グリーンウォッシュとは?問題視される理由や有名企業の過去の事例を解説
- 公開日:2024.12.11
- 更新日:2024.12.11
グリーンウォッシュとは、企業が環境保全に貢献しているとPRしながら、実際には環境活動に取り組んでいない、見せかけの行為を示す言葉です。
近年、「地球に優しい商品やサービスを利用したい」「環境活動に積極的な企業に投資したい」という消費者や投資家が増えています。
そのため、表面的にだけ環境活動を行っているように見せかける「グリーンウォッシュ」を行っている企業も、少なからず存在しているのです。
アメリカは、工場で強制労働を行っているのを理由に中国・ウイグル地区からの製品輸入を禁じましたが、ユニクロがウイグル地区の工場を使用していたことで「SDGsに相反する取り組みを行っている」と指摘されたことがありました。
騙されないためにグリーンウォッシュを正しく理解しましょう。
目次
グリーンウォッシュとは?
グリーンウォッシュとは、企業が広告などを利用し、環境に配慮した取り組みや商品・サービスを提供しているように見せかける行為です。
環境に優しいことをイメージさせる「Green」と、上辺の見せかけを意味する「Whitewashing」を組み合わせた言葉です。
グリーンウォッシュの具体的には、以下のようなものがあります。
- 根拠がないデータを利用し環境に優しいことをアピールする
- 「100%リサイクル可能」と表示されているが、実際にはリサイクルできない部品がある
- 実際は環境に負荷が大きい商品に対し、環境に優しいイメージを持たせる緑のラベルを貼る
- 実績がないにもかかわらず、「業界No.1」や「業界トップ」を謳う
このように、実際は環境に優しくないものを優しいように見せかけるのが、グリーンウォッシュです。
グリーンウォッシュの7つの罪
消費者を騙すグリーンウォッシュは、7つに分類することが可能です。
7つの罪は、以下の通りです。
- トレードオフ隠蔽(いんぺい)の罪
工程や商品・サービスがすべてにおいて環境に配慮されているわけではないのに、配慮されているように見せかける - 証拠がないことの罪
どの部分がどのように環境に配慮されているのか、根拠を証明しない - あいまいさの罪
人によって受け取り方が変わってしまうような、あいまいな表現を敢えて利用する - 誤ったラベル表示の罪
誤ったラベルを表示し、第三者機関から環境に配慮していることを評価されているかのように偽装する - 不適切さの罪
明らかな嘘をついているわけではないが、消費者に何の役にも立たない主張をする - どんぐりの背比べな罪
他の悪い商品やサービスなどと比較し、あたかも商品が環境に優しいかのように見せる - うそをつく罪
些細なことであっても、環境に優しいような虚偽の主張をする
以上が、グリーンウォッシュの7つの罪です。
グリーンウォッシュが問題視されている理由
グリーンウォッシュが問題視されている理由は、以下4つです。
- 環境悪化につながる可能性がある
- 消費者の誤解につながる
- 企業イメージが悪くなる
- 不当な資金集めがされる場合がある
ひとつずつ解説していきます。
環境悪化につながる可能性がある
グリーンウォッシュで、実際には環境に配慮していない企業が増えてしまうと、環境悪化につながってしまいます。
環境に優しいように見える製品やサービスは、消費者からすれば判断が難しいです。
そのため、環境に優しいと感じた消費者が商品やサービスを利用してしまう可能性があります。
それにより、環境に配慮されていない製品やサービスが多く利用され、環境問題が悪化し、将来的に気候変動を深刻化させてしまったり、持続可能な社会や脱炭素社会を達成できずに、危険な状況へ陥ってしまったりする可能性が高いです。
企業はグリーンウォッシュを故意に行わないことはもちろん、気付かぬうちにグリーンウォッシュにならないよう、注意して広告や製品の製造に取り組む必要があります。
消費者の誤解につながる
消費者に誤解を与えている点も、グリーンウォッシュの大きな問題です。
日経MJが16~26歳の約5000人を対象に実施したアンケート結果では「価格が高くなったり、不自由になったりしても、自らの消費行動を通じて社会の課題解決に貢献したいかどうか」という問いかけに対し、34.9%が「貢献したい」と回答しています。(※9)
この結果から、消費者は社会の環境問題解決のために、製品やサービスを購入し利用している可能性が高いです。
しかし、企業が社会や環境に優しい製品やサービスと謳いながらも、実際は環境問題に対して何も効果がない製品やサービスを提供していた場合、消費者は企業を信じたまま、実際には環境や社会に貢献していない行動を取ってしまうことになります。
