J-クレジット制度とはわかりやすくいうと?仕組みや価格とメリット・デメリットを解説
- 公開日:2024.12.26
- 更新日:2024.12.27
ますます深刻化する地球温暖化・環境汚染の問題に対処するために、国が運営しているのが、J-クレジット制度です。
J-クレジット制度とは、企業や自治体が削減・吸収した温室効果ガスをクレジットとして国が認証し、取引できるようにした制度です。
温室効果ガスを削減・吸収する事業の促進や、カーボンオフセットへの活用など、多くのメリットがあります。
いまいちわかりにくいという声があるJ-クレジットについてわかりやすく解説していきます。
目次
J-クレジットの仕組みとは?わかりやすく解説!
J-クレジット制度とは、省エネ活動・自然管理によって実現するCO2削減・吸収の容量を、「クレジット」として、国が認証するための制度です。
各企業・自治体・自然管理者は、省エネ・自然管理のための作業・機器の導入を積極的に行なっているところも少なくありません。
そのような活動によって実現するCO2排出削減量・吸収量は、目に見えないものであるため、可視化できません。そのような曖昧な存在を数値化したものが、「J-クレジット」なのです。
数値化されたJ-クレジットは、売買が可能となっており、売却側・購入側ともに、さまざまなメリットが生まれます。
このJ-クレジットを成立させている、J-クレジット制度は、多大なメリットをもたらしてくれる制度として、注目をしている・今度導入を検討しているという企業・事業者は少なくありません。
J-クレジットの仕組みをわかりやすく言うと
J-クレジットは、制度を運営する側・J-クレジット創出者と購入者という3つによって成り立っている仕組みです。
出典:J-クレジット制度
J-クレジット創出者
J-クレジットを実際に生み出す作業を実施しているのが、創出者に該当する以下のような組織です。
- 企業
- 自治体
- 農林所有者
- 農業者
それぞれの機関が、省エネ設備・再生可能エネルギーの導入、森林管理などを行ない、温室効果ガスCO2の排出削減・吸収を実現させて、J-クレジットを生み出します。
J-クレジット購入者
J-クレジット制度が、環境問題に取り組んだ制度で終わるのではなく、利益が生まれて経済が活性化するための制度として成立するには、J-クレジットの購入者の存在が重要です。
実際に省エネ活動をしていなくても、J-クレジットを購入すれば多大なメリットが発生します。そのメリットについては、後で説明するので参考にしてください。
J-クレジットが注目されている背景と目的
出典:J-クレジット制度
J-クレジットが誕生したのは、ますます深刻化する地球温暖化・環境汚染・エネルギー枯渇問題に対処するためです。
深刻な課題に対して、世界各国は国同士で足並みを揃えつつ、国それぞれが自国に合った取り組みを実施しています。そのような時代背景の中、日本が取り組んでいるのがJ-クレジットです。
J-クレジット制度が活性化して浸透すれば、温暖化の原因であるCO2排出削減が促進されますが、J-クレジット制度の目的はそれだけではありません。
J-クレジット制度は、CO2排出削減・吸収量をJ-クレジットという数値化・可視化をすることによって、利益が発生するシステムです。
J-クレジットの売買が活性化すれば、国の資金循環も活発になり、経済が大きく発展します。環境保護だけでなく、利益を生み出し経済を大きく活性化させることも、J-クレジットの目的なのです。
J-クレジットを発行するメリット
J-クレジットが発行されることによって、具体的にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
以下より発行側・購入者側のメリットを、それぞれ紹介しましょう。
Jクレジット創出側のメリット
J-クレジットは、発行側にとって以下のようなメリットがあります。
- ランニングコスト削減
- J-クレジット売却によって収益が生まれる
- 地球温暖化に対する考え方を公表できる
- ネットワーク構築
- 組織内の意識改革や社内教育にも活用可能
それぞれ詳しく解説していきます。
ランニングコスト削減
J-クレジットを生み出すためには、省エネ設備の導入および充実・再生可能エネルギー活用が必須です。
これらを導入するには初期費用がかかりますが、軌道に乗って円滑にJ-クレジットが発生すれば、それと同時にランニングコスト削減・再生可能エネルギーの有効利用が実現します。
J-クレジット売却によって収益が生まれる
J-クレジット発行が軌道に乗れば、それを売却することによって利益を生み出すことが可能になります。
