太陽光発電は雑草対策が必要!除草方法や費用について解説
- 公開日:2025.02.28
- 更新日:2025.03.21

雑草は太陽光発電所の発電効率や安全性や周辺環境に影響するため、除草は重要な作業です。
太陽光パネルは均一に電力を通す必要がありますが、雑草が伸びてくると影ができることによって部分的に光が当たりにくくなり、太陽光パネル故障の原因となります。
近隣の住民や生態系にも悪影響を与える可能性があります。
また、雑草が伸びることで発電効率が下がることも注意しなければなりません。雑草は野立て太陽光発電所の発電量を大きく低下させてしまう場合もあるのです。
そこで、太陽光発電の雑草対策・除草の方法や費用・頻度やタイミングなどについて詳しく説明します。
【太陽光発電の雑草対策】除草方法と費用
太陽光発電におすすめの除草方法・費用を詳しく見ていきましょう。除草方法や交換時期・費用は以下表の通りです。
管理 | 費用 | |
草刈り | 年2~4回の作業 | 年間約10万円 |
除草剤散布 | 年2回の散布 | 年間約8万円 |
防草シート | 7~20年で交換 | 初期費用:800円~/㎡ 年間費用:約9万円 |
砂利・砕石 | 半年に1回程度の作業 | 初期費用:4,000円〜/㎡ 年間費用:約30万円 |
コンクリート・アスファルト | 初期施工のみ | 初期費用5,000円〜/㎡ |
動物による除草 | 毎日飼料が必要 | 初期費用:50,000円/1頭 年間費用:4,000円/1頭 |
草刈り
機械を使った草刈りは、雑草対策で最も一般的な方法です。
草刈りの費用・管理頻度
草刈りを業者に依頼した場合の費用は1㎡につき50円からです。草刈りや除草作業は年に数回で済みます。草刈りは年2〜4回の作業が必要です。
太陽光発電の草刈りに関する費用は面積に応じて異なりますが、一般的には50円〜/㎡の単価で見積もることができます。
年2回の草刈りを行うと、50kW未満の低圧発電所で、敷地面積が700㎡の場合以下の費用が発生します。
- 1年の費用:700㎡ x 50円 x 2回 = 70,000円
- 20年間の費用:70,000 x 20 = 1,400,000円
1年あたり7万円、20年間で140万円の草刈り費用が必要です。
しかし、自分で草刈りを行なう場合にはこれらの費用は必要ありません。
草刈りのメリット・デメリット
草刈りのメリット
- 他の手法より安価にできる
- 小規模な施設なら自分でもできる
- 外観が自然
草刈りは他の除草方法よりリーズナブルな価格に抑えられるのが最大のメリットで、小規模な太陽光発電所なら業者を雇わずに自力でできるので、管理費用をかなり節約できます。
また、太陽光発電所の外観を自然な状態に保てるのも利点です。
草刈りのデメリット
- 毎年定期的に行う必要がある
- 委託先や頻度により料金がが変わる
ケーブルや架台を破損する危険がある
草刈りは、毎年定期的に実施しなければなりません。また、利用する業者や管理の頻度で価格がかなり変わってきます。
また、芝刈り機で怪我をしたりケーブルや架台を傷つける可能性があるのでご注意下さい。
除草剤(化学的防除)
市場に出回っている除草剤には、農林水産省から正式な認可を受けたものとそうでないものが混在しています。消費者としてはその違いを理解し適切に選択することが重要でしょう。
特に、農薬取締法に基づき「農薬」として正式に登録されている除草剤を使用する場合、その効果は大きいです。
また、人や動物への安全性・環境への影響・使用後の毒性がどの程度残留するかなど、厳密な検査を通過した製品であるため、使用する際の安心感が違います。
除草剤の費用・管理頻度
除草剤の費用相場は1㎡につき60円からで、具体的には、50kW未満の700㎡の低圧発電所を例にとると、
- 1年間の散布費用:700㎡ x 60円 x 2回 = 84,000円
- 20年間の散布費用:84,000 x 20 = 1,680,0000円
という計算になります。
このように、除草剤の散布は、1年間で8万4千円、20年間で168万円のコストがかかることがわかります。
管理においては年2回の散布作業を行なう必要があります。
除草剤のメリット・デメリット
除草剤散布のメリット
- 1回あたりのコストが安い
- 小規模なら自分でも管理できる
- 散粒機を使えば作業が楽になる
除草剤散布は1回あたりのコストが安く、年間何度も行なうわけではないので、トータルではかなり安価な除草対策になります。小規模太陽光発電所なら自分でできるので、さらにコストが下げられます。
散粒機を使用することで作業が楽になるのもメリットです。
除草剤散布のデメリット
- 散布時期を間違えると効果が激減する
- 近隣とトラブルになる可能性がある
- 長期間使い続けると効果が低下する
散布するのに効果的な時期を確認せずに作業をすると効果が減る可能性があります。
また、近隣に農地や用水路がある場合、使用することでトラブルに発展するケースがあります。
長期間同じ除草剤を使い続けると、草が耐性を持つようになり、効果が激減することにも注意しておきましょう。
防草シート
防草シートは、日光を遮ることにより草が生えることを防ぎます。防草シートは様々な種類がありますが、安いものだと草がシートを突き破り、2~3年で破れる可能性があります。
