要がありますが、屋根を貸す場合は業者が費用を支払うので、利用者側が負担する必要はありません。

設置費用と合わせて、メンテナンス費用を支払う必要がないのも魅力的な点です。

③契約終了後は無償で譲渡される

費用0円で設置した太陽光発電設備が、契約終了後は無償で譲渡されているのが特徴です。それまで設置していたものが、自己所有へ切り替わります。

住宅の屋根上に取り付ける太陽光パネルの場合、契約期間の多くは10年です。また、企業が取り付ける産業用太陽光発電の場合、契約期間は20年間です。

この契約期間が終了すると、無償で太陽光発電が譲渡されるので、PPA契約時と違い売電収入も自分のものになります。

④電気代を節約できる

費用0円で太陽光発電を設置すると、電気料金が安くなることがあります。電力会社が、太陽光発電の契約者に向けて格安の料金プランを用意していることがあるからです。

太陽光発電を設置する場合は、特定の電力会社と契約することになるでしょう。毎月の電気料金はその電力会社へ支払います。

電力会社は一般的な料金プランよりも安い、太陽光発電所有者専用のプランを用意してる場合が多いです。契約者にとっては、電気料金の削減もできるので生活コストを抑えられるメリットがあるのです。

⑤ローンを組む必要がない

太陽光発電設備を購入するには、どうしても多額な初期コストが必要です。住宅用規模の太陽光発電でも、100万円以上の費用がかかりますし、産業用太陽光発電の場合1,000万円以上のコストが必要です。

初期コストすべてを自己資金で賄うのは難しい方は、ローンを利用して設置するため、返済が毎月の生活を圧迫してしまうでしょう。

一方で設置費0円の場合、初期コストが掛からないので、ローンを組む必要がないメリットがあります。

屋根貸し太陽光発電を導入する4つのデメリット

PPAモデル リスク

続いて、太陽光発電に屋根を貸すデメリットについて見てみましょう。

①余剰電力を売電できない

屋根を貸して太陽光発電設備を設置した場合、余剰電力を売電できません。太陽光発電設備の所有者は太陽光発電の事業者になるので、売電収入は契約者のものにはならないからです。

事業者は初期コスト0円で屋根上に太陽光パネルを取り付ける代わりに、売電収入を得られるようになっています。売電収入から、設置コストやメンテナンス費用が賄われているのです。

自分で太陽光発電を設置した場合、余剰電力の売電収入は所有者のものになります。一方、設置費0円の場合は、太陽光発電ならではの売電収入がない点には注意しましょう。

②途中で解約すると違約金が発生

契約期間の途中で太陽光発電設備を撤去したくても、多額の違約金が掛かります。太陽光発電を無料で設置する事業モデルは長期間の契約を前提としているため、契約者が途中で解約すると大きな損を出してしまうのです。

設置費0円の契約は、10年間もしくは20年間で締結されることが多いです。

「やっぱり太陽光パネルを取り外したい」「事務所を移転するので太陽光発電が不要になった」ような状況でも、基本的に契約期間の途中で解約することは困難です。

そのため、太陽光発電を設置する前は、長期間解約できないことを考慮して、必ず慎重に判断しましょう。

③無償譲渡後はFIT制度対象外

無料で太陽光発電を設置した場合、契約期間終了後は利用者に無償で譲渡されるのですが、譲渡後はFIT制度対象外になっている点に注意が必要です。

無料で太陽光発電設備を設置する場合、契約期間は10年間もしくは20年間がほとんどです。この契約期間は、FIT制度の期間と同じようになっています。

新たに太陽光発電を設置すると、電力会社が「一定期間」「一定の単価」で電力会社が電力を買い取る義務があるのが特徴。

つまり、事業者にとって長期間はある程度収入が保障されているのです。しかし、無償譲渡後はFIT制度の期間が終了しているので、電力会社は国が定めた単価で買い取る必要はなく、必然的に単価が下がるでしょう。

無償譲渡後は売電収入が自分のものになりますが、FIT制度期間ほどの売電収入にならない点には注意してください。

④撤去するにはお金がかかる

契約終了後の無償譲渡後は太陽光発電設備が自己所有になるので、撤去費用も自分持ちになるので気をつけましょう。

契約期間中であっても、契約期間後でも撤去に費用が掛かる点には注意が必要です。撤去費用は、住宅用の太陽光発電でおおよそ15万円ほど。

産業用太陽光発電の場合、数十万円~数百万円の廃棄費用が掛かります。設置当初は予想もしていないコストになるので、必ず購入前に考慮するようにしましょう。

屋根貸しで太陽光発電する「PPA・TPO」モデルとは?

