太陽光パネルのストリングとは?組み方による発電効率の違いと計算方法
- 公開日:2024.12.11
- 更新日:2024.12.16
太陽光のストリングとは、太陽光パネルの構成単位を表す言葉です。一定の電流や電圧によって発電電力を取り出す目的で構成されており、太陽光パネルにより発電した電力は、各太陽光ストリングに接続箱で入力される仕組みです。
太陽光発電の導入を検討されている方は、太陽光のストリングについて十分に理解することが大切です。
太陽光発電では、太陽光のストリングをどのように組むかによって、発電効率が変わってきます。
太陽光のストリングの組み方や失敗しないための対策を十分理解した上で、導入を検討するようにしましょう。
目次
太陽光におけるストリングとは
太陽光のストリングとは太陽光パネルの構成単位のことです。まとまった一定の電流や、電圧により発電電力を取り出す目的で構成されています。
出典:株式会社TY
太陽光パネルにより発電した電力は、各ストリングに接続箱で入力される仕組みです。
敷地内で同様の日射が当たると見込まれる地上に設置する型です。
出力が違う太陽光パネルを合わせることなく、同じ製品パネルのみを使用して構成する一般的な条件であれば、太陽光パネルの能力を存分に発揮できます。
そのため、それぞれの太陽光ストリングにおけるパネルの数を可能な範囲内で統一することが基本です。
1ストリングのパネル枚数は、住宅用の太陽光発電であれば3〜8枚程度が一般的です。
企業が運用するような大規模な太陽光発電所であれば、10枚や14枚で構成されている場合もあります。
太陽光のストリング以外の構成単位
太陽光のストリング以外の構成単位について解説します。
最小の単位を表すセル
出典:株式会社TY
太陽電池の基本単位を「セル」と呼びます。「セル」は、モジュールを分解した際に、これ以上は分解不可能な一番小さい単位で、太陽電池素子と呼ぶこともあります。
セルが太陽光によるエネルギーを電気エネルギーに変換できる割合のことを変換効率と呼び、セル1㎠あたりの変換効率は、セル変換効率と呼ぶのが一般的です。
2019年における世界で最高のセル変換効率は、ソーラーフロンティアとNEDOのプロジェクトによるCIS系の薄膜タイプで実現された23.35%です。
また、単結晶シリコンの6インチサイズでは、変換効率25.9%をシャープが達成しています。
セル単体の出力自体は、0.5W程度と少ないものであり、単体で大きなエネルギーを発生するのは不可能です。しかし、複数のセルを集めモジュール化させれば、実用に足りる電力が作成できます。
セルを結合して1枚にしたモジュール
出典:株式会社TY
複数あるセルが接続された状態であり、太陽光パネル1枚を意味した単位です。セルの状態では、太陽光パネルとして完成されていない状態になりますが、モジュールの場合は太陽光パネル製品とし完成されています。
パネルには、セル以外にも耐久性確保のためのガラスや補強材などが組み込まれています。
モジュール自体のサイズは、メーカーやシリーズで変わるものの、縦1.5m×横0.9m×厚み3㎝前後に設計されているのが一般的です。重量は1枚あたり10〜18kgであり、メーカーにより大きく変動します。
モジュールを並べた1列はアレイ
出典:株式会社TY
屋根にパネルを設置する場合は、必ず架台に取り付け設置します。アレイとは、その屋根の架台にモジュールを複数の枚数、直列もしくは並列に繋いで架台などに設置したものです。
太陽電池モジュールを機械的、および電気的に複数架台に設置した太陽電池群です。太陽光発電所に関しては、アレイをいくつか設置することで、多くの量の電気を生産しています。
アレイに内蔵されているモジュールは、どこかのストリングに必ず接続されるので、アレイはストリングを並列接続した1つの塊とも言えます。
モジュールでの最も大きい出力を合計したものがアレイでの容量です。モジュールにより発電された電気は、ストリング内にあるすべてのモジュールを通り、最終的にパワーコンディショナーへ集められます。
アレイのサイズは、太陽光発電を置く土地の面積次第で変化します。一般的に縦の段数は、風圧の関係もあり3段〜5段で、横の列数は土地幅と他のアレイサイズとバランスを見て決められることが多いです。
太陽光のストリングの計算方法
太陽光パネルにおける、最小の単位でもあるセルの出力は約0.5Wです。
最近の主流として利用される60セルのモジュールでは、太陽光パネル1枚における主力は300Wになります。
また、組み方は運転での入力電圧と、最大の許容短絡電流の範囲内にすることを覚えておきましょう。
