ISO14001とは何か簡単に解説!メリット・デメリットや取り組み事例も紹介
環境問題への注目が集まる中、企業ではISO14001の認証取得をする企業が増えています。
環境問題へ配慮した事業活動が求められる現代において、企業経営者はISO14001の要求事項や取得メリットについて十分理解しておくことが大切です。
ISO14001とは
ISO14001について、数字の意味や規格要求事項について解説します。
ISOと数字の意味
ISOとは、スイスのジュネーブに本部を置いている非政府機関 International Organization for Standardization、日本語で国際標準化機構の略した呼び名です。
ISOの主な活動
ISOの主な活動としては、国際的に通じる規格を制定することで、ISOが定めた規格をISO規格と呼びます。
ISO規格は、国際的な取引をスムーズに行うために、製品やサービスに対して世界中で同品質・同レベルのものが提供できるようにしようという国際的な基準で、制定や改訂を行う際は、日本を含む世界165ヵ国の参加している国の投票により判断されます。
身近な例には、非常口マーク(ISO 7010)や、ネジ(ISO 68)、カードサイズ(ISO/IEC 7810)などのISO規格があります。
これらはいずれも、製品そのものを対象にした「モノ規格」です。
ISO規格の数字の意味
ISOの後ろに付いている数字は規格番号を意味しており、現在では1から90000番代まで存在します。
この規格番号は、規格が検討されたタイミングで付けられますが、実際は採用されないこともあるので、必ず連番になっているとは限りません。
例えば、14001の次に存在するのは14004ですが、その間にある番号の規格は存在するが発行されていないということです。
ISO14001=環境マネジメントシステム
ISO規格の中にあるISO14001とは、「環境マネジメントシステム」を意味しています。
Environmental Management Systemを略してEMSと呼ばれる場合もあります。
1992年に開催された地球サミットで、地球環境の保全、および持続可能な開発がテーマになったことをきっかけに、ISO規格の策定が開始され、1996年に発行されました。
ISO14001における環境側面の意味
環境側面とは、企業や組織が活動する中で、組織を取り巻く環境に影響する可能性のある側面のことです。
これは、悪い影響に限ったものだけではありません。
また、環境とは地球や自然環境に限る話でなく、企業を取り巻いている、さまざまな物事を意味しています。
具体的にISO14001の環境とは、大気や水、土地、動物、植物、人に加え、それらの相互関係を含んだ組織活動を取り巻くものです。
つまり、組織に限らず、取引先や従業員、顧客、近隣地域や地方の他、世界に向けた環境への配慮が必要になります。
ボランティア活動に参加し、地域の環境保全に取り組むといった活動も含まれています。また、それだけでなく生態系や生物多様性、気候などの影響も考慮することが必要です。
ISO14001の規格要求事項
ISO14001の特有な規格要求事項は、以下2点です。
- 内部コミュニケーションと外部コミュニケーション
- 環境側面および環境影響の抽出
それぞれ詳しく解説します。
内部コミュニケーションと外部コミュニケーション
内部コミュニケーションでの組織内におけるコミュニケーションに関しては、イメージしやすいかと思いますが、外部コミュニケーションと聞くとイメージが難しい方も多いかと思います。
外部コミュニケーションとは、国や専門機関・自治体などと取るコミュニケーションのことです。
どれだけ組織内でコミュニケーションを活発に取り環境保全に取り組んだ場合でも、その取り組みが国や自治体の設定している基準や量を満たしていなければ、せっかくの取り組みも意味が薄れてしまいます。
そのような事態を回避するため、組織外とコミュニケーションを十分に取ることがISO14001の要求事項として設定されています。
環境側面および環境影響の抽出
組織が事業活動を進めるにあたり、環境に影響を与えることは避けられません。
