オフサイトPPAとは?メリット・デメリットやオンサイトPPAとの違いを解説
- 公開日:2024.12.10
- 更新日:2024.12.10
オフサイトPPAとは、電力需要家の敷地以外の土地にPPA事業者が太陽光発電設備を設置し、電力需要家に向けて電気を送る方法のことです。
世界が目指す2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、企業にも温室効果ガス削減対策が求められています。
再生可能エネルギーである太陽光発電の導入が効果的ですが、初期費用やパネルの設置場所に制限があると難しい場合もあるでしょう。
オフサイトPPAなら、高額な初期費用なしで自社の敷地外に太陽光発電設備を設置して、太陽光発電由来の電気を使用することができます。
この記事では、オフサイトPPAのメリット・デメリットや、オンラインPPA・自己託送との違いについて解説しています。オフサイトPPAの導入を検討する前に理解しておきましょう。
目次
オフサイトPPAとは
オフサイトPPAとは、電力需要家の敷地以外の土地にPPA事業者が太陽光発電設備を設け、電力需要家に向けて電気を送る方法のことです。
PPAモデルの中の一つであり、PPA事業者から電力需要家が電気を買って使います。
PPAモデルとは、PPA事業者が設置した太陽光発電由来の電気を購入して使う形態です。発電設備の所有権はPPA事業者が持っており、電気を使う需要家は初期費用を出さずに地球に優しい電気を使えます。
PPAは「Power Purchase Agreement」の頭文字をとった言葉であり、コーポレートPPA・第三者所有モデル・電力販売契約とも言われます。
オフサイトPPAの仕組み
仕組みと電気やお金の流れは以下の通りです。
- 電力需要家の持っている土地の外にPPA事業者が太陽光発電設備を設ける
電力需要家とは、電気を使う人のことです。
はじめに、需要家の敷地の外に、別の第三者が発電し電力を確保するために設備を設置します。
電気を使う人とは別の人が、電気が使われる場所と別の場所に太陽光発電所の設置が必要です。 - 発電された電気が小売電気事業者を通じて届けられる
発電所からPPA事業者が発電した電気は、小売電気事業者を通じ需要家に送られます。
(小売電気事業者とは、中部電力や東京電力などの大手電力会社や新電力の企業のこと) - 発電された電気を、需要家が購入して使う
小売電気事業者を通じて送られた電気を、電気を使いたい需要家が買って使います。
この際に発生する電気料金の支払いに関しても、小売電気事業者を通じて支払われる仕組みです。
つまり、一言で説明すると、電気を使う目的の場所と別の場所で第三者が設けた設備から、小売電気事業者を通じて電気を買う、自家消費型の太陽光発電モデルになります。
この仕組みは、電気事業法施行規則の改正がされる以前は、小売電気事業者以外の企業間で電気を送れなかったからです。
そのため、発電した電気をそのまま需要家に向けて売るのではなく、一度小売電気事業者に売り、そこから企業側が買い取る仕組みです。
オフサイトPPAが注目されている理由
オフサイトPPAが注目されている理由としては、下記のようなことが挙げられます。
- 2021年以降の電気料金高騰でコスト優位性が向上した
- 温室効果ガス削減の必要性が高まった
2021年以降の電気料金高騰でコスト優位性が向上した
オフサイトPPAが注目されている理由としては、電力料金高騰によるオフサイトPPAのコストの優位性が向上したことが挙げられます。
これまでは、発電事業者と需要家の間接取引によるコストが課題だったのですが、2021年末以降の電力料金の高騰によって、自家消費型太陽光発電であるオフサイトPPAのコスト優位性が向上したことが挙げられるでしょう。
参考:【2024年】電気代はいつからどのくらい値上げされる?上がってる理由は?今後の見通しを解説
温室効果ガス削減の必要性が高まった
CO2削減の必要性が高まっていることや自己託送の要件厳格化などによっても、オフサイトPPAが注目していると考えられます。再エネを導入する中でもとくに「大規模なCO2削減」に繋がる施策となっているため、注目されています。
ほかにも、「遠隔地からの大規模な再エネ導入手段」として、オフサイトPPAを選択するケースが増えているのでは、と考えられるでしょう。
オフサイトPPAで太陽光発電を導入するメリット
オフサイトPPAのメリットは、以下5つです。
①太陽光発電設備の導入に初期費用がかからない
一般的に企業が太陽光発電を導入する場合、数百万〜数千万円の費用が発生するため、大きな負担となります。
しかし、オフサイトPPAは初期費用は発電事業者側が持ってくれる仕組みのため、初期費用がかからず導入できることは大きなメリットです。
②メンテナンス費用や維持費がかからない
