住民税と所得税の違いって何?計算方法や受けられる控除についても紹介
住民税と所得税では、受けられる控除の種類や金額、対象期間などが違います。
特に、自分で住民税や所得税で納付する個人事業主の方は、期間や計算方法について、しっかりと理解することが大切です。
住民税と所得税の違い
住民税とは、その地域に住む人が受ける公共サービスの費用を分担するという趣旨のもと徴収される地方税です。
一方で所得税とは個人の所得に対して一定の割合でかかる国税となっています。
住民税と所得税の違いは、以下の通りです。
住民税 | 所得税 | |
対象期間 | 前年1月1日~12月31日までの所得 | 毎年1月1日~12月31日までの所得 |
控除額 | 43万円 | 38万円 |
税率 | 所得割(一律10%)・均等割(5000円) | 5~45% |
控除項目 | 全15項目※控除額に違いあり | |
納税時期 | 特別徴収:毎月の給与支払い時 普通徴収:年に4回 |
翌年の3月15日まで |
①対象となる期間の違い
対象となる期間の違いは、以下表の通りです。
住民税 | 前年1月1日~12月31日までの所得が対象 |
所得税 | 毎年1月1日~12月31日までの所得 |
住民税は前年1月1日〜12月31日までの所得が対象です。
前年より今年の所得が低い場合でも、必ず納付しなければなりません。
どうしても支払えないような場合は、住民票に登録している自治体の窓口に行き相談する必要があります。
所得税の期間は、毎年1月1日〜12月31日までが対象期間です。
源泉徴収は、この期間で毎月行われ、年末調整は期間の最後の年末に行われます。
②控除額の違い
控除額の違いは、以下表の通りです。
【基礎控除額】
住民税 | 43万円 |
所得税 | 38万円 |
住民税と所得税では、基礎控除に5万円の差があります。
もし基礎控除と比べて年間所得金額が低いような場合は、確定申告する必要はありません。
しかし、年間所得金額が43万円以上で、48万円以下の場合には、所得税の申告は不要なものの、住民税については申告が必要な場合もあります。
申告しない場合、所得税に関して問題はありませんが、住民税を納めていない状態になってしまうため、住民税における基礎控除と所得税の基礎控除の違いを十分理解することが大切です。
③課せられる税率の違い
課せられる税率の違いは、以下表の通りです。
住民税 | 所得割(一律10%)・均等割(5000円) | |
所得税 | 所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% | |
195万円超~330万円以下 | 10% | |
330万円超~695万円以下 | 20% | |
695万円超~900万円以下 | 23% | |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | |
4,000万円超~ | 45% |
個人住民税の税率は、区市町村民税が6%、道府県民税・都民税が4%の合計10%です。
所得割とは、課税所得に対して課税される割合です。
課税所得が200万円の場合であれば、税率10%が課せられるため、所得割額は20万円です。
また、住民税の計算では均等割があります。
均等割は、所得金額に関係なく住民税が課せられる対象の人に対し、一律で割り当てられる税額です。
年額は4,000円になりますが、2014年から2023年分では、防災施策の財源とするため、区市町村民税が500円、道府県民税・都民税が500円の合計1,000円が足されています。
所得税の税率に関しては、所得金額次第で7段階に分類され、5%から45%までの税率が適用されています。
④控除項目の違い
住民税と所得税の控除項目は、以下表の通りです。
以下表の控除項目は、住民税と所得税の両方に同じ金額の控除が適用されます。
種類 | 住民税 | 所得税 |
雑損控除 | 損失額により控除額が変動 | |
医療費控除 | 支払った医療費 − 保険金等 − 10万円 = 医療費控除額 (10万円 → 年間所得が200万円未満であれば総所得の5%) |
|
社会保険料控除 | その年で支払った金額の全額 | |
小規模企業共済等掛金控除 | その年で支払った金額の全額 | |
青色申告特別控除 | 10万円・55万円・65万円 |
所得税と住民税の両方で、同じように控除される項目には上記表の5つがあります。
また、青色申告者に限り適用される控除である「青色申告特別控除」に関しても所得税のみならず、住民税でも適用されます。
一方で、所得控除で適用される金額や、控除される限度額が変わるものは、以下表の通りです。
種類 | 住民税 | 所得税 |
生命保険料控除 | 最高12万円 | 最高7万円 |
地震保険料控除 | 最高5万円 | 最高2万5千円 |
