I-RECとは?メリット・問題点や非化石証書との違いを解説
- 公開日:2024.12.11
- 更新日:2024.12.11
I-RECとは、62以上の国と地域で発行される国際的な再生可能エネルギー電力証書のことです。
「I-RECについて詳しく知りたい!」
「いまいちI-RECがどういったものか分からない」
このような方も多いのではないでしょうか?
I-RECには発行するための条件や、2種類の購入方法があるため、利用を検討する際は条件や購入方法について十分理解することが大切です。
また、その他の環境価値との違いについても理解しておきましょう。
この記事では、I-RECについて・メリット・活用できる国と条件・発行方法・よくある質問などを解説します。この記事を読むことで、I-RECについての理解が深まります。
目次
I-REC(海外再エネ電力証書)とは
I-RECは、再生可能エネルギーから発電させた電気に対して、価値を証書化したものです。
オランダの非営利団体であるStandardが管理および認証し、アジアを中心にアフリカなどの計50を超える国および地域で使われています。
日本でも2021年の7月に実証プロジェクトがスタートされており、2023年の1月以降は発行対象が広げられ、多くの人から注目されています。
I-RECには、電気が生産された土地と発電する方法などの電気が、どの場所でどの方法で発電したのかが分かる「再エネ属性」を記載します。
そうすることで、企業や工場などでは、できるだけ環境に対して負荷が少ない発電方法を選択できるようになります。
I-REC発行の仕組み
I-REC企画財団が国際規格の策定を行っており、レジストリオペレーターが属性情報の唯一性・追跡性を管理しています。
日本で発電設備や発電量の認証を行っているのは「一般社団法人ローカルグッド創生支援機構」です。また、「SCSK株式会社」がプラットフォームオペレーターとなっており、活用することでI-RECの売却・償却をワンストップで行えます。
I-RECと他の環境価値との違い
I-RECと他の環境価値との違いは、以下の通りです。
環境価値 | エリア | 属性 | 対象 |
I-REC | 世界50ヵ国以上 | 〇 | 再エネ |
非化石証書 | 日本 | トラッキング 付のみ |
再エネ 原子力 省エネ |
J-クレジット | 日本 | 〇 | 再エネ 省エネ 森林吸収 |
グリーン電力証書 | 日本 | 〇 | 自然エネ |
REC | 韓国・英など | 〇 | 再エネ |
GO | EU | 〇 | 再エネ |
非化石証書
非化石証書は、非化石電源により作られた電気から、環境的な面での価値を除いて証書化させたものです。
環境的な面での価値というのは、発電する際に二酸化炭素を出さないことです。
二酸化炭素を出さない方法で作られた電気ということを示す証書であり、天然ガスや石油、石炭などを使って発電する方法のことを化石電源と呼びます。
理由は化石燃料を利用し電気を作っているからです。
化石電源は、電気を作る際に二酸化炭素が生じるため、近年深刻化している地球温暖化の原因として注視されています。
このような電源に対し、バイオマスや太陽光といった化石燃料に頼ることなく電気を作るものを、非化石電源と呼びます。
J-クレジット
J-クレジットとは、自治体や企業などが行う取り組みで、排出の減った分の温室効果ガス量に対し国がクレジットを発行し、購入したり売却したりできる制度です。
- 適切な森林を管理する方法での温室効果ガスを吸収した量
- 再エネを使ったことで温室効果ガスの排出する量を減らせた量
- 省エネルギー設備を取り入れる
上記のようなものをクレジット化させて売ったり、そこで得た資金を事業拡大に使ったりできるのが特徴です。
J-クレジットを購入する者は、購入することで温室効果ガスの排出に関して減らした、または吸収させたことに寄与したと認められ、社会からの企業に対する評価が向上できるといったメリットが受けられます。
グリーン電力証書
グリーン電力証書とは、太陽光や水力、風力といった自然エネルギーで発電した電気の環境面での価値を証書にすることで見える化し、取引を可能にさせたものです。
自然エネルギーで作られた電気は、化石燃料と比較し二酸化炭素を排出する量が少量で済むメリットがあります。
グリーン電力証書を使うことにより、自社で使う電力における排出量を減らせます。
REC
RECは、RPS制度を導入するために再エネ電源における追跡システムによって発行される再エネ電力証書のことです。
