新電力はなぜ安い?電気代高騰の今、料金が安くなる仕組みを解説
- 公開日:2025.10.27
- 更新日:2025.11.07
新電力とは、2016年4月に一般家庭向けの電力小売自由化が開始してから、新たに電力事業に参入した電力会社のことです。
大手電力会社よりも安い料金設定や、独自のサービスなどのメリットが多いことから、新電力に乗り換える方が増えています。
しかし、新電力がなぜ安いのか分からなかったり、停電にならないか心配だったりするかもしれません。
そこで今回は、新電力の仕組みの基本的な解説と、新電力に関する疑問を取り扱っていきます。新電力が安い理由や、どんな方に新電力がおすすめできるかも紹介しますので、電気代を下げたいという方はぜひチェックしてください。
目次
そもそも新電力とは?
新電力とはそもそもどういったものなのでしょうか?ここからは、新電力の仕組みと大手電力会社との違いなどについて解説します。
新電力とは「新規参入の小売り電気事業者」のことです。電気の供給はこれまでは、関西電力や東京電力など大手電力会社が独占していました。
2016年4月から開始された「電力の小売全面自由化」によって、どの企業でも一般の家庭に向けて電力の小売ができるようになったのです。
電力自由化によって、新たに参入してきた大手電力会社以外の電力会社のことを「新電力」と呼んでいます。またこれまで電気の販売に携わっていなかった異業種の企業も、新電力会社として参入してきています。
新しく起業している企業もありますが、ガス会社や通信会社といった別業種の大手企業が参入している場合が多いです。
新電力の仕組み
新電力は、電気の発電・送配電・小売りの3つの部門のうち、小売部門を担っています。
例えば、新電力会社は発電所や電力取引市場から電気を購入し、大手電力会社の送配電網を使用して家庭や事業所に電力を供給します。
この際、送配電網を利用するための「託送料金」を支払っています。こうした仕組みのもと、新電力会社は競争力のある料金プランやサービスを提供し、消費者に新たな選択肢を提示しています。
「新電力」と「大手電力会社」の違い
大手電力会社とは、北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・四国電力・中国電力・九州電力・沖縄電力の10社を指します。この10社は、2016年の電力の自由化の前に、エリアごとに独占的に電力を供給する会社でした。
大手電力会社と新電力とでは、求められる義務や提供できるサービスに違いがあります。
大手電力会社は発電所や送配電網を保有する義務がありますが、新電力にはありません。
新電力は、電気を届ける電線の設備を保有しておらず、大手電力会社(一般電気事業者)の送配電部門に使用料を支払い、既存の送電ネットワークを利用することで契約者に電気を届ける仕組みになっています。
また法人(高圧)の契約においては、新電力は特別な料金プランやサービスを用意して特定の法人だけに提供することができますが、大手電力会社は特別なサービス提供は行えません。
電力自由化とは
電力自由化が始まるまで、電気料金は法律に基づき規制料金(総括原価方式)が用いられていました。そのため大手電力会社には、規制料金があります。
規制料金とは、電気を供給・販売するのに必要な費用に一定の利益を加えた額が、電気の販売収入と等しくなるようにする料金設定方法のことです。この方式により電力会社は一定の利益を保証されており、消費者にとっては有利なものではありませんでした。
しかし、電力自由化によって電気料金は自由料金となり、各電力会社は自由に電気料金を設定できるようになりました。
電力自由化までの歴史
日本では、2000年3月に大規模な工場やオフィスビル、デパートなど、契約電力が2,000kW以上の特別高圧の利用者から電力の自由化が始まりました。
2004年4月には契約電力が500kW以上の中規模の工場やビルなども対象となり、翌2005年4月には契約電力が50kW以上のすべての中小規模の事業所まで対象が広がりました。
そして2016年4月、ついに一般家庭や小さな商店など、契約電力が50kW未満の低圧区分にまで自由化の対象が拡大され、誰もが電力会社を自由に選べる時代になりました。
新電力はなぜ大手電力会社より安いのか

