メガソーラーのメリット・デメリットと環境破壊につながるという問題点について解説
- 公開日:2024.11.19
- 更新日:2024.11.19
メガソーラーとは、一般的な家庭用太陽システムに比べてより高圧で大規模な太陽光発電所のことです。発電量が多いので、再生可能エネルギーの普及促進でき、地球温暖化に貢献できると注目されています。
しかし、メガソーラーには広大な土地が必要です。設置のために大規模な森林伐採が行われると、生態系破壊や土壌流出、景観の悪化が引き起こされてしまう可能性があります。
この記事では、メガソーラーの仕組みから、問題点やメリット、国内外でメガソーラー事業に投資している企業・有名人まで、詳しく紹介していきます。
目次
メガソーラーとは?
メガソーラーは、一般的な太陽光発電とは違い、出力規模の大きい太陽光発電のことです。具体的には、1,000kW以上の高圧な発電量を持っていることが、メガソーラーの基準です。
家庭用の太陽光発電システムの発電量は、低圧で10kW未満ということを考えると、メガソーラーがいかに大規模な発電システムかがわかります。
1,000kWの高圧な太陽光発電所を設置するには、約2ヘクタールの土地が必要で、イメージとしては野球場やサッカーグラウンドの2倍ほどの面積が必要になります。
個人事業主の方でメガソーラーを所有するというよりも、ソフトバンクや京セラといった企業が導入しているケースが多いです。
メガソーラーの仕組み
メガソーラーの仕組みをご紹介していきます。
(引用:【図解つき】太陽光発電の仕組みを初心者向けにわかりやすく解説! – EV DAYS | EVのある暮らしを始めよう)
メガソーラーは1MW=1,000kW以上のシステム容量で、家庭用の太陽光発電に比べると大規模の太陽光発電所のことを指します。
メガソーラーの仕組みは、家庭用の太陽光設備の規模が大きくなるだけで、一般的な太陽光発電と仕組みは変わりません。規模が大きくなるため、メガソーラーのほうが発電容量が多く、産業用の電力として利用される場合が多いです。
メガソーラーの発電量と売電収入
メガソーラーは規模が大きい分、発電量が多くなります。当然それに伴い太陽光発電投資としての高額の売電収入も期待できます。
もちろん、メガソーラーも太陽光発電なので、FIT制度(固定価格買取制度)が適用されます。
ただし、入札制度となるので、調達価格は入札によって決定される仕組みです。
入札制度についての詳細は、資源エネルギー庁が発表しているので、こちらからご確認ください!
<売電収入の計算例>
条件: ・東京都八王子市、真南、パネル角度30度(1日あたりの年平均日射量:3.88) のメガソーラーで、年間の売電収入を単純計算してみると約1,960万円となります |
メガソーラーが社会的に問題視される理由・問題点
ここからはメガソーラーのデメリットについて解説します。
- 自然災害の影響を受けやすい
- 高圧連系にコストがかかる
- 自然破壊・環境破壊の原因になりかねない
- 近隣住民とのトラブルになる
- 盗難被害が増加している
①自然災害の影響を受けやすい
メガソーラーは、設置場所によっては自然災害を受けやすくなってしまいます。
例えば、傾斜地や山間部に設置されたメガソーラーでは土砂災害の被害に遭いやすく、低地に設置されたメガソーラーでは浸水被害に注意が必要です。
また、開けた場所に広範囲に設置するため、積雪や飛来物の被害を受ける可能性もあります。
②高圧連系にコストがかかる
システム容量が50kW以上の高圧太陽光発電の場合、電力会社と高圧連系という契約をかわさなければなりません。
契約には、設置協議費用や手数料として20万円ほどかかります。
また、高圧連系をする際には、キュービクルという高圧受電設備の設置が必要となります。
設置異費用は、100kWあたり約100〜150万円です。
高圧の太陽光発電の場合、電気主任技術者の選任も必要です。
電気主任技術者による定期的な保守点検が義務付けられているため、年間50〜100万円程度のコストが追加でかかります。
つまり、高圧連系のため、設備費用以外に約170〜270万円が初期費用として上乗せされるということになります。
③自然破壊・環境破壊の原因になりかねない
冒頭でも説明したようにメガソーラーを設置するためには、サッカーグラウンドの2倍以上の土地が必要になります。
そのため、場合によっては山林を開拓して土地を整地する必要があります。
しかし、太陽光発電は、そもそも環境問題対策のために推奨されている再生可能エネルギーを活用した発電なので、山林を開拓しなければならないことに矛盾が生じてしまいますよね。
