CCS(炭素回収貯留)とCCUS解説!違いや課題、メリット・デメリットとは
- 公開日:2026.01.21
- 更新日:2026.01.21
CCSとは「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、発電所や工場から排出されたCO2を地中深くに貯留・圧入する技術を表します。CCUSとはどう違うのか、どういったメリットとデメリットがあるのかを見ていきましょう。
CCSはカーボンニュートラル達成に不可欠として注目されています。現在、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスは、世界的な課題となっています。この状況を受け、2020年に国は「温室効果ガス・実質ゼロ」とするカーボンニュートラルの達成を目標として掲げました。
CCSはどういった流れでカーボンニュートラル達成に必要なのか、日本でのCCSに関する取り組みについても解説していきます。
目次
カーボンニュートラルにおいて重要な「CCS・CCUS」とは

「CCS」は日本語で「二酸化炭素・貯留」という意味で、CCSは、発電所や工場から排出されたCO2を地中深くに貯留・圧入する技術のことです。
CCSは、排出されるCO2を集めて地中に貯留する技術ですが、CO2を地上へ漏らさないために、CO2を貯留する隙間のある地層とそのCO2を地上に漏らさないフタとなる地層が必要です。
CCSの技術と地層の選定や管理によって、貯留したCO2を1000年に渡り閉じ込めることが可能と言われています。
CCSとCCUSとの違い
| CO2の扱い | CCS | CCUS |
| 分離・回収 | 〇 | 〇 |
| 貯留 | 〇 | 〇 |
| 有効利用 | × | 〇 |
「CCUS」は「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、貯留したCO2を有効利用することが目的です。

CCUSの技術を用いたCO2の活用法に、CO2を燃料やプラスチックに作りかえたり、CO2をそのまま使ったりする方法があります。
CO2をそのまま利用する方法では、CO2を油田に注入して石油を増産する「EOR(石油増進回収)」があり、実用化もされています。

「CCS」はCO2を地下に貯留するための技術を指し、その貯留したCO2を有効利用するための技術が「CCUS」という訳です。
国際エネルギー機関によると、CCUSは2070年までの累計CO2削減量の15%を占める計算です。
また日本では、2020年12月に発表されたグリーン成長戦略にて、電子部門で排出しているCO2の30〜40%削減をCCUS(CCS含む)で達成するとしています。
今後、重要な役目を担う技術として期待が高まっています。
参考:環境省
関連記事:カーボンニュートラルとは?脱炭素社会を目指すメリット・デメリットと私たちにできること
CCS・CCUSが注目を集めている背景

CCS・CCUSが注目されるようになったのは、国際的な気候変動への取り組みが背景となっています。
【2016年】脱炭素社会に向けパリ協定が発行
パリ協定は、2015年に開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択された温室効果ガス削減に向けての国際的な取り組みです。
京都議定書では日欧を中心として先進国が対象となっていましたが、パリ協定では先進国・発展途上国にかかわらず全ての締約国が対象となりました。
パリ協定の最大目標は、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃に抑える」というものです。
パリ協定の目標を達成するには、環境技術への投資と導入が不可欠となり、そこで注目されたのが「CCS」や「CCUS」でした。
【2020年】首相による日本の温室効果ガスゼロ宣言
2020年10月、菅総理は所信表明演説にて2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを発表しました。
カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と、森林などによるCO2吸収量を合わせて実質ゼロにするものです。
現在、日本だけではなく世界各国がこのような大きな難題に向けて取り組んでいますが、業界によっては二酸化炭素の排出量を削減しきれないことが問題になっています。
そんな中、カーボンニュートラルの切り札として期待されているのがこの「CCS」と「CCUS」というわけです。
CCS・CCUS(炭素回収貯留)の利点・メリット

