ペロブスカイト太陽電池の実用化はいつ?デメリット・メリットや現在の購入価格を解説

  • 太陽光発電投資
  • 公開日:2024.11.06
  • 更新日:2024.11.06
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ペロブスカイト型太陽電池とは、実用化が期待されている次世代太陽電池で、価格が安いといったメリットがあることから多くの企業から注目を集めていますが、看過できないデメリットや注意点も存在します。

ペロブスカイト型太陽電池が実用化後に導入したい方や、投資先として検討されている方は、ペロブスカイト型太陽電池のメリットやデメリットやおすすめ投資先を理解することから始めましょう。

ペロブスカイト型太陽電池の解説のほか、ペロブスカイト型太陽電池に関するFAQもご覧ください。

ペロブスカイト型太陽電池とは

ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト型太陽電池とは、太陽の光から得たエネルギーを電気に直接変える結晶構造を持った、ペロブスカイトと呼ばれる材料を利用したペロブスカイト半導体を用いた太陽電池のことです。

ペロブスカイトとは、ロシアにあるウラル山脈で見つけられた鉱物ですが、同じような結晶構造を持っている素材は、一般的な化学物質の合成により作成できます。

理論上、ペロブスカイトを構成している結晶の構造を作成する化学物質の比率や組み合わせは、600種類を超えるといわれています。

ペロブスカイトは、低温プロセスだけで製造できるため、消費する電気量をシリコンより大幅に削減できます。

また、ペロブスカイトは、薄膜で使われるので、シリコンを利用して製造する場合と比べると、約20分の1の材料で済むと言われています。

その結果、シリコンを利用した太陽電池の製作で発生するコストに対し、製造コストが5分の1から3分の1まで削減できると予想されています。

ペロブスカイト太陽電池が注目される背景

現在太陽光発電においてメインで利用されているシリコン素材は、大概の基本となる部分の技術開発は済んでいます。シリコン太陽光発電が持つ変換効率は、すでに理論上限界に近く、効率部分よりも価格競争の段階に移行している現状です。

原料であるシリコン価格は、半導体の市場状況が活発になったことと同時に高止まりとなっているため、マージンは悪化しています。 

日本を含んだ欧米の企業は、このような背景から事実上の撤退に追い込まれています。

また、シリコン太陽電池では十分な照度が必要不可欠のため、設置は屋外にするのが一般的であり屋内設置は不可能です。

さらに、設置は大型パネルでなければならないため、設置できる場所も限られています。

このようなシリコン素材の太陽電池の抱える課題を解決できるとして、新たな太陽電池で期待されているのがペロブスカイト型太陽電池です。

ペロブスカイト太陽電池は日本発祥の技術

ペロブスカイト型太陽電池は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らが2009年に発明したものです。

シリコンに変わる新しい太陽電池の素材を研究する中で、ペロブスカイトを光吸収層に利用した太陽光電池を開発しました。

論文が発表された時点では変換効率は4%程度と低かったのですが、その後の研究で高効率化され、製造プロセスの簡単さやコストの低さ・フレキシブルな形状でさらなる注目を集めています。

実用化は2025年以降と予想できる

次世代の太陽電池として期待されているペロブスカイト型太陽電池が実用化される日も遠くありません。

アイシンや東芝、積水化学工業が2025年以降での事業化を目指し研究開発に取り組んでいます。

柔軟なだけでなく受領も軽いペロブスカイト型太陽電池は、従来の太陽電池では設置不可能な耐荷重が少ないような壁や工場屋根などに設置可能なため、日本政府は脱炭素に向けた重要な技術として実用化への取り組みを後押ししている状況です。

その一方で、海外の企業の動きも活発化しており、2050年に5兆円規模になると試算されている次世代の太陽電池市場獲得に向け、開発競争はより一層激しさを増しています。

ペロブスカイト型太陽電池のメリット

ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト型太陽電池のメリットは、以下3つです。

  • 価格が安い
  • レアメタルが不要
  • フレキシブルな形状にすることができる

価格が安い

素材 価格
ペロブスカイト太陽電池
シリコン系
化合物系
有機系

1つ目のメリットは、価格が安いことです。

ペロブスカイト型太陽電池では、現在普及しているシリコン素材の太陽電池に比べ、コストが安くできる特徴があります。

現在メインで販売されているシリコン素材の太陽電池には、製造に多くのコストがかかっている課題がありました。

シリコンを利用する場合、多くの製造プロセスが必要不可欠であり、プロセスの中には高温での処理も必要になるため、製造する際に多くの電力を消費してしまいます。

その一方で、ペロブスカイトであれば、溶解処理により簡素化された製造プロセスにより高額な設備が不要であり、低温プロセスだけで製造できますので、消費する電気量がシリコンに比べ削減可能です。

