太陽光発電のリパワリングとは?費用とメンテナンスとの違い・実施するメリット
- 公開日:2024.11.13
- 更新日:2024.11.14
太陽光発電のリパワリングとは、パーツや設備を交換することで発電効率を向上し、売電収入を増やすことです。
太陽光発電投資が注目され始めてから、10年以上経っており、当時投資を始めた人の中には、太陽光発電所の運用を続けている人も多いでしょう。
定期的にメンテナンスを行なっていても、経年劣化による発電量の低下は避けられません。発電量を増やし収益をアップさせるためには、太陽光発電所のリパワリングです。
本記事では、太陽光発電所をリパワリングするメリットやリパワリングを検討した方がいい発電所について詳しく解説していきます。
目次
太陽光発電のリパワリングとは
リパワリングとは、太陽光発電の各種機器をアップグレードしたり、新たな機器を導入したりなどから、発電能力を高めることを指します。
太陽光パネルメーカーは発電量の低下率をあらかじめ予測した上で補償期間を定めています。
太陽光発電パネルは経年劣化からの発電量低下は避けられません。
運転開始から10年ほどを迎えると、パワーコンディショナーの保証期間も終了することで、太陽光発電のリパワリングの需要が高まります。
実際に、リパワリングを行うことで、太陽光発電パネルが生み出した電力を無駄にすることがありません。
新しいモデルのパーツでは、電力変換効率も高まっているなど、さまざまなメリットがあります。
リパワリングが必要な太陽光発電所の特徴
- 建設後10~15年が経過している
- 50kW未満の低圧発電所
- 施工不良や整地不良が見つかっている
リパワリングが必要な太陽光発電所は2012年以降の早い時期に建設された太陽光発電設備です。
その中でも、50kW未満の低圧発電所の場合、施工不良が目立つため、大規模なリパワリングが必要となります。
例えば、整地が適切に行われておらず、地盤がガタガタというケースがたくさんあります。
また、埋没されていないため、地上にさらされていることも多いです。
その他にも、コネクタ部分がしっかり繋がっていないことや太陽光発電モジュールが発熱してしまい丸焦げになっているなど、さまざまな部分に問題があります。
最近の太陽光発電設備の場合は、過積載によって発電量の減少が目立たなくなっている一方で、売電価格も低く、コストに見合うリパワリングの条件に変わってきています。
太陽光発電所をリパワリングするメリット
リパワリングをしなくても定期的なメンテナンスを行っているから資産価値は下がらないと感じる人も多いでしょう。
リパワリングを行うメリットは以下の3つがあります。
- 発電量が改善もしくは増える
- メンテナンスコストが減る
- 売電収入が高くなる
それぞれのメリットを詳しく解説していくので、太陽光発電所をリパワリングしようかまよっている人はぜひ参考にしてください。
①発電量が改善もしくは増える
既存の太陽光発電設備をリパワリングすることで、高いFIT価格で発電量を増加することができ、売電収入を増やすことができます。
売電収入は、発電量とFIT価格(売電価格)によって決まります。
FIT価格は、太陽光発電設備がFIT認定された年度によって決まっているため、上げることはできません。むしろ、年度が後になるほど安くなるため、既存の買取価格を保つことがベストです。
リパワリングは最新のパーツに交換するため、これまでの発電量の改善ができたり、発電量が増えたりなどするメリットがあります。
例えば、最近のパワーコンディショナーは、設置当時のパワーコンディショナーと比べても大幅に変換効率がアップしています。しかも、パワーコンディショナー自体もコンパクトになっていて、少ない台数での稼働が可能となりました。
そのため、現在使用しているパワーコンディショナーの保証期間が残っていても、規模の大きな発電所や古い発電所などを早めに交換することで、残り限られたFIT期間でも最大限の収益を生み出せます。
②メンテナンスコストが減る
リパワリングを行うことで、メンテナンスコストが減ります。
FIT買取期間20年のうちに、必ずパワーコンディショナーの保証期間終了や寿命による交換が必要になります。
