太陽光発電パネルは塩害の影響を受ける?海の近くに設置するデメリットや対策を解説
- 公開日:2024.11.07
- 更新日:2024.11.07
海の近くに設置された太陽光パネルは、潮風などの塩害を受けやすい傾向があり、主な原因は「ソーラーパネル劣化」「樹脂部分劣化」「鉄部分の腐食」「電気機器故障」の3点です。
塩害を放置すると、太陽光パネルが正常に作動しなくなったり耐久性が低下したりするだけではなく、故障から設備自体を回収しなければならないような事態に繋がる可能性もあり、設置個所には十分注意する必要があります。
太陽光パネルは海の近くに設置できるのか、塩害はどんな影響を与えるのか理解した上で塩害対策を実施することが必要です。
太陽光パネルの塩害対策についてもチェックしておきましょう。塩害対策をしているメーカーの設備もあわせてご覧ください。
目次
太陽光発電は塩害の影響を受けやすい
太陽光発電は塩害の影響を受けやすいです。
太陽光発電設備は、太陽の光が当たりやすい屋外に設置する必要があり、、沿岸部では波しぶきや潮風に晒されてしまいます。
太陽光発電・太陽光パネルは固定する部品や架台が金属を材料にしている事が多いため、塩害を受けやすくなっているのです。
太陽光パネルの劣化や故障につながる塩害の概要や影響、塩害地域として指定されている場所について解説していきます。
そもそも塩害とは
塩害とは、海水の中に含まれている塩分が、波しぶきや風などにより運ばれ、農作物やコンクリート、建物、電気機械、コンクリートなど、沿岸部に存在する豊富な物に対して、サビなどの劣化を及ぼすことです。
塩害の可能性がある地域では、農作物が枯れたり、自動車がサビたりします。
太陽光発電では、太陽光発電における電気系統および架台に使われている金属などに影響します。
出典:町の外壁塗装屋さん
塩害地域に指定されているエリア
塩害地域に指定されている場所は、以下3つです。
①塩害地域
塩害地域に該当するのは、以下の場合です。
- 瀬戸内海・東京湾・伊勢湾の内海に面する地域:海岸からの距離300m以内(潮風に当たらない)
- 瀬戸内海・東京湾・伊勢湾の内海に面する地域:海岸からの距離300m~1km以内(潮風に当たる)
- 日本海や太平洋の外洋に面する地域:海岸からの距離300m以内(潮風に当たらない)
- 日本海や太平洋の外洋に面する地域:海岸からの距離1km以上(潮風に当たる)
②重塩害地域
重塩害地域に該当するのは、以下の場合です。
- 瀬戸内海・東京湾・伊勢湾の内海に面する地域:海岸からの距離300m以内(潮風に当たる)
- 日本海や太平洋の外洋に面する地域:海岸からの距離300m以内(潮風に当たらない)
- 日本海や太平洋の外洋に面する地域:海岸からの距離300m~1km以内(潮風に当たる)
- 沖縄県および離島:全範囲(潮風関係なし)
このように、塩害地域も重塩害地域も、海岸からの距離が近ければ近いほど重塩害地域に指定される確率が高くなることが分かります。
③岩礁隣接地域
具体的な距離は定められていませんが、直接波しぶきが当たる場所のことです。
直接波しぶきが当たる地域は、潮風よりもさらに塩害の影響が大きくなります。
塩害によって太陽光発電設備が受ける影響
太陽光発電においては、パネルそのものの素材に対してそこまで心配する必要はいりませんが、パネルを支えている架台やパワーコンディショナー、ケーブル端子および配線といった設備には注意しなければなりません。
具体的には以下のような塩害が考えられます。
ネジや金具がサビる
これらの部材は金属を素材としたものが多く、特にスチールのような素材は塩害の被害を大きく受けます。
塩害によってサビや故障が発生してしまうと、耐久性に問題があったり、発電ロスが発生したりする可能性が高いです。
太陽光パネルの裏面や内側の配線がサビる
水と海水では海水の方が電気を通しやすい性質があるため、絶縁部分に海水が付着してしまうと、太陽光パネルの裏面や内側の配線がサビることによって電気の供給が不可能になったり、漏電してしまったりする可能性もあります。
架台またはフレームのサビ・腐食を招く
太陽光パネルの架台やフレームの部材も金属であることが多いため、塩害によってサビたり腐食したりする可能性が高く、サビ・腐食によって耐久性が悪化します。
架台に用いるボルト・ナットなどを含む部品に塩害対策をすることで防止するしかありません。
パワーコンディショナー内部が劣化する
パワーコンディショナーの内部の劣化も太陽光パネルの寿命を縮めます。
それを防ぐためには、潮風にさらされない場所に設置するか防風板を設置して潮風が直接当たらないようにしましょう。
定期的な水洗いを実施することで、塩害の原因である塩分を除去して腐食を防止することが可能です。
太陽光パネルの塩害対策としてできること
太陽光パネルの塩害対策としてできることは、以下3つです。
- 定期的な清掃で塩分を除去する
- 室内設置可能な設備は室内に設置する
- 塩害対策がされたメーカーの設備を導入する
定期的な清掃で塩分を除去する
塩害は、塩分を含んだ水や空気などに触れた植物や金属、建築物などに腐食や錆を発生させます。
