エシカル消費とは?環境と社会に与えるメリット・デメリットと私たちにできること
- 公開日:2024.12.11
- 更新日:2024.12.11
最近SDGsという言葉を最近よく耳にしますね。人間の経済活動は地球環境を多大な負荷をかけていて、環境を守りながら経済活動を続ける姿勢が求められています。
持続可能な環境は大きく分けて2つあります。それは地球環境と労働環境。
地球環境については、モノを作るには少なからず環境を破壊しながら作り、消費していくことはイメージしやすいですよね。
労働環境とは発展途上国などで、雇われた人たちが安い賃金で長時間労働の末にもたらされた商品を輸入した国が商品していくことです。なぜ割安で買えるのか、考えた事はありますか。
地球環境と供給してくれる人々に配慮した消費行動をエシカル消費といいます。私達が配慮し、選択した消費行動が地球環境にどのように還元されるか一緒に考えてみましょう。
目次
エシカル消費とは?
エシカルとは、直訳で倫理的・道徳的な消費を意味する言葉です。具体的には人や地球環境、社会、地域に思いやりのある消費を指します。
エシカルとサステナブルの違い
エシカルは「倫理的であること」を重視するのに対し、サステナブルは「持続可能であること」に焦点を置いています。
サステナブルな製品を選ぶことは、地球環境の保護に繋がるエシカル消費の1つであると言えます。
そして、サステナブルな社会を実現するためには、ひとりひとりのエシカルな行動が欠かせません。
エシカルとSDGsの違い
SDGsとは、2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標」のことです。サステナブル(持続可能)な社会の実現を目指して、17の目標を169の具体目標が示されています。
エシカル消費は、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」に含まれる考え方です。目標12「つくる責任つかう責任」には、食品ロス・廃棄物問題や、リサイクルなどについて記載されています。
エシカル消費を実践することで、SDGsアクションを取ることができるでしょう。
エシカルとCSR
CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の略称で、「企業の社会的責任」という意味です。
CSRの国際標準規格であるISO26000では、企業が社会的責任を果たすための7つの原則を示しており、その中の1つに「倫理的な行動」があります。
つまり、エシカル消費や、エシカル製品の生産はCSRを果たす行動の1つであると言えます。
なぜエシカル消費が注目されるの?
日本が輸入している製品の中には発展途上国が輸入元となっている物が少なくありません。
注目される背景のひとつに未だ、途上国の生産に関わる人々の貧困が解決されていない点があげられます。
また、SDGsで課題とされている環境問題や人権問題、貧困、食料危機を解決する手段として注目されています。
SDGs 目標12「つくる責任 つかう責任」
持続可能な消費と生産パターンを確保する理念です。製品をつくる生産者はもちろん、購入者にも購入する責任があるという考え方です。18世紀後半、産業革命以降私達は地球環境に負荷をかけながら発展をしてきました。
需要量を大幅に上回る大量生産・大量消費。その後には大量廃棄が続きます。すべての人類とは言い切れないですが、この活動を続けると地球温暖化などを加速させる要因の1つになります。エシカル消費は購入者が生産者の生産背景を知った上で製品の選択をする場面がほとんどですので、SDGs 目標12「つくる責任 つかう責任」の目標を達成する1つの手段として有効です。
【個人でもできるエシカル消費】買い物で意識できること
ここでは個人でできるエシカルな活動について紹介していきます。
マイバッグを持参する
日本でレジ袋が有料化されたのは2020年7月1日からです。背景には海洋プラスチック汚染など地球環境問題があげられます。耐久性が低いビニール袋は繰り返し使うことは不向きですよね。私達がマイバッグを持参し、レジ袋を削減することでレジ袋を作成していた資源を守ることができます。
フェアトレード認証商品を購入する
原料の生産、加工、製造をへて、完成品になる各工程で国際フェアトレード基準が守られている商品を指します。
フェアトレードとは、日本語で公正な取引という意味です。発展途上国では生産に関わる人たちが未だに貧困から抜け出せず、児童労働が蔓延しているという悲しい現実があります。
公正な取引をすることで発展途上国の生産者の生活を支援する、産業の持続という目的があります。
子どもたちも児童労働の機会が減れば学校に通うことができます。教育を受けられるようになれば地域の発展に繋がります。今回は具体的にコットン製品とコーヒー豆についてご紹介します。