④近隣住民とのトラブルになる
大規模な太陽光発電設備を民家の近くに設置した場合、住民とのトラブルが起こるケースがあります。具体的な例は以下の通りです。
- 自然が失われてパネルが設置されることによる景観悪化
- 太陽光パネルの反射光が民家に差し込み住環境が悪化
- 放置した雑草による景観悪化や害虫・害獣被害
- 工事やパワコン動作音の騒音
- 強風によるパネルの飛散
- 土壌の流出・土砂崩れ
太陽光パネルの反射光をなくすことはできませんが、設置前にシミュレーションを行い、パネルの角度や位置を調整して影響を考慮することができます。反射の少ない太陽光パネルを利用したり、周辺に木を植えたりすることで軽減可能です。
雑草の放置は、景観を損ねるだけでなく、虫や小動物(ねずみやヘビなど)が住み着いて、近隣に迷惑を与えます。近くに農地があれば、経済的な被害が出ることも考えられるでしょう。
住宅街が近い場合は騒音トラブルも考えられます。工事前に近隣住民への配慮を忘れないようにしましょう。パワコンの動作音は、エアコンの室外機と同じくらいですが、近隣との関係が悪い場合にはトラブルの原因となることもあるようです。
地盤の整備が不十分な場合、土壌流出や土砂崩れが発生することもあります。山を切り開いて斜面にパネルを設置する場合、リスクが高まりますので、設置場所の選定時に注意してください。
⑤盗難被害が増加している
2020年以降、太陽光発電所での盗難被害が急増しています。太陽光パネルやケーブル(銅線)といった設備を盗み、売却するという手口です。背景には、銅価格の高騰や、太陽光発電設備の増加が挙げられます。
メガソーラーは設備規模が大きく、監視が行き届かない箇所が出やすいのに加えて、一度に多くの物資を盗難できるため、泥棒に狙われやすくなっています。
遠隔で監視できるカメラや、頑丈で乗り越えにくいフェンスを設置することで、防犯対策がとれるでしょう。また、定期的にメンテナンスを行い、人の出入りがある整然とした太陽光発電所は、盗難被害に遭いにくいです。
メガソーラーの4つのメリット
メガソーラーはデメリットだけでなく、下記に挙げられるメリットもあります。
- 脱炭素化社会のために有効的
- 設置してから20年間の収益を予想できる
- 管理費を低く抑えられる
- 投資・ビジネスとして利用できる
- 税金対策として活用できる
ひとつずつ解説してきましょう。
①脱炭素化社会のために有効的
出典:2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)環境エネルギー政策研究所
2022年の日本の電源構成における再生可能エネルギーの比率は22.7%です。2050年までのカーボンニュートラル達成のためには、今後さらにこの比率を増やしていく必要があります。
太陽光発電は、発電時にCO2を排出しないクリーンな再生可能エネルギーです。
一般的な太陽光発電所よりも多くの発電量を見込めるメガソーラーは、日本の再生可能エネルギーによる発電比率をあげることができ、その結果、CO2排出量が多い火力発電の割合を減らすことできます。
メガソーラーの導入により、地球温暖化の原因である温室効果ガスを削減でき、その結果脱炭素社会の実現に近づけられるのです。
②設置してから20年間の収益を予想できる
再生可能エネルギーの普及を目的として、再生可能エネルギーを利用して発電した電気を一定期間固定価格で電力会社が買い取ることをFIT制度で定められています。
太陽光発電はこのFIT制度の対象です。10kW以上の産業用太陽光発電設備は、20年間市場価格よりも高い固定価格で売電可能です。
また、太陽光発電の年間発電量は、パネルの出力と設置地域の年間日射量からシミュレーションできます。天候や季節により発電量のバラつきはありますが、年間でみると予想を大きく下回ることは少ないです。
そのため、長期間にわたって安定した利益が見込めます。
③管理費を低く抑えられる
太陽光発電設備は、維持管理にあまり費用や手間がかからない投資方法と言われています。年に1~2回の定期点検と、年に1~2回の除草作業を行えば、故障や自然災害などのトラブル時に追加で点検が必要な程度です。
遠隔監視システムを導入すれば、スマホなどで発電状況を確認でき、異常があればアラートが通知されます。
これらの維持管理は、太陽光発電のO&Mサービスを契約すれば、専門業者におまかせできます。
メガソーラーの年間維持費平均値は以下の通りです。
出力 | 1MW~2MW | 2MW以上 |
全体 | 0.62万円/kW | 0.74万円/kW |
地上設置 | 0.64万円/kW | 0.75万円/kW |