耐用年数の長いシートを選んだ方が、費用対効果が優れていると言えるでしょう。
防草シートの費用・管理頻度
防草シートの費用は1㎡で800円から、交換頻度は7年から20年です。交換頻度はシートの種類によって大きく異なり、ザバーン240Gの場合は7〜13年、ウィードシールドの場合は20年となっています。ウィードシールドは10年保証が付いており、補修しながら使用できます。
太陽光発電の防草シートの費用対効果を見てみましょう。20年間でかかる費用は約148万円となりますが、これはどのように算出されるのでしょうか。
700㎡の低圧発電所に防草シートを敷く場合、以下のような項目があります。
- 防草シートの購入費用:700㎡ x 800円 = 560,000円
- 防草シートの敷設費用:外注すると1㎡あたり600円程度
700㎡ × 600円 = 420,000円 - 10年保証料:約10万円
- 10年後の補修費用:約40万円
これらを合計すると、980,000円 + 10万円 + 40万円 = 1,480,000円となります。
防草シートのメリット・デメリット
防草シートのメリット
- 敷設後の管理が楽
- 耐用年数が長いものはコスパが良い
- 雑草が生えないスペースが増えることで発電効率やメンテナンス性が向上
一度敷設した後は管理の手間が大幅に減少します。
また、耐用年数が長いほどコスパが良くなります。
防草シートは雑草の生えるスペースを減らし、発電効率やメンテナンス性を向上させる効果があります。そのため、長期的に見るとコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。
防草シートのデメリット
- 初期費用が高い
- 敷き方次第で隙間から雑草が生える
- 安物だとすぐに破損する
デメリットは、初期費用が他の除草方法と比べて高めなことです。
また、敷き方を間違えると隙間から雑草が生えるので、効果が半減します。
安物だとすぐに穴が空いたり破れたりするので、おすすめできません。
砂利・砕石
雑草の繁殖を防ぐ方法として、石を敷き詰めることがあります。発電所の敷地内に石を敷くと、雑草の種が土に入りにくくなり、根も張りにくくなります。
すでに完成した発電所に石を敷くのは大変ですが、これから建設する発電所なら石を敷くことを検討してみると良いでしょう。
砂利・砕石の費用・管理頻度
砕石を敷く際の初期費用は1㎡につき1,500円からで、管理頻度は半年に1回ほどのメンテナンスで済みます。土に混ざってしまうと効果が低下するので、定期的に補充する必要があります。
雑草が砕石の隙間から生えてくるのを防ぐには、砕石だけでは不十分です。防草シートを敷いてから砕石を重ねると、より効果的な雑草対策になります。
砂利・砕石のメリット・デメリット
砂利・砕石のメリット
- 雑草を処理しやすい
- 架台・現場形状に左右されにくい
- 手入れの頻度が少ない
草が生えてきても抜き取りやすいのが代表的なメリットで、防草シートを下に敷いていると効果はさらにアップします。
また、架台や現場の形状に左右されにくいので施工しやすいのもメリットです。
管理は年に2回程度で済む点も忙しい管理者に喜ばれています。
砂利・砕石のデメリット
- 他の雑草対策との併用が必要
- 草刈り機が使いにくい
- 地面が高温になる
防草シートを敷かない場合には砕石の隙間から草が生えてくるので、他の雑草対策と併用しなければなりません。
草刈り機を使う際には石の飛散などによってパネルや周辺機器が損傷する可能性があります。
また、地面が高温になるため、発電効率が悪化して損失が発生するケースもあります。
コンクリート・アスファルト
発電所の地面をコンクリートやアスファルトで覆うことで雑草が生えないようにする方法もあります。
コンクリート・アスファルトの費用・頻度
コンクリートやアスファルトで覆う際の初期費用は1㎡につき5,000円以上です。高額ですが、施工後は手入れが一切要らなくなります。
コンクリート・アスファルトのメリット・デメリット
コンクリート・アスファルトのメリット
- 初期施工後の手入れが不要
- 効果時間が長い
- 高い防草効果がある
コンクリート・アスファルト対策は、初期施工後はほとんど手入れが不要で、維持管理費がかからないのが大きな利点で、効果時間も非常に長いです。
また、高い防草効果があるので、長期間美しい外観を保つことができます。
コンクリート・アスファルトのデメリット
- 初期費用・撤去時の費用が高く工期も長い
- 排水性が悪い
- 地面が高温になりやすい
初期費用と撤去時の費用が高く、工期も長いのが代表的なデメリットで、排水性が悪いので雨水の処理に注意が必要というのも難点です。
また、地面が高温になりやすく、太陽光発電の効率を低下させる可能性があります。
すでに完成されている発電所の地面をコンクリート・アスファルトにすることはできませんし、これまで紹介した雑草対策の中で最も費用がかかるという問題点がありますが、その2点をクリアできるなら非常に効果が高い雑草対策です。
動物による除草
ヤギやヒツジを飼って雑草を食べてもらうというやり方の除草対策です。
動物による除草の費用・管理頻度
