合成燃料(e-fuel)とは?デメリット・メリットや作り方、日本企業の取り組みを紹介
- 公開日:2026.03.04
- 更新日:2026.03.04
合成燃料(e-fuel)のメリット・デメリット、日本企業の取り組み状況やいつ実用化されるのかについて解説します。
年々深刻化する地球環境問題から、合成燃料や人工石油に注目する企業が増えています。
ガソリンよりもCO2排出量が少なく、ガソリンを燃料とする車や飛行機などに使用できるため、既存の設備を活かして脱炭素に繋がると話題です。
しかし、製造コストの高さなど、乗り越えるべき課題もあります。
合成燃料を活用するためには、合成燃料の作り方やメリット・デメリットについて理解することが重要です。
目次
合成燃料とは

合成燃料とは、e-fuelと呼ばれることもあり、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料に製造される石油代替燃料を意味します。
ガソリン・灯油など、石油を使用するものに利用可能です。
合成燃料は、発電所および工場から排気されているCO2や、大気中に存在するCO2と再生可能エネルギー由来の水素として注目されているグリーン水素を使用して製造されます。
これまでの化石燃料と異なり、生活する上で大気中にCO2を増加させない、カーボンニュートラルな燃料として近年注目を集めています。
関連記事:カーボンニュートラルとは?脱炭素社会を目指すメリット・デメリットと私たちにできること
合成燃料のメリット

合成燃料のメリットは、以下4つです。
- 脱炭素化に繋がる
- 従来の化石燃料と同じように使える
- 既存の設備をそのまま使うことができる
- 日本のエネルギー自給率向上につながる
脱炭素化に繋がる
1つ目のメリットは、脱炭素化に繋がることです。ポルシェによると合成燃料が出すCO2はとても少なく、ガソリンと比較すると85%ものCO2の削減が可能と公表されています。
電気自動車の場合でも、バッテリーを製造する過程でCO2が発生し排出されるため、油田から車輪を駆動させるまでの過程で見た場合、電気自動車と合成燃料のCO2排出量は同じレベルです。
また、窒素酸化物や粒子状物質の排出量も非常に少なく、ガソリンと比べても有害な成分が少ないです。このようなことから、合成燃料は脱炭素化に繋がる燃料として期待されています。
関連記事:電気自動車(EV)とは?メリット・デメリットや購入時に受けられる補助金制度と今後の動向
脱炭素化とは

脱炭素化とは、CO2の排出量をゼロにすることです。化石燃料を再生エネルギーに移行したり、排出されてしまったCO2を回収・吸収したりといった取り組みがされています。
CO2の排出量と回収・吸収量が差し引きゼロになり、実質的にCO2排出量がゼロになった状態を「カーボンニュートラル」と言います。日本は2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しています。
従来の化石燃料と同じように使える
2つ目のメリットは、従来の燃料と同じように使えることです。CO2とH2により製造される合成燃料は液体のため、これまでの灯油やガソリンといった燃料に非常に近い成分で構成されています。
そのため、エネルギーの密度が高く、これまでの燃料と同様に使用できるメリットがあります。また、持ち運びでき、常温常圧の環境で長期間の備蓄も可能なため、急遽必要になった場合でも利用可能です。
また、ジェット機やトラックといった大型の乗り物は、電池の大型化が現実的でないことから、電動化が難しくなっています。そのような大きな機体・車体であっても、燃料を合成燃料に変更するだけで脱炭素を進めることができるのは大きなメリットです。
既存の設備をそのまま使うことができる
3つ目のメリットは、既存の設備をそのまま使うことができることです。合成燃料は、現在すでに使っている内燃機関で使用できます。
近年では、電気自動車や水素自動車が普及しつつありますが、動力源を電気や水素エネルギーに変えることが困難なモビリティや製品も存在します。理由は、現在使われている灯油やガソリンといった燃料とエネルギーの密度が大きく異なるからです。
大型の車や飛行機などを液体燃料と同レベルの距離を移動しようと思うと、液体燃料よりもはるかに大きい容量の電池や、水素エネルギーが必要になります。
関連記事:水素エネルギーのメリット・デメリットとなぜ普及しないか理由を解説
日本のエネルギー自給率向上につながる
合成燃料の普及は、エネルギー自給率向上につながる可能性があります。
日本は化石燃料のほとんどを海外から輸入しており、エネルギー自給率はかなり低い水準です。海外の依存率が高いと、国際情勢の変化でエネルギーの安定供給が脅かされたり、電気代が高騰したりする恐れがあります。
一方、合成燃料は再生可能エネルギー由来の電力で水素を製造し、そこに回収した二酸化炭素を組み合わせてつくることができます。国内で再エネ電力を活用して製造すれば、輸入化石燃料への依存度を下げることが可能です。
エネルギー安全保障の強化にも貢献すると期待されています。
合成燃料の問題点・デメリット