その組織が本当に環境に及ぼす影響をゼロにすることを追求する場合、事業活動を一切止め組織を解体する方法が最善です。
しかし、そのような組織の解体は不可能という前提の上で、事業活動の中でも、どんな活動が環境にどのように影響を及ぼすのか、明確に整理し把握することが大切になります。
その状態を把握できてからが、環境保全に取り組むスタートです。
例えば、運送業を行っている企業の場合、事業活動に取り組む上で自動車を走行させることは欠かせませんが、自動車を走行させるにはガソリンの消費が必要不可欠であり、さらには排気ガスの発生も避けられません。
これは業界に限らず、事務職の場合は書類を使うことで紙原料の森林伐採を行うことが必要であり、紙を使う量をできるだけ少なくすることが森林保護に繋がると考えられます。
このように、事業活動に取り組む上での、それぞれの活動を環境の側面から捉え、環境にどのような影響を与えるのかをしっかり整理することが環境側面および環境影響の抽出です。
ISO14001認証を取得するメリット
ISO14001認証を取得するメリットは、以下3つです。
- 取引先や投資家からのイメージアップに繋がる
- 経費の削減が見込める
- 企業賠償責任保険が割安になる
取引先や投資家からのイメージアップに繋がる
企業でISO14001を取得した場合、環境保全活動に積極的に取り組んでいる会社ということを取引先や投資家にアピールできます。
環境問題への意識が徐々に高まっている現代においては、ISO14001の取得により企業の社会的責任を達成していることを第三者機関から証明されるため、環境保全活動の推進という社会的ニーズへ対応可能です。
また積極的に環境保全活動への取り組みをアピールすることは、企業そのもののブランドイメージ向上にもつながります。
経費の削減が見込める
ISO14001に関する準備において、環境に対して行動計画をしっかりと作成しておくと、自組織の無駄な作業や効率の悪さだけでなく、資源やエネルギーなどに、より気づきやすくなることがあります。
従来の活動方法を見直し、体系的に取り組めば、環境に配慮できるだけでなく事業における人件費やランニングコストの削減にも繋げられます。
企業賠償責任保険が割安になる
ISO14001の認証を受けた企業が対象となる、企業賠償責任保険の保険料が割安になることがあります。
加入している損害保険会社がISO14001認証の取得に対してインセンティブを出すことにより、ISO14001システムを導入する企業は、今後ますます増加することが見込まれ、損害保険会社においては環境配慮型金融の役割が果たせます。
また、環境へのリスクが低い企業の場合、保険金を支払う可能性が低いのも理由の一つです。このようにISO14001の認証を受けることで、保険料が節約できます。
ISO14001認証を取得するデメリット
ISO14001認証を取得するデメリットは、以下2つです。
- 取得や維持に費用が掛かる
- 社員教育や内部監査が必要となる
取得や維持に費用が掛かる
ISO14001認証を取得するためには、取得や維持に費用が掛かります。
費用の詳細は、以下の通りです。
マネジメントシステム構築の費用
自社ですべて行う場合であれば、コンサル料などはあまり発生しないと考えている人も多いですが、ISO14001の取得に対する業務経験者が自社にいない場合、構築するところから躓く可能性が高いです。
本来の業務との合間を縫ってISO14001の取得業務に取り組む場合であれば、取得するまでにかかる期間が延びたり、残業により人件費が多く発生してしまったりするケースも多くあります。
そのため、契約するかしないかに関係なく、コンサルタントに一度相談してみるのもおすすめです。
もし契約し依頼する際には、コンサルティング会社により、対応してくれる内容や費用が異なるため、複数社に問い合わせ自社に適した会社を探しましょう。
認証審査料・登録料
ISO14001を取得する費用には、審査料以外にも認証登録料などが発生します。
審査機関により、そのような細かい費用が別で必要なのか、審査料と合わせるのかで請求項目も異なるので、見積もり時に必ず確認しましょう。
マネジメントシステムを維持するための人件費