新電力の料金プランは、大手の電力会社より安く設定されているところが多いです。ここでは、なぜ新電力会社が電気料金を安くできるのかについて解説していきます。
①新電力各社による価格競争
電力自由化以前、電気は各地域に1社しかない地域電力会社から買うしか選択肢がありませんでした。そのため、電気料金が高くても顧客を獲得でき、電気料金を下げる必要性もなかったのです。
しかし、電力自由化以降、多くの会社が電力市場に参入しており、今では数百社もの新電力会社が存在しています。
たくさんの競合相手がいる中で、各電力会社には顧客を獲得していく必要が出てきました。そのため、各電力会社は自社のプランに乗り換えてもらうため、他社との差別化を図り、お得な料金プランを打ち出しています。
②新電力と他サービスのセット販売
新電力会社には、携帯電話やガス、クレジットカードなど電力以外にメイン事業を持っている会社も多くあります。そのため、メイン事業と電気プランを一緒に契約すると割引になるサービスが提供されています。
また、メイン事業での収益もあるため電気事業のみで大きな収益をあげる必要がなく、電気料金を抑えることが可能になっています。
③経費を削減して運営している
新電力会社では、運営にかかるコストを削減することで電気料金を引き下げています。ここでは、その取り組みの一部をご紹介します。
検針票を発行しない
多くの新電力会社が紙の検針票を発行せず、請求額などはネット上で確認するシステムを採用しています。紙の検針票を発行するには手数料が100円程度かかる場合が多いです。
支払い方法が限定されている
新電力会社では、決済方法がクレジットカードに限定されていたり、コンビニ払いには手数料がかかったりします。
コンビニ払いに対応するには、払込票の郵送やコンビニへの決済手数料といったコストがかかるため、これらのコストをなくすことで運営経費を削減しています。
④ライフスタイルに合わせた独自の料金プラン
新電力は、大手電力会社がこれまで提供していなかったライフスタイルに合った料金プランを提供していることが多いです。
そのため、消費者にとっては選択肢が広がり、豊富な選択肢の中から自分に合ったプランを選ぶことで、大手電力会社よりも、電気料金が安くなる可能性が高くなります。
CDエナジー
CDエナジーでは、一人暮らし向けの「シングルでんき」や、ファミリー層にぴったりの「ファミリーでんき」など、ライフスタイルに合わせた独自の電気料金プランを提供しています。
たとえば「シングルでんき」では、電気使用量の少ない単身者向けにリーズナブルな料金体系を用意。Web申込限定の割引特典や、基本料金0円(従量課金制)など、無駄のない設計が特徴です。
一方で「ファミリーでんき」は、月300kWhまでが定額になるなど、使用量の多い世帯でも安心して使えるプラン設計。家族構成や生活スタイルに応じて、ぴったりのプランを選べます。
大阪ガス
大阪ガスでは、暮らしのスタイルや使電量に応じて選べる電気料金プランが豊富に用意されています。以下は代表的な例です。
| プラン | 内容 |
|---|---|
| ベースプランA‑G | ・一般家庭向けの標準プラン ・従量料金が段階制 |
| ファミリー応援プラン | ・3人〜4人世帯や家族同居世帯に適したプラン ・毎月一定以上の使用量が見込まれる場合、割安になる |
| 新生活応援プラン | ・新しく暮らしを始める方を対象としたプラン ・基本料金が一定期間無料になる特典もあり |
これらのプランのなかから「一人暮らし」「家族世帯」「新生活スタート」など、自身の暮らし方に合ったプランを選択することで、電気料金を最適化できるでしょう。
⑤供給エリアが決まっている
新電力は、離島など経費がかかるところは供給しないなど企業で選択できるため、値段が安く抑えられます。離島の送電には経費がかかる理由として、インフラの整備・距離と輸送コストなどが挙げられます。
新しい場所で電力供給を受けたい消費者がいれば、送電線や変電所などのインフラ整備が必要です。これには高額な初期投資がかかりますが、大手電力会社に供給の義務があります。
また、離島は本土から離れているため、電力を送るための距離が長くなります。長距離送電は、電力損失が大きくなるため、より多くの電力を発電する必要があり、その分コストが増加する傾向があるのです。
大手電力会社が続々と値上げ…その理由は?