寄付金控除 | 特定寄附金 − 2000円 = 寄附金控除額 (控除対象になる寄付金は、総所得金額などの40%まで) | 特定寄附金 − 2000円 = 寄附金控除額(控除対象になる寄付金は総所得金額などの30%まで) ふるさと納税においては、特例分も加え控除。 |
寡婦・寡夫控除* | 27万円 (35万円のケースもあり) |
26万円 (30万円のケースもあり) |
勤労学生控除 | 27万円 | 26万円 |
障害者控除 | 一名27万円 (特別障害者の場合40万円または75万円のケースもあり) |
一名26万円 (特別障害者の場合30万円または53万円のケースもあり) |
配偶者控除 | 38万円 (配偶者が70歳を超える場合は48万円) |
33万円 (配偶者が70歳を超える場合は38万円) |
配偶者特別控除 | 最高38万円
(配偶者所得で変動) |
最高33万円 (配偶者所得で変動) |
扶養控除 | 基本的に38万円 (扶養親族の年齢で変動) |
基本的に33万円 (扶養親族の年齢で変動) |
基礎控除* | 48万円 | 43万円 |
⑤納税する時期の違い
住民税と所得税の納付する時期の違いは、以下表の通りです。
種類 | 時期 | |
住民税 | 特別徴収 | サラリーマンなど給与所得者における住民税は、 市区町村により計算された住民税額を、 毎月の給与支払いのタイミングで住民税額を差し引き市区町村に納税 |
普通徴収 | 納税通知書に従い、 年に4回(通常の場合6月・8月・10月・翌年の1月) に分け市区町村に納めます。 |
|
所得税 | 申告書を所得が発生した翌年の 2月16日〜3月15日まで提出し、 確定した税額を3月15日までに納税 |
住民税の納付方法では、「普通徴収」と「特別徴収」の2つの方法が存在し、サラリーマンの場合は「特別徴収」、その他の場合は「普通徴収」です。
個人事業主の場合、その年における全ての所得金額と、所得金額に課せられる税額を求め、税務署に申告書を提出し、確定した税額について3月15日までに納付します。
住民税・所得税はどうやって計算される?
住民税・所得税について、それぞれの計算方法について解説します。
住民税の計算方法
納付する住民税においては、「均等割」と「所得割」を足した金額になります。
各税率と標準の税額は原則として以下の通りです。
- 所得割 市町村民税6%+道府県民税4%=合計10%
- 均等割 市町村民税3000円+道府県民税1000円=合計4000円
なお、均等割に関しては2014年度〜2023年度までの10年間、500円ずつの合計1000円高くなっています。
所得税の計算方法
所得税は、「課税所得金額×税率-控除額」により求められます。
所得税の速算表を使用すれば簡単に所得税を算出できますが、2037年までの期間は東日本大震災に対する復興特別所得税が足されるので、所得税金額に復興特別所得税の追加が必要です。
- 所得税金額=課税所得金額×税率-控除
- 復興特別所得税金額=上記で求めた所得税金額×2.1%
住民税・所得税で受けられる主な税額控除
住民税・所得税で受けられる主な税額控除は、以下の通りです。
- 基礎控除
- 配偶者特別控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 住宅ローン控除
- 寄付金控除(ふるさと納税)
それぞれ詳しく解説します。
基礎控除
基礎控除は、所得控除の中の1つであり、税金による負担を軽減してくれる控除です。
全ての人が適用対象であり、控除により所得を減らせるため、減った分だけ所得に対して発生する税金が減少される仕組みです。
他の所得控除では、適用されるのに条件が設定されていますが、基礎控除では全ての人が適用対象ということが特徴です。
配偶者特別控除
配偶者が48万円以上の所得を受け取っており、配偶者控除が適用されない場合でも、配偶者が受け取っている所得の金額によって、一定金額で所得控除がもらえるケースがあり、この控除は配偶者特別控除と呼ばれています。
配偶者特別控除を受ける条件は、以下の通りです。
生命保険料控除
生命保険料控除では、納税する者が所定の保険契約により保険料を支払った場合に、一定金額がその年における課税所得から差し引かれる制度のことです。
この制度により、納税者の負担となる所得税・住民税を減らせます。
保険契約の種別次第で「個人年金保険料控除」と「一般生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」の3つに分けられ、それぞれの保険料控除の枠に対し所得控除が受けられる仕組みです。
この制度になる前の保険料控除は、「所定の要件を満たした個人年金保険・年金共済」と「それ以外の生命保険契約・共済」の2種類でした。
しかし、2012年1月以降に新制度に変わり、新規で「介護医療保険料控除」が追加され、3種類になりました。
地震保険料控除
地震保険料控除とは、1年間で支払った地震保障における保険料の金額に対して、一定金額が所得金額から差し引かれる控除です。