太陽光発電の機器保証は10年で切れるモノが多いため、パワーコンディショナーが故障してしまうと、交換までの間には発電ロスが発生します。
保証期間内の確認と計画的なメンテナンスが必要になるでしょう。
そのため、現在付いているパワーコンディショナーを保証期間内まで使い切るのではなく、早い段階からリパワリングを行うことで、メンテナンスコストが減ります。
メンテナンスとリパワリングの違い
メンテナンス | リパワリング | |
目的 | 発電効率の維持 | 低下した発電効率の復活 |
タイミング | 定期的 | 発電量が低下したとき 発電効率を上げたいとき |
資産価値 | 変わらない (実施が義務) |
上がる |
内容 | 故障箇所の発見・修理 清掃 |
経年劣化した機器の交換 新製品の導入 |
メンテナンスとは保守点検であり、リパワリングとはパーツ交換で発電効率を復活・向上させることを意味します。
メンテナンスは2017年のFIT法が改正で義務化されました。太陽光発電設備を故障させず稼働するためには、定期的なメンテナンスが必要です。
一方で、リパワリングは、新しいパーツへの取替やモジュールの追加などを行って、再び効率的な発電量を増強します。
③売電収入が高くなる
既存のパワーコンディショナーを保証期間まで使わず、早い段階のうちにパワーコンディショナーをリパワニングを行うことで、FIT期間終了まで発電量が向上するため、高いシステム収益が得られます。
例えば、低圧49.5kW・稼働10年目の太陽光発電設備でパワコンのリパワリングを行うと、以下のような変化があります。
リパワリング前 | リパワリング後 | |
年間発電量 | 54,000kWh | 67,500kWh |
年間売電収入 | 変化なし | 約25%アップ! |
管理費 | 増加 | 減少 |
既存の太陽光発電設備では、経年劣化の影響で導入時に比べて発電量が低下しています。また、不具合や故障も増えるようになり、メンテナンス費がかさみます。
リパワリングで、新型のパワーコンディショナーに交換するだけでも、変換効率がアップし、売電収入を増やすことが可能です。
パネルを最新モデルに交換すると、合計出力が同じでもパネル枚数を減らせるため、パネルの清掃・点検のコストを削減もできます。
しかも、古い太陽光発電では、FIT買取価格が高いため、発電量が増えることで、より一層の収益改善効果を得られるでしょう。
太陽光発電でリパワリングする際の注意点
太陽光発電でリパワリングする際の注意点をご紹介します。
- 総額費用が高くなる
- パネルの出力更新を伴う交換の場合、FIT期間中にできない
①総額費用が高くなる
リパワリングを検討する場合には、費用が高額になる場合があるため注意が必要です。リパワリングを行いたいと思っても、予算に見合わないため見送らなければならない場合もあります。
通常リパワリングを行う際は、太陽光パネル・パワコン購入費に加えて設置工事の費用もかかります。
費用 | |
パワコン | 約20~50万円/1台 |
ケーブル | 約500~2,000円/1m |
太陽光パネル | 約10万円/kW |
工事費 | 20~100万円 |
リパワリングに必要な機器の購入費用が、予算内に収まらない可能性があるため、事前にいくつかの販売店に見積もりを取っておくと安心です。
②パネルの出力更新を伴う交換の場合、FIT期間中にできない
リパワリングを行う際に、太陽光パネルを新しい機器に交換できます。しかし、太陽光パネルを追加で設置して合計出力を増やすのは、経済産業省から規制がかけられているためできない点も、注意が必要です。
太陽光パネルの合計出力を3%以上もしくは3kW以上増やしてしまうと、FITによる売電価格が本年度の単価まで引き下げられてしまう可能性があります。合計出力を増やそうと考えている場合は確認が必要です。
FIT期間を終了した設備で今後も売電を続ける場合、太陽光パネルを高効率のものに交換して出力を増やすことは効果的です。設備の寿命を延ばし、売電収入を増やすことができます。
太陽光発電のリパワリングの費用相場は?