太陽光パネルから生成された電力は直流なので、パワーコンディショナーにより交流電力に変えられます。
開放電圧と短絡電流を合わせた値が、規格上限を超えない範囲にする必要があります。
例えば、公称短絡電流9Aで開放電圧35Vのモジュールを、縦に3列、横で7枚直列にストリングを並べた場合、以下の値を超える規格値のパワーコンディショナーの設置が必要です。
- 短絡電流:9A×3列=27A
- 開放電圧:35V×7枚=245V
規定値の上限を超えない範囲内で最も適した並列が、発電効率を良くするためのポイントになります。
太陽光のストリングの組み方で生じる発電効率の変化
ストリングの組み方で発電の効率がどの程度変わるのか、一般的な組み方(横)・日影の影響を考慮した組み方(縦)でそれぞれ解説していきます。
横に組むメリット・デメリット(一般的な組み方)
メリット | デメリット |
・100%日照の場合、 すべてのパネルが発電する |
・左端のパネルに影がかかってしまった場合、 すべてのパネルの発電出力が落ちてしまう |
太陽光発電設備における発電効率を高めたい場合、以下2点を意識しストリングを設計するのが一般的です。
- ストリングが複数ある際は、ストリングの直列数を揃える
- できる限りモジュールを多く接続したストリングを設計する
このような繋ぎ方が可能なことが理想にはなりますが、木や建物等が周辺にある場合は、パネルの一部分が影になってしまうだけで発電効率が大幅に低下する可能性があります。
縦に組むメリット・デメリット(日影の影響を考慮した組み方)
メリット | デメリット |
・100%日照の場合、 すべてのパネルが発電する・左端のパネルに影がかかってしまった場合でも、 発電出力の低下を最大限に抑えられる |
・設計や施工におけるノウハウが不可欠 |
上記で解説した一般的な組み方以外に、日影による発電効率への影響を考慮した組み方もあります。
あらかじめ日影要因の発電損失の影響についてシミュレーションで求め、組み方に注意した方法です。
どこか1箇所の不都合での影響を全体に与えない面で、発電効率をより高められるストリングの組む方法といえます。
しかし、実はこの組み方は簡単ではなく、一般的な施工業者の場合でも太陽光発電における設計や施工のノウハウを所持していなければ最も適した設計を行うことは困難です。
シンプルに太陽光パネルを並列させるだけの場合は、経験が浅い場合でも可能ですが、発電効率を考慮したストリングの組み方は非常に困難で、専門的な知識や経験が必要になります。
太陽光パネルのストリングにはパワコンも関連する
ストリングを接続するパワーコンディショナーの選び方で、機器コストやメンテナンスコストが変わります。
パワーコンディショナーは、集中型と分散型の2種類に分けられます。
容量の大きい集中型は1台で多くのストリングを繋げられ、メンテナンスコストが削減できますが、設置時のコストや故障時の発電ロスが大きいです。
分散型は小型で繋げるストリングは少なくなりますが、設置時のコストが抑えられ、故障時に影響するパネル数が少なく発電ロスが抑えられます。
メリット・デメリットは、以下表の通りです。
型 | メリット | デメリット |
集中型 | ・機器コストの削減が可能 ・設置・保守の簡素化 |
・故障時の発電ロスが大きい ・故障に対応するためには専門的な技術者が必要になる |
分散型 | ・故障による影響が少なく済み、安定して使える ・山間部のような場所でも簡単に設置できる |
・パワコン設置の工数が増える ・1kWあたりにかかる機器代金が高くなる |
集中型パワーコンディショナー
集中型とは、大きい規模で使用されることが多く、発電において効率が高いパワーコンディショナーの設置方法です。
集中型パワーコンディショナーのメリット
- 設置コストが削減できる
- 設置台数が少なくできる
- メンテナンスの工数が少なくできる
大きいサイズのパワコンであれば、1台の容量も大きいため、分散型と比較しkWにおける機器のコストが削減できる傾向があります。
FITの価格は年々下落を繰り返しており、入札により買取価格が決定する2MWを超える大規模の発電設備に関しては、さらにシビアにコスト管理することが求められています。
そのため、機器の導入コストを低くできるのは、大きなメリットです。
設置する台数の少なさに関しては、設置や保守に発生する工数の圧縮に結び付きます。分散型と違って、数台という少ない台数の設置のみで済むこともメリットになります。