屋根設置 | 0.43万円/kW | 0.24万円/kW |
参考:資源エネルギー庁|太陽光発電について 2023年12月
野立てで出力が1MWメガソーラーの場合、年間620万円の維持管理費がかかる計算になります。
④投資・ビジネスとして利用できる
企業イメージがよくなることからビジネスとしてメガソーラーを導入する企業もあります。
企業の社会的責任(CSR)を果たすため、地球温暖化を防ぐための温室効果ガス削減に取り組む企業が増えています。
有害物質を発生させないクリーンなエネルギーを使った太陽光発電を企業として導入するという、地球温暖化や環境問題に配慮した取り組みを行なっていることがイメージアップに繋がります。
また、太陽光発電由来の電力で生産した製品には、環境に優しいという付加価値を付けることができ、環境問題に敏感な消費者のニーズを満たせるでしょう。
さらに、サプライチェーンにも温室効果ガス削減を求める大手企業の取引先として選ばれやすくなるなど、競争力を高めることも可能です。
⑤税金対策として活用できる
太陽光発電は、不動産と同じように固定資産としてみなされるので減価償却の対象となります。
固定資産は月日が経つにつれて、資産としての価値がなくなっていきます。このなくなっていく価値を耐用年数で分割し、毎年経費として計上することを減価償却といいます。
経費として計上できるので、結果的に納税額を減らすことができ、太陽光発電が節税につながるというわけです。
多くの起業家や法人企業では、減価償却を目的に太陽光発電を始めるケースもあります。
また、減価償却以外にも特別償却や税額控除の対象になることもあり、さらに節税することが可能です。
【出資額ランキング】メガソーラーに投資する日本企業
メガソーラーに出資している国内外の企業と個人を紹介します。
ソフトバンク
出典:ソフトバンク公式
「日本の電力会社は意地悪で、他者を村社会の理屈で締め出している。当社は地球に貢献するつもりで、可能な地域から電力事業を行っていく」
(引用:ITmediaビジネス)
2017年、ソフトバンクの孫正義は日本の電力業界に向けて、上記のコメントを残しました。
孫正義は、この会見の後にサウジアラビアの電力会社SECに株主として経営参加を表明しました。10兆円を超える規模での投資を行う「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」は、現在様々な分野に積極的な投資を行っており、太陽光発電業界も投資先の一つです。
具体的な投資額は公表していませんが、「AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など最先端の技術を活用し、安価で世界一の電力サービスを目指したい」と発言していることから、かなりの額を投資していると予想できます。
オリックス
出典:オリックス公式
オリックスは太陽発電所の導入を積極的に行い、現在では111か所、合計826MW(メガワット)を超える規模の電力を有しています。
826MWというと200世帯を超える量の再生可能エネルギーになり、オリックスはかなりの額の投資を行っていることが伺えます。
オリックスは、2016年から2018年にかけて、新たに1,000億円かけて太陽発電所を新設しており、2017年に設置した「ProDeSセンター発電所」では、8,316㎡を超える屋根に3,652枚もの太陽光パネルを4か月足らずで取り付けました。
この発電所の年間発電量は、1,000,000kWhを超え、280世帯分の年間消費電力に相当するものです。
野立てだけでなく、広い屋根を利用して無駄なく発電することは、エコを強く意識しているオリックスならではですね。
京セラ
出典:京セラ公式
京セラは太陽光発電に関する事業に携わっています。
中でもメガソーラーには注力しており、売電契約から出資、融資など一貫した体制を整えています。
そんな京セラですが、2018年には「宮城・黒川メガソーラー発電所」の運用を開始しました。
このメガソーラーは28MW規模になり、年間予測発電量は33,000,000kWhとされており、一般家庭11,100世帯分の年間消費電力に相当します。
京セラは、「太陽光発電事業を通じ、再生可能エネルギーの普及 · 促進に資するとともに、地球環境保全ならびに循環型社会の形成に貢献します」と謳っていることから、これからも投資を続けると予想できますね。
メガソーラーに投資している海外企業・有名人
NextEra Energy(アメリカ)
NextEra Energy(ネクステラ・エナジー)は、アメリカの再生可能エネルギー最大手企業です。アメリカの49州に加え、カナダやスペインでも事業を展開しています。
