グリーン電力証書とは?仕組みや非化石証書・Jクレジットとの違いを解説
- 公開日:2025.05.15
- 更新日:2025.05.15

グリーン電力証書とは、太陽光発電や水力発電や風雨力発電などの自然エネルギーで発電した電気の環境付加価値を取引できる証書です。
グリーンエネルギーに対する社会認知度や取引への信頼度を示す役割も担っています。
グリーン電力証書の仕組みや実際に発行する際にどのようなメリットがあるのかを解説していきます。
グリーン電力証書にはメリットだけではなく、問題点・デメリットも存在するので、メリットとあわせて見ていきましょう。
グリーン電力証書とJ-クレジット・非化石証書との違いや、具体的な入手方法についても紹介していますので、現在グリーン電力証書を発行しようか検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
グリーン電力証書とは?
グリーン電力証書とは、自然エネルギーで発電された電気の環境付加価値を証書発行事業者が第三者機関からの調査から、グリーンエネルギーに対する社会認知度の工場やグリーンエネルギーの環境価値の取引への信頼度を表した証書です。
グリーン電力とは以下の自然エネルギーが該当します。
グリーン電力証書の仕組み
(出典:グリーン電力証書システムとは?|日本自然エネルギー株式会社)
(出典:グリーン電力証書システムとは?|日本自然エネルギー株式会社)
太陽光や水力などの再生可能エネルギーで発電した電気には、石炭や石油などの化石燃料を使わない省エネルギーであり、発電時にCO2を排出しないといった環境付加価値をもった電気です。
そして、グリーン電力証書は、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電されたクリーン電力の環境価値を証書化したものです。
この証書は、証書発行事業者から購入できます。
グリーン電力証書を購入することで、温室効果ガスやCO2排出削減に貢献しているという意思表示となるため、環境への関心を高められるでしょう。
その結果、再生可能エネルギーを普及・拡大することが目的の制度とも言えます。
環境価値とは?
環境価値というのは、再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど)で作られた電力の「発電時に化石燃料を使わず、大気中のCO2を増やさない」という付加価値を表す言葉です。
環境価値を取り入れる方法は、環境メニュー導入・PPA締結・クレジット購入などですが、近年は証書やクレジット購入によって環境価値を取り入れる方法を用いることが増えています。
環境価値を得るために使われているのが、グリーン電力証書・J-クレジット・非化石証書なのです。
グリーン電力証書とJ-クレジット・非化石証書は何が違う?
ここからは、グリーン電力証書とJ-クレジット、非化石証書がそれぞれ何が違うのか紹介していきます。
それぞれのサービスはとても似ているため、その違いも詳しく解説していきます。まずは3つの証書の比較表からご覧ください。
グリーン電力証書 |
J-クレジット |
非化石証書 | ||
FIT証書 |
非FIT証書 (再エネ指定) |
|||
用途 | SHK制度におけるCO2削減利用 (国が認証したもののみ) |
SHK制度でのCO2削減利用 | SHK制度での CO2削減利用 |
高度化法非化石比率の算定 SHK制度でのCO2削減利用 |
発行主体 | 証書発行事業者 ※第三者認証 |
経済産業省 環境省 農林水産省 |
電力広域的運営推進機関 ※国が認証 |
発電事業者 ※国が認証 |
環境価値 | 再エネ | 温室効果ガス排出量の削減 | 再エネ | 再エネ |
購入者 | 最終需要家 | 電力小売 仲介事業者 最終需要家 |
電力小売 仲介事業者 最終需要家 |
電力小売 (一部相対のみ最終需要家) |
取引方法 | 相対取引 | 相対取引 入札販売 |
入札販売 仲介事業者との相対取引 |
相対取引 入札販売 |
発行量認証量 | 約8.6億kWh (2022年度) |
約9.4億kWh (2022年度) |
約1,221億kWh (2022年度) |
約1,015億kWh (2022年度) |
グリーン電力証書とJ-クレジットの違い