ペロブスカイトは、薄膜で使われるので、シリコンを利用して製造する場合と比べると、約20分の1の材料で済むと言われています。

その結果、シリコンを利用した太陽電池の製作で発生するコストに対し、製造コストが5分の1から3分の1まで削減できると予想されています。

レアメタルが不要

2つ目のメリットは、レアメタルが不要なことです。

ペロブスカイトを利用した太陽電池は、レアメタルを利用せずに製造可能なため、原材料が調達できないという問題も発生しにくく、量産しやすいメリットがあります。

レアメタルは、産出量が少ない希少金属であり、レアメタルを利用する場合、どうしても量産が難しいという課題がありました。

現時点で市場に普及しているような結晶系シリコン太陽電池の場合、製造する上でレアメタルは必要不可欠です。

そのため、レアメタル不足で太陽光パネルを製造できる数が減り、それぞれの国でレアメタルの調達を巡る対立が問題視されています。

しかし、ペロブスカイトを利用した太陽電池であれば、化合物系の半導体により構成されているため、一般的で入手もさほど困難でない化学物質を組み合わせることにより製造と量産可能です。

フレキシブルな形状にすることができる

3つ目のメリットは、フレキシブルな形状にすることができることです。

シリコンで作られた太陽電池を薄くした場合、太陽光エネルギーを吸収する効率が下がってしまいます。

そのため、効率面で薄くすることが難しく、厚みがあるので折れないため、耐荷重の面においても設置できる場所は限定されてしまいます。

しかし、ペロブスカイト型太陽電池の場合、太陽の光によるエネルギーを吸収できる係数がシリコンよりも大きいため、薄くした場合でも変換効率の高さを保つことが可能です。

素材 変換効率 曲げ性
ペロブスカイト 24.4%
ペロブスカイト+薄型シリコン 26.5%
シリコン 26.8% ×

出典:東京都市大学

特別な加工をする必要もないため、印刷と同じように製造可能ですので、低コスト・低エネルギーで製造できます。

実際、インクジェット印刷と似た製造方法も既に展開されています。

ペロブスカイト型太陽電池は、このような特徴を持っているため、ソーラーパネルでよく見る長方形の形に限らず製造可能です。

例えば、ウェアラブルデバイスや車体、建物の壁のような曲がった面に設置しても発電できるといった、これまでのシリコン素材で問題となっていた設置個所の条件が軽減されたことは、非常に大きなメリットです。

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ペロブスカイト型太陽電池の注意点・課題

ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト型太陽電池の注意点・課題は、以下2つです。

  • 変換効率がシリコン太陽電池に比べて低い
  • 酸素や水分の影響を受けやすい

変換効率がシリコン太陽電池に比べて低い

1つ目の注意点・課題は、変換効率がシリコン太陽電池に比べて低いことです。

ペロブスカイトを使用した太陽電池が、実用されるまでに時間を要している理由に、結晶の構造が安定していないことがあります。

ペロブスカイト半導体では、分子に影響されやすく、熱で形が変わってしまう性質を持っています。

分子や熱による影響を受けてしまうと、太陽光を吸収できる効率が悪くなってしまい、実用化は困難です。 

太陽光パネルは、夏場で70~80℃程度の表面温度になることもあります。

そのような状況を考えると、実用化するためには、耐熱性を上げることが重要な課題です。

現在の主流であるシリコン太陽電池は、変換効率20%以上の性能があり、電池次第では25%以上の電池も存在します。

そのような電池と比較すると、ペロブスカイト型太陽電池の発電効率はまだまだ足りません。

酸素や水分の影響を受けやすい

2つ目の注意点・課題は、酸素や水分の影響を受けやすいことです。

ペロブスカイトの性質上、酸素や水分などの外的要因に影響されやすく、加熱されると劣化してしまうような内的な不安定性も存在します。

このような特性を持つため、結晶内において結合に影響を与えてしまうと、電子が移動する効率が低下してしまい、太陽光エネルギーを電気に変える効率が下がってしまう可能性が高いです。

ペロブスカイト型太陽電池で投資先におすすめの企業

ペロブスカイト型太陽電池で投資先におすすめの企業を、4社紹介します。

2025年にペロブスカイト実用化を狙う『東芝』

東芝には、2021年の9月にフィルム型のペロブスカイト型太陽電池における新しい成膜法が開発され、さらには703㎠もある大型のサイズでも、発電機能を保つことに成功しています。

また、東芝は2023年度までに研究開発を済ませ、2025年には実用化させるという目標が設定されています。

東芝独自の技術である成膜法は、メニスカス塗布と呼ばれる方法であり、ワンステップのみ均一な加工ができることが特徴です。

ワンステップで加工できることにより、高速な塗布が可能なため、1分で6m加工できます。

JAXAと共にペロブスカイト開発を進める『リコー』

リコーは光学機器メーカーや事務機器として有名ですが、一方でJAXAと共にペロブスカイト型太陽電池における開発も続けられています。

JAXAでは、人工衛星に搭載できる太陽電池の製造に向け研究開発に取り組んでいます。

そこで、柔軟な設計ができ製造コストも安く、印刷のように製造が可能なペロブスカイト型太陽電池に着目し、ペロブスカイト型太陽電池研究を開発した第一人者の宮坂氏と繋がりのあるリコーと共に2018年から研究を開始した経緯です。