メガソーラーや風力発電設備など、2023年12月31日時点で運用中の設備は約72GWを達成。2025年までのアメリカのインフラへの投資計画は約850~950億ドルとしており、今後も積極的に再生可能エネルギー設備を増やしていく見通しです。
Enel Green Power(イタリア)
Enel Green Power(エネル・グリーン・パワー)は、イタリアの発電会社Enelの子会社です。ヨーロッパだけでなく、アメリカ・アフリカ・オセアニア・アジアに渡り、再生可能エネルギー事業を行っています。
メガソーラーや風力発電、水力発電、地熱発電などの再生可能エネルギー発電設備を建設しており、2024年6月時点で約64GWの発電容量を有しています。
太陽光発電パネルの生産も行っており、今後もカーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの普及促進に大きく貢献する企業と言えるでしょう。
バークシャー・ハサウェイ社(ウォーレン・バフェット氏)
出典:Wikipedia
投資の神様とも呼ばれる大富豪、ウォーレンバフェット氏は2014年から再生可能エネルギー事業に投資し、その額は2兆円にも上るとされています。
主に、風力・太陽光発電所へ投資しており、アメリカの再生可能エネルギーの普及をけん引していると言っても過言ではないでしょう。
その投資理由のひとつには、やはり『有利な税制』があるようです。
マイクロソフト社(ビル・ゲイツ氏)
出典:Wikipedia
ビル・ゲイツ氏は「革新的な再生可能エネルギー技術を生み出すために投資をする」というスタイルなので、発電所の保有はしていませんが、2015年から5年間かけて合計2,500億円を超える投資を行っています。
参考:日経BP
グーグル社(元CEO、ラリー・ペイジ氏)
出典:Wikipedia
グーグルの元CEOラリー・ペイジ氏も投資額は明らかにされていませんが、再生可能エネルギー事業に投資しています。
さらに、グーグル社も2019年に2,000億円分の風力発電と太陽光発電を購入しました。
再生可能エネルギープロジェクトを推し進め、2030年にはグーグル社のエネルギー消費を100%、再生可能エネルギーにする予定です。
参考:日経BP
関連ニュース:米アマゾン、日本で風力とメガソーラーに投資、合計42.5MW
メガソーラーに関するよくある質問
メガソーラーについて考えるとき、気になる点についてまとめています。
太陽光発電は本当にエコ?
太陽光発電は火力発電に比べ、CO2の排出量を大幅に削減できる点で、エコといえます。
太陽光発電は発電するときに排出するCO2はほぼゼロです。また、発電設備の設計・製造、税両調達等で発生するCO2の間接排出量も、火力発電や原子力発電の数十分の一程度となっています。
メガソーラーに反対する理由は何?
近隣住民がメガソーラーの建設に反対する理由には、次のようなものが挙げられます。
- 景観の悪化
- 森林伐採による土壌流出
- 生態系の破壊
- 工事中の騒音
環境省では2020年4月より、発電容量40MW以上のメガソーラーに環境アセスメントを義務化しています。
今後のメガソーラー建設には、より環境や近隣住民への配慮が必要になるでしょう。
メガソーラーのソーラーパネルは猛毒?
太陽光パネルには、鉛・カドミウム・セレンなどの有害な化学物質が含まれていることがあります。
そう聞くと心配ですが、有害物質が含まれるモジュールの発電セルや電極は、EVA樹脂などで強固に封着されています。パネルの割れ程度では流出する可能性は極めて低く、周辺の環境破壊を引き起こすことはないと考えられます。
ただし、破損したソーラーパネルが長期間不法投棄された場合、有害物質が流出する可能性はゼロではないでしょう。
国は、事業用太陽光パネルの撤去費用積み立てを義務付けるなどして、不法投棄による環境破壊防止対策を行っています。
【まとめ】メガソーラーの今後はどうなる?
メガソーラーは、規模が大きいため土地の準備や工事に時間がかかることが予測されます。
しかし、地球温暖化や環境問題対策として、現時点で日本の主力発電となっている火力発電や原子力発電の発電量を上回るためには、今後メガソーラーのような大規模の太陽光発電がより必要になってくるでしょう。
その証拠に、メガソーラーや企業に多額の投資を行っている世界の大富豪や日本企業は増加傾向にあります。企業で消費する電力を100%再生可能エネルギーにしようと考えている会社もあり、これからもエネルギー市場は活発になると予想できます!
この記事を書いた人
ikebukuro