太陽光発電のリパワリングには、新しい設備(パワコンなど)の購入費用や、交換工事に用がかかります。太陽光発電設備の規模にもよりますが、数百万円の費用が想定されます。
ただし、パワーコンディショナーの寿命は10~12年と言われていますので、FIT期間中に1度は交換が必要になる計算です。必要経費として積み立てておくと、負担を軽減できるでしょう。
太陽光のリパワリングをする前のチェックリスト
太陽光のリパワリングを検討する場合、以下のような項目を確認してください。
- 設備の現状の確認
- FIT認定条件の確認
- リパワリング業者の選定
- 交換する部品・設備の選定
- 費用対効果の確認
まずは、現在の設備状況を見直しましょう。設備の劣化で発電量が落ちている場合、リパワリングの効果が高いです。
FIT期間中の場合は、パネル出力を上げることができません。パワコンの変換効率を上げるなど、出力増強以外のリパワリングを検討してください。
リパワリングは実績豊富な専門業者に依頼しましょう。設備の現状や希望に合わせて、部品・設備の選定や計画策定を行ってくれます。複数の業者に見積もりを依頼し、比較するのがおすすめです。
計画が出来たら、費用対効果の確認が必要です。かかる費用を超える売電収入の向上が見込める場合、リパワリングの効果があると言えます。
太陽光のリパワリングをする流れ
まずは、リパワリング業者に相談しましょう。専門家の知識からリパワリングの計画を立ててくれます。流れは以下の通りです。
- 現状の把握
- リパワリングを計画
- 機器の選定
- リパワリング工事の実施
まずは、現在の太陽光発電設備の状況確認をリパワリング業者に依頼しましょう。稼働開始時からどのくらい発電量が下がっているのか、太陽光パネルやパワーコンディショナーの劣化はどれくらい進んでいるかといった点を調べてくれます。
次にリパワリング業者は、リパワリングをすることでどれくらい売電収入が増加するのかや、リパワリングにかかる費用をシミュレーションします。それを踏まえて、実際にリパワリングを実施するか検討してください。
リパワリングすべき箇所が見つかったら、機器の選定を行います。同じメーカーの後継機種を選ぶのがおすすめです。
リパワリング計画が出来たら、工事の施工です。一般的に工事中は発電できないため、発電量の少ない季節(冬など)を選ぶのがよいでしょう。
太陽光発電のリパワリングに関するよくある質問
太陽光発電のリパワリングについて考える際に、気になる点についてまとめました。
太陽光発電のリパワリングをFIT期間中に行う場合の注意点は?
FIT期間中には、太陽光パネルの出力アップやパネルの増設を伴うリパワリングは行うことができません。FIT認定が取り消されたり、売電価格が変更時の価格に下がったりします。
FIT期間中にできる主なリパワリングは、パワコンを最新のものに交換し、変換効率を上げることです。
太陽光パネルの出力を増やすリパワリングは、10kW以上の産業用太陽光発電設備のFIT期間である20年間を超えてから行ってください。
太陽光発電のリパワリングはいつ行う?
最もコスパが良いと思われるリパワリングは、10年過ぎたら全てのパワコンを一度に交換する方法です。メリットは以下のようなものがあります。
- 1台ずつ交換するより工事費用が安い
- メーカー保証に入れる
- パワコンの故障による売電ロスがない
パワコンはまとめて交換した方が、工事費を安く済ませることができます。
また、パワコンが故障してから交換しようとしても、すぐに新しいパワコンを用意できるわけではないため、何日か発電できない期間ができてしまいます。
工事費を節約して、機会損失を防ぐことができ、変換効率も1度にアップできるのでおすすめです。
リパワリングはパワコン保証期間が来るのを待ったほうが良い?
パワコンの保証期間は通常15年程度なので、パワコンの保証期間を待っても良いですが、おすすめなのは上記に紹介した通り自己負担であっても10年を目安に交換することです。
保証期間が過ぎてから故障してしまった場合は、売電期間が残っていれば10年目時点と同じく自己負担で交換する必要があります。
リパワリングをしないということは、発電効率が低下している状態なので売電収入も回復できないため、できるだけ10年を目安としてリパワリングを行うことをおすすめします。
リパワリングが必要な時はパワコンなどにどんな症状が発生する?
リパワリングを行う時には、太陽光パネル・パワコンなどすべての機器を交換する場合もありますが、費用がかさむため、パワコンだけ・太陽光パネルだけを交換する場合もあります。
リパワリングが必要になる場合は、パワコンの本体が異常に熱をもって熱くなってしまっていたり、冷却用のファンが異常な高速回転をしてしまっているなどの症状が挙げられます。
リパワリングを行う場合だけでなく、上記の症状が見られた場合は、パワコンが故障している可能性が高いため、早めに交換することをおすすめします。
まとめ
今回は太陽光発電所のリパワリングについて詳しく解説していきました。
リパワリングとは、太陽光発電の各種機器をアップグレードしたり、新たな機器を導入したりなどから、発電能力を高めることを指します。
経年劣化により、本来期待されていた発電量を確保できず、下回っている太陽光発電所において、再度、発電量の復活やそれ以上の発電量を獲得できます。
また、早い段階からリパワリングを行うことで、メンテナンスコストが減ります。発電量が増えることで、より一層の収益改善効果を得られます。
この記事を書いた人
ikebukuro