RPS制度とは、電力に関わりのある企業に向けて、ある一定の量の再エネを使うことを義務として定めるものであり、オーストラリアや韓国、イギリスなどで取り入れられています。
また、日本においても電気事業者が新エネルギーなどを使う際の特別措置法で2003年に取り入れられましたが、問題点も多数存在し2017年を機に徐々に廃止されています。
I-RECと主に異なる点は、RPS制度を導入する必要があることと、アメリカやカナダなど北米で使われていることです。
GO
GOは、EUにより作られたトラッキングシステムと再エネ電力証書に関係した制度です。
需要家が、どんな方法で作られた電気か確認しつつ、比較検討できます。
EUに加盟している国は、トラッキングシステムを構築することが義務となっています。
I-RECでは、対象となる国に関係する制限や義務付けが定められていません。
そのため、EUに加盟している国以外でも、I-RECを使って再エネ電力証書を発行したり、トラッキングシステムについて構築を進めたりできます。
EU加盟国以外でも、電気の発電方法を比較して使用できるのが特徴です。
I-RECを購入するメリット
I-RECを購入するメリットは、以下3つです。
カーボンニュートラルに貢献できる
I-RECを購入したり発行したりすることは、企業からすればCSR活動へ繋げられます。
CSR活動は、企業が要求されている社会的責任を意味し、それぞれの企業でCSRにおける内容や方針が変わるため、自社で作り上げる必要があります。
再エネの発電事業者であれば、I-RECを発行することで、供給先により高い信頼性の再エネによる電力を届けられます。
また、こういった取り組みは、脱炭素社会の実現が求められる世の中において評価される可能性も高いです。
このようにI-RECを購入すれば、カーボンニュートラルにも貢献できるため、社会から評価される機会が増え、企業価値が上げられる可能性があります。
国際イニシアティブの報告に利用できる
国際的に見ると、発電場所や発電方法などが再エネとして適しているか証明する電力証書が一般的です。
このような再エネとしての属性が明示されているI-RECは、SBTやCDPスコア、RE100といった多種多様な国際イニシアティブとして使える点が大きなメリットです。
特に世界的に事業展開を行っている際や、将来的に世界的な進出を検討している方であれば、よりメリットを感じられます。
非FIT型電力の促進
I-RECでは、トラッキングのない非FIT再エネでの相対契約や自家消費が対象になっています。
新規の非FIT再エネのうちの多数は自家消費や相対契約となり、I-RECによって見える化させます。
この見える化したものを基準に、電力を使用する企業や工場・自治体に対し購入が促進できるため、再エネとしての価値アップとなる可能性が高いです。
I-RECが活用できる国と条件
近年では、世界の国々で脱炭素化、環境に負荷をできるだけ与えない製品やサービスの開発、持続可能な社会を作るための施策が実査されています。
I-RECが活用できる対象国
I-REC対象国には、以下のような国があります。
- 台湾
- メキシコ
- ペルー
- ブラジル
- アルゼンチン
- 中国
- インドネシア
- ベトナム
- シンガポール
- タイ
I-RECは新興国をメインに普及が進んでおり、対象国の電力の調達や発電事業に取り組む際に活用可能です。
日本の大手電力会社でも、海外に拠点を持つ企業に対しI-RECの発行および取得に対したサポートを実施しています。
国内においてもI-RECを発行したり購入したりできます。
I-RECが活用できる国際イニシアチブ
I-RECが報告に利用できる国際イニシアチブは以下の通りです。
- RE100:企業が使用電力を100%再エネで賄うことを目指す
- CDP:英国のNGO。企業の環境貢献度を示す評価を行う
- SBT:パリ協定が求める水準と整合した企業の温室効果ガス排出削減⽬標
ちなみに、日本の温対法や高度化法には対応してないので注意してください。
I-RECの発行条件
I-RECを発行するための条件は、各国で異なり、日本では自己託送も含んだ自家消費分の場合でも発行可能です。
しかし、太陽光やバイオマス、火力、地熱、風力、水力のどれかで作られた電気であり、この後に説明する「非化石価値証書」「J-クレジット」「グリーン電力証書」が発行されていない場合が条件になります。
I-RECでは、SBT、CDP、RE100などの国際イニシアティブにおける報告で使えるものの、日本の高度化法や温対法といった制度では使えないため注意しましょう。
I-RECの発行方法