ここでは、CCSが環境に与えるメリットを3つ紹介します。
- 大気中に放出するCO2を大幅に削減できる
- CCUSでは炭素を再利用できる
- 再生可能エネルギーの普及に繋がる
大気中に放出するCO2を大幅に削減できる
CCSやCCUSにより、CO₂排出量を最大で90%以上削減できるといわれています。
石炭・天然ガス火力発電やセメント製造など、排出を完全にゼロにすることが難しい産業においては、CCS・CCUSが温室効果ガス削減の切り札となっています。
特にCCUSでは、削減されたCO₂を地下深くに長期間安全に貯留できるため、大気中の温室効果ガス濃度の上昇を抑制し、地球温暖化の進行を緩やかにする効果も期待されています。
CCUSでは炭素を再利用できる
CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)は、CCSに「利用(Utilization)」を加えた仕組みです。
捕集した二酸化炭素を化学品や燃料、建材などに再利用することが可能で、資源としての活用価値が期待されています。再利用により経済性が高まり、持続可能な社会に貢献できる点がメリットです。
CCSは高濃度のCO2を回収しますが、DACは空気中の低濃度のCO2を分離・回収します。
再生可能エネルギーの普及に繋がる
またCCUSは、再生可能エネルギーの普及に繋がるメリットがあります。
太陽光発電や風力発電は、気候などにより発電が不安定な傾向にあるため、余剰の電力を燃料に変えて貯蔵できる仕組みが検討されています。
変換する燃料の候補に水素エネルギーがありますが、水素は貯蔵のためのインフラ整備が不十分なため、現状では難しいところです。
そこでCCUSで回収したCO2をメタンに変換して貯蔵するという方法が浮かび上がります。
メタンなら既存のインフラで利用可能なため、実現させやすいためです。
メタンを製造することで、余剰電力を貯蔵して利用できるため、再生可能エネルギーの普及に繋がるというわけです。
関連記事:【太陽光発電のメリット・デメリット】住宅用太陽光パネルの設置や効果を解説
CCS・CCUS(炭素回収貯留)の注意点・デメリット

ここでは、CCSの注意点とデメリットを2つ解説します。
運用コストが高額
CCSの課題として運用コストが高額なことが挙げられます。CCSのコストには以下のものがあります。
- CO2を分離・回収する設備と運転のコスト
- 回収したCO2を輸送するコスト
- 貯留したCO2を調査するコスト
現在、CO2を1トン回収すると約4,000円がかかり、高コストといえます。
これを2030年には1,000円から2,000円台にするというコスト削減目標に向けて技術開発が行われています。
日本では法整備が進んでいない
また、日本ではCCSの普及に向けての法整備が必要です。
資源エネルギー庁が設置した「CCS長期ロードマップ検討会」では、2050年時点で1.2〜2.4億トンのCO2貯留を目指し、2030年以降のCCS事業の展開を目標にしています。
CCSの事業化に向けては法整備が必須であり、「CCS事業法(仮称)」の検討が行われてきました。
まず、CCS事業に対する法律の適用が明確でなく、事業者が守るべきルールや責任が不明確であったため、地域住民への説明が不十分でした。
そのため、CCS事業に沿った新しい法律「CCS事業法(仮称)」が強く求められています。
関連記事:風力発電投資とは?失敗するというデメリットやメリット、利回りについて解説
世界でのCCS・CCUSに関する取り組み
経済産業省の資料によると、世界で196件の大規模CCSプロジェクトがあり、そのうち61件は2022年に新たに発表されたプロジェクトです。
すでに操業中の施設によるCO2回収・貯留量は、建設中・開発中のものも併せて3億6,100万トンに上ります。(参考:経済産業省 CCS長期ロードマップ検討会最終とりまとめ説明資料 令和5年3月)

CCS・CCUSの事業は、アメリカとヨーロッパを中心に増加しています。最も導入数が多いのはアメリカで、すでに稼働しているCCSもあり、CO2の削減がすすめられています。
また、2021年6月には「アジアCCUSネットワーク」が発足しています。日本の提案で始まり、参加国はASEAN10ヵ国とオーストラリア・アメリカ・日本です。今後の経済発展に伴いCO2排出量が増える傾向がある東南アジア諸国で、脱炭素化に貢献すると期待されています。
参考:資源エネルギー庁 高いポテンシャルのあるアジア地域のCCUSを推進! 「アジアCCUSネットワーク」発足
日本でのCCS・CCUSに取り組む企業・プロジェクト