PPAモデル

出典:東京電力エナジーパートナー

屋根貸しでの太陽光発電には、「PPA・TPO」という仕組みを利用します。

日本での太陽光発電再生可能エネルギー事業において「PPA・TPO」は、太陽光発電システムを設置事業者の所有で設置し、需要家と電力購入契約を結ぶ仕組みのことです。

PPAとは「Power Puchase Agreement(電力購入契約)」の略称。アメリカなどでは、発電事業者と電気を使用する需要家が直接電力契約を結ぶことを表します。

TPOは「「Third Party Ownership(第三者所有権)」の略称です。アメリカなどでは、太陽光発電に限らず、スポーツチームや企業のソフトウェアなどを第三者が所有することを意味します。

太陽光発電を所有する企業の事業によって名称が違うだけで、仕組みは同じです。

PPA・TPAは初期コストを抑えられる

通常、太陽光発電を設置する場合は、利用者が太陽光発電を購入して、屋根上や土地などに設置します。しかし太陽光発電は、初期コストが高い点がネックです。

住宅用太陽光発電(10kW未満)で数百万円、産業用太陽光発電(10kW以上)で数千万円単位の初期コストが必要となっており、これが太陽光発電設備購入を妨げる要因ともなっているのが特徴です。

そこで、太陽光発電の事業者が太陽光発電の設置費用を支払うことで、利用者に太陽光発電を利用してもらうのが「PPA・TPO」です。

売電収入はPPA・TPO事業者の収益になる

太陽光発電の事業者が設置費用を出しているので、太陽光発電システムは事業者のものとなります。太陽光発電を電力会社へ売ることで収入を得る「売電収入」も事業者の収益です。

また、利用者は太陽光発電の事業者が定める電力会社と契約することになり、電気使用量分を支払うことになります。この際の電気料金プランは、大手電力会社のプランよりも割安です。

契約期間終了後は、太陽光発電システムが契約者に譲渡されているのが特徴です。

このように、PPA・TPOは多額の初期コストを支払わず太陽光発電を自宅屋根に設置でき、再生可能エネルギー由来の電気を使用できるのが大きなメリットとなっています。

太陽光発電の”設置費0円”は詐欺?

PPAモデル 詐欺

結論を言うと、設置費0円の太陽光発電は詐欺ではありません。ただし、太陽光発電ならではの魅力を享受することはできません。

しかし設置費0円で太陽光発電設備を取り付けると、リースになるので所有者は太陽光発電事業者になります。

初期コストが掛からないメリットはあるものの、売電収入を得られないとなると、あまり太陽光発電を取り付ける意味がありません。

また事業者によっては、エコキュートを取り付けられない場合があるでしょう。理由として、エコキュートが太陽光発電の売電量を妨げてしまうからです。

このような制限や、最低10年間は解約が困難な理由から、少々取り扱いづらいようになてちます。

設置費用0円も悪くはないのですが、太陽光発電ならではのメリットを享受するには、自己資金を用意して購入する方がよいでしょう。

法人もPPAモデルの採用で自社の電気代がかなりお得になる

法人や企業であっても、PPAモデルを採用することは可能です。

自社ビルの屋根や敷地内のデッドスペースに太陽光発電設備を設置するPPAモデルを「オンサイトPPA」、敷地外に太陽光発電設備を設置する方法を「オフサイトPPA」といいます。

ここでは、一般的に利用されることが多い「オンサイトPPA」モデルについて解説していきますね。

法人・企業がPPAモデルを取り入れるメリット

PPAモデル メリット

法人がPPAモデルを採用した場合のメリットには、以下のようなものがあります。

  1. 初期費用・契約期間中のメンテナンス費用が不要
  2. 電気代が削減できる
  3. CO2排出量削減でCSR活動の推進
  4. 非常用電源としての備えられる

①初期費用・契約期間中のメンテナンス費用が不要

家庭に導入する時と同様、初期費用がかかりません。ローンを組んだり、借入したりする必要がないため、法人の負債を増やすことなく太陽光発電設備を導入できます。

また、契約期間中の清掃や点検といったメンテナンスは、PPA事業者に任せられますよ。

②電気代が削減できる

PPAモデルで太陽光発電設備を設置すると、PPA事業者から電気を購入することになるでしょう。PPA事業者の電気料金プランは大手電力会社よりも安いことが多いため、電気代を削減することが可能。

③CO2排出量削減で企業価値向上に繋がる

PPAモデルで太陽光発電設備を導入すると、再生可能エネルギーの普及促進に貢献でき、CO2排出削減が可能です。昨今、脱炭素社会の実現に向けて、企業にも行動が求められています。