【具体例1】コットン製品
私達の生活にかかせない衣服。定価自体が安い製品を見かけて、安易に購入していないでしょうか。
定価が安いと衣服になる前の原料の原価はさらに安いという事がいえます。これらは西アフリカ、インド、パキスタンなどアフリカ、アジアの途上国が生産国になっていますね。
日本をはじめとする先進国に輸出されており、各国の経済や人々の生活を支える主要産業になっています。原価が安いと収入も安くなるので生産者の生活が成り立たなくなりますよね。国の経済発展にも影響し、貧しい人・国は貧しいまま不平等を強いられます。
安さを理由に安易に購入しない、一度購入したら長く使う姿勢が求められています。
【具体例2】コーヒー豆
コーヒー豆の産地も発展途上国が多く、ここでは主に児童労働の問題点を取り上げます。先進国の取引企業に低価格でコーヒー豆を買い叩かれた結果、貧しい家庭では低賃金・重労働で子どもたちが働き手として駆り出されているケースがあります。
日本の食料自給率は38%(2017年現在)です。約62%は海外からの輸入に頼っています。今回はコーヒー豆を例にあげましたが、輸入される食品の中には児童労働が背景にある場合がありますので、購入の際に少しだけ考えてみましょう。
国際フェアトレード認証マーク
フェアトレード製品には、国際フェアトレード認証マークが貼られています。
この認証マークは、社会的・環境的・経済的基準を満たした商品にのみつけられるマークで、生産者にとってフェアな価格で貿易をしているという意味があります。
コーヒーやコットン以外にも、フェアトレードのチョコレートなどにも貼られています。
地産地消をする
直売所や市場がイメージしやすいですよね。地元の農家さんが野菜を地元で販売し、購入します。商品の輸送にかかるエネルギー、人員が削減できます。移動が少ないので鮮度の確保においても環境負荷が軽減されていますよね。また、生産者の顔がみえる事は消費者にとって安心感にも繋がります。
直売所では規格外や不揃いな農作物を見たことはありませんか。味は一緒なのに捨ててしまうのはもったいない。スーパーには卸せないような農作物も直売所では割安で購入できます。調理してしまえば最初の見た目はあまり関係なくなるので、家計にとって大きなメリットといえるのではないでしょうか。
エシカル消費の3つの問題点
エシカル消費に取り組む場合に、デメリットと思われる点もあります。
①企業のブランディングだと思われている
環境保全をテーマにした商品開発をしている企業、と聞くとイメージアップだと思いませんか。
良いイメージを与えているだけでは?とついつい疑ってしまうこともありますよね。そうなってしまうと購入しない選択をする人も出てくるはずです。
この場合、たとえば「売上の◯%が寄付されます」だけではなく、どの地域にどのような形で還元されるのかまでパッケージに詳しく表記されていると信頼できますね。興味がある方は企業のホームページなどをチェックするとより確実です。
②知名度が低い企業が作っている
商品を手にする時、メーカーを確認する人は多いものです。大手メーカーが作っている商品だと安心感がありますよね。地元メーカーで全国展開していない場合は、その土地でしか購入できませんし、知名度がない+価格が高いとなかなか手に取りません。
店内のポップなどをチェックし、紹介に力を入れていると1つの判断基準になりますね。
また、インターネットで実際の商品を使ったレビューをみてみましょう。価格に見合った価値が提供されていませんか。
③価格が高すぎる
モノを販売する場合、企業の利益分も含めて価格を設定しなければなりません。フェアトレードでは取引先に適正な報酬が支払われているので、どうしても値上げせざるをえません。割高と感じてしまい、手が届きにくくなってしまいます。
例えば現地の産業維持のため、協力金を払っているなど、寄付も一緒にできていると考え、付加価値が見いだせれば値段設定に納得がいきますね。
逆に考えると今までの価格が安いということはフェアではなかったといえるのではないでしょうか。
グリーンウォッシュに要注意
グリーンウォッシュとは、本当は環境に配慮していないにもかかわらず、環境に優しいと謳いながら生産過程で多くのCO2を排出しているといったような、いかにも配慮しているように見せかけてサービスや商品を提供することをいいます。
環境問題に興味関心を持っている人がこのような商品やサービスを利用することで、グリーンウォッシュをしている企業や経済的な成長をしてしまいます。
となると、エシカルとはかけ離れた事態になってしまうので、消費者はグリーンウォッシュをしている企業や商品に注意を払う必要があるのです。
エシカル消費に関するよくある質問
エシカル消費について考える時に、気になる点についてまとめました。
企業がエシカルに取り組むメリットは?