オフサイトPPAでは、発電設備を持っているのは発電事業者ですので、太陽光発電設備のメンテナンスに発生する費用やその他の設備を維持するためにかかる費用はPPA事業者が持ちます。
発電設備が突然壊れてしまった場合でも、電気を使う側は費用や手間がいりません。そのため、自社で負担する場合に比べ、気軽に大規模の発電設備が活用できます。
太陽光発電設備では、30年程度の使用が一般的なため、大きくコストカットできます。
③電気代が安くなることがある
オフサイトPPAを導入することにより、電気料金を安くできる可能性があります。
PPAモデルの場合、契約の際に電気料金の単価が決められ、契約の期間中は固定されており、通常の電気料金より安くなるケースが多いです。
また、電気料金は突然値上げされることもあり、価格変動のリスクがあります。
しかし、オフサイトPPAであれば影響がないので、発電量を増やした分だけ、月々でかかる電気料金が安くなる可能性があります。
④発電電力が複数の地点に供給可能
オフサイトPPAでは、発電された電力が電気事業者の電力系統を通じて送電されます。
そのため、太陽光発電由来の電気を1か所だけでなく、自社の工場や子会社をはじめ、距離に関係なくさまざまな事業所に対して電気が届けられます。
⑤CO2の排出量が削減できる
太陽光発電では、発電の際に二酸化炭素を排出しません。
そのため、オフサイトPPAで発電量が増えれば増えるほど、多くのCO2排出量が削減できます。
近年では、深刻化する地球環境問題から、カーボンニュートラルや脱炭素経営に取り組む企業が増えており、取引先からCO2の削減を求められた企業がオフサイトPPAに取り組むことも増えています。
オフサイトPPAで太陽光発電を導入するデメリット
オフサイトPPAのデメリットは、以下4つです。
①託送料金がかかる
託送料金は、小売電気事業者が送配電網を使用する際に発生する料金です。
オンサイトPPAではこの託送料金が不要でしたが、オフサイトPPAでは託送料金と需給調整の料金などが追加で発生するので、オンサイトPPAと比較すると電気料金を軽減する効果が低いという問題点があります。
②電気料金に再エネ賦課金がかかる
小売電気事業者を介するオフサイトPPA の電気料金には、再エネ賦課金が発生します。
自社所有モデルやオンサイトPPAや自家消費型の太陽光発電などは小売電気事業者を介さないので再エネ賦課金が発生しません。
しかし、オフサイトPPAは再エネ賦課金がかかる点に注意が必要です。
③非常用電源には利用できない
オフサイトPPAは事業所から離れた場所に発電設備を設置し、小売電気事業者の送配電網を活用して送電する仕組みです。
しかし、災害などによって送配電網などの中継施設がダメージを受けた場合、一般送電網を介するオフサイドPPAは電気を供給できないため、非常用電源として利用できない可能性が高いです。
④契約期間が15~20年と長期になる
PPA事業者では、発電所の費用や維持するためにかかる費用を負担する代わりとして、その分の費用を月に発生する電気料金で得る必要がありますので、契約の期間が15〜20年と長い場合が多いです。
需要家は、この15年〜20年の長期期間、事業を維持する必要があります。
オフサイトPPAの契約期間中に解約する場合は、違約金などが生じる可能性もあるため、あらかじめ契約前に内容を確認することが大切です。
オフサイトPPAとオンサイトPPAの違い
PPAにおける契約の形態は、基本的にオンサイトも変わらず、発電事業者が持つ発電所で発電した電力を需要家が使う形態です。
この2つが大きく異なるのは、発電所を設置する場所です。
オフサイトは需要家の持っている土地ではなく離れた土地ですが、オンサイトの場合は需要家の持っている事務所や倉庫の屋根、工場や敷地内の空き地の場合が多くなっています。
オフサイトの場合は、需要家が持っている土地以外の土地でも良く、ほとんどの場合は発電事業者が持っている土地になります。
その一方でオンサイトであれば、需要家の持っている建物の屋根で発電されるため、その建屋で消費されるのが一般的です。
また、オフサイトを使用して再エネ化や脱炭素化を達成するためには発電した電力のトラッキングが必要です。
オンサイトPPA | オフサイトPPA |
・需要家が持っている土地以外の土地でも良く、ほとんどの場合は発電事業者が持っている土地
・需要家の持っている建物の屋根で発電されるため、その建屋で消費されるのが一般的 ・需要家の持っている土地ではなく離れた土地 |
・発電した電力は電力会社の運営する電力系統を通じて需要場所に送られて使われる
・再エネ化や脱炭素化を達成するためには発電した電力のトラッキングが必要 ・需要家の持っている事務所や倉庫の屋根、工場や敷地内の空き地が多い |
オフサイトPPAと自己託送との違い
2つの大きな違いは、契約形態です。