太陽光発電システムの導入を内外に発信することは、CSR活動を推進し、企業価値の向上に繋がるでしょう。

④非常用電源として備えられる

PPAによる太陽光発電システムは、非常用電源としての活用が可能です。

地震や台風などの災害による停電は、企業に多大な損害をもたらす場合も。太陽光発電システムがあれば、昼間は電気を使用することができますよ。

蓄電池やEV(電気自動車)も一緒に導入すれば、太陽光発電した電気を貯めて夜間に使うこともできるので、より長期的な停電への備えとなるでしょう。

PPAと自家所有型(自家発電)の違い

PPAモデルと自家所有型を比較すると、以下のようになります。

PPAモデル 自家所有
所有者 PPA事業者 自社
初期費用 PPA事業者負担 自社負担
メンテナンス PPA事業者 自社
電気代 PPA事業者に支払 発電した電気は無料
不足分は電力会社から購入
売電収入 なし 余剰電力は売電可
節税効果 なし あり
期間 15~20年の長期契約
(契約満了後は契約者に譲渡)
5~15年で初期費用を回収

PPAモデルが向いている企業の特徴

  • 初期費用を抑えたい
  • メンテナンスを任せたい
  • 長期契約(15~20年)が可能

とにかく初期費用をかけずに、太陽光発電システムを導入したいという企業に向いています。契約期間中はメンテナンス費用もかからず、手間も最低限に抑えられるでしょう。

PPAモデルは長期契約が前提となるので、契約期間中に移転や建替の可能性がない方が好ましいです。中途解約する場合、違約金が請求されるケースもあるため注意してください。

自家消費型が向いている企業の特徴

  • 電気代をより削減したい
  • 売電収入を得たい
  • 補助金を利用したい
  • 節税したい

自家消費型の場合、太陽光発電システムによるメリットを全て得られますよ。

太陽光発電システムを自家所有・自家消費すると、発電した電気は全て自社で使い放題です。さらに、余剰電力は売電可能。売電収入と削減した電気料金によって、5~15年で初期費用が回収できると言われているのが特徴。

近年、燃料価格高騰に伴い電気料金の値上げが相次いでいます。自家発電の電気が使えれば、電気料金高騰の影響を大幅に抑えることができますね。

また、自社で設備を設置すると、自治体によっては補助金を利用できるところもあります。

さらに、経費としてすれば太陽光発電は減価償却が可能なのに加え、中小企業であれば「中小企業経営強化税制」と「中小企業投資促進税制」の税制優遇措置可能です。

太陽光発電の屋根貸しに関するよくある質問

太陽光発電のPPAなどを検討する際に、気になる点についてまとめました。

太陽光発電のPPAはなぜ無料で設置できる?

事業者が設置にかかった費用は契約期間中に回収できるため、太陽光発電設備を無料で設置できます。

PPA事業者は、契約者からの電気料金や売電収入で収入が得られますよ。また、契約期間終了後には契約者に太陽光発電設備を譲渡するため、事業者は廃棄コストを払う必要もありません。

屋根貸し・PPA以外に太陽光発電を無料で設置する方法は?

太陽光発電設備をリースする方法があります。リース事業者から太陽光設備を借りて、契約者の敷地内に設置し、リース料をしはらう形態です。

発電した電気は全て契約者のものになり、発電した電気の使用には料金がかからず、売電収入も契約者が受け取ります。

太陽光発電の屋根貸し・PPAに築年数制限はある?

事業者によって異なりますが、築30年以上の屋根では設置ができない場合があります。築年数だけでなく、屋根のメンテナンス状況によっては、防水・耐震性が足りず、設置できないと判断されることもあるのが特徴です。

契約前に現地調査があるため、設置可能かどうかを判断することが可能です。心配な方は、事業者に相談してみるといいでしょう。

まとめ

太陽光発電へ屋根を貸す仕組みやメリット・デメリットなどを解説しました。屋根を貸すことで設置費が無料になるので、初期コストを掛けずに気軽に導入できるメリットがありますね。

またメンテナンス費用も掛からず、電気代が安くなるなどの、コスト面で多くの魅力があるでしょう。一方で、売電収入を得られないことや、無償譲渡後は買取単価が下がるなどのデメリットもあります。

リースでは、太陽光発電ならではのメリットを享受できないのが難点です。太陽光発電は、自己資金をもとに導入する方が、その恩恵を受けられるようになっているのが特徴です。

太陽光発電の導入を検討している方は、一度所有で考えてみてはいかがでしょうか?

SOLSEL

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この記事を書いた人

ikebukuro

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