2023年、北海道電力・東京電力・中部電力・九州電力の4社が8月分からの電気代の値上げを決定しました。
加えて、大手だけでなく多くの新電力会社でも同様に値上げが相次いでおり、家計への影響が広がっています。
ここでは、電気代が値上がりしている理由を解説します。
燃料費調整額の値上がり
一番の理由は、原油やLNGなどの電気を発電するための材料が値上がりしていることです。
電力会社の基本料金や従量料金のなどのプラン料金は変わっていなくても、燃料費調整額が上がったことにより、電気代が高くなっています。
日本は太陽光発電や水力発電などの再生可能エネルギーの割合も増えつつありますがまだまだ火力発電が主流のため、原油やLNGを材料の輸入が不可欠です。
経済活動の再開により、原油価格が高騰
経済活動の再開によって電気使用量が増えたため、原油価格が高騰が起きています。
2020年、新型コロナウィルスが猛威をふるったことにより世界的に経済活動はストップ。電力消費量も減ったことにより、原油価格は下落していました。
しかしWHOが新型コロナウィルスの終息を宣言したことにより、電気使用量が増えています。
さらに中東での石油施設の事故の影響もあり、原油の価格はますます高騰中です。
ロシアのウクライナへの侵攻
2023年における日本の電気代の値上がりしている大きな原因の1つに、ロシアのウクライナ侵攻があげられます。
ロシアは天然ガス輸出量が世界1位・石油輸出量が世界2位と、広大な領土と豊かとな資源に恵まれた国です。ヨーロッパの国はロシアの原料に30%は依存していると言われています。
戦争の影響を受け、アジアでも石炭・天然ガスなどの原料の値段が上がっています。
政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が終了した
燃料高騰の影響を和らげるため、国は電気・ガス料金の値引き支援を段階的に実施しています。
しかし、この支援は2024年5月分で終了しており、同じ電力使用量でも電気代は実質的に高くなるため、注意が必要です。
詳細は以下の通りです。
大手電力会社と新電力、結局どっちがおすすめ?

大手電力会社が値上げ傾向にある今、少しでも電気代を安くしようと新電力会社への乗り換えを検討している方が多くいます。
しかし、場合によっては新電力会社に乗り換えると損する場合もあるため、注意が必要です。
新電力がおすすめな人
- 基本料金をたくさん支払っている人
- ピークカットで効率よく節電ができる人
- ポイ活をしたい人
- 別のサービスと一緒にお得に契約したい人
新電力会社の中には、Looopでんき・楽天でんき・エルピオでんきなど基本料金が0円のプランがあります。基本料金をたくさん払っている家庭は新電力に乗り換えるだけで電気代を安くすることが可能です。
また、Looopでんきやエルピオでんきの市場連動型プランなら、電気代が安いピークカットの時間を利用して家事を行えば、電気代を節約できます。
ポイ活をしている方にもおすすめです。楽天でんきは楽天SPU対象で、ポイントがどんどん貯まります。CDエナジーダイレクトや大阪ガスのでんきでは、dポイントが貯まるプランが選べます。
東京ガスのでんきのように独自ポイントが貯まり、色々なポイントに交換できる場合もあります。
さらに、他のサービスと契約をまとめることでお得になる場合も。例えばCDエナジーダイレクトでは、Amazonプライムがセットになったプランがあります。
大手電力会社が向いている人
- 電気消費量が少ない一人暮らしの人
- 最低アンペア契約が20の人
電気使用量が少ない一人暮らしの場合だと、新電力会社に乗り換えてもあまり変化がありません。
また新電力会社の中には「最低アンペア契約30以上」が多く、20アンペア以下の契約に対応していない場合も多くあります。最低アンペア数が上がると基本料金も高くなるので、注意が必要です。
大手電力会社からの乗り換えにおすすめの新電力
ここでは、大手電力会社からの乗り換えにおすすめの新電力を3つ紹介します。
基本料金0円【楽天でんき】

| 供給エリア | 北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州電力エリア(一部離島を除く) |
| セット割 | ガス |
| オール電化 | なし |
| ポイント | 楽天ポイント |
| 解約金 | 無料 |
| 支払方法 | クレジットカード・楽天ポイント |
楽天でんきは「基本料金0円」でシンプルな料金体系が特徴の新電力です。使った分だけ支払う仕組みなので、電気をあまり使わない一人暮らし世帯から、使用量が多い家庭まで柔軟に対応できます。
楽天ポイントを貯めたり電気料金に充当できる点も魅力で、楽天経済圏を利用している人には特におすすめです。
全国(沖縄を除く)で利用可能で、解約金もかからないため、電気代を手軽に節約したい方に人気があります。
豊富なプラン【CDエナジーダイレクト】

| 供給エリア | 東京電力エリア |