大型パワコンの場合は、重量があるため重機などが必要になりますが、数十台の規模でパワコンを設置しなければならないため、そのような面でも工数を考慮した場合に負担が少なくなります。
また、すべてのパワコンではなく数台のパワコンをチェックするだけで良いため、メンテナンスにおける工数も削減可能です。
集中型パワコンのデメリット
- 1台故障すると発電ロスが大きい
- 1つのパワコンのサイズが大きく基礎工事が必要
その一方で、集中型パワコンは大きい容量のパワコンを少ない数設置するので、パワコン1台が持つ責任は大きいです。
定期的にメンテナンスを行っている場合でも、故障する可能性は排除できません。
集中型パワコンの場合は、パワコンが1つ故障してしまうだけで発電に大きな影響が生まれてしまいます。
ざっくりとした計算で例えると、パワコンが1台故障してしまった場合、設備がパワコン10台運用であれば、単純に発電量は10%下がりますが、もし2台運用であれば、発電量は半分の50%も低がるということです。
少数化すればするほど、故障した時の影響は大きくなることを理解し検討しなければなりません。
また、集中型パワコンでは1台における容量が大きいため、製品自体の単価は高額であり、設置をする際にもコンクリート基礎が必要になりますので、導入しようとすると費用がかさんでしまいます。
分散型パワーコンディショナー
一方で、分散型のパワコンであれば、太陽光パネルの近くに直接設置し、ぞれぞれのパネルの発電能力が最大限に引き出せます。
分散型パワーコンディショナーのメリット
- 劣化や故障が発見しやすい
- 1つが故障したときの発電ロスが少ない
- 1つのパワコンの単価が安い
- サイズが小さく設置に基礎工事が不要
各パネルでモニタリングや制御が可能なため、劣化や故障が早期に発見できるため、すぐに対応可能です。
故障が発生した際にも、影響があるのは接続されているパネルだけで済むため、全体的に発電力が大きく下がってしまう心配が不要です。
分散型パワコンの場合、1台に接続されている太陽光パネルの数が少なく、また各パワコンが独立しています。
そのため、故障してしまった場合でも、その他のユニットへ影響がないので発電ロスが抑えられます。
さらに、分散型のパワコンで不具合があった際にも、不具合が生じている部分だけを換えることで改修が可能です。
分散型パワコンにはモニタリングや制御も各ユニットで実施できるため、故障してしまったり、劣化してしまったりした際に早期発見でき、対応可能なのも大きなメリットです。
小さくシンプルな構造の分散型のパワコンは、集中型のパワコンと比べると製造にかかるコストが比較的低くなり、単価を下げることが可能です。
分散型パワーコンディショナーのデメリット
- 設置・メンテナンスの工数が増える
集中型よりもパワコンの数が増えるため、設置工事の手間がかかります。
また、修理だけなら故障箇所のみの対応でいいのですが、全体のメンテナンスを行う際には全てのパワーコンディショナーを見る必要があるため、こちらも工数が増え費用もかかるでしょう。
太陽光のストリングの組み方で失敗しないための対策
ストリングの組み方で失敗しないための対策は、以下2つです。
太陽光パネルの形状・設置角度を工夫する
太陽光発電において、発電効率を上げるためには、太陽光パネルを適切な角度にすることがとても重要です。
一般的に、太陽光パネルの傾斜の角度は、太陽の高度により調整します。
しかし周囲の建物や障害物などの状況でパネルに影ができてしまう場合は、影に合わせて角度を調整し、影響ができるだけ少なくなるように調整する必要があります。
このように、太陽の光が最大限受けられるように、最も適した角度に太陽光パネルを調整すれば、発電効率が向上できます。
施工実績が多く経験豊富な業者を選ぶ
太陽光パネルのストリングは、複数枚のパネルを直列に接続させたものであり、1セット単位で1ストリングと呼ばれます。
また、ストリングを組み合わせる方法により影が発生した場合の影響が抑えられるので、ストリングを含む高度な技術を所持する施工販売業者に相談するのが大切です。
まとめ
太陽光パネル同士を接続し、構成した直流回路をストリングと呼びます。
太陽光のストリングは、一般的な組み方と日影の影響を考慮した組み方で発電効率が異なります。
また、パワーコンディショナーの選定も、発電効率を意識する上で非常に重要です。
太陽光発電の発電効率を意識し、できるだけ発電効率の良い設備を導入することが大切になりますので、太陽光ストリングの構造や組み方のメリット・デメリット、失敗しないための対策を十分理解した上で導入するようにしましょう。
この記事を書いた人
ikebukuro