企業のJ-クレジット発行が円滑に行われて、安定した収益が出れば、その収益だけで初期費用の回収が可能です。また、収益によって省エネ・再生可能エネルギーの設備を充実させれば、さらに収益は増加するでしょう。
地球温暖化に対する考え方を公表できる
J-クレジット創出は、地球温暖化・環境汚染にどう取り組んでいるか、世間にアピールする効果もあります。J-クレジットはCO2排出削減・吸収によって創出されるものです。その作業そのものが、エコロジーに積極的である証拠になります。
ネットワーク構築
J-クレジット創出に本格的に取り組むと、今までになかった新しい人脈・ネットワークが誕生します。J-クレジット制度は、創出者と購入者によって成立するため、購入者という今までになかった事業者・企業・自治体との繋がりをつくることが可能です。
J-クレジットを通じて、新しい機関とのネットワークが構築されて、それが企業の事業に反映されるパターンもあります。
組織内の意識改革や社内教育にも活用可能
J-クレジットの導入の利点は、CO2削減・吸収の容量がわかりやすく数値化・可視化できる点です。これにより、CO2削減・吸収=省エネ・自然管理の仕組みがわかりやすくなり、理解度が深まります。
それにより、取り組み方への意識改革・社会教育もやりやすくなるでしょう。
Jクレジット購入側のメリット
J-クレジットは、購入者側にもメリットがあります。メリットの種類は以下の通りです。
- 「環境貢献企業」のイメージが確率
- 企業評価が上がる
- 製品・サービスの差別化につながる
- ネットワーク構築・それによるビジネスの拡大
「環境貢献企業」のイメージが確率
J-クレジットを購入すれば、それだけエコロジーを意識した企業・事業者である証明となります。省エネ活動・自然管理を応援している形になるので、環境貢献企業としてのPRになるでしょう。
企業評価が上がる
J-クレジットの購入は、企業評価にも大きな影響となるのも特徴の一つです。企業評価の調査などで、J-クレジット購入はPRの材料となります。
製品・サービスの差別化につながる
他社が手がける製品・サービスとの差別化を達成できるのも、J-クレジット購入者の特徴です。製品・サービスのCO2排出量のオフセットにより、差別化が実現します。それが製品および企業のブランディングにつながるでしょう。
ネットワーク構築・それによるビジネスの拡大
J-クレジット創出者のメリットの一つである「ネットワーク構築」は、購入者にもあてはまるメリットです。
J-クレジットを通じて生まれる企業・公共団体との新しい出会いによって、自社が手がける業務以外のネットワークが構築されます。それを活用すれば、新規のビジネス創出にもつながるでしょう。
J-クレジットのデメリット・課題
地球温暖化から企業・団体の活性化などグローバル・ローカルといった幅広い問題に対応できるJ-クレジット制度ですが、今後の課題・デメリットもあります。どのような課題・デメリットがあるのか、次より紹介しましょう。
Jクレジット創出側のデメリット・課題
まずは創出側のデメリットと課題を見てみましょう。
手続きがわかりにくい・時間がかかる
J-クレジット制度のデメリットは、認証・発行に至るまでの手続きが面倒なことです。
認証・登録・発行と必要書類の提出・審査を通過しなければいけないため、普段の業務で忙しい人は手間がかかってしまいます。その結果、登録を断念するというパターンも珍しくありません。
また、認証や発行までに時間がかかることもデメリットです。J-クレジット認証・発行までには以下にある通りの期間がかかります。
- 認証にかかる期間:3〜6ヶ月
- 発行にかかる期間:1〜2年
企業のPRとして少しでも早くJ-クレジット利用を考えている場合、J-クレジット導入は不向きといえるでしょう。
環境問題の実務をしない企業増加の恐れがある
先述した通り、J-クレジットを購入した場合、地球温暖化・環境汚染問題に真剣に取り組んでいるPRになるメリットがあります。
しかし、それはJ-クレジット制度側から見ると、デメリットになる可能性がないとはいえません。J-クレジット購入者はあくまで購入者であって、CO2排出量削減・吸収といった実務は行なっていません。
つまり「お金さえ払ってJ-クレジットを購入すればエコロジーに取り組んでいるとアピールできるので、実際に省エネ活動をする必要はない」といった企業・事業者が増える恐れがあります。
それにより、J-クレジット創出者より購入者の方が増えてしまい、J-クレジット制度自体が、活性化しない可能性もあるのです。