| セット割 | ガス・Amazonプライムなど |
| オール電化 | あり |
| ポイント | カテエネポイント |
| 解約金 | プランにより解約金あり。条件・金額は各プランで異なる。 |
| 支払方法 | クレジットカード・口座振替 |
CDエナジーダイレクトは、東京電力エリアを中心に提供される新電力で、ライフスタイルに合わせた豊富なプランが魅力です。
基本的な従量制プランのほか、単身者向けや大家族向け、さらにはエンタメ系や推し活を意識した特典付きプランなど多彩に展開。
解約金がかからないプランも多く、電気代を抑えつつ自分に合った特典を受けられる点が強みです。
燃料費調整の上限がない点には注意が必要ですが、柔軟に選べる自由度の高さで人気を集めています。
市場連動型なら【Looopでんき】

| 供給エリア | 北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄電力エリア(一部離島を除く) |
| セット割 | ガス |
| オール電化 | あり |
| ポイント | モッピーポイント |
| 解約金 | 無料 |
| 支払方法 | クレジットカード・一部のデビットカード・プリペイドカード |
Looopでんきは「市場連動型プラン」を採用しており、電力市場価格に応じて30分ごとに電気料金が変動するのが特徴です。
サービス料は全国一律7円/kWhとシンプルで、基本料金も0円(沖縄を除く)。電力使用を調整できる家庭や、価格変動リスクを理解したうえで効率的に電気を使いたい人におすすめです。
需要が低い時間帯に安く利用できるメリットもあり、電力の使い方次第でコスト削減につながります。全国エリア対応で、再エネ普及を意識したい層にも支持されています。
新電力の安さに関するよくある質問
最後に、新電力に関するよくある疑問に回答します。
①新電力で停電は増えない?
新たに参入してきた新電力会社では停電が増えたり電力供給が不安定になるのではないかといった心配の声が聞かれます。しかし、新電力だからといって停電になりやすいということはありません。
その理由は、新電力に切り替えた後も大手電力会社と同じ送配電システムを用いて電気が供給されるため、停電するリスクも大手電力会社と変わらず、新電力と大手との間で電力供給の品質に差はありません。
②新電力会社が倒産したら?
新電力会社は小規模なものも少なくないため、倒産が心配になるかもしれません。実際に倒産した新電力会社もありますが、その場合でも電気の供給が止まることはありません。
もし契約している新電力会社が倒産した場合、その会社は契約者にいつ電気が止まるのか通知を出します。その期限までに他の電力会社と契約すれば問題なく電気を使い続けられます。
また、他の電力会社と契約できなかった場合でも、地域電力会社が電気を供給してくれるため、電気が止まることはありません。
③乗り換え手続きは面倒?
大手電力会社から新電力に乗り換えを検討している方の中には、手続きが面倒くさそうという印象を持っている方もいるのではないでしょうか。
新電力への乗り換え手続きは想像しているよりも簡単で、インターネット申し込みを使えば5分程度で申し込みが完了します。
手続きは、新しく契約する新電力に契約の申し込みをするだけ!
現在契約中の電力会社への解約手続きは電力会社同士が行ってくれるため、契約者がしなければいけない手続きはありません!
また、多くの新電力は解約金がかからないケースが多いので、新電力はどんなものかまずは契約してお試ししてみたい♪という方も気軽に契約をすることができます。
(キャンペーンを利用して契約する場合は、契約の条件が提示されていることもあるので事前に確認しておくことをおすすめします!)
④新電力が契約できない場合はある?
集合住宅で一括受電の場合や、大家や管理会社が水道光熱費の支払いを行っている状態では、新電力の契約ができません。
集合住宅で一括受電が行われている場合、建物全体で一つの電力会社と契約しているため、個々の住人が新電力に切り替えることはできません。
また、賃貸物件によっては、家賃に水道光熱費が含まれていることがあり、その場合も大家や管理会社が電力会社と契約しているため、個人での契約変更は難しいです。
このような状況で住人が新電力を利用するためには、大家や管理会社と相談し、契約の見直しを検討する必要があります。
まとめ
新電力は、従来の電力会社よりお得に電気を利用することができる、私たちにとってとても嬉しい仕組みです。
新しい会社である分、電気供給の安定性や倒産が心配になることもありますが、電気の供給自体が変わるわけではないため、切り替えた後も安心して電気を使えます。
そして、新電力では様々なプランが提供されているため、自分にあったプランを選ぶことで電気代を節約したり、サービスが受けられたりします!
電気代についてお悩みの際は、新電力への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
ikebukuro


