FIP制度とは?メリット・デメリットや仕組み、FIT制度との違いを解説

  • 太陽光発電投資
  • 公開日:2024.12.06
  • 更新日:2024.12.06
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2022年から施行されたFIP制度は、FIT制度のように固定価格が決められているのではなく、市場連動型で買取価格が決定する制度です。

これにより、これまで以上に売電収入が得られるようになったことで注目を集めています。

2022年にスタートしたFIP制度が開始される理由とメリット・デメリット、固定買取よりも本当に利益が多くなるのかについて解説していきます。

先に導入されているFIT制度との違いについても紹介します。

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FIP制度とは

fip制度

FIP(フィップ)制度とは「フィード・イン・プレミアム制度」の略称です。

新エネルギーの販売事業者の収益が市場価格だけではなく、国がプレミアム金を割増金として支払う新システムのことです。

自然に優しい方法で発電した電力の売買システムとして、国は新たにFIP制度を開始しました。その背景には、環境に配慮した新エネルギーの普及促進から、発電事業者の自立を推し進める意図があります。

FIP制度のスタートをきっかけに価格競争が始まっています。その結果、どのような企業努力を行うかによって日本の地球温暖化への達成率が変わるでしょう。

FIP制度の目的と制度が始まった背景

FIP制度とは、新エネルギーの発電事業者が市場価格に合わせて電力を売れるようにしたことにより、今まで適用しているFIT制度よりも収益を上げられるように構築されたシステムです。

従来は国が売電価格を固定価格として取り決めていましたが、FIPは導入した事業者の努力によっては大きな利益を得られるようになりました。

また、FIP制度の開始時、新エネルギーの電力量に応じて、「競争電源」と「地域活用電源」に区分がわけられています。

FIP制度の対象は競争電源と区分が決まった発電量で、対象となる発電事業者は早めにFIP制度を理解し、適切な対策や準備を行うことで発電事業者が成長していく後押しとなるため、エネルギーの発電事業の経営手腕が問われるようになるでしょう。

また、電力会社が新エネルギーの購入予算として電気代で徴収している「再エネ賦課金」の上昇を抑制し、国として国民の電気代を軽減するのも目的の一つです。

FTP制度では、新エネルギーの売電時に割増金(プレミアム金)を交付することで、市場価格の変動による収益減少リスクに配慮する仕組みになっています。FIPの割増金も国民の負担となっていますが、「再エネ発電賦課金」より国民の負担を減らせるようになりました。

売買するタイミングは市場に合わせて変動

FIP制度で新エネルギーを売るためには、「市場」で販売する必要があります。電力の売値はマーケットの変動を受けますが、販売したいタイミングを自由に選択できます。

例えば、買い取り単価が安い場合は売らずに蓄電をし、買い取り単価が高くなるタイミングで販売するような売電スケジュールを組めるようになっています。

その結果、今までの売電システムより従来よりも柔軟な営業戦略が可能となり、販売側の収益拡大が狙えるような売電システムになりました。

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FIP制度のメリット

FIP制度のメリットは以下の通りです。

発電事業者が補助額(プレミア)を得られる

FIP制度導入以降、再生可能エネルギー発電事業者は市場価格より高い値段で売電できるようになったため、再生可能エネルギーの普及促進に繋がりました。それだけではなく、発電事業社は補助額を得られるようになっています。

また、太陽光発電事業者が市場に合わせて電力供給するために発電予測精度の向上や蓄電池の活用を実施することにより、発電事業者の電力需給バランスへの意識が一層高まっています。

売り主の経営手腕によって売るタイミングやインフラ投資をする時期を選び、マーケットの売値によって収益アップが期待できます。

単価変動のリスクヘッジとして国はプレミアム金を上乗せするため、従来のFIT制度よりも収益を上げることも可能でしょう。

市場価格が高い時に売電することで収益が拡大する

FIP制度の魅力は、マーケット動向に応じた変動単価となるため、売り主が高値のタイミングで販売できるようになることです。

国が電力の単価を定めないため、売り主の裁量で収益アップが見込めるのです。市場価格は需給バランスに応じて変動するため、需要の少ない市場価格が高い時に売電することで収益を拡大できます。

マーケット状況を分析して営業プランを立てることができるため、売値の高いタイミングで販売でして利益を上げることができるでしょう。

また、電力の供給過多で価格が下落しているときは販売するのを見送り、蓄電して価格上昇に合わせて販売することもできます。

発電量が少ない季節はインフラ施設のメンテナンスなどにあてるなど、オリジナルの売電計画を考えて、今までの制度よりも収益を拡大できます。

このように事業者が需給バランスを意識して発電・売電を行うことにより、電力系統全体の需給バランスも安定してきています。

再エネが電力市場で競争力を高められる

発電事業者の取り組みが進むことで、再生可能エネルギーの競争力が高まったことにより、電力市場への統合が進んでいます。

また、新エネルギーの売値が変わるようになり、今日の売買システムよりも利益率が上がる事業者が出てくると予測されています。

発電側の資本が潤うメリットは、新たに発電する設備を投資するための資金を持てることです。事業者が収益アップすることで設備のメンテナンスに目が行き届くようにもなり、発電力の向上にもつながると期待されています。