Jクレジット購入側のデメリット・課題
続いて紹介するのは購入側のデメリットと課題です。
1件あたりのクレジット量が低い
これまでのデータによると、J-クレジットは1件に対してのクレジット創出量が少なく、クレジット単価も低価格という結果になっています。
今後はますます普及・活性化すると予想されているJ-クレジット制度ですが、中小企業など小さい規模の企業が導入する場合、初期費用に対してすぐの収益が見込めない可能性が高いです。
モニタリングに負担がかかる
J-クレジット制度は、参加するためのモニタリングの負担が大きいという意見が多いです。大きな負担になると言われている、具体的な事例は以下になります。
- モニタリング機器の設置・品質
- 木質チップの発熱量計測
中小企業など小さい会社の場合、その負担の大きさはスムーズな導入の障害となるでしょう。
J-クレジットと各国内の証書との違い
日本ではJ-クレジットの他に、「非化石証書」と「グリーン電力証書」が環境価値として取引されています。
用途や購入対象が異なりますので、ニーズに合ったものを活用してください。
非化石証書 | グリーン電力証書 | Jクレジット | |
発行者 | 低炭素投資促進機構 | グリーン電力証書発行事業者(民間) | 経済産業省・環境省・農林水産省 |
由来 | 化石燃料以外のエネルギー(原子力含む) | 自然エネルギー | 企業や自治体によるCO2削減量・吸収量 |
購入対象 | 小売り電気事業者 | 企業・自治体など | |
購入方法 | ・非化石証書取引市場で入札 ・仲介事業者から購入 |
グリーン電力証書発行事業者から購入 | ・Jクレジット制度事務局が実施する入札 ・仲介事業者から購入 |
単価(1kWh) | 0.3~4.0円 | 2~7円 | 0.26~1.3円 |
転売 | 不可 | 不可 | 可 |
非化石証書とJ-クレジットの違い
非化石証書とは、非化石電源で発電された電気から、「CO2を排出しない」という環境価値を切り離して証書にし、取引できるようにしたものです。
非化石電源とは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス・原子力などを指します。
「再エネ価値取引市場」で直接購入するか、小売り電気事業者や調達代行業者を通じて購入できます。
電源の属性(発電方法・発電場所など)を添付した「トラッキング付非化石証書」や、再生可能エネルギー由来であることを証明する「非化石証書(再エネ指定)」、FITの適用を受けていない電気に由来する「非FIT非化石証書」などがあります。
グリーン電力証書とJ-クレジットの違い
グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーで発電した電気から「CO2を排出しない」という環境価値を切り離して証書化し、取引できるようにしたものです。
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・水力・バイオマス・地熱といった自然エネルギーを指します。
グリーン電力発行事業者に直接依頼して購入するか、調達代行業者を通じて購入できます。
J-クレジットの購入方法
J-クレジットの購入方法は、以下のような3タイプがあります。
- J-クレジット・プロバイダー等による仲介
- 売り出しクレジット一覧に掲載されたクレジット購入
- J-クレジット制度事務局が実施する入札販売での購入
次よりそれぞれの詳細を説明しましょう。
J-クレジット・プロバイダー等による仲介での購入
J-クレジットの購入方法の一つが、仲介事業であるJ-クレジット・プロバイダー等の利用です。J-クレジット・プロバイダーとは、クレジットの創出および活用の支援が可能な事業者を指します。
J-クレジット・プロバイダーは、CO2排出の削減および吸収の容量の創出・活用の促進を目的として運営されている機関です。
J-クレジット・プロバイダーなどの仲介事業者に依頼するメリットは、以下の通りになります。
- 購入希望者の活用ニーズに見合ったクレジット調達が可能
- カーボン・オフセットなどに関するコンサルティングサービスを受けることも可能
- クレジット購入価格は購入希望者・仲介事業者との相対取引で決定
売り出しクレジット一覧に掲載されたクレジットの購入
J-クレジット制度・公式ホームページ内にある「売り出しクレジット一覧」に掲載されているクレジットを選択して、購入する方法もあります。
売り出しクレジット一覧では、さまざまな項目を選択して自分に適したクレジットを見つけることが可能です。項目の種類は以下になります。