電気機器に関しては腐食や錆が進行していくと、劣化した部分からさらに塩分が侵入していき、どんどん腐食が進んでいきます。
通常の水と海水では海水の方がより電気を通しやすい特性を持っているため、絶縁部分に海水が付着すると漏電状態になってしまったり、電気を供給できない状況に陥ってしまいます。
太陽光発電パネルや、周辺機器に付着した塩分を定期的に取り除いてあげることで、錆びや、腐食の進行を遅らせられます。
メンテナンスには費用が発生しますが、故障による修理や、交換などの費用と比較すれば軽い負担なので、惜しまず投資をしてください。
室内設置可能な設備は室内に設置する
パワーコンディショナーの設置場所に決まりはありません。
できるだけ塩害による被害を少なく抑えるためには、室内に設置するのも有効な対策です。
室内に設置している場合においても、例え設備内にあっても、塩分を完全に遮断することは不可能ですので、可能な限り侵入させないよう密閉させることも重要です。
塩害対策がされたメーカーの設備を導入する
太陽光パネルを製造しているメーカーは数多くありますが、その多くのメーカーで塩害の被害を受けにくい塩害対策が施された太陽光パネルを製造しています。
たとえば耐湿性や耐候性、密封性に効果がある強化ガラスの白板熱処理ガラスや、3層構造のパックフィルムを取り入れている製品も多くあります。
それ以外にも、塩害の恐れがある地域に特化した専用のパネルと架台が別にあったり、通常の製品がすでに塩害の影響がある地域でも対応していたりなど、メーカーによって取り組みや製品はさまざまです。
京セラ
ラックシステムと太陽電池モジュールは、海岸にある地域の場合においても、標準の製品を設置できます。
しかし、直接海水などが飛散する可能性がある場所への設置は不可です。
ラックシステムでは、溶融亜鉛や溶融亜鉛めっき鋼材、アルミニウム、ステンレス、太陽電池モジュールのフレーム同様の表面処理を施したアルミニウム合金、マグネシウムめっき鋼材を使っています。
パワーコンディショナにおいては、海岸から500mより近くの位置で塩害が発生する可能性がある場合では、設置が不可能です。
太陽電池モジュールにおいては、受光面が白板熱処理ガラスと呼ばれる強化ガラスでできており、裏面は耐候性にある複数フィルムが重ねられたバックシート、さらにフレームには、アルミニウム合金にそれぞれの種にアルマイト処理、電着塗装で表面処理されています。
内部に利用されている太陽電池のセルを、透明な樹脂といった薄い層を利用して完全に密封させることでホコリや湿気などから守っています。
また、コネクターも防塵と防水の2つの機能を備えている優れたモジュールです。
シャープ
シャープでは塩害地域専用のモジュールのほか、架台を留めるために使用しているネジも、塩害対策施し、重塩害地域の場合でも施工可能です。
塩害に対して対策が必要な場合には、それぞれ専用の架台やモジュールが用意されています。
瓦型以外の製品に関しては、重塩害地域でも対応しています。
しかし、強風や海水が直接かかるような場所では利用できません。
三菱電機
モジュールは、塩害の恐れがある地域に設置するため、密封性や耐湿性や耐候性に非常に有効なバックフィルムが取り入れられています。
フレームやネジなどでは、耐蝕性メッキが採用されており、架台では、酸化皮膜を作成するアルミニウムとクリアコートによって、腐食や塩害を防ぎます。
太陽光パネルは塩害地域でも設置するメリットが大きい
沿岸の近くに設置する場合、サビなどの劣化によるパネル被害のリスクが大きいと解説しましたが、その一方で日光が当たらなくなってしまうような建造物または木々などの植物がほとんどない場合が多いため、太陽光発電システムの設置場所としては、内陸部よりも発電効率が高くなるというメリットがあります。
太陽光発電システムの設置可能地域についてはメーカーごとに基準が定められていますが、海岸から500mより遠くであれば設置できる、太陽光発電に直接海水により濡れる恐れがない場所であれば設置できる、塩害地域ではほとんどの場所で設置できないなど、さまざまな基準が設定されています。
しかしいずれにせよ、500mより近い重塩害地域に設置する場合は、安全性を十分に検討した上でおすすめはできません。
まとめ
塩害とは、海水の中に含まれている塩分が、波しぶきや風などにより運ばれ、農作物やコンクリート、建物、電気機械、コンクリートなど、沿岸部に存在する豊富な物に対して、サビなどの劣化を及ぼすことです。
太陽光パネルが受ける損害の影響には、・太陽光パネルの裏面や内側の配線がサビてしまうことや、・パワーコンディショナーの内部が劣化し壊れてしまうことがあります。
また、塩害地域に指定されている場所には、塩害地域と重塩害地域、岩礁隣接地域の3種類があります。
太陽光パネルの塩害対策としてできることには、定期的な清掃で塩分を除去することや、塩害対策がされたメーカーの設備を導入することなどがあり、しっかりと対策を取ることで設備を長持ちさせることが可能です。
この記事を書いた人
ikebukuro