オフサイトPPAでは、契約を結ぶ相手は発電事業者ですが、自己託送の場合は他者と契約せずに、電力の供給においてはすべて自社内で済みます。
そのため、自社の発電所により発電した電力を、電力系統を通じ離れた自社の需要場所に送る太陽光発電の方法が自己託送です。
オフサイトPPAであれば、発電所を持っているのは発電事業者であり、発電所を導入するための費用は発電事業者が持つため、需要家は太陽光発電をの導入に費用がかかりません。
また、オフサイトPPAでは電気料金は発電事業者と決めた固定価格なのに対し、自己託送の場合は発電所を所有しているのが自社のため、発電所から送られる電力に関して電気料金は不要です。
電気料金は発生しないものの、電力系統の使用量で託送料金や需給違反があった場合にかかるインバランス料金は別で費用が発生します。
オンサイトPPA | オフサイトPPA |
・太陽光発電所を自社で所有しているため、導入する際には設備の取得費用が発生する
・発電所を所有しているのが自社のため、発電所から送られる電力に関して電気料金は不要 |
・契約を結ぶ相手は発電事業者ですが、自己託送の場合は他者と契約せずに、電力の供給においてはすべて自社内
・電気を使う場所は自社が所有している建物や設備 ・電気料金は発電事業者と決めた固定価格 |
バーチャルPPAとは
バーチャルPPAとは、環境価値だけを発電事業者と需要家の間で取引する電力購入契約のこと。また、両者間を小売電気事業者が仲介するケースもバーチャルPPAに含まれます。
バーチャルPPAは、電力の需要家と発電事業者が契約を結んで再エネ電力の発電コストを参考に契約価格(固定価格)を決めた上で、その市場価格との差額を需要家が負担する仕組みになっているのが特徴です。
オフサイトPPAは補助金制度が活用できる
活用できる補助金制度について解説します。
補助金を受けるのはPPA事業者
令和3年度の環境省補助事業により、オフサイトPPAにより太陽光発電で発電した電力を送る事業者に対し、設備の導入を補助する制度があります。
ただし、前述したように、この補助金が受けられるのはPPA事業者であり、需要家に還元することが条件です。
需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金
発電設備を持っている発電事業者と発電された再エネ電力を買って使う需要家、発電された電気に対し系統上で調整を行う小売電気事業者の3者での事業導入に対して補助を行う補助金です。
需要家と発電事業者が別の事業体であるオフサイトPPAのための補助金ですが、3者の一部またはすべてが同じでも問題はなく、補助事業の対象になるのは発電事業者です。
この補助金の目的は、政府の掲げる2030年までに温室効果ガスを46%削減(2013年比)するためには、再生可能エネルギーをさらに導入拡大させ、自立化させることが不可欠です。
しかし、その進捗はあまり順調とは言えず、導入を加速させる必要があります。
また、需要家の企業を取り巻いている環境が脱炭素や、SDGsなどの新様式に変わりつつあり、企業は対応せざるを得ない状況です。
そのため、補助事業を通じて需要家の企業が主導となり新たな太陽光発電における導入モデルを実現させ、再生エネルギーの導入拡大、および自立化を促すのが目的です。
国内企業におけるオフサイトPPA導入事例
ここでは、導入事例を4つ紹介します。
Amazon
Amazonは、RE100 に加盟している企業です。
RE100とは、Renewable Energy100%の略称であり、翻訳すると再生可能エネルギー100%です。
企業が事業活動で使う電力が、100%再生可能エネルギーで賄うのを目指した国際的な取り組みになります。
電力を利用している場所は公開されていませんが、450箇所にもおよぶ発電所から2万2000kW程度の電力が送れるオフサイトPPAが導入されています。
Amazonが導入するオフサイトPPA の特徴は、多くの小規模発電所から、オフサイトPPAにより、多くの電力が発電できていることです。
太陽光発電所に使うための土地を得るのも導入する際の課題となりますが、オフサイトPPAの場合、いくつかの個所から電気を送れるため、Amazonのように、小規模な土地の発電所を多く得ることで大規模な発電をすることも可能です。
セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイ・ホールディングスも、RE100 に加盟している企業です。
セブン-イレブン40店舗をはじめ、東京都内にある「アリア亀有」で使う電力を再生可能エネルギーで発電するため、NTTとともに導入しています。
PPA事業者は、NTTグループであるNTTアノードエナジーが、千葉県内にある2箇所の太陽光発電所です。