このように、グリーンウォッシュは消費者の誤解を招いてしまうだけでなく、消費者を騙していることに繋がります。
※9 参考:日経クロストレンド「『高くても社会貢献できるなら買う』エシカルを楽しむZ世代」
企業イメージが悪くなる
企業がグリーンウォッシュの場合、消費者や国から指摘されることにより、消費者と企業の信頼関係に影響を及ぼし、企業イメージが悪くなる可能性が高いです。
グリーンウォッシュが判明すれば、信頼低下により利益が減少することはもちろん、企業のイメージダウンなど大きな代償が伴います。
また、近年の投資家はESGの観点から投資分析を行い、持続可能な社会づくりに貢献している企業への投資に注力しているため、投資家からの信頼を失い資金調達が困難になる可能性も高いです。
そのため、売り上げを向上させたり、資金調達コストを低減させたりするためにも、企業はグリーンウォッシュとならないよう注意することが大切です。
不当な資金集めがされる場合がある
前述したように、ESGの観点で投資先を選択する投資家が増加し、「ESG投資」や「グリーンボンド」などと呼ばれる、環境に配慮した企業の活動にお金が集まる仕組みが増えています。
しかし、グリーンウォッシュにより出資者に誤ったイメージが伝わってしまえば、そのような仕組みで集められた資金が、出資者の意図と違った形で利用されてしまいます。
そのため、環境に配慮した資金集めの仕組みそのものが形骸化してしまう可能性も高いです。
過去にあったグリーンウォッシュの事例
グリーンウォッシュの事例を5つ紹介します。
マクドナルド
イギリスとアイルランドのマクドナルドでは、2018年にプラスチック製のストローが紙ストローへ切り替えられました。
当初のマクドナルドは、紙ストローに対して「100%リサイクル可能」と謳っていました。
しかし、実際は「100%リサイクル可能」ではなく、マクドナルド内部の人が「紙ストローの厚みがありすぎてリサイクルは困難」と書いたメモが外部に流出し、紙ストローがリサイクルされずに、そのままごみ箱に廃棄されていたことが発覚し、マクドナルドはグリーンウォッシュを疑われ、批判を浴びました。
参考:ニューズウィーク日本版
H&M
ファストファッション大手のH&Mでは、サスティナブルなコレクションとして宣伝・販売をしたマーケティングが、実際はそうではなく、ノルウェーの消費者庁から抗議を受けていたことも発覚しています。
「H&M」が素材の環境負荷測定ツールのヒグ・マテリアルズ・サステナビリティ・インデックスを基に算出した数値で環境に配慮していることを宣伝していましが、数値に誤りがあり、算出方法に虚偽があるとして、集団訴訟を提起されています。
参考:WWD
コカ・コーラ
コカ・コーラは、地球温暖化を防ぐ枠組みについて議論する「COP27(国連気候変動枠組条約の締約国会議)」を後援しています。
しかし、コカ・コーラは年間で1200億本もの使い捨てペットボトルを生産し、世界でもトップクラスの環境汚染企業のひとつであることが指摘され、グリーンウォッシュの批判が起こっています。
ユニクロ
ユニクロでは、製品の生産過程における人権や労働環境に配慮していると明言しています。
しかし、中国のウイグル自治区での強制労働が問題となり、ウイグル自治区で作成した素材を使っていたユニクロにも強制労働が存在するのではないかと疑われました。
ユニクロは、政治問題であるとして強制労働について明言を避けており、労働環境が不透明なことや、根拠に基づいた説明がないことから、不信感を持つ消費者も多く見られたようです。
参考:Bloomberg
三井住友銀行
三井住友銀行は、経営方針に関して脱炭素社会の実現に向けた表明をしたにもかかわらず、石炭火力発電所への融資に関する例外を示し、設備の支援をしています。
それに加え、既存の石炭火力発電事業への融資も継続して行っていることから、NGO団体から批判を受けました。
参考:GREENPEACE
グリーンウォッシュかどうかを見分ける方法
グリーンウォッシュかどうかを見分ける方法は、以下3つです。
曖昧な表現や専門用語が多く使われていないか
曖昧な表現や、消費者に伝わらないような専門用語を多く使用しているものは、グリーンウォッシュの可能性があります。
例えば「エコフレンドリー」などの曖昧な言葉や表現は、環境に配慮されていることを認証するためにマークが入っているかどうか、確認するようにしましょう。
クリティカルシンキングを習得する
サスティナブル先進国が連なる西欧では、物事を批判的に考えることが一般的です。
メディアに限らず、学校の先生や、年長者の発言に対しても、鵜呑みにせず批判的に考えるように教育されます。