2024年5月、CCSを事業として運営するために必要な法律「CCS事業法」が成立しました。CCS事業法は、大きく分けて以下2つの規制を定めています。
①「試掘・貯留」時の安全・適正管理
貯留層がある可能性がある地域を特定区域に指定し、特定区域で試掘や貯留を実施する者を募集して、実施にふさわしい者に経済産業大臣が事業を許可し、海域での特定区域指定と貯留事業の許可に環境大臣の同意を必要とする。
②「輸送時」の安全・適正管理
貯留を目的とするCO2を導管で輸送する場合、経済産業大臣に届け出なければならない。実施する事業者に技術基準の適合・保安規定の策定などを定める。
苫小牧地域CCS
日本でも2012年から苫小牧で国内初の大規模な実証試験事業が始まりました。
事業目的は、製油所の排出ガスを地中に貯留する技術の実証と、CO2の動きを予測するシュミュレーション技術やモニタリング技術などの実証です。
2016年4月から年間10万トン・累計30万トンのCO2を地中に圧入することを目標に掲げ、2019年11月には累計圧入量30万トンを達成しました。
現在は圧入が終了しており、モニタリングが行われています。
また、2025年2月に「二酸化炭素の貯留事業に関する法律」が施行され、苫小牧沖の一部の区域が、CCS事業の特定区域として指定されました。
これを受けて、事業化・産業化に向けた動きが進んでいます。
日本海側東北地方CCS事業
日本海側の東北地方でもCCS事業が進められています。
とくに秋田県や新潟県沖の日本海において、海底下の地層を利用した大規模な貯留が計画されており、脱炭素の実現に向けた先進的な取り組みとして注目されています。
主な推進企業は伊藤忠商事・三菱重工業・INPEX・大成建設の4社です。経済産業省の支援を受けて、実証段階から商用化を見据えた事業が進行中です。
CO2の分離回収・船舶輸送・貯留を事業として推進し、2030年頃にCO2圧入量年間250万トン以上の達成を目指しています。
参考:船舶輸送を用いた大規模広域CCS(二酸化炭素の分離回収・輸送・貯留)バリューチェーン事業の実施可能性に係る共同スタディの実施について 伊藤忠商事
CCSに関するよくある質問
CCS・CCUSについて、気になる点についてまとめました。
CCSは何のために必要?
地球温暖化抑制のために必要です。CO2は地球温暖化の一因と考えられており、排出量の削減が進められています。
CCSを活用し、火力発電所や工場から排出されるCO2を適切に除去できれば、これまでやむなく排出されていたCO2を大幅に削減できます。
CCS・CCUSとDACの違いは?
CCS・CCUSは工場や発電所など排出源から直接CO₂を捕集するのに対し、DAC(Direct Air Capture)は大気中に拡散したCO₂を直接回収する技術です。
DACは理論的にどこでも導入できる利点がありますが、現在は大量のエネルギーとコストが必要で、実用化はまだ限定的です。
一方で、CCS・CCUSは排出源が明確なため効率的にCO₂を削減できます。両者は補完的な関係にあり、将来的には組み合わせて使われる可能性があります。
CCSとCCUの違いは?
CCSがCO2の回収・貯留を指します。CCUは、除去したCO2を有効活用する取り組みです。
CCUの技術が実用化されれば、CO2の循環利用が可能になります。邪魔者扱いされていたCO2を、資源として使うことができるようになれば、カーボンニュートラルの実現もより一層近づくでしょう。
CCSは、発電所や工場から排出されるCO2を回収して地中に貯留できるため、大気中への放出を防ぐことが可能です。
環境省によると、出力80万kWの火力発電所にCCS技術を導入すると、年間340万トンのCO2が大気に放出されるのを防ぐことができます。
また、CCSは火力発電、製鉄工場、セメント生産、ゴミ焼却など多くの分野に導入可能であり、CO2削減に大きく貢献できるとされています。
CO2を地下に埋める方法とは?
日本の苫小牧で行われている実証実験では、海底地下1,000mより深い砂岩層や火山岩層にCO2を圧入しています。
2019年に30万トンの圧入を達成し、現在はモニタリングのみ実施。地中や海中にCO2が漏れ出すなどの問題は起きていないということです。
アメリカでは、油田にCO2を圧入することで、原油の生産量を増加すると同時にCO2を地下に閉じ込めるという方法も使われてます。
CCSでCO2はどのような状態になる?
CCSでは、CO2に高い温度・圧力をかけて、超臨界という液体と期待の両方の性質を持つ状態にします。
超臨界になると、気体から体積が約250分の1と小さくなり、効率よく貯留することができます。
CCSの実用化はいつ?
日本政府は、CCSの2030年の実用化を目指しています。
2050年のカーボンニュートラル達成のためには、CCS実用化が不可欠です。2030年の事業開始を見越して、CO2を貯留する区域の指定や、CCS事業者の許可などの法整備が進められています。
参考:経済産業省 CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ
関連記事:水素エネルギーのメリット・デメリットとなぜ普及しないか理由を解説
まとめ
CCSは発電所や工場などから排出されたCO2を地中に貯留させる技術で、大気中に放出するCO2を大幅に削減できます。
CCSは、2050年の「温室効果ガス・実質ゼロ」を目標とするカーボンニュートラルの達成に向けて、欠かせない技術です。
CCUSは、CCSで地中に貯留したCO2を有効活用するための技術で、CCSと共に今後大きな役目を担うことが予想されています。
CCSやCCUSは脱炭素社会に向けて重要な技術です。
2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、CO2削減に取り組んでいきましょう。
資源エネルギー庁|Q.地中に埋めたCO2は、地上に漏れてこないのでしょうか?
資源エネルギー庁|CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)
環境省|CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み
経済産業省
この記事を書いた人
ikebukuro


