メガソーラーのメリット・デメリットと環境破壊につながるという問題点について解説
- 公開日:2025.06.02
- 更新日:2025.06.02

メガソーラーとは、一般的な家庭用太陽システムに比べてより高圧で大規模な太陽光発電所のことです。発電量が多いので、再生可能エネルギーの普及促進でき、地球温暖化に貢献できると注目されています。
しかし、メガソーラーには広大な土地が必要です。設置のために大規模な森林伐採が行われると、生態系破壊や土壌流出、景観の悪化が引き起こされてしまう可能性があります。
この記事では、メガソーラーの仕組みから、問題点やメリット、国内外でメガソーラー事業に投資している企業・有名人まで、詳しく紹介していきます。
目次
メガソーラーとは?
メガソーラーは、一般的な太陽光発電とは違い、出力規模の大きい太陽光発電のことです。具体的には、1,000kW以上の高圧な発電量を持っていることが、メガソーラーの基準です。
家庭用の太陽光発電システムの発電量は、低圧で10kW未満ということを考えると、メガソーラーがいかに大規模な発電システムかがわかります。
1,000kWの高圧な太陽光発電所を設置するには、約2ヘクタールの土地が必要で、イメージとしては野球場やサッカーグラウンドの2倍ほどの面積が必要になります。
個人事業主の方でメガソーラーを所有するというよりも、ソフトバンクや京セラといった企業が導入しているケースが多いです。
メガソーラーの仕組み
メガソーラーの仕組みをご紹介していきます。
(引用:【図解つき】太陽光発電の仕組みを初心者向けにわかりやすく解説! – EV DAYS | EVのある暮らしを始めよう)
メガソーラーは1MW=1,000kW以上のシステム容量で、家庭用の太陽光発電に比べると大規模の太陽光発電所のことを指します。
メガソーラーの仕組みは、家庭用の太陽光設備の規模が大きくなるだけで、一般的な太陽光発電と仕組みは変わりません。規模が大きくなるため、メガソーラーのほうが発電容量が多く、産業用の電力として利用される場合が多いです。
メガソーラーの発電量と売電収入
メガソーラーは規模が大きい分、発電量が多くなります。当然それに伴い太陽光発電投資としての高額の売電収入も期待できます。
もちろん、メガソーラーも太陽光発電なので、FIT制度(固定価格買取制度)が適用されます。
ただし、入札制度となるので、調達価格は入札によって決定される仕組みです。
入札制度についての詳細は、資源エネルギー庁が発表しているので、こちらからご確認ください!
<売電収入の計算例>
条件: ・東京都八王子市、真南、パネル角度30度(1日あたりの年平均日射量:3.88) のメガソーラーで、年間の売電収入を単純計算してみると約1,960万円となります |
メガソーラーのデメリット・問題点
ここからはメガソーラーのデメリットについて解説します。
- ①自然災害の影響を受けやすい
- ②高圧連系にコストがかかる
- ③自然破壊・環境破壊の原因になりかねない
- ④近隣住民とのトラブルになる
- ⑤盗難被害が増加している
①自然災害の影響を受けやすい
メガソーラーは、設置場所によっては自然災害を受けやすくなってしまいます。
例えば、傾斜地や山間部に設置されたメガソーラーでは土砂災害の被害に遭いやすく、低地に設置されたメガソーラーでは浸水被害に注意が必要です。
また、開けた場所に広範囲に設置するため、積雪や飛来物の被害を受ける可能性もあります。
②高圧連系にコストがかかる
システム容量が50kW以上の高圧太陽光発電の場合、電力会社と高圧連系という契約をかわさなければなりません。
契約には、設置協議費用や手数料として20万円ほどかかります。
また、高圧連系をする際には、キュービクルという高圧受電設備の設置が必要となります。
設置異費用は、100kWあたり約100〜150万円です。
高圧の太陽光発電の場合、電気主任技術者の選任も必要です。
電気主任技術者による定期的な保守点検が義務付けられているため、年間50〜100万円程度のコストが追加でかかります。
つまり、高圧連系のため、設備費用以外に約170〜270万円が初期費用として上乗せされるということになります。
③自然破壊・環境破壊の原因になりかねない
冒頭でも説明したようにメガソーラーを設置するためには、サッカーグラウンドの2倍以上の土地が必要になります。