合成燃料を活用する上での問題点は、以下2つです。
- 製造コストが高い
- 製造効率が悪い
製造コストが高い
1つ目の問題点は、製造コストが高いことです。合成燃料の製造にかかるコストは、ガソリン価格と比べ約2〜5倍かかると言われています。
経済産業省が公表した内容では、合成燃料の製造におけるコストは、1リットルにつき約300〜700円と公表されているため、今後いかに合成燃料の製造コストを削減するかが問題となっています。
製造コストと製造効率の向上がないと、一般的に普及する販売単価には至らず需要の拡大は難しいでしょう。
製造効率が悪い
2つ目の問題点は、製造効率が悪いことです。合成燃料を製造するプロセスでは、一部のエネルギーが失われてしまいます。
そのため、総合的に見た際に、化石燃料に比べてエネルギー効率が低くなってしまうことがあります。しかし、研究開発により技術が向上したり、再生可能エネルギーを上手く活用したりすることで、エネルギー製造効率の向上が期待されています。
また、日本ではグリーンイノベーション基金事業やNEDOの交付金事業によって、FT合成プロセスの大規模化や効率化や合成燃料の低コスト化に向けた直接合成や共電解を組み合わせたFT合成の開発が進んでいます。
合成燃料の作り方

CO2(二酸化炭素)とH2(水素)に分けて作り方を解説します。
CO2の作り方
CO2の作り方は、以下の通りです。
生物資源(バイオマス)を燃やして作る
生物資源(バイオマス)を燃やすことでCO2を作れます。
年々深刻化する地球温暖化に対して、バイオマス燃料が化石燃料に代わる燃料として注目されています。
この生物資源を燃やした場合にも、化石燃料と同じようにCO2が必ず生じます。
発電所・工場の排気ガスから回収する
工場や発電所といった大きい規模の汚染点源から排出される排気ガスにはCO2が含まれます。
そのCO2を回収することでCO2が入手可能です。
また、この方法でCO2を作成し合成燃料に活用することで、重工業から発生したCO2が大量に大気中に放出されるのを防げ、環境への負荷も軽減できます。
DAC法を使って直接大気から取り出す
DACとは、ダイレクト・エア・キャプチャーの略称であり、大型の機械を使用することでCO2濃度が約0.04%の大気中からCO2を分離または回収する技術のことです。
世界における平均気温の上昇幅を1.5℃までに抑える「パリ協定」の目標を実現するためには、CO2の排出を削減するだけでは足りず、大気中に存在するCO2を回収する必要があると言われています。
DACはその課題を解決する方法としても期待されています。
工場や石炭火力発電所などから発生しているCO2を、大気中に放出してしまう前に回収する技術である「CCS」に比べ、DACは経済活動にも制約されず排ガスと比べても低い濃度の大気中から多くのCO2を直接回収できます。
H2の作り方
H2の作り方は、以下の通りです。
化石燃料から取り出す
化石燃料から水素を作成する際には、原油に含まれているナフサや、天然ガスに含まれているメタンなどの水素と炭素で構成されている物質を、水蒸気と化学反応させることでCO(一酸化炭素)・CO2と水素を発生させます。
その発生した気体からCOとCO2を除去することで、純粋な水素を作成します。
電解法を利用して作る
水を電気で分解する電解法により水素を生成する方法もあります。
この電解法を実施する際に、再生可能エネルギー由来の電力を活用することで、グリーン水素の生成が可能です。
しかし、水を電気で分解するためには、多くの電力量が必要なため、可能な限り安い電力を使えれば、電解法にかかるコストを削減できます。
また、電解を実施する水電解装置の開発が進めば、装置自体にかかるコストを削減させることも重要な課題です。
合成燃料「e-fuel」の認定基準
合成燃料「e-fuel」の認定基準は、以下3つです。
- ライフサイクルにおける温室効果ガスを排出する量が軽油と比べて少ないこと
- 公的な品質の規格に合っていること
- 油脂から生成された炭化水素からできている
バイオディーゼル燃料:廃食用油などの廃棄物や副産物、または微細藻類における油脂の質量割合の合計が7割を超え、バイオマス原料が持続可能なこと
GTL燃料:燃料を使用する際の窒素酸化物や粒子状物質を排出する量が、軽油と比べ少ないこと
このように、合成燃料として認定されるためには、上記の基準を満たす必要があります。
合成燃料の活用方法