J-クレジットとは、省エネルギー機器の導入や森林伐採などの取り組みによる、CO2などの音質効果ガスの排出削減量を吸収量をクレジットとして、国が定めたものです。
国がCO2や温室効果ガスの排出削減量や吸収率を承認している制度を「J−クレジット制度」と呼ばれており、温対法での報告やカーボン・オフセット、低炭素社会の実現など、種別によってさまざまな活用方法があります。
グリーン電力証書と非化石証書の違い
非化石証書は、再生可能エネルギーなどの非化石電源から作られた電気から環境価値を切り離し、証書にしたものです。
2018年から開始されており、非化石価値取引市場で取引を行うために発行されます。
非化石証書は、「FIT非化石証書」と「非FIT非化石証書(再エネ指定)」と「非FIT非化石証書(指定無し)」の3種類です。その違いを以下表でご確認ください。
FIT非化石証書 | 非FIT非化石証書 (再エネ指定) |
非FIT非化石証書 (指定無し) |
|
電源 | 水力発電などFITが適用する方法で発電された電気 | 卒FIT後の再エネ発電や大型水力発電などさまざまな方法で作られた電気 | 再生可能エネルギーではない原子力発電などから作られた電気 |
環境価値 | ゼロエミ価値 再エネ |
ゼロエミ価値 再エネ |
ゼロエミ価値 |
購入者 | 小売電気事業者 仲介事業者 電力利用者 |
小売電気事業者 電力利用者 |
小売電気事業者 |
「FIT非化石証書」と「非FIT非化石証書(再エネ指定)」は、以前は小売電気事業者のみ購入できましたが、現在では一般企業や需要家でも購入可能となっています。
しかし、「非FIT非化石証書(指定無し)」は現在も小売電気事業者しか購入できません。
トラッキング付き非化石証書とは、いつ・どこで・誰により・どの位発電されたかを示す「発電設備区分」「設備の所在地」「発電設備名」「設備者名」「発電出力」「認定日」「運転開始日」「割当量」などの電力属性情報が付加された非化石証書のことです。
使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなう目的で非化石証書を活用する場合には、トラッキング付き非化石証書を利用するのが必要です。
グリーン電力証書を購入するメリット
グリーン電力証書を購入するメリットを紹介します。
- 環境対策への貢献が可能
- 国際イニシアティブへの報告に使える
- 企業イメージの向上につながる
メリット1:環境対策への貢献が可能
グリーン電力証書を購入することで、CO2排出料削減への貢献ができます。
グリーン電力は発電する時にCO2を排出しないため、それだけで大きな環境対策となるでしょう。
グリーン電力証書に記載されている電力量の相当分だけ、グリーン電力を利用しているという証明になります。
また、グリーン電力証書を発行する発電業者も、発電設備認定のために「リーン電力証書の販売による収入が、グリーン電力発電設備の維持・増設・新設に繋がると証明しなければいけません。
これで、消費者がグリーン電力証書を購入することで、その金額を事業者も設備投資に活用できます。
そのため、グリーン電力の設備の維持や増設を支えられて、将来的な環境対策に貢献できるでしょう。
メリット2:国際イニシアティブへの報告に使える
グリーン電力証明を購入することで、国際イニシアティブの報告にも使えます。
実際にグリーン電力証書を活用できる国際イニシアティブは以下の3つです。
- CDP
- SBT
- RE100
国際イニシアティブへ報告することで、グローバルに環境へコミットした企業だとアピールできます。
また、ESGによって投資の優先順位を決めている投資家へのアピールにも繋がります。
グリーン電力証書以外で国際イニシアティブに使えるクレジット
グリーン電力証書以外で活用できるクレジットとして、J-クレジットと非化石証書があります。
グリーン電力証書 | J-クレジット | 非化石証書 | |
CDP | 〇 | 〇 再エネ由来 |
〇 |
SBT | 〇 | 〇 再エネ由来 |
〇 |
RE100 | 〇 | 〇 再エネ由来 |
〇 トラッキング付 |
J-クレジットは省エネ由来のクレジットもありますが、イニシアティブに活用できるのは再エネ由来のものだけです。
また、RE100で非化石証書を活用する場合、発電の電源や発電所が分かる「トラッキング付非化石証書」のみ使用できます。
メリット3:企業イメージの向上につながる