ISO14001に限らず、ISOを取得する費用において多くの割合を占めているのが人件費です。
企業や組織が認証取得に取り組む際は、自社の中でISO事務局を設立しISO担当者を設定します。
自社取得の場合は、ISO担当者の人数が増加することで人件費が大きくなってしまうことも多いです。
ISO認証を取得する際に発生する人件費は、担当者1名で約14ヶ月かかる場合、400万円程度かかるのがひとつ目安です。
人件費はコストの可視化が難しいため、結果的に想定していた金額以上の費用が発生してしまう可能性があります。
『コンサルタント活用』を選択した場合、コンサルタントの費用が別にかかりますが、代わりに自社で発生する人件費を100万円程度に削減することが可能です。
合計金額で考えた場合、コンサルタントを活用した方がお得な場合が多いです。
また、コストが可視化できることも経営層や管理層の方にとってメリットになります。
認証更新費用
ISOの認証登録証には、3年の有効期限が定められており、1・2年目に受ける定期審査の次の審査が3年目の認証更新審査です。
構築したISOが、しっかりと機能しているか確認し、3年間における改善点などについて審査が行われます。
正確なPDCAサイクルを回せているのか確認され、問題が無いと判断された場合に有効期限が3年間延長される仕組みです。
社員教育や内部監査が必要となる
環境マネジメントシステムを作り、運用の手順や取り組みなどに関して決定した場合でも、従業員が定めたことを確実に行うための教育が必要になります。
従業員に業務を確実に定着させるには、一定の期間が必要です。
また、ISO導入による業務負担の増加がある場合、従業員にしっかりと説明し理解を得る必要があります。
内部監査員には専門知識が不要
ISOの運用では、必ず内部監査の実施が必要です。
審査では内部監査を実施した状況や、審査の実績に関する報告が必要のため、内部監査を実施した確認ができない場合は認証維持ができません。
内部監査員には専門知識は不要ですが、認証維持に関わる大事なものになりますので、必ず実施するようにしましょう。
ISO14001認証を取得するまでの流れ
ISO14001認証を取得するまでの流れは、以下の通りです。
- 社内の体制をつくる
- 要求事項を理解する
- 環境方針を設定する
- 環境マネジメントシステムを構築する
- 運用する
- 審査
社内の体制をつくる
はじめに、取得に向け活動する担当者およびチームを作成します。
コンサルタント会社に頼む方法を取る企業も多いですが、コンサルタントに依頼する場合であっても、担当者やチームを決め体制を整えます。
要求事項を理解する
作成していく環境マネジメントシステムの構築における手順が記載された「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」の内容を十分に確認し理解します。
環境方針を設定する
環境のことを考えた企業活動を行うための方針を決め、その後に組織が達成すべき目標を設定します。
環境マネジメントシステムを構築する
設定した環境方針および環境目標の達成に向けた行動計画などを作成し、計画に対する成果の評価方法を記載した資料を作ります。
運用する
構築した環境マネジメントシステムの運用を開始します。
運用する中で問題点や改善点がある場合は修正を行い、よりよい運用ができるように運用と修正を繰り返し行います。
審査
作成した文書や資料に対する確認と、運用の記録や立ち合い検査に関して審査機関から審査を受けます。
主にポイントとなるのは、以下の3つです。
- 環境マネジメントシステムが正常に機能しているか
- 環境に対し適切な取り組みができているか
- 要求事項をしっかりと満たしているか
審査には、数カ月の期間が必要になります。
審査通過後、登録証をもらうことでISO14001認証の取得完了となります。
国内企業のISO14001取り組み事例
国内企業のISO14001取り組み事例を4つ紹介します。
アヲハタグループ(食品製造・販売)
食品の製造や販売を行っているアヲハタグループでは、1999年にISO14001を取得し、2005年にジャム工場でISO9001の取得をしています。
登録範囲は、以下の通りです。