新しくスタートする国の制度が発電側の収益アップに役立ち、環境に優しいエネルギーの普及率を増やすきっかけとなるはずです。

再エネ賦課金が下がる

2012年に施行されたFIT制度により、国民負担の再エネ賦課金が増加したことが問題視されていましたが、FIP制度施行以降は需要と供給のバランスを考慮された取引が行われるようになったため、「再エネ賦課金を減少させる」というFIP制度導入の目的の1つが果たされています。

FIP制度のデメリット

続いてFIP制度のデメリットも見ていきましょう。

収益が不安定になる

FIP制度の懸念点は、売値が変動するため今までのような収益予測が難しくなることです。

売る時間帯や季節による売値の変動だけではなく、気候変動や市場価格の下落などの影響を受けやすいため、インフラ投資のコスト回収ができない場合があります。

固定単価ではないため長期的な利益予測が困難となり、新エネルギー発電への参入ハードルは高くなったと言えるでしょう。

設備投資が必要

売電時間を調節するためには蓄電池の導入が効果的ですが、蓄電池などの設備を導入するための初期費用がかかります。大容量の蓄電池を運用する際のコストが高額になることも難点です。

また、日常的に市場競争が売り主の収益に影響するため、売り主のインフラ投資やメンテナンス費のコスト負担が高まる可能性があります。

バランシングの義務がある

FIP制度を利用するためには、電気の発電計画値と実際の発電量を一致させる「バランシング」が求められます。

もし計画値と実績値に差が生じた場合、ペナルティとしてインバランス費用を負担しなければならないため、運用コストを売電によって回収する方法を模索する必要があります。

FIT制度とFIP制度の違い

FIT制度とは「フィード・イン・タリフ」の略称です。2012年より始まった新エネルギーを売る際の売買システムのことで、国が固定した単価を決めているため価格競争は起こりません

電力会社のみが購入するルールのため、市場を介さず電力を売ることができるのも特徴です。国が2つの売買システムを導入する目的が異なるため、それぞれの条件や運用に違いがあります。

今日まで適用されているFIT制度の概要や特徴を確認し、これから開始されるFIP制度との違いを解説します。

FIT制度とFIP制度の違いを図と表で見ていきましょう。

fip制度

(画像引用:【初年度は上太陽光発電など】資源エネルギー庁 22年4月施行のFIP制度対象区分を制定 | 建設通信新聞Digital

FIT制度 FIP制度
売電価格 固定
変動しない
市場価格に一定の補助
変動する
対象 住宅用・低圧・高圧で
FIT認定を受けた設備
高圧(50kW以上)で
事業者が希望する設備
環境価値 なし 取引可能
発電計画値
の報告義務
なし あり
罰則あり

FIT制度とFIP制度は目的が異なる

FIT制度は、日本における石油資源への依存度を下げ、エネルギー自給率を上昇させることを目的に導入されました。

FIT制度は、国が新エネルギーの買い取り単価を1年ごとに決定しています

新エネルギーを買い取りできる相手は電力会社のみで、電力会社は一人ひとりの料金から「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を徴収することを国に許可されており、新エネルギーの買い取り予算を確保しました。

事前に売る相手と単価が決まっているため新エネルギーのインフラ投資に対してコスト回収の予測が立てやすくなったことにより、FIT制度は日本の新エネルギー普及に貢献するという目的を達成しました。

しかし、同時に再エネ賦課金の上昇などの問題が発生したため、FIT制度の問題点をクリアした新しい制度としてFIP制度が始まったのです。

FIP制度を活用した具体的な収益イメージ

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(画像引用:FIPの制度設計スタート、「基準価格」はFITと同水準 – ニュース – メガソーラービジネス : 日経BP

FIP制度は、新エネルギーの売値が変動するため、従来の固定単価と比較し、減収分をカバーできるように配慮しています。

国は販売者へ変動価格の均等化を図るために割増金(プレミアム金)を支払い、収益ダメージの軽減を行います

「基準単価」は新エネルギーの販売量に応じており、国が「参照価格」を差し引いた割増金(プレミアム金)を決定します。

割増金(プレミアム金)の算定ルールは現在も検討されていますが、「市場参照価格」はマーケット動向に応じて定期的に更新する方向で審議が行われています。

今のところ「市場参照価格」も、1カ月から1年ごとで見直しが予定されています。

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FIP制度の対象となる太陽光発電の条件

2022年からFIP制度がスタートにあたり、どの太陽光発電がFIP制度の対象かを確認しましょう。既にFIT制度を適用中の売り主であっても、FIP制度を利用できるケースもあります。