グリーン電力証書を購入することで、グリーン電力を利用していることを証明できる「グリーン・エネルギー・マーク」の使用許諾の申請ができます。
「グリーン・エネルギー・マーク」を持っていると、自社製品やサービス、企業広告、イベントのPRで活用できます。
そのため、消費者へグリーン電力の利用企業だということがアピールできるでしょう。
環境意識が高い企業として社会的に認知されることにより、長期的な企業イメージの向上に繋げられるメリットもあります。
グリーン電力証書を発行するメリット
ここからは、グリーン電力証書を発行するメリットを紹介します。
- 収入が増える
- グリーン電力の普及に貢献できる
それぞれ詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてください。
メリット1:収入が増える
グリーン電力を販売する発電事業者側のメリットは、電気収入と環境価値分の収入が得られることです。小規模発電事業者も、証書を発行することにより収益が上がります。
グリーン電力証書は、再生可能エネルギー使用量・CO2削減量を表現する証書として使える上に環境保護活動を具体的に示せるため、ESG投資の対象になりやすく、事業利益の上昇につながります。
メリット2:グリーン電力の普及に貢献できる
発電事業者側には、国産のエネルギーを安定供給するという目標を達成できるという、購入する企業側と共通したメリットがあるほか、グリーン電力が普及することにより、環境価値を購入する側にリーズナブルな価格で提供できるという大きな利点があります。
再生可能エネルギー設備投資などを進めることにより、CO2・温室効果ガスの排出を削減できると共に、国産のエネルギーを安定供給するという目標を達成できるのです。
グリーン電力証書のデメリット・問題点
グリーン電力証書にはどのような課題と問題点があるのでしょうか。
- 国の認証を受けていない
- 取引量が少なく販売価格が高い
デメリット1:国の認証を受けていない
グリーン電力証書は、日本品質保証機構という民間機関が認証している仕組みのため、法的な拘束力を持っていません。
そのため、温対法や省エネ法の対策に使用することはできないので注意してください。
ただし、資源エネルギー庁と環境省が運営する「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」により認証を受ければ、CO2の削減効果について法的な保証を得ることができます。
参考:資源エネルギー庁 グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度
デメリット2:取引量が少なく販売価格が高い
グリーン電力証書は認証された43団体のみが発行しています。そのため、非化石証書やJ-クレジットよりも発行量が少なくなっています。
また、1kWhあたりの価格が高く導入しにくくなっているのも、普及を阻む問題点です。
種類 | 価格(/kWh) |
グリーン電力証書 | 7~15円 |
J-クレジット | 1.64円 |
非化石証書 | 0.4~0.6円 |
グリーン電力証書の購入方法
グリーン電力証書は、グリーン電力証書発行事業者に発行を直接依頼して購入します。グリーン電力証書発行までの簡単な流れは次の通りです。
①問い合わせ
グリーン電力証書発行事業者に、グリーン電力証書発行について問い合わせを行います。一般財団法人日本品質保証機構 証書発行事業者(申請者)一覧を参考にして、WEBや電話から連絡してください。
②契約内容の説明
事業者から、電力量・契約期間・発電種類・単価など、契約内容について説明を受けます。
価格は事業者によって異なり、一般的に購入量が多いほど単価が安くなります。複数の事業者を比較するのもいいでしょう
③契約
契約内容に納得できれば、グリーン電力証書発行の契約を締結します。基本的に書類への捺印やサインが必要ですが、事業者によっては契約書の記入・送付がWEB上でできるところもあります。
④マーク画像送付・グリーン電力証書受領
契約後、グリーン電力証書のマークが送付され、企業や自治体のPRに使用できるようになります。契約内容が記載されたグリーン電力証書も送付されます。
グリーン電力に関するよくある質問
グリーン電力証書について検討する際に、疑問に思う方が多い点についてまとめました。
グリーン電力証書を個人で購入することはできる?