このような考えは、第2次世界大戦でナチス・ドイツがメディアを巧みに利用した結果、人々を操り、大量虐殺が正当化されてしまった過ちを繰り返さないためです。
自分で何も考えずに、人の言うことをそのまますべて信じてしまうことは危険な行為です。
すべての人が正しい発言をしているわけではなく、企業の商品やサービス広告も、企業が売り上げを伸ばすために、基本的に良いことしか記載していません。
現代ではインターネットを利用し、さまざまな媒体の情報を簡単に手に入れられますので、情報を鵜呑みにせず、さまざまな情報を比較し、情報が正しいものか自分で精査することが大切です。
エコラベルがあるか
「無農薬商品」や「環境に優しい」など、環境に配慮しているような商品やサービスは、多く存在します。
そのような数ある商品の中から、本当に環境に優しい商品を選ぶ方法は、エコラベルがあるか確認することです。
また、ただエコラベルが付いていれば良いというわけではなく、その中でも第三者から認証を受けているかも重要です。
例えば、海外のGlobal Organic Textile Standard (GOTS)は、衣類などにつけられるラベルであり、ラベルをつけるためには、素材の70%以上がオーガニックの天然繊維であることや、サプライチェーン全体に対する基準に合格していることなど、複数の審査を通過する必要があります。
このような第三者からの認証がある商品やサービスか調べることで、グリーンウォッシュを見極められます。
グリーンウォッシュに関するよくある質問
グリーンウォッシュについて考える際に、疑問に思う方が多い点についてまとめました。
ESG投資とは?
ESG投資を行う際にはグリーンウォッシュに気を付ける必要がありますが、そもそもESG投資とは何か説明します。
ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の観点から企業を評価し、投資先を決める投資方法です。
ESGを満たす企業は、持続的に成長する可能性が高く、スキャンダルなどで倒産する可能性が低いため、長期的な利益を得られるとされ、注目を集めています。
グリーンウォッシュに対する規制はある?
日本には、直接的にグリーンウォッシュを規制する法律はありません。
「不当景品類及び不当表示防止法」による優良誤認表示規制は、商品の誤認を招く表示(実際には根拠がないのに環境に優しいと記載するなど)に対処できます。ただし、企業広告などには適用されません。
また、環境省の「環境表示ガイドライン」には、環境主張の正しい実施方法が提示されています。しかし、ガイドラインであり、罰則があるわけではありません。
これに対して、EU・イギリス・オーストラリアといった国々ではグリーンウォッシュへの規制強化を強めています。
日本も、世界の動向を見極めて、環境主張の正しい実施方法を制定していく必要があるでしょう。
グリーンウォッシュとみなされないために企業ができることは?
企業としてはまっとうな環境活動のPRを行っていたつもりでも、グリーンウォッシュをみなされてしまうことがあります。気付かないうちにグリーンウォッシュを行ってしまう前に、以下の点に注意しておきましょう。
- 「グリーンウォッシュ7つの罪」を確認する
- ステークホルダーの受け止め方を想像する
- 環境活動を客観的に記録・評価する
- 第三者機関の認定を受ける
まずは、記事内で紹介した「グリーンウォッシュ7つの罪」にあたらないか確認します。
また、取り組みがどのような受け止め方をされるか、さまざまな角度から考えてみることが大切です。社外に意見を求めるのも良いでしょう。
環境活動の取り組み中に、活動を記録し、評価することも忘れないでください。記録は、良い面だけでなく、マイナス面もそのまま記録しましょう。評価は、SDGsの行動目標や、自治体が掲げる目標に紐づけて行うと、PRする際に分かりやすくなります。
一度グリーンウォッシュのイメージが付くと払拭するのは難しいため、気を付けてください。
まとめ
グリーンウォッシュとは、事実とは異なり、企業が広告などを利用し、環境に配慮した取り組みや商品・サービスを提供しているように見せかける行為です。
グリーンウォッシュには、環境を悪化させる可能性があったり、消費者に誤解を招いてしまったりといった問題があります。
曖昧な表現や専門用語が多用されていないか、第三者からの認証は受けているかなどを確認することで、グリーンウォッシュに騙されることを防げます。
自分で判断する力を身に付け、グリーンウォッシュに騙されないようにしましょう。
この記事を書いた人
ikebukuro