そのため、場合によっては山林を開拓して土地を整地する必要があります。
しかし、太陽光発電は、そもそも環境問題対策のために推奨されている再生可能エネルギーを活用した発電なので、山林を開拓しなければならないことに矛盾が生じてしまいますよね。
④近隣住民とのトラブルになる
大規模な太陽光発電設備を民家の近くに設置した場合、住民とのトラブルが起こるケースがあります。具体的な例は以下の通りです。
- 自然が失われてパネルが設置されることによる景観悪化
- 太陽光パネルの反射光が民家に差し込み住環境が悪化
- 放置した雑草による景観悪化や害虫・害獣被害
- 工事やパワコン動作音の騒音
- 強風によるパネルの飛散
- 土壌の流出・土砂崩れ
太陽光パネルの反射光をなくすことはできませんが、設置前にシミュレーションを行い、パネルの角度や位置を調整して影響を考慮することができます。反射の少ない太陽光パネルを利用したり、周辺に木を植えたりすることで軽減可能です。
雑草の放置は、景観を損ねるだけでなく、虫や小動物(ねずみやヘビなど)が住み着いて、近隣に迷惑を与えます。近くに農地があれば、経済的な被害が出ることも考えられるでしょう。
住宅街が近い場合は騒音トラブルも考えられます。工事前に近隣住民への配慮を忘れないようにしましょう。パワコンの動作音は、エアコンの室外機と同じくらいですが、近隣との関係が悪い場合にはトラブルの原因となることもあるようです。
地盤の整備が不十分な場合、土壌流出や土砂崩れが発生することもあります。山を切り開いて斜面にパネルを設置する場合、リスクが高まりますので、設置場所の選定時に注意してください。
⑤盗難被害が増加している
2020年以降、太陽光発電所での盗難被害が急増しています。太陽光パネルやケーブル(銅線)といった設備を盗み、売却するという手口です。背景には、銅価格の高騰や、太陽光発電設備の増加が挙げられます。
メガソーラーは設備規模が大きく、監視が行き届かない箇所が出やすいのに加えて、一度に多くの物資を盗難できるため、泥棒に狙われやすくなっています。
遠隔で監視できるカメラや、頑丈で乗り越えにくいフェンスを設置することで、防犯対策がとれるでしょう。また、定期的にメンテナンスを行い、人の出入りがある整然とした太陽光発電所は、盗難被害に遭いにくいです。
メガソーラーによる環境破壊の実例
数多くの太陽光パネルを設置しなければならないメガソーラーが環境破壊につながっているという指摘が急増しています。以下がその実例です。
- 土砂災害
- 水源の枯渇
- 景観の悪化
- 森林伐採による自然生態系破壊
- 豪雨・台風で太陽光発電設備の破片が散乱
特にメガソーラーがある地域の住民から挙がっている問題点は、森林伐採で自然生態系が破壊されていることと、土砂災害です。
豪雨や台風で太陽光パネルの破片などが周辺に飛散するという被害についても、近隣住民から抗議の声が寄せられており、2025年3月までに太陽光発電設備の規制に関する条例は311条例に及んでいます。
(出典:一般財団法人地方自治研究機構「太陽光発電設備の規制に関する条例」)
メガソーラーの4つのメリット
メガソーラーはデメリットだけでなく、下記に挙げられるメリットもあります。
- ①脱炭素化社会のために有効的
- ②設置してから20年間の収益を予想できる
- ③管理費を低く抑えられる
- ④投資・ビジネスとして利用できる
- ⑤税金対策として活用できる
ひとつずつ解説してきましょう。
①脱炭素化社会のために有効的
2023年の日本の電源構成における再生可能エネルギーの比率は26.1%です。2050年までのカーボンニュートラル達成のためには、今後さらにこの比率を増やしていく必要があります。
太陽光発電は、発電時にCO2を排出しないクリーンな再生可能エネルギーです。
一般的な太陽光発電所よりも多くの発電量を見込めるメガソーラーは、日本の再生可能エネルギーによる発電比率をあげることができ、その結果、CO2排出量が多い火力発電の割合を減らすことできます。
メガソーラーの導入により、地球温暖化の原因である温室効果ガスを削減でき、その結果脱炭素社会の実現に近づけられるのです。
②設置してから20年間の収益を予想できる
再生可能エネルギーの普及を目的として、再生可能エネルギーを利用して発電した電気を一定期間固定価格で電力会社が買い取ることをFIT制度で定められています。