- ジャム類やスプレッド類、産業用加工食品類、調理食品類の製造および販売
- 食品製造機械の設置や保守管理、地域特産品の販売、環境衛生目的の防虫防鼠やサニタイズ
環境方針では、環境汚染の予防、および持続可能な資源の利用などに取り組むこととしています。
参考:アヲハタ
アスクル株式会社(事務用品通信販売)
アスクル株式会社では、持続可能な社会を実現するため、事業の基盤となる物流プラットフォームを顧客や社会、地球環境に最も適した方法かつ低コストでエコプラットフォームに進化させることで事業の拡大に向け取り組んでいます。
アスクルは、エコプラットフォームを実現するために2030 年までに、子会社を含むグループ全体の再生エネルギー利用率 100%となることを目指し、RE100およびEV100に加盟しています。
目標を達成するため、物流センターから顧客のもとに配達する間の配送で発生するCO2排出量を削減するなど事業における低炭素化、および「環境に配慮した商品開発・調達」「グリーン購入」「資源消費」「お客様との環境コミュニケーション」の環境への課題として行うべきポイントとして、継続的に改善活動が進められています。
参考:アスクル
株式会社松永牧場(畜産)
牛の畜産事業を営んでいる株式会社松永牧場では、2003年にISO14001の取得をしています。
資源の循環や廃棄物、エネルギーを環境における3大テーマとして掲げ、環境活動に取り組んでいます。
登範囲は、以下の通りです。
- 肉牛の肥育および繁殖
- 食品副産物のサイレージ化
- 堆肥の製造
- 飼料(牧草)の生産
また、農業は地域環境に大きく依存した産業という考えから、地域社会との共存共栄、環境保全活動の推進、環境問題にかかわる啓発活動推進といった取り組みを実施する環境方針を設定しています。
参考:株式会社松永牧場
富士通株式会社(ITサービス)
国内のITサービスを提供する企業の代表ともいえる富士通株式会社は、2004年にすべての事業所でISO14001の統合認証を取得しており、この規模での取得は国内で最大規模です。
富士通では、環境負荷の低減を追い求め、持続可能な社会を実現するため、ICT技術を活かした独自の環境マネジメントツールが積極的に活用されています。
世界中に点在している事業所の計画や実績、施策情報などが一元管理できる独自のデータベースや、リスク管理、コンプライアンス状況が一元管理できEMSの運用をサポートできる「環境ISO14001運用支援システム」を活かしてそれぞれの事業所やフロア、人員あたりの温室効果ガス排出量まで、さまざまな指標をリアルタイムで可視化することで、改善を繰り返し、より高レベルの環境経営が実現されています。
なお、これまでにISO27001(ISO/IEC27001:2005)の認証を取得しています。
登録範囲は、以下の通りです。
- 通信システム、電子デバイスの設計・開発および情報処理システム、製造、販売・ICTサービスの提供
参考:FUJITSU
ホテルニューアワジグループ(ホテル)
ホテルニューアワジグループは、2011年にISO14001を取得しています。
登録範囲は、宿泊や料飲、入浴サービスの提供です。
ホテルニューアワジにおける環境方針では、宿泊や料飲といったホテルサービスの事業活動に関して、周辺の環境保全、および排出する二酸化炭素の量を削減するために風力発電の導入や運用を行うことを掲げています。
参考:ホテルニューアワジ
まとめ
ISO14001とは、「環境マネジメントシステム」のことであり、企業や組織が活動する中で、組織を取り巻く環境に関する認証です。
ISO14001の認証を取得するメリットには、取引先や投資家からのイメージアップに繋がることや、経費の削減が見込めることがあります。
その一方で、認証の取得や維持に費用が掛かったり、社員教育や内部監査が必要となったりといったデメリットも存在します。
そのため、ISO14001の認証を取得しようと思われている企業の方は、認証取得のメリット・デメリット、取得の正しい手順を理解してから取り組むようにしましょう。
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