初期費用は1頭につき50,000円からで、管理頻度は毎日です。飼料や排泄物の処理をしなければならないからです。
動物による除草のメリット・デメリット
動物による除草のメリット
- 近隣の人との交流が生まれる
- 動物と触れ合える
- 環境保全に貢献できる
動物による除草は、動物を介して近隣住民との交流が深まるというメリットがあり、動物と触れ合うという体験ができるのも利点です。
また、環境に優しい方法なので環境保全に貢献できます。
動物による除草のデメリット
- 初期費用がかかる
- 毎日の世話が必要
- エサにならない雑草の対策が必要
1頭につき50,000円で、太陽光発電所の規模により10頭以上購入する必要があるので、初期費用はかなりかかります。
また、毎日世話をしなければならないので、忙しい人には向いていません。
動物が食べない雑草も生えるので、それらの対策を別途立てなければならないのも難点です。
太陽光発電で雑草を除草しないとどうなる?
太陽光発電の設置場所によっては、雑草の生えるスペースが多くなります。
「雑草は少し程度なら影響しないだろう。」「雑草対策は手間とコストがかかるから、省いてもいいのでは。」と考えて雑草対策を軽視すると、実は大きな損失につながる可能性があります。
まずは雑草対策の重要性と効果的な方法について説明します。
太陽光パネルにホットスポットが発生しやすくなる
ホットスポットを防ぐために雑草の管理が重要です。雑草は太陽電池モジュールの影になり、その部分の発電効率を低下させます。
さらに、影になったモジュールは他のモジュールと比べて電気抵抗が高くなり、電流を流すと、モジュール内部が発熱します。
発熱が持続すると、モジュールの性能や寿命に悪影響を及ぼし最悪の場合は故障や火災の原因になります。
このようなホットスポットはパネルメーカーの保証範囲外となることが多いので、自己負担で修理しなければなりません。
定期的に雑草を刈り取るなどして、ホットスポットを発生させないように注意しましょう。
パワコン内部に雑草が侵入すると故障に繋がる
パワーコンディショナーは太陽光発電の重要な機器ですが、雑草の影響を受けやすいです。雑草がパワーコンディショナーの通気孔に入り込むと、内部でショートや火災を引き起こす可能性があります。
これは、発電所だけでなく、周辺の建物や人々にも危険を及ぼすかもしれません。つる性の雑草の場合、パワーコンディショナーに届きパネルを覆ってしまうこともあります。
これらの問題を防ぐためには、パワーコンディショナーの周りに雑草が生えないように定期的な管理が必要です。
害獣が住みつきケーブルを破損させる可能性がある
雑草が膝丈以上に生い茂ると、ネズミなどの害獣が潜む隠れ家になるでしょう。ネズミによるケーブルや配線の噛み切りは、ケーブルや配線に被害を及ぼし、漏電や火災の原因になる可能性があります。
また、有毒なマムシやヤマカガシが住み着いたり、アシナガバチやスズメバチなどの刺す虫が巣を作ったりすると、メンテナンスを行う際に危険です。
漏電が起こった際火事になる危険が高まる
草が伸び放題になると漏電や火災の危険性が高まります。特に乾燥した雑草は燃えやすいので、気をつけなければなりません。
また、雑草が広範囲に生えると、火災が発生した時の被害が甚大になります。発電所だけではなく敷地外にも延焼することで近くの家や建物にも被害を及ぼす恐れがあるからです。
近隣の家・建物・施設に炎症した場合、損害賠償の対象になるので、発電所だけでなく、近隣の場所にも大きな損害を与えないように注意しましょう。
発電量低下により売電収入が減少する
雑草が成長することにより、太陽光発電の売電収入が減少します。雑草が伸びて太陽光パネルに影を落とすことにより、太陽光が遮られて発電量が減るからです。
売電収入が減少すると、初期費用の回収が遅れたり、利回りが下がったりと、投資計画に影響がでてしまいます。
しかし、雑草が30cm以上伸びないように維持・管理を実施すれば、発電量を維持して売電収入を安定させられます。
周辺住民とのトラブルの原因になる
雑草の管理を怠ると、景観が損なわれ近所の人から苦情を言われる可能性があります。
発生する可能性が高いトラブルで特に多いのは、発電所の敷地内や周辺に生えた雑草が道路にはみ出して歩行者や車の邪魔になるケースです。
また、発電所の雑草について「放置されている」と判断され、不法投棄の対象になることもあります。
伸び放題の雑草から飛んでくる種や綿毛が干している洗濯物や周辺住民の衣服などに付着した場合にも、クレームの原因になりがちです。
太陽光発電は長期的な事業です。近隣の方々と良い関係を築いて維持しなければなりません。雑草対策を疎かにしないようにしましょう。
FIT認定が取り消されることもある
雑草の管理を怠ると、適切な運用管理が行われていないと判断され、売電停止の可能性が大きいです。2017年施行のFIT法により、太陽光発電所の適切な運用管理が義務付けられたからです。
この法律に違反すると、FIT認定を失う可能性があります。
資源エネルギー庁の「事業計画策定ガイドライン」では、「第3節運用・管理 4.周辺環境への配慮」 の中で、「雑草の繁茂等による周辺環境への影響がないように管理するように努めること。」と述べています。
太陽光発電の除草は外注か自力はどっちがいい?