- 適用方法論
- 実施地域
- 希望購入量
- 希望購入価格
- クレジット発行対象期間の開始日
- フリーワード検索
実際にクレジット保有者と交渉する際は、保有者との相対取引によってクレジット購入価格が決定する流れです。
売り出しクレジット一覧URL:https://japancredit.go.jp/sale/
入札販売で購入
3つ目の購入方法は、入札販売での購入です。J-クレジット制度事務局は、政府保有クレジット等の入札販売を実施しています。この入札に参加することによって、クレジット購入が可能です。
入札販売は頻繁に行われているものではなく、年に1〜2回となっているため、販売日程を確認しておきましょう。
また、「J-クレジット管理用口座を開設すること」「落札価格を下回るとクレジット購入は不可」というルールもあるので、把握しておくことが大事です。
低価格でJクレジットを購入するなら『OFFSEL(オフセル)
「J-クレジットを利用してカーボンオフセットに取り組みたいけど、何から始めたらいいのか分からない…」「できるだけコスパよくJ-クレジットを調達したい!」という方にぴったりなのが、エレビスタ株式会社が提供する、J-クレジット・非化石証書の調達代行サービスがOFFSEL(オフセル)です。
一番の特徴が、J-クレジットを低価格・少量から調達できるということ。他社と比較するとその差は一目瞭然です。
他社 | OFFSEL | |
予算 | 100万円単位~ | 指定なし ※銀行振込の最低額の購入は必要 |
t-CO2単価 | 10,000円 | 2,000円~ ※調達状況に応じて価格変動 |
最低購入量 | 平均10 t-CO2~ | 1 t-CO2~ |
相談費用 | 有料 相場:100,000円~ |
無料 |
手数料 | 有料 相場30,000円~ |
無料 |
相談料も無料ですので、まずはカーボンオフセットについて相談したいという方にもおすすめです!
J-クレジットに関するよくある質問・注意点
J-クレジットを利用するにあたって、気になる点をまとめました。
J-クレジットの無効化(償却)の方法は?
J-クレジットの無効化とは、J-クレジット登録簿上でJ-クレジットを無効化口座に移転し、販売や使用ができないようにすることです。無効化すると、自社の省エネ法非化石エネルギー使用量の報告・温対法の温室効果ガス排出量調整・カーボンニュートラル行動計画の目標達成などに利用できます。
無効化はJ-クレジット登録簿システム上で手続きできます。システムにログインし、認証コードを入力、「入力実行」ボタンをクリックすれば手続き完了です。
詳しくは、J-クレジット制度の操作マニュアルを確認してください。
J-クレジットに有効期限はある?
J-クレジットを活用できる期限は決まっていません。
2031年3月31日までは、J-クレジットの制度管理者が登録簿で管理します。 それ以降の取扱いについては決まっていません。
設備導入に国や自治体から補助金を受けている場合、J-クレジットの認証は可能?
補助金を受けて導入した設備を利用していても、プロジェクトの要件を満たしていれば、排出削減量の全量がJ-クレジット認証可能です。補助金相当分を減額されることもありません。
ただし、補助金によっては、J-クレジット認証に制限があるものがあります。補助金の交付要綱をよく確認するようにしましょう。
まとめ
J-クレジットは、CO2排出削除・吸収を、「クレジット」として数値化・可視化したものです。J-クレジットおよびその制度は、まだ一般的には馴染みが薄いかもしれません。
しかし、環境問題・地球温暖化の抑制・そしてエコロジー活動が利益に結びつくという画期的な制度であるため、今後ますます注目が集まると予想されています。
J-クレジット制度の特色は、CO2削減・吸収といった環境問題に直接影響を与える活動の実施です。それに加えて、その活動が、温暖化というグローバルな問題から、国内の経済の活性化というローカルな問題までの、改善策に繋がる点が画期的といえるでしょう。
多くのメリットがある反面、「初期費用を回収するのに時間がかかる」「実際にCO2削減・吸収の活動をしない企業が増える可能性が高い」など、問題点もあります。
今後、どのようにJ-クレジットという概念を浸透させるかが、J-クレジット運営サイド、J-クレジットに関わっている企業の大きな課題といえるでしょう。
参考サイト
Jークレジット制度とは | J-クレジット制度
J-クレジット制度の現状について|経済産業省
この記事を書いた人
ikebukuro