レアメタルとは?種類の一覧やレアアースとの違いを解説!
- 公開日:2024.12.11
- 更新日:2024.12.11
レアメタルとは、地球上に存在する量が非常に少ない、技術的あるいは経済的な理由により採掘することが難しい金属のことです。
実は、レアメタルの国際的な定義は定まっていません。日本では、工業上の需要が既に存在している、安定的な供給確保が政策的にも重要であるといった理由で、コバルトやリチウムなどの31種がレアメタルと定められています。
この記事では、レアメタルの種類や産出国、ベースメタルやレアアースとの相違点、レアメタルの利用目的、今後の課題などについて解説します。
目次
レアメタルとは
レアメタルとは、国際的な定義は定まっていませんが、一般的には、地球に存在している量が極めて少ない希少な金属をいいます。
日本においては、経済産業省の鉱業審議会で、「現在工業用需要があり、今後も需要があるものと、今後の技術革新に伴い新たな工業用需要が予測されるもの」(出典:「レアメタルについて」(中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会特定家庭用機器の再商品化・適正処理に関する専門委員会(第3回))と定義されている31種類をレアメタルとしています。
レアメタルは燃料電池や医療機器、宇宙開発などの現代産業において必要不可欠な金属ですが、各国の資源ナショナリズムの高まりとともに価格も高騰しており、安定的な確保が重要な課題となっています。
なお、資源ナショナリズムとは、自国の資源は自国で採掘・保有・管理していこうとする考え方のことです。
レアメタルの種類
経済産業省が定める31種類のレアメタルは下表の通りです。
経済産業省が上表に掲載した31種類のレアメタルを定めたのは、1987年とされています。
通商産業省(当時)の鉱業審議会レアメタル総合対策特別小委員会で「レアメタル」という言葉が政策上初めて使われました。上表のレアメタルは、電子機器、自動車、航空機、造船、エネルギー、医療など、幅広い産業で使用されています。
しかし、レアメタルは、ほとんどが中国で産出されており、日本は中国に大きく依存しています。そのため、中国がレアメタルの輸出を制限すると、日本の経済に大きな影響を与えます。
経済産業省は、31種類のレアメタルを定め、安定的な供給を図ることで、日本の経済を守ろうとしています。
また、レアメタルの国内生産を拡大することで、輸入依存度を下げることも目指しています。レアメタルは、日本の経済にとって極めて重要な資源です。
経済産業省の取り組みが成功し、日本の経済がレアメタルの安定供給によって守られることが期待されています。
なお、上表の31種のレアメタルは、「独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の業務運営、財務及び会計並びに人事管理に関する省令」の改正を受けて、2012年9月から34種に増えています。
増えたのは炭素(C)、フッ素( F)、マグネシウム(Mg)、,ケイ素(Si)、ウラン(U)、の5種類です。
また、31種類の時代には2種類分としてカウントされていた白金とパラジウムが、金や銀と同様に、同じ貴金属として取り扱われることになりました。そのため、レアメタルの数にはカウントされていません(つまり、31+5-2=34種類となります)。
レアアースとの違い
レアアースとは、レアメタルの一種であり、上表の希土類に該当する17種類の元素をいいます。具体的には、 以下の通りです。
- スカンジウム(Sc)
- イットリウム(Y)
- ランタン(La)
- セリウム(Ce)
- プラセオジム(Pr)
- ネオジム(Nd)
- プロメチウム(Pm)
- サマリウム(Sm)
- ユウロビウム(Eu)
- ガドリニウム(Gd)
- テルビウム(Tb)
- ジスプロシウム(Dy)
- ホルミウム(Ho)
- エルビウム(Er)
- ツリウム(Tm)
- イッテルビウム(Yb)
- ルテチウム(Lu)
レアアースは、主に磁石、永久磁石、超電導体、セラミックス、ガラス、蛍光体、蓄電池、発光ダイオード、レーザーなどの製造に使用されています。
レアアースの主な産出国
レアメタルは中国が主な産出国で全世界の約9割を生産していますが、レアアースは中国以外にも、ベトナム、インド、マレーシア、ブラジル、ロシア、ザンビア、などが産出しています。
レアアースは小笠原諸島などで確認されている
レアアースは小笠原諸島・南鳥島沖で確認されており、その埋蔵量は、中国の埋蔵量の約30倍と推定されており、日本にとってとても貴重な資源です。