I-RECの発行方法は、以下2つです。
自社で発行する
再エネ発電が可能な設備を使って、自社で発行する方法です。
企業が取り入れる再エネ発電における設備の中で、最も導入されているのは太陽光発電です。
自社が管理を行う敷地や事業所の屋根などに太陽光パネルを設置し発電します。
直接的であり本質的な脱炭素に対する対策ができるのが大きな特徴です。
はじめに登録者として発電で使う設備の登録を済ませてから、証書を発行するための申請を行います。
条件の項目でも解説しましたが、発行が重複してしまうことを防ぐために「J-クレジット」「グリーン電力証書」「非化石価値証書」に関して発行していない電力であることが条件です。
自社で手続きするのが難しい際は、仲介業者に任せるのがおすすめです。
他社が発行したものを購入する
上記の自社で発行する方法とは別に、他社の発行するI-RECを買う方法もあります。
「環境を良くしたい・脱炭素に取り組みたい」と思ってはいても、実際に再エネ発電の設備を取り入れるのが困難といった企業も多く存在します。
このような場合に他社が発行するI-RECを買う方法がおすすめです。
I-RECの証書における取引に対し、仲介業者に依頼することで購入可能です。
間接的にはなってしまいますが、環境に負荷をかけずに脱炭素経営に取り組んでいることをPRできます。
しかし、直接的でなく、あくまで二酸化炭素の排出量を減らす対策におけるサポートとしての役割として考えるようにしましょう。
I-RECの検索・購入なら調達代行『OFFSEL』がわかりやすい!
「OFFSEL(オフセル)」は、エレビスタ株式会社の環境価値調達代行サービスです。
I-RECの調達では、単価・発電方法・調達量・国などから調達先の発電所やプロジェクトを選ぶことができるため、より企業の目的に沿った調達が実現可能です。
I-RECの他に、非化石証書・J-クレジット・J-VER・TIGRの調達代行も行っています。
特に、非化石証書・J-クレジットは、少ない単位から格安の単価で調達ができるため、必要十分な環境価値調達に役立つを評判が高いです。
相談・手数料は無料です。「調達するクレジットが決まっていない」「まずは話だけ聞きたい」という場合でも、無料で相談できますので、気軽に連絡してみてください。
I-RECに関するよくある質問
I-RECについて、気になる点をまとめてみました。疑問を解決しておきましょう!
I-RECと非化石証書の違いは何?
I-RECと非化石証書は、どちらも環境価値を証書化したものですが、その属性を証明できるかどうかに違いがあります。
I-RECは、発電方法・発電場所・発電者などの属性が詳細に付加されており、国際的にも認められています。
非化石証書は日本独自の環境価値証書です。国際イニシアチブにも対応できるのは、属性が証明できる「トラッキング付非化石証書」のみとなっており、単なる非化石証書では電源種別や産地を証明できません。
日本ではI-RECは発行されている?
日本では、一般社団法人ローカルグッド創成支援機構が発行主体となり、I-RECの発行が実施されています。
実際に、高知県梼原町の風力発電事業(1,200kW)や、鳥取県米子市のバイオマス発電事業(50kW)などの3つの実証プロジェクトが、国内初のI-REC認定を受けました。
I-RECの価格はいくら?
I-RECの単価は、平均0.1~0.2円/kWh程度となっています。
ただし、発電方法・時期・産地・為替レートによって変動するため、一概には言えません。
I-RECに使用期限はある?
I-REC自体に使用期限はありません。
ただし、GHGプロトコルやRE100では、報告と近い時期に発電された電力の証書であることがビンテージ要件となっています。そのため、合理的でない古い証書は、使用が認められないことがあります。
I-RECの読み方は?日本語訳は?
「I-REC」とは、International Renewable Energy Certificateの略称で、「アイレック」と読みます。
日本語訳するなら、「国際的な再生可能エネルギー電力証書」となります。
まとめ
I-RECは、再生可能エネルギーから発電させた電気に対する再エネとしての価値を証書化させたものです。
I-RECを購入することで、カーボンニュートラルに貢献できたり、国際イニシアティブの報告に利用できたりといったメリットがあります。
発行する方法にも、自社で発行する方法と他社が発行したものを買う2種類の方法が存在するため、自社に適した方法を選択するようにしましょう。
この記事を書いた人
ikebukuro