しかし、これだけでは電力が足りないため、足りない分もNTTグループの他の再生可能エネルギーにより発電された電力を導入することで補い、再生可能エネルギー100%を目指しています。
イオングループ
イオンは、グループ各社における商業施設スペースを有効に活用し、太陽光発電の利用を拡大させています。
これまでは自家発電に注力してきました、2019年からオフラインPPAに取り組み、2019年3月にイオンタウン湖南でオンサイトPPAを導入しました。
建屋屋根のスペースを提供することで、発電事業者であるMULユーティリティーイノベーションが1MW以上の発電能力を持つ太陽光パネルを設置しました。
その屋根スペースで発電した電力をイオングループが買い、イオンタウン湖南で使う仕組みです。
2021年の4月では、誉田CFCの屋根に3MW以上の発電能力を持つ設備を設けました。
誉田CFCは、次世代型ネットスーパーの中心となる施設であり、AIとロボットを活用した大型の自動倉庫です。
誉田CFCでは、屋根に設置した太陽光発電の発電電力を、施設の運営に利用し、大型の蓄電池を設置することにより再エネを最大限に活かして利用することを目指しています。
参考:イオン
ヒューリック
ヒューリックでは、2020年からフィジカルPPAでの再エネ電力が利用されています。
はじめは、埼玉県に太陽光発電所を設置し、そこから得た電力を東京本社にあるビルで使うものであり、日本初の事例でした。
ヒューリックでは、この導入から積極的にオフラインPPAを導入し、2024年にRE100の達成、2030年までに保有する全ての建物からのCO2の排出量をゼロにすることを目指しています。
ヒューリックの導入における特徴は、自社グループで完結できることです。
EPCを手掛けているアドバンスと協力することで、再エネ発電設備を新規に開発し、発電電力を子会社であるヒューリックプロパティソリューションが購入し、ヒューリック本社を含めたグループ各社に売る仕組みです。
この仕組みにより、建物の再エネ化で発生する費用の負担を軽減させることと、非FITにおける発電事業の採算性を確保することの両立を図り、市場に影響されない電気の売買を実現しています。
参考:ヒューリック
オフサイトPPA・自家消費に関するよくある質問
オフサイトPPAや自家消費型太陽光発電について、よくある疑問を解決しておきましょう!
オフサイトPPAの初期費用は?
オフサイトPPAは、初期費用が0円で始められます。
通常、自家消費型太陽光発電設備を導入するためには、数百~数千万円の初期投資が必要です。初期費用が抑えて環境に優しい電力が使いたい企業におすすめできます。
ただし、契約締結にかかる印紙や切手などの諸費用は別途発生する場合があります。
オフサイトPPAは途中解約できる?
基本的に、途中解約はできません。
PPAは、長期で契約することで初期費用を0円でもし解約する場合は、高額な違約金が発生する場合があります。
オフサイトPPA事業者になるには資格が必要?
オフサイトPPA事業者には、小売電気事業者の資格が必要です。
電気系統を通じて需要家に電気を供給するため、小売電気事業登録や一般送配電事業者と託送供給契約締結などが必要になります。
ちなみに、オンサイトPPA事業者は小売電気事業者の資格は不要です。
オフサイトPPAとオンサイトPPAはどちらが需要が高い?
日本で主流なのは、オンサイトPPAです。PPAを導入したいと考えている企業の多くは、工場な屋根などのように広くまた、利用していないスペースを有効活用したいと思っている場合が多いです。
また、オフサイトPPAを導入する場合は、規模が膨大になりやすいため、契約するハードルが上がります。
世界的に見ても、東南アジアをはじめとしてオンサイトPPAのほうが主流としている国が多いのが現状でしょう。
補助金の制度はあるの?
オンサイトPPA・オフサイトPPA、それぞれに補助金があります。
オンサイトPPAの補助金の例として、環境省の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」が挙げられます。
またオンサイトPPAの補助金は、各自治体でも実施しているのが特徴です。
まとめ
オフサイトPPA とは、PPA事業者が電力需要家の敷地の外に太陽光発電設備を設け、送電線を利用して電力需要家に対して電気を送る方法のことです。
オフサイトPPAには、CO2を排出する量が他の方法に比べ削減できたり、メンテナンス費用や維持費がかからなかったりといったメリットがあります。
その一方で、託送料金がかかったり、電気料金に再エネ賦課金がかかったりといったデメリットも存在します。
また、オフラインPPAでは、要件を満たすことで補助金を受けられる可能性もありますので、導入を検討されている方はメリットやデメリットなどについて十分理解しておくことが大切です。
この記事を書いた人
ikebukuro