日本政府は、2023年までにレアアースの採掘を開始して、2030年までに自給率を100%にすることを目指しています。
レアアースの国内産出が可能になれば、中国に依存しているレアアースの安定的な自国内での供給を確保できる大きなメリットが見込めます。
ベースメタルとの違い
ベースメタルは、産出量が多く、精錬が比較的容易な金属です。具体的には、鉄鋼、銅、アルミニウム、亜鉛などの金属のことで、建設、自動車、電気機器、造船など、幅広い分野で利用されています。一方のレアメタルは、産出量が少なく、精錬が困難な希少な金属です。
レアメタルとベースメタルは、どちらも重要な金属ですが、レアメタルは特に希少で、産出量が少ないため、価格が高騰しているという特徴があります。
レアメタルの活用用途
レアメタル・レアアースは、現代の産業に欠かせない重要な金属です。主な用途は以下の通りです。
- 再生可能エネルギー(電気自動車、風力発電、太陽光発電など)
- ハイブリッドカー(燃料電池として搭載)
- 半導体、液晶ディスプレイ
- 医療機器
- 航空機、宇宙開発
- 兵器
レアメタルは、産出量が少なく、精錬が困難なため、希少金属と呼ばれています。また、中国が世界全体の約9割を産出しているため、レアメタルの価格は、中国の輸出政策によって大きく左右されてしまいます。
レアメタルは、今後もますます重要になる金属です。そこで、日本はレアメタルの安定的な供給を確保するために、国内での生産を増加させるのみならず、レアメタルのリサイクル技術の開発・進歩に注力しています。
構造材料への添加剤としての活用
チタンやバナジウムといったレアメタルは、鉄鋼に添加することで、素材の強度や耐久性を高めることが可能です。
軽量で頑丈な部品を作ることができるので、自動車や航空機に使用され、燃費の向上や耐久性強化に役立っています。
電子や磁石などハイテク分野での活用
レアメタルはハイテク分野でも欠かせない存在です。
例えばリチウムは、軽量で長持ちするリチウムイオン電池の素材として活用され、スマートフォン・ノートパソコン・電気自動車などに使われています。
ガリウムやインジウムは、太陽光パネルの薄膜に利用されており、発電効率の向上に役立っています。
また、ネオジムを活用した「ネオジム磁石」は、強力な磁力を持ち、家電製品・風力発電・電気自動車などのモーターに利用されているのです。
レアメタル・レアアースに関するよくある質問
レアメタル・レアアースについて疑問に思われることが多い点についてまとめました。
レアメタルはどんな金属ですか?
レアメタルとは、埋蔵量が少なく希少な非鉄金属のことです。
流通量が少ないため価格が高いものが多いですが、様々な産業で重要な役割を果たしており、国や企業はその確保に努力を続けています。
レアメタルの代表例は?
存在量が少なく特に希少とされるレアメタルは、レニウム・テルルです。
レニウムは超耐熱合金やフィラメント、テルルは半導体や太陽光パネルに使用されています。
また、貴金属とされることもありますが、白金(プラチナ)・パラジウムは存在量が少なく、単位当たりの価格も高くなっています。
特にパラジウムは、自動車排ガスから有害物質を取り除く触媒として需要が高いです。
レアメタルが取れる国はどこですか?
レアメタル・レアアースの産出地は、中国・アフリカ諸国・ロシア・南北アメリカ諸国に偏っています。
チタン・バナジウム・ガリウム・ゲルマニウム・セレンなど多くのレアメタルは、中国が生産量1位となっています。クロム・マンガン・プラチナは、南アフリカが生産量1位です。
日本でも、南鳥島南方や小笠原諸島沖の海底に、コバルト・ニッケルなどのレアメタルが埋蔵されていると確認されています。すでに調査や掘削試験が行われており、2028年までの商用化を目指しています。
まとめ
レアメタルとは、産出量が少なく、精錬が困難な希少な金属の総称で、現代の産業に欠かせない重要な金属です。
電気自動車、風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギー、ハイブリッドカー、燃料電池、半導体、液晶ディスプレイ、医療機器、航空機、宇宙開発など、幅広い分野で利用されています。
ただ、レアメタルは産出量が少なく、精錬が困難なため、価格が高騰しています。現時点でレアメタルの主要な産出国は中国のみであり、中国が輸出を制限すると、世界的な供給不足につながる可能性があります。
レアメタルは、今後もますます重要になる金属です。日本は、レアメタルの安定的な供給を確保するために、国内での生産を増やすとともに、リサイクル技術の開発を進めています。
参考文献:
この記事を書いた人
ikebukuro