バイオエタノールの作り方やバイオ燃料のメリット・デメリット、問題点を解説!

  • 再生可能エネルギー
  • 公開日:2024.12.11
  • 更新日:2024.12.11
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バイオエタノールとは、環境負荷の低い新しい燃料として注目されている燃料です。

最近よく耳にしますが、そもそもバイオエタノールとは何か、利用に際してどんなメリットやデメリットがあるのか、と聞かれて正確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

バイオエタノールの原料や作り方、環境に良いとされる理由やメリット、さらにはバイオ燃料が抱えるデメリットや問題点などについて分かりやすく解説します

バイオエタノールの将来性やバイオエタノールに関する質問などもあわせてご覧ください。

バイオ燃料「バイオエタノール」とは

バイオエタノールとは、バイオマス資源によって作られたエタノールのことです。バイオマス資源とは、植物や動物などの有機物から生成される資源のことを言います。

バイオエタノールの原料は植物性であり、生成過程でCO2を吸収しているため、これを燃やしても実質的なCO2は増加しない、カーボンニュートラルな燃料として注目されています。

バイオエタノールの原料や作り方、主な利用方法などについて解説します。

バイオエタノールの作り方

バイオエタノールの原料は、サトウキビやテンサイなどの糖質作物またはコメ・トウモロコシなどのでんぷん質作物です。糖とでんぷんを混ぜて発酵させ、蒸留するという作り方は、基本的にお酒の製造と同じ原理です。

従来のバイオエタノールは食料を原料としているため、バイオエタノールを増産すると食料価格が高騰してしまうという問題がありました。

そこで近年では、建築廃材などの木材や稲わらなどセルロース系材料を使った、第二世代・第三世代のバイオエタノール開発が進められています。

バイオエタノールの主な利用方法

バイオエタノールの主な利用方法には、以下の2種類があります。

  • 直接混合
  • ETBE

直接混合は、ガソリンとバイオエタノールをそのまま混ぜ合わせる方法で、主にアメリカやブラジルなどで取り入れられています。

ETBEは、バイオエタノールと石油精製過程で生まれるイソブテンからETBEを合成し、ガソリンに混合して使う方法です。

いずれもバイオエタノールを利用することによって、自動車のガソリンや火力発電の化石燃料の使用量を削減できます。

バイオ燃料「バイオエタノール」のデメリット・問題点

バイオエタノールにはデメリットもあります。

バイオエタノールの問題点について解説します。

原料の栽培のために森林破壊が行われている

バイオエタノールの原料を栽培する農地を確保するために、森林破壊が行われているというデメリットがあります。

森林の代わりに農作物を植えるのだから良いのではないかと思いがちですが、森林には動植物の多様性や野生動物の生態系を維持する、地土の保水効果を保つなど重要な役割があります。

バイオエタノール原料の農地確保のために森林破壊が進むと、生物多様性が危機にさらされ、土砂崩れなどの二次災害が増加するなどの可能性があります。

原料となる作物の価格高騰

バイオエタノールの原料はサトウキビやトウモロコシなど食糧作物であることが多いため、バイオエタノールを大量生産することで原料となる食糧作物の価格が高騰するという問題もあります。

2007年ごろからトウモロコシなどの食糧作物が大幅に高騰しており、バイオエタノールの原料消費が問題ではないかという声も上がっています。バイオエタノールの将来性を見込んで、投機的な資金が流入していることも問題の1つとして指摘されています。

このため、建築廃材などの木材や稲わらなどセルロース系材料や藻類など、食糧作物と競合しない原料を使った第二次・第三次バイオエタノールの開発が進められています。

製造コスト・開発費用が高い

バイオエタノールの製造コストは、大規模製造を行っているアメリカやブラジルで0.2~0.25ドル/Lですが、ガソリンなどの化石燃料と比べると燃費が落ちるため、製造コストはまだまだ高いのが現状です。

日本では規模がまだ小さくスケールメリットが出にくいため、100~250円/Lのコストとなっています。

(参考元:農林水産省『バイオエタノール先進国と日本の取組の比較』

これらの製造コストは、トウモロコシやサトウキビなど食糧作物を原料としており、セルロース系材料など次世代バイオエタノールの製造コストや開発費用はさらに高くなります。

食糧作物の価格高騰を避けるため、次世代バイオエタノールの開発の必要性が指摘されていますが、製造コストや開発費用の高さがネックとなっています。

バイオ燃料「バイオエタノール」のメリット

なぜ今バイオエタノールが注目されているのでしょうか。

バイオエタノールのメリットについて分かりやすく解説します。

カーボンニュートラルにつながる

カーボンオフセット

出典:カーボン・オフセットについて|春日井市公式ホームページ

バイオ燃料であるバイオエタノールは植物性のため、化石燃料の代わりに使うことでカーボンニュートラルにつながるというメリットがあります。

カーボンニュートラルとは、環境保護のためCO2など温室効果ガスの削減を目指す中で、温室効果ガスの排出をゼロにはできない代わりに、植林など温室効果ガスの吸収量を増やすことで均衡させようという考え方です。

排出量を吸収量で相殺(オフセット)するため、カーボンオフセットなどとも言われます。

天候に左右されない自然エネルギー

化石燃料に頼らない自然エネルギーとして、太陽光や風力発電などが注目されていますが、これらの自然エネルギーは天候に左右されてしまうので、供給が安定しにくいというデメリットがあります。