太陽光発電では区分が定められ、発電量によって利用できる売買システムが変わります。

また、FIP制度で利益が増えるかもしれませんし、売値が変動することで収入が減る可能性もあります。どちらを利用するかを確認し、今後の販売スケジュールを考えることが大切です。

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(画像引用:【2021年度からのFIT&FIP】低圧太陽光11円・10円へ。FIP移行の道筋も明らかにSOLAR JOURNAL

パターン1:1,000kW以上

太陽光発電が1,000kW以上の場合は、2022年から「競合電源」と判断され、FIP制度が適用されます。

こちらに該当する売り主はFIP制度の概要や注意点を把握し、影響する範囲をしっかりと分析してください。今から再生可能エネルギーのマーケット動向を分析し、高値のタイミングと設備のメンテナンス時期を検討しておきましょう。

パターン2:50kW以上1,000kW未満

太陽光発電が50kW以上1,000kW未満の場合は、売り主がどちらの制度を利用するか選べます。

現在は250kW未満に活用できる制度はありませんが、FIP制度では利用できるようになりました。

また、FIP制度からは50kW以上が対象となり、今まで恩恵を受けてこなかった売り主にとっては販路拡大につながるかもしれません。どちらの売買システムにもベネフィットとリスクがあり、固定単価と変動単価のどちらが利益アップにつながるかを検討して選びましょう。

パターン3:50kW未満

2,021年5月の審議内容によりますと、太陽光発電が50kW未満の場合は、FIP制度の対象外となっています。

しかし、今後の運用状況によっては、50kW未満への適用も検討されています。こちらの区分に該当する売り主は、FIP制度の改正情報を見逃さないようにしましょう。

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FIP制度に関するよくある質問

FIP制度について考える場合に、気になる点についてまとめました。

FIT設備をFIP設備へ変更することはできる?

すでにFIT認定されている設備であっても、電力広域的運営推進機関(広域機関)でFIP設備への変更認定を受ければ、変更することができます。

ただし、前述のとおり、FIP制度の売電価格は市場価格に連動するため、売電収入が不安定になる可能性が高いです。

FIP制度には種類がある?

FIP制度には、大きく分けて3種類あります。日本のFIP制度は、変動型と固定型の中間と言えます。

  • 固定型
  • 固定型(上限下限付き)
  • 変動型

固定型

市場価格に固定金額のプレミアム額を上乗せします。電力需要が大きく市場価格が高い時間帯には収益が増えるのがメリットです。ただし、市場価格に連動して、売電収入の増減が大きくなってしまいます。

固定型(上限下限付き)

市場価格とプレミアく額の合計である売電価格に、上限下限を設定しています。下限を下回った場合にはプレミアムが増額されるため、固定型より収入が安定します。

ただし、売電価格が上限を超えると、それ以上のプレミアム額がもらえないのがデメリットです。

変動型

市場価格とプレミアム額の合計である売電価格が一定となるように、プレミアム額を変動させます。

FIT制度と同様となるため、最も売電収入が安定し、収益予測が立てやすいです。FIP制度のメリットは全くありません。

 

FIP制度の海外での実施状況は?

FIP制度は海外では主に欧州ですでに導入されています。具体的な国は以下の通りです。

固定型 スペイン(2007年まで)
固定型(上限下限付き) デンマーク
変動型 オランダ・ドイツ・スイス・イタリア

世界では、太陽光発電・風力発電を中心に再エネコストが低減傾向にあります。再エネの導入状況として、この7年間で日本の増加スピードはトップクラスです。

また固定型とは、市場価格とプレミアムの和に上限と下限を設定したもののこと。卸電力価格の変動による事業の収益性への影響をある程度低減出来るといったメリットがありますが、適正な上限値、下限値の設定が困難といったデメリットも挙げられます。

変動型とは、電力卸市場価格の上下に応じて、付与するプレミアムが変動すること。卸電力価格の変動による収益性への影響を減らせるといったメリットがあります。しかし、市場価格が低下した場合、賦課金が増大するといったデメリットも挙げられます。

まとめ

2022年より新しく導入されたFIP制度は、再生可能エネルギーの市場価格に割増金(プレミアム金)を上乗せします。

価格に応じて売るタイミングを調整できるため、営業努力によって従来よりも収益を拡大できる可能性があります。しかし、単価変動にともない中長期的な収益予想が難しいため、設備投資のコスト回収ができないリスクを忘れてはいけません。

これからは売る側の努力で利益が大きく変わるため、新しい制度を理解した上での事業戦略が重要となるでしょう!

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この記事を書いた人

ikebukuro

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