グリーン電力証書は個人でも購入可能です。
しかし、もし家庭で環境に優しい電気を使いたい場合は、実質的にCO2排出量ゼロになる電気料金プランに変更する方が手軽ですのでおすすめです。
新電力の中には、非化石証書を利用して再生可能エネルギー由来の電力を実質的100%供給するといったプランをもつところがあります。電気料金も大手電力会社より安くなる場合がありますので、ぜひ検討してみてください。
グリーン電力証書はRE100に活用できる?
グリーン電力証書はRE100において、自社の電力削減分として、報告に活用することができます。
そのため、中小企業版RE100とも言われている「再エネ100宣言RE Action」の報告に活用することもできます。
グリーン電力発電設備の認定はFIT認定を受けた設備でも受けられる?
グリーン電力発電設備の認定を受けられます。ただし、FIT制度を利用して売電した電力は、グリーン電力として申請できません。
例えば、年間100万kWhのグリーン電力が発電される設備で、70万kWhを自家消費し、30万kWhを余剰電力としてFITで売電した場合、グリーン電力として申請できるのは、70万kWhの自家消費分のみです。
グリーン電力と再エネの違いは?
グリーン電力は、自然エネルギーを利用して発電した電力のことです。自然エネルギーは再生可能エネルギーの一部と言えます。
再生可能エネルギー(再エネ)は、エネルギー源として永続的に利用できるものを指します。その中で自然由来のエネルギーを「自然エネルギー」と呼んでいます。具体的には、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどです。
グリーン電力証書・非化石証書・J-クレジットの購入ならOFFSEL(オフセル)
非化石証書の購入を検討している企業であれば調達代行サービスを利用するのがおすすめです。
なかでも、OFFSEL(オフセル)は業界最安値で相談料・手数料無料の調達代行サービスとなっています。
他社ではネット上では公開されていないサービス料金が、しっかり明示されているため、価格交渉やそれにともなう事務など面倒な作業が発生せず非化石証書の購入が可能です。
予算 | 指定なし ※銀行振込の最低額の購入は必要 |
kWh | 0.32円~ |
購入量 | 1kWh |
相談費用 | 無料 |
手数料 | 無料 |
また、購入できる最小単位が平均100,000 kWh〜からとなっているため、少額から非化石証書の購入ができる点もメリットと言えます。
非化石証書を購入できるタイミングは年に4回、8・12・2・5月の市場会場月となっていて、このタイミングに合わせて相談をした場合、1〜1.5ヶ月ほどでで購入からオフセットまで可能です。
また、非化石証書以外の環境価値も購入できます。カーボンオフセットの相談やGHQ算定もできるのもうれしいポイントです。
まとめ
本記事では、グリーン電力証書の仕組みや実際に発行するメリット・デメリットを紹介していきました。
グリーン電力証書は、自然エネルギーで発電された電気の環境付加価値を証書発行事業者が第三者機関からの調査から、グリーンエネルギーに対する社会認知度の工場やグリーンエネルギーの環境価値の取引への信頼度を表した証明書です。
実際に、グリーン電力証書を発行するメリットは以下の3つになります。
- 環境対策への貢献が可能
- 国際イニシアティブへの報告に使える
- 企業イメージの向上につながる
このように、温室効果ガスやCO2排出削減に貢献しているという意思表示となり、自然エネルギーを普及・拡大することが目的の制度とも言えます。
また、環境対策だけでなく、消費者からの企業イメージ向上にもつながるでしょう。
「グリーン・エネルギー・マーク」が発行できるため、製品などに付けて、直接環境問題への意識を努めていることも表されます。
グリーン電力証書は、発電する側と利用する側、それぞれメリットがあるため、関心を持っている人は、ぜひ購入や発行を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
ikebukuro