ここからは、合成燃料の活用方法を3つ紹介します。
ガソリン車
もっとも多くの合成燃料が使われる見込みがあるのが、ガソリン車。液体の合成燃料は、化石燃料で製造される液体燃料と同じくらいの高いエネルギー密度も持っています。
合成燃料は、石油や天然ガスなどのように海外からの化石燃料に依存していません。CO2・H2で製造できるので、日本のような化石燃料を多く国外に依存する国でも製造可能なのがポイントです。
合成燃料はガソリンと成分が近いため、ガソリン車に活用できます。
航空機(SAF)
航空機では、微細藻類や木材チップなどを原料とする「バイオジェット燃料」が使われはじめています。合成燃料であれば、原料が安定的に調達でき、大量生産できるというメリットがあります。
さらに近年注目されているのが、SAFです。SAFは、使用済み食用油や廃プラスチック、都市ごみ、藻類などを原料として製造される再生可能燃料で、従来の化石燃料と比べてCO₂排出量を約80%削減できるとされています。
国際的にも航空分野の脱炭素化に向けて導入が進んでおり、日本でも2030年までに航空燃料の10%をSAFに置き換える目標が掲げられています。
合成燃料はCO2と水素から工業的に大量生産でき、持続可能な航空燃料となる可能性があるでしょう。
参考:経済産業省・資源エネルギー庁「飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?」
船舶
国際海運では、重油を主な燃料としてきましたが、温室効果ガスの削減に向けて燃料転換が急速に進められています。
現在は、LNG(液化天然ガス)やカーボンリサイクルメタンなどの合成燃料を活用する動きが広がっており、これらは既存のエンジンや燃料供給インフラを活かせる点が大きな利点です。
将来的には、アンモニアや水素といったゼロエミッション燃料への移行も見込まれています。
また、船舶エンジンや燃料タンクの実証試験、燃料の取り扱いに関する国際的なルール整備も進められています。これにより、安全性を確保しながら新燃料の導入を段階的に進めることが可能です。
政府と民間企業が連携し、合成メタンやeメタノール、合成ディーゼルなどの実用化を進めることで、海運分野の脱炭素化が着実に前進していくでしょう。
参考:日本内航海運組合総連合会「内航海運業界の合成燃料への期待」
合成燃料に関する日本企業の取り組み
日本企業の取り組み事例を2つ紹介します。
出光興産、ENEOS、トヨタ自動車、三菱重工業の共同検討
出光興産、ENEOS、トヨタ自動車、三菱重工業の4社は、カーボンニュートラル社会の実現に向け、自動車向けCN(カーボンニュートラル)燃料の導入と普及に関する共同検討を開始しました。
合成燃料(e-fuel)やバイオ燃料など、製品ライフサイクル全体でCO₂排出を抑える燃料を対象に、2030年頃の国内導入を見据え、供給体制、技術開発、需要創出、制度設計などを横断的に検討します。
エネルギー供給、モビリティ、重工分野の主要企業が連携することで、既存車両を活かした現実的な脱炭素化の選択肢として、CN燃料の社会実装を目指す取り組みです。
ANA