エシカル消費を意識した取り組みは、企業側にもメリットがあります。
- 企業イメージの向上
- 新たなサービスや商品の開発
- 新しい顧客を獲得
エシカルやSDGsなどに取り組んでいる姿勢は、企業イメージの向上に繋がります。また、これまでとは違った視点から商品開発やサービス創出を行うことで、新たな商品・サービスを生み出すきっかけにもなります。
さらに、エシカル消費を重視している消費者を獲得することもできるでしょう。
エシカル消費ができる商品についているマークは?
エシカル消費を行うためには、信頼できる認証マークを参考に選ぶのがおすすめです。記事内で紹介した「国際フェアトレード認証」の他にも、以下のようなものがあります。
エコマーク |
生産から廃棄まで環境負荷が少なく、環境保全に役立つと認証 |
グリーンマーク | 紙製品が、原料に既定の割合以上の古紙を使用したリサイクル製品であると認証 |
GOTS認証 | コットン・ウール・麻・絹などの繊維製品がオーガニックであることを保証 |
FSC認証 | 紙製品や家具などに使われる木材が、適切な管理を受けた森林由来であると証明 |
MSC認証 | 水産物が、水産資源を守るための厳格な規格に適合した漁業で得られたことを認証 |
ASC認証 | 養殖水産物が、環境問題にも配慮した世界的な基準を満たして生産されたことを認証 |
これらの認証マークは一例であり、他にもさまざまなマークがあります。製品のラベルを見てみて、確認してみてくださいね。
日本でのエシカル消費の普及は?
2020年に電通が行った意識調査によると、「エシカル消費」を意味まで理解している人は、対象者全体の5.7%にとどまっており、世間一般的に浸透しているとは言えない状況です。(参考:エシカル消費 意識調査2020 電通)
エシカル消費が、言葉だけでなく行動として広まるには、ひとり一人の意識改革と、企業の取り組みが必要になるでしょう。
エシカル食品とはどんな食品?
エシカル食品と呼ばれるのは、以下のような特徴を持つ商品です。
- 過剰な添加物を避けている
- オーガニック栽培された原料を使用している
- 廃棄物を最小限に抑えている
- 製造過程の労働環境が守られている
- 消費者の健康維持に役立つ
明確な基準はありませんが、ただ価格を安くすることを追及するのではなく、人権問題・環境問題などに配慮された製品がエシカル食品と呼ばれます。
まとめ
日常生活を送っていく上で、消費行動をなくすことは不可能です。今までに何気なく買っていた商品。日本国内で生産者が商品の特徴を紹介、PRしている姿は目にしたことがあると思います。
しかし、島国で産業も限られている日本では輸入に頼る面が多いですよね。原材料、製品を発展途上国から輸入している事実を考えてみてください。
日本同様、途上国の生産者にも生活が、国には発展があります。先進国の欲を満たす都合だけで、過酷な労働・低賃金などを強いる世の中は近い将来変わらないといけません。
環境破壊も同様です。例えば途上国では工業排水を処理しないまま河川に排水していたとして、「途上国は環境意識が低い」と思ったとします。しかし、製造された製品を輸入し、私達が買っていたらどうでしょうか。巡り巡って私達が地球環境を破壊しているといえませんか。
今の私達にはできる範囲で取り組む姿勢が求められています。
この記事を書いた人
ikebukuro