太陽光発電の除草作業を外注するか自力で行うか、どちらがより適切なのでしょうか?外注と自力それぞれのメリットとデメリットを確認してみましょう。
外注するメリット
太陽光発電の除草を外注する際の主なメリットは以下の通りです。
- 時間と労力の消費がない
- 周囲の環境に適切に配慮してもらえる
- 専門家による除草なので安心感がある
除草作業を太陽光発電設備の除草の専門家に外注すると、時間と労力を使わなくて良いというメリット以上に、周囲の環境への配慮や太陽光発電や敷地内で事故が発生する可能性が格段に減るというメリットがあります。
太陽光発電の除草に特化している専門家なら、自力での除草より費用がかかりますが、それ以上の安心感を得られます。
自力で除草するメリット
太陽光発電の除草を自力で行う際の代表的なメリットをご覧ください。
- 外注よりも安く済ませられる
- 好きなタイミングで作業できる
除草作業を自力で行う場合、芝刈り機などを使わなければ人件費も燃料費も発生しないので、除草コストを大幅に節約できます。
自分の都合の良いタイミングで除草できるのもメリットです。
しかし、自力での除草作業は、季節によっては熱射病になるリスクがあると共に、草刈り鎌や芝刈り機の使い方次第で思わぬ怪我を負う可能性があります。
最近では「安全かつ時間と手間をかけずに除草するなら、多少の費用が発生しても外注した方が良い」と考える人が多いです。
太陽光発電の雑草対策で気を付けること
太陽光発電の雑草対策で気を付けることを3つ説明します。
雑草が伸びきってしまう前に除草する
雑草の管理は太陽光発電の効率に影響します。雑草が茎を太くして成長すると、除草作業が困難になります。そのため、茎が細いうちに早めに対策することが望ましいです。
雑草の高さも30cm以下に抑えることで、太陽光パネルへの日陰を防ぐことができます。雑草が30cmを超えたら、速やかに除草しましょう。
雑草が伸びやすい季節に注意する
除草時期におすすめな時期は年3回です。最盛期前の6月から7月と生育がほぼ終わる9月から10月と雑草が枯れる11月から12月に除草作業を行いましょう。
特に、春から夏は、気温が上昇し雑草の生育が活発になる時期です。
放置しておくと、雑草が手に負えなくなることもあるので注意を払う必要があります。
1つの方法だけでなく複数の方法を組み合わせて行う
雑草対策は1つだけではなく、複数の方法を組み合わせて実施するとより効果的でしょう。たとえば、防草シートを使う際には、事前に除草剤を使って枯草刈りをしてから敷くと雑草は生えにくいです。
また、防草シートの劣化を防ぐには、砂利を敷くのがおすすめです。防草シートに直射日光が当たるのを防ぎ、防草シートの素材が傷みません。
砂利は、防草シートの上に均一に敷き詰めることで、防草シートを紫外線から守るだけでなく、雨水の排水も良くします。また、砂利は見た目も美しく、景観を向上させます。
まとめ
除草方法や費用について詳しく紹介しました。各々のメリット・デメリットを鑑みて、1つ或いは複数の方法を組み合わせて実施しましょう。
太陽光発電の野立て設置では、除草が重要です。除草を怠ると、発電量が影響を受けて収益が下がるだけでなく、機器の故障や近隣住民とのトラブルの原因にもなりかねません。
除草は、太陽光発電の安全性や効率性の維持に必要不可欠です。
この記事を書いた人
ikebukuro