ANAは、航空分野の脱炭素化を進めるためにSAF(持続可能な航空燃料)の導入を積極的に進めています。
2030年度までに使用するジェット燃料の10%以上をSAFに置き換えることを目標としており、2050年のカーボンニュートラル実現を視野に入れています。
SAFは使用済み食用油や廃プラスチック、藻類などを原料に製造され、従来の化石燃料と比べて最大約80%のCO2排出削減効果があるとされています。
ANAは2021年に「SAF Flight Initiative」を立ち上げ、企業顧客が航空輸送に伴う排出削減に参加できる仕組みを構築しました。
また、海外製のSAFを国内線にも導入し、Neste製燃料を使用した運航も実現しています。
さらに、国産SAFの普及を目指す官民組織「ACT FOR SKY」に参画し、国内生産体制の整備や供給網の確立を支援しています。こうした取り組みにより、ANAは日本の航空業界におけるSAF活用の先導的存在となっています。
参考:ANA
合成燃料に関するよくある質問
合成燃料についてよくある疑問点をまとめました。
合成燃料とガソリンとの違いは?
合成燃料とガソリンの違いには、以下のようなものがあります。
| 合成燃料 | ガソリン | |
| 原料 | CO2と水素 | 原油 |
| 原料産地 | 国産 | 輸入 |
| 安定性 | 高い | 世界情勢で変動 |
| CO2排出 | なし | あり |
| コスト | 高い | 安い |
| 用途 | 自動車・航空機など | |
合成燃料はCO2と水素を原料に作られ、使用時に排出するCO2がとても少ないため、ガソリンよりも環境に優しい燃料です。
また、合成燃料の原料は国産で賄えるため、世界情勢の変化によって価格が変動する可能性が低く、ガソリンよりも安定性があります。
ただし、製造コストはガソリンよりも高く、まだ実用化に至っていません。
合成燃料・人工石油の実用化はいつ?
資源エネルギー庁「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 2023年 中間とりまとめ」のロードマップでは、2030年代に導入拡大・コスト低減、2040年までに商用化、2050年までにガソリン価格以下のコスト実現を目指すとなっています。
それまでに、製造技術の高効率化や運転検証などのステップがありますが、他国との開発競争に負けないようスピード感をもった実用化への取り組みが求められます。
参考:合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会2023年 中間とりまとめ 資源エネルギー庁
合成燃料でコスト10円の「人工石油」とは?
「1Lあたり10円の『人工石油』」とは、大阪の「サステイナブルエネルギー開発株式会社」が京都大学と協力して研究しているもので、ここまで紹介してきた合成燃料(e-fuel)とは別物です。
大阪市が実験に協力したことで注目を集めましたが、現在のところ実現性はあまり高くありません。今後の研究や裏付けが待たれます。
その生成の仕組みは次の通りです。
同社によると、特殊な光触媒を用いて、水と大気中のCO2からラジカル水(化学反応を起こしやすい活性化水)を作り、ラジカル水に大気中のCO2と種油(軽油、重油、灯油など)を反応させることで、種油と同じ組成である合成燃料を連続的に生成するとされています。
合成燃料の生成に欠かせない水素エネルギーとは?
水素エネルギーは、水素を燃やして得られるエネルギーのことです。燃料電池に使用したり、発電所の燃料とすることで、CO2排出量をゼロにできます。
現在日本では、水素サプライチェーンの構築を進めており、大規模製造施設や移送手段の確保が行われています。
水素の単価が下がれば、合成燃料の単価も下がりますので、同時に技術開発が進むことが期待されます。
まとめ
合成燃料は、CO2と水素を原材料に製造される石油代替燃料です。
合成燃料には、脱炭素化に繋がったり、従来の燃料と同じように使えたりといったメリットがある一方、製造コストが高いことや製造効率が悪いといったデメリットもあります。
脱炭素社会の実現に向け、合成燃料を活用したいと思われている方は、合成燃料の作り方や、実際に取り組んでいる日本企業の事例を参考に、自社に適した取り組みを考えてみましょう。
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この記事を書いた人
ikebukuro