バイオエタノールは化石燃料と同じように保存して必要な分だけ利用できるので、天候に左右されない貴重な自然エネルギーとして注目されています。

ガソリンの代替燃料として利用できる

バイオエタノールはガソリンの代替燃料として利用できるので、化石燃料の使用量を減らすことができます。

化石燃料の使用量を減らすことは、温室効果ガスを削減すると同時に、限りある資源が枯渇することを避けることにも繋がります。

原料枯渇の可能性が低い

バイオエタノールの原料はとうもろこし・サトウキビなどの植物や廃棄物です。とうもろこしやサトウキビは毎年収穫できる植物で、廃棄物も人類が存続する限りなくなりません。

そのため、枯渇が懸念される化石燃料と違って原料枯渇の可能性が非常に低いため、枯渇の心配をしなくていいというメリットがあります

バイオ燃料「バイオエタノール」の将来性

バイオエタノールには、食糧作物との価格競合や製造コスト高などの問題点があるものの、今後さらに需要と生産量は拡大していくと見込まれています。

特に、2022年以降はロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナの戦争や政情不安から、原油価格の高騰が懸念されており、安定的かつ低コストなバイオ燃料の増産が求められています。

バイオエタノールの将来的な課題は大きく2つに集約されます。

生産地域と生産量の拡大

バイオエタノールの生産量は、アメリカとブラジルで世界全体の生産量の約75%を占めており、3位以降の中国やEU・インドと大きく差があります。

アメリカやブラジルでバイオエタノールの製造コストが低下している一方で、アメリカの政策転換により2020年以降はバイオエタノールの需要や生産量が一時的に減速する事態も生じています。

バイオエタノールの低コスト化と安定的な生産のために、今後世界的に生産地域と生産量を拡大していくことが期待されています。

特に、インドネシアやマレーシアなど東南アジア地域の躍進により、2026年までにアジア地域のバイオ燃料生産量は世界の3分の1を占めるようになると予測されています。

(参考元:経済産業省『令和3年度燃料安定供給に関する調査等報告書』

次世代バイオエタノールの拡大

バイオエタノールの将来性を決める鍵の2つ目は、次世代バイオエタノールの開発です。

現時点では、アメリカの原料はトウモロコシ、ブラジルの原料はトウモロコシとサトウキビなど、食糧作物がほとんどです。

生産を拡大しているEUや中国ではてんさいや小麦も原料として用いられていますが、食糧作物であることに変わりありません。今後バイオエタノールが世界的に増産されると、食料価格の高騰化が懸念されます。

このため、食糧作物ではなく木材や古紙、藁などのセルロース系原料や藻類またはカーボンリサイクル技術を使った次世代バイオエタノールの開発と増産が求められています

ただし、次世代バイオエタノールの製造や開発コストは穀物系エタノールと比べて非常に高いのが現状です。現在では、セルロース系エタノールの製造コストは0.7~1ドル/Lで、穀物系エタノールの1.5~4倍と非常に高くなっています。

今後、技術革新や投資の拡大により、次世代バイオエタノールの製造コストを下げていくことが期待されています。

(参考元:国際環境経済研究所『バイオ燃料の現状分析と将来展望』

バイオエタノールに関するよくある質問

バイオエタノールについて考える時、疑問に思う方が多い点についてまとめました。

バイオエタノールが日本で普及していない理由は?

バイオエタノールは国内で普及しているとは言えません。以下のような理由が考えられます。

  • 石油燃料に比べて生産コストが高い
  • 国が定める利用目標が少なく使用義務がない
  • 供給設備が整っていない

最も大きな原因は、生産コストが高いことです。特に次世代バイオエタノールの大量生産は難易度が高く、ガソリンに代わる燃料として利用するには、さらなる研究開発が必要になります。

2023~2027年の5年間、バイオエタノールの利用目標量は原油換算で50万kLとなっています。目標値のみで使用義務は定められておらず、普及促進には及んでいません。

また、バイオエタノールのガソリン混入は、品確法で3%が上限と定められています。これ以上割合を高めるには、安全性や大気汚染への影響について調査・検証をしなければならず、供給設備の準備も必要です。

参考:一般法人新エネルギー財団

バイオエタノールはどこの国で生産されている?

燃料用バイオエタノール・バイオディーゼルを最も多く生産しているのはアメリカです。次いでブラジル、インドネシア、中国となっています。

アメリカでは、トウモロコシを原料とするバイオエタノールの需要が高まっています。これは、エタノールを高い割合で含むガソリンが車の燃料として広く利用されているためです。

参考:GLOBAL NOTE

バイオエタノールを燃焼すると二酸化炭素は排出される?

バイオエタノールは、燃焼時に二酸化炭素を排出します。

バイオエタノールの原料となる植物によって二酸化炭素が吸収されるため、カーボンニュートラルになると考えられます。

そのため、化石燃料よりも、環境に優しい燃料であると言えます。

バイオエタノールの使い道は?

バイオエタノールは、ガソリン混合して車で使用する他、ディーゼルエンジン用としても使用可能です。

さらに、SAF(持続可能な航空燃料)や、プラスチック原料としての利用も想定されています。

また、暖炉の燃料として使用されることもあります。

バイオエタノールの環境へのデメリットは?

バイオ燃料の原料は植物です。原料を安易に確保するために、森林破壊が起こったり、サトウキビやトウモロコシの価格が上昇したりするデメリットが考えられます。

バイオエタノール用の品種を栽培することや、脱穀後のワラなどの廃棄物を活用することで、環境への負担を減らすことができます。

まとめ

バイオエタノールとは何か、原料や利用方法、メリットと問題点などについて解説しました。

バイオエタノールには、食料の高騰や製造コストなどいくつか問題がありますが、低コスト化や新しい原料の普及により、世界的な需要と将来性は今後も高まっていくと思われます。

現時点では日本のバイオエタノールの生産量は少なく、生産コストも高くなっていますが、新しい技術や次世代バイオエタノールの開発分野で、大きな成長が期待されています。

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この記事を書いた人

ikebukuro

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