太陽光発電はこのFIT制度の対象です。10kW以上の産業用太陽光発電設備は、20年間市場価格よりも高い固定価格で売電可能です。
また、太陽光発電の年間発電量は、パネルの出力と設置地域の年間日射量からシミュレーションできます。天候や季節により発電量のバラつきはありますが、年間でみると予想を大きく下回ることは少ないです。
そのため、長期間にわたって安定した利益が見込めます。
③管理費を低く抑えられる
太陽光発電設備は、維持管理にあまり費用や手間がかからない投資方法と言われています。年に1~2回の定期点検と、年に1~2回の除草作業を行えば、故障や自然災害などのトラブル時に追加で点検が必要な程度です。
遠隔監視システムを導入すれば、スマホなどで発電状況を確認でき、異常があればアラートが通知されます。
これらの維持管理は、太陽光発電のO&Mサービスを契約すれば、専門業者におまかせできます。
メガソーラーの年間維持費平均値は以下の通りです。
出力 | 1MW~2MW | 2MW以上 |
全体 | 0.62万円/kW | 0.74万円/kW |
地上設置 | 0.64万円/kW | 0.75万円/kW |
屋根設置 | 0.43万円/kW | 0.24万円/kW |
参考:資源エネルギー庁|太陽光発電について 2023年12月
野立てで出力が1MWメガソーラーの場合、年間620万円の維持管理費がかかる計算になります。
④投資・ビジネスとして利用できる
企業イメージがよくなることからビジネスとしてメガソーラーを導入する企業もあります。
企業の社会的責任(CSR)を果たすため、地球温暖化を防ぐための温室効果ガス削減に取り組む企業が増えています。
有害物質を発生させないクリーンなエネルギーを使った太陽光発電を企業として導入するという、地球温暖化や環境問題に配慮した取り組みを行なっていることがイメージアップに繋がります。
また、太陽光発電由来の電力で生産した製品には、環境に優しいという付加価値を付けることができ、環境問題に敏感な消費者のニーズを満たせるでしょう。
さらに、サプライチェーンにも温室効果ガス削減を求める大手企業の取引先として選ばれやすくなるなど、競争力を高めることも可能です。
⑤税金対策として活用できる
太陽光発電は、不動産と同じように固定資産としてみなされるので減価償却の対象となります。
固定資産は月日が経つにつれて、資産としての価値がなくなっていきます。このなくなっていく価値を耐用年数で分割し、毎年経費として計上することを減価償却といいます。
経費として計上できるので、結果的に納税額を減らすことができ、太陽光発電が節税につながるというわけです。
多くの起業家や法人企業では、減価償却を目的に太陽光発電を始めるケースもあります。
また、減価償却以外にも特別償却や税額控除の対象になることもあり、さらに節税することが可能です。
メガソーラービジネス日本の事例
メガソーラービジネスの日本における事例を紹介します。
庄原太陽光発電所【広島県】
庄原太陽光発電所は広島県と中国電力グループが共同で取り組んでいるメガソーラー発電事業の1つで、広島県庄原市に建設されました。パネル容量2,529kWという規模です。
地域還元型メガソーラーでは特に有名で、再生可能エネルギー普及拡大を目標に掲げて設立した事業組合の第1期事業として建設され、2013年以降稼働しています。
(出典:広島県「ecoひろしま~環境情報サイト~地域還元型再生可能エネルギー導入事業」)
播州メガソーラー発電所【兵庫県】
播州メガソーラー発電所は、関西電力とENEOS株式会社が共同出資しているメガソーラーで、兵庫県赤穂郡上郡町に建設され、2023年1月から稼働しています。発電出力は62,880kWです。
年間発電量はおよそ9,300万kWhを想定しています。これは一般家庭に換算すると約3万世帯分の年間使用料に当たります。
(出典:関西電力「播州メガソーラーの商業運転開始について」)
瀬戸内Kirei太陽光発電所【岡山県】
瀬戸内Kirei太陽光発電所は、岡山県瀬戸市にある塩田の跡地を再利用するという形で、瀬戸内Kirei未来創り合同会社によって建設されました。発電量は最大235MWという国内最大級の数字です。
塩田は技術革新で製塩事業が廃止されて土地所有者は倒産しましたが、その跡地を有効利用するために瀬戸内Kirei太陽光発電所が建設されたのです。