JAXAによる研究が進むことで、リコーを経由し民生品にも横展開される可能性が見込め、太陽光発電投資を考えている企業からしてもメリットがある状況です。

2024年度中に量産化を達成を企図する『ホシデン』

ホシデンは、情報通信機器や電子機器を手掛けている企業です。

滋賀県に拠点を置く関連会社のホシデンエフディで、既存のタッチパネルで利用している製造のラインがペロブスカイト型太陽電池に転用できると考え参入しています。

ペロブスカイト型太陽電池は、重量を軽くできるため、IoT機器やモバイル機器に搭載することが期待できるという理由が、開発への取り組みを開始した理由のひとつです。 

ホシデンでは、2021年にサンプルの生産を開始し、2022年では量産に備えた生産設備を導入しています。

2023年では量産を見据えたサンプル開発に取り組みを開始し、2024年度までに量産化を達成する目標を掲げています。

耐久性に優れたペロブスカイトを開発中の『三菱マテリアル』

三菱マテリアルでは、ペロブスカイト型太陽電池を普及させるため、高性能で低コストの製品開発に向け周辺材料の開発に取り組んでいます。

耐荷重が少ないビル壁面や工場の屋根など、従来のシリコン太陽電池の設置が不可能だった場所に導入することが目標です。

従量を軽くし建物の曲面にも設置できるような柔軟性を持たせつつ、耐久性や変換効率といった性能面においても、従来の太陽電池に劣らないペロブスカイト型太陽電池の実用化に向け取り組みが進められています。

ペロブスカイト型太陽電池に関するFAQ

ペロブスカイト型太陽電池に関するFAQを紹介します。

日本で特許を取得している?

ペロブスカイト太陽電池は日本で発明されたものの、発明者は特許を取得していません。開発したのは宮坂力特任教授(桐蔭横浜大学)ですが、特許申請では多くの額が必要なため、申請をしていなかったそうです。

ただし、多くの日本企業がペロブスカイト太陽電池の特開発や生産に関わる取得を取得しています。

すでに実用化している事例はある?

京都大学発のベンチャー企業である、エネコートテクノロジーズが、ペロブスカイト型太陽電池を利用したセンサーを販売しています。

2024年9月現在、その他の企業で実用化されているという情報はありません。

ただし、実証実験や、実用に向けた動きは加速しています。

世界での注目度は?

ペロブスカイト型太陽電池の市場は、2027年までに約20億ドルもの市場規模まで成長することが予想されています。

脱炭素化に向け、それぞれの国における対応が、ペロブスカイト型太陽電池市場における需要を上げていることが要因です。

ペロブスカイト型太陽電池の実用化はいつ?

日本政府は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション(GI)基金」の中で、「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」として予算498億円の支援を行い、2030年の社会実装を目指しています。

企業でもペロブスカイト太陽電池の実用化はすすんでいます。

積水化学工業は、2025年に全面開業する「うめきた(大阪)駅」(JR西日本)広場の高層ビル壁面にペロブスカイト型太陽電池を導入する計画を発表しました。

また、パナソニックホールディングスは、ペロブスカイト太陽電池の2026年の実用化を目指して、2024年の秋以降に試作ラインの稼働を開始するとのことです。

ペロブスカイト型太陽電池に使われるヨウ素とは?

ヨウ素は日本が世界第2位の産出量です。以前は消毒薬や造影剤などに使われてきましたが、ペロブスカイト型太陽電池や液晶などの工業製品にも使用されるようになっています。

最も多く産出されるのが千葉県です。日本の産出量の約80%を占めており、水溶性天然ガスに豊富に含まれています。

ペロブスカイト太陽電池の実用化が進まない理由は?

ペロブスカイト太陽電池の実用化は進んでいますが、まだ実現しているとは言えません。その理由には以下のようなものが考えられます。

  • 耐久性を高めるのが難しい
  • 有害物質である鉛が含まれる
  • 大量生産ラインが確立していない

ペロブスカイト太陽電池の弱点と言われている耐久性の低さですが、技術開発が進急ピッチで進んでいます。

積水化学工業では、屋外耐久性10年相当で発電効率15.0%のペロブスカイト太陽電池製造に成功しました。今後は、2025年までに20年相当の耐久性を実現する方針です。

また、原料に有毒な化学物質である鉛が含まれますが、ペロブスカイト太陽電池から鉛を100%回収する技術はあるため、リサイクルを徹底することで解決できるでしょう。

さらに、大量生産に向けたライン構築も進められているため、今後はさらに生産コストが下がると期待されます。

まとめ

ペロブスカイト型太陽電池とは、太陽の光から得たエネルギーを電気に直接変える結晶構造を持った、ペロブスカイトと呼ばれる材料を利用したペロブスカイト半導体を用いた太陽電池のことです。

ペロブスカイト型太陽電池のメリットには、価格が安いことや、フレキシブルな形状ができることがあります。

一方で、変換効率がシリコン太陽電池に比べて低い、酸素や水分の影響を受けやすいといったデメリットも存在します。

そのため、ペロブスカイト型太陽電池へ投資する際は、メリットやデメリットを十分理解した上で取り組むことが大切です。

SOLSEL

 

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この記事を書いた人

ikebukuro

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