課税所得の金額分から地震保険料控除分が差し引かれることで、住民税や所得税にかかる負担が軽くなります。
日本においては、地震災害へ備え、国民の自助努力をサポートするために、2007年から、これまでの損害保険料控除が撤廃され、撤廃前よりも控除枠が大きくなる地震保険料控除が新たに設立されました。
地震保障では、単独での加入ができなく、火災共済とセットで契約することが一般的です。
その中で、地震保険料控除の対象とされるのは、地震保障に当てはまる部分の保険料に限定されます。
建物部分における契約だけでなく、家財部分を保障目的としている地震保障においても、地震保険料控除に当てはまります。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、住宅に入居してから10年間といった一定期間におけるローン残高に対して税金を安くできる制度です。
税金が返済されるといった点から、「お得」と表現されることもあります。
物件により変動はあるものの、基本的には最大400万、状況次第では最大500万円が返金されます。
住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。
住宅ローンを使って住宅を購入したり、リフォームしたりする場合、また、住宅を取得する際に発生する土地取得におけるローンも含まれますが、一定条件により、所得税から控除される制度であり、状況次第では住民税から控除される場合もあります。
住宅ローン控除では、基本的に入居してから10年の間、年末の住宅ローン残高における1%分の所得税および住民税が控除される仕組みです。
寄付金控除(ふるさと納税)
ふるさと納税は、国や地方公共団体、または特定公益増進法人などに対して、特定寄附金を支払った際の所得控除は寄附金控除とも呼ばれ、所得金額から差し引かれます。
また、政治活動に関係する寄附金や、認定NPO法人などに対して支払った寄附金、または公益社団法人などに対して支払った寄附金のうち、一定のものに関しては所得控除の代わりとして、税金で有利な税額控除が選べます。
住民税と所得税に関するFAQ
住民税と所得税に関するFAQを紹介します。
所得税の確定申告をすれば住民税も安くなる?
会社員の方であっても、確定申告により医療費控除などを申告すれば、源泉徴収された所得税の一部について還付を受けられるケースがあります。
住民税は、課税所得を基準に計算され求められるため、納付する金額も少なくなることがあります。
住民税と所得税の控除額が違う理由は?
所得控除の金額が、所得税と住民税で違う場合もあります。
それは住民税に対して“地域社会の会費”といった性質があるからといわれています。
例えば、教育や福祉、または消防活動やゴミ処理といった、暮らしに身近な存在である行政サービスは、地方公共団体により行われています。
地域での行政サービスを充実させるためには、財源を十分に確保する必要がありますが、その財源は行政サービスを受けている地域の住民が「税金」により負担し合うべきと考えられています。
地方公共団体における重要な税金の一つが住民税です。
しかし、地方税に該当する住民税を納付する人数は、国税に該当する所得税よりも断然少ないのが現状です。
退職所得に住民税や所得税はかかる?
退職時に受け取ることができる退職金では、「所得税」と「住民税」の両方が発生します。
退職金は、「給与所得」や「事業所得」といった10種類の所得の中で「退職所得」に当てはまり、分離課税です。
退職金に対し発生する退職所得に課せられる住民税は、分離課税と呼ばれ、所得が発生した年に、その他の所得と分けて課税されます。
所得税と住民税はどちらが高い?
所得によってどちらが高いかは異なります。
住民税の税率は一律で10%ですが、所得税は所得によって税率が変わるためです。
所得税率5%に該当する世帯では住民税の方が高くなり、所得税率が20%以上の世帯では所得税の方が高くなります。
所得税がゼロなのに住民税がかかるのはなぜ?
所得税と住民税の所得控除に違いがあるためです。
例えば、所得税の基礎控除や扶養控除は38万円ですが、住民税は33万円となっています。
もし所得が38万円だった場合、所得税は0ですが、住民税の課税所得が5万円となり、住民税が発生するのです。
所得控除には差があるため、もし所得税の所得控除を使い切ったと思っても、できるかぎり控除申請をするようにしましょう。
所得税と住民税はどこに払う?
所得税は国税のため、税務署の管轄です。
住民税は地方税のため、納める先は地方自治体となります。
まとめ
住民税と所得税の違いには、対象となる期間や、課せられる税率などがあります。
また、控除項目や納付時期も違ってきます。
住民税や所得税の納付義務があるのに納付しなかった場合は、延滞金などの罰則が課せられることもあるため、計算方法や納付時期について十分に理解することが大切です。
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