(出典:瀬戸内Kirei未来創り合同会社「瀬戸内Kirei太陽光発電所」)
メガソーラービジネス世界の事例
続いて、世界で展開されているメガソーラービジネスの事例を紹介します。
スワイハン太陽光発電プロジェクト【アラブ首長国連邦】
丸紅株式会社とジンコソーラー社は、参画しているアラブ首長国連邦・スワイハン太陽光発電プロジェクトの売電契約をアブダビ水電力会社と締結しています。
丸紅株式会社のアラブ首長国連邦における5件目の発電事業である当プロジェクトは、117.7万kWという膨大な発電容量を持ちながら、稼働した2019年4月当時の世界最安値を記録する発電コストで有名になりました。
(出典:丸紅株式会社「スワイハン太陽光発電プロジェクト向けグリーンプロジェクトボンド発行について」)
ジンコソーラー【中国】
メガソーラーで最大のシェアを持つ中国でも特に有名なのが、スワイハン太陽光発電プロジェクトにも参画しているジンコソーラーです。
ジンコソーラーは世界各国にメガソーラーを建設していますが、中でも2016年5月に稼働したチリ・アントファガスタ州にあるメガソーラーは年間発電量が789GWhに達しています。太陽パネルの数は2020年代に入ってから1,000,000枚を突破しました。
(出典:ジンコソーラー「ジンコソーラーがチリのメガソーラーに122MWモジュールを提供」)
Solar Star【米国】
2015年6月に世界最大級のメガソーラーが米国カリフォルニア州ロザモンドで稼働を開始しました。連携出力は579MW、太陽光パネル設置容量は747.3MWという規模です。
このSolar Starの年間発電量は最低でも1,560GWhと見込まれています。これは一般家庭に換算すると約25万5,000世帯分の消費電力です。
(出典:日経TECH「世界最大747MWのメガソーラーが米国で稼働、「2020年33%」達成へ」)
【出資額ランキング】メガソーラーに投資する日本企業
メガソーラーに出資している国内外の企業と個人を紹介します。
メガソーラーに投資している海外企業・有名人
メガソーラーに関するよくある質問
メガソーラーについて考えるとき、気になる点についてまとめています。
太陽光発電は本当にエコ?
太陽光発電は火力発電に比べ、CO2の排出量を大幅に削減できる点で、エコといえます。
太陽光発電は発電するときに排出するCO2はほぼゼロです。また、発電設備の設計・製造、税両調達等で発生するCO2の間接排出量も、火力発電や原子力発電の数十分の一程度となっています。
メガソーラーに反対する理由は何?
近隣住民がメガソーラーの建設に反対する理由には、次のようなものが挙げられます。
- 景観の悪化
- 森林伐採による土壌流出
- 生態系の破壊
- 工事中の騒音
環境省では2020年4月より、発電容量40MW以上のメガソーラーに環境アセスメントを義務化しています。
今後のメガソーラー建設には、より環境や近隣住民への配慮が必要になるでしょう。
メガソーラーのソーラーパネルは猛毒?
太陽光パネルには、鉛・カドミウム・セレンなどの有害な化学物質が含まれていることがあります。
そう聞くと心配ですが、有害物質が含まれるモジュールの発電セルや電極は、EVA樹脂などで強固に封着されています。パネルの割れ程度では流出する可能性は極めて低く、周辺の環境破壊を引き起こすことはないと考えられます。
ただし、破損したソーラーパネルが長期間不法投棄された場合、有害物質が流出する可能性はゼロではないでしょう。
国は、事業用太陽光パネルの撤去費用積み立てを義務付けるなどして、不法投棄による環境破壊防止対策を行っています。
【まとめ】メガソーラーの今後はどうなる?
メガソーラーは、規模が大きいため土地の準備や工事に時間がかかることが予測されます。
しかし、地球温暖化や環境問題対策として、現時点で日本の主力発電となっている火力発電や原子力発電の発電量を上回るためには、今後メガソーラーのような大規模の太陽光発電がより必要になってくるでしょう。
その証拠に、メガソーラーや企業に多額の投資を行っている世界の大富豪や日本企業は増加傾向にあります。企業で消費する電力を100%再生可能エネルギーにしようと考えている会社もあり、これからもエネルギー市場は活発になると予想できます!